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キャリアコンサルタント国家試験合格 38 | テクノファ 

投稿日:2021年2月13日 更新日:

国家試験機関「キャリアコンサルティング協議会」は、平成30年3月の厚生労働省の見直しに合わせて「キャリアコンサルタント試験の出題範囲」を改定しました。新「キャリアコンサルタント試験の出題範囲(キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目)」の適用は、2020年度(令和2)からの試験となっています。

ここでは、新「キャリアコンサルタント試験の出題範囲(キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目)」に焦点を合わせて、分野ごとに過去問を中心に勉強をしていきたいと思います。
労働法関係について「キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目6」には次のとおり書かれています。

6 労働政策及び労働関係法令並びに社会保障制度の知識
次に掲げる労働者の雇用や福祉を取り巻く各種の法律・制度に関し、キャリア形成
との関連において、その目的、概念、内容、動向、課題、関係機関等について一般的な知識を有すること。
① 労働関係法規及びこれらに基づく労働政策
ア 労働基準関係
労働基準法、労働契約法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法
イ 女性関係
男女雇用機会均等法、女性活躍推進法、パートタイム労働法(パートタイム・有期雇用労働法)
ウ 育児・介護休業関係
育児・介護休業法
エ 職業安定関係
労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)、職業安定法、若者雇用促進法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法
オ 職業能力開発関係
職業能力開発促進法
カ その他の労働関係法令
② 年金、社会保険等に関する社会保障制度等
・厚生年金
・国民年金
・労災保険
・雇用保険
・健康保険
・介護保険 等

多くの【問】では、次の法令に関する名称は略語を使用しています。
・個人情報の保護に関する法律 : 個人情報保護法
・高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 : 高年齢者雇用安定法
・個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律:個別労働関係紛争解決促進法
・障害者の雇用の促進等に関する法律:障害者雇用促進法
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 : 男女雇用機会均等法
・労働者災害補償保険法:労災保険法
・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 : 労働者派遣法
・青少年の雇用の促進等に関する法律 : 若者雇用促進法

【問 し】
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006、厚生労働省)に関する次の記述のうち、誤りはどれか。
1. 労働者の健康保持は、労働者自らが自主的・自発的に取り組むのが基本であるが、職場には、労働者自身の力だけでは取り除くことができない健康障害やストレス要因が存在している。したがって、労働者自身の自助努力に加えて、事業者も積極的に健康管理を行う必要がある。
2. トータル・ヘルス・プロモーション・プラン(THP : 健康保持増進措置)とは、事業者に課せられた作業環境管理、作業管理、健康管理(労働衛生の3管理)のことである。
3. THPでは、事業者は産業医の下で健康測定を行い、ヘルスケア・トレーナーやヘルスケア・リーダーによる運動指導、産業保健指導者等による保健指導、専門の心理相談担当者による心理相談、産業栄養指導者による栄養指導などを行うこととされている。
4. 従来の健康づくりは身体の健康に偏りがちであったため、心のケア(メンタルヘルス)を加えたのが特徴である。

【正解】2

【解説】
1.正しい 指針にはメンタルヘルスケアの基本的考え方として出題文章1.のように記述されている。

2.誤り THPとは厚生労働省が働く人の「心とからだの健康づくり」をスローガンに進めている健康保持増進措置のことで、労働安全衛生法はその第69条で労働者の健康保持増進を図るために必要な措置を継続的かつ計画的に実施することが事業者の努力義務として定められ、第2項では、労働者は、事業者が講ずる措置を利用して、健康保持増進に努めることと規定されている。

3. 正しい THPの内容は次のようなものである。
・健康測定
各労働者に対して、産業医が中心になって健康測定を行い、その結果を評価し、指導票を作成する。なお、健康測定の一部に定期健康診断結果を活用することもできる。
・運動指導
運動指導担当者が、労働者個人について、運動指導プログラムを作成し、運動指導担当者及び運動実践担当者が運動実践の指導援助を行う。
・メンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアが必要とされた場合等に、心理相談担当者が産業医の指示のもとに、ストレスに対する気付きへの援助やリラクセーションの指導などを行う。
・栄養指導
食生活上問題が認められた労働者に産業栄養指導担当者が食習慣や食生活の評価と改善の指導を行う。
・保健指導
産業保健指導担当者が、睡眠、喫煙、飲酒、口腔保健などの指導及び教育を行う。

4.正しい この指針の趣旨にあるとおり、心の健康問題が労働者、その家族、事業場及び社会に与える影響が大きくなっていること対応するための指針を示している。

【労働者の心の健康の保持増進のための指針】
1 趣旨
労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり、仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者が半数を超える状況にある。また、精神障害等に係る労災補償状況をみると、請求件数、認定件数とも近年、増加傾向にある。このような中で、心の健康問題が労働者、その家族、事業場及び社会に与える影響は、今日、ますます大きくなっている。事業場において、より積極的に心の健康の保持増進を図ることは、労働者とその家族の幸せを確保するとともに、我が国社会の健全な発展という観点からも、非常に重要な課題となっている。

本指針は、労働安全衛生法の規定に基づき、同法の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるものである。
事業者は、本指針に基づき、各事業場の実態に即した形で、ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルスケアの実施に積極的に取り組むことが望ましい。

2 メンタルヘルスケアの基本的考え方
ストレスの原因となる要因は、仕事、職業生活、家庭、地域等に存在している。心の健康づくりは、労働者自身が、ストレスに気づき、これに対処することの必要性を認識することが重要である。
しかし、職場に存在するストレス要因は、労働者自身の力だけでは取り除くことができないものもあることから、労働者の心の健康づくりを推進していくためには、職場環境の改善も含め、事業者によるメンタルヘルスケアの積極的推進が重要であり、労働の場における組織的かつ計画的な対策の実施は、大きな役割を果たすものである。
このため、事業者は、以下に定めるところにより、自らがストレスチェック制度を含めた事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明するとともに、衛生委員会又は安全衛生委員会において十分調査審議を行い、メンタルヘルスケアに関する事業場の現状とその問題点を明確にし、その問題点を解決する具体的な実施事項等についての基本的な計画を策定・実施するとともに、ストレスチェック制度の実施方法等に関する規程を策定し、制度の円滑な実施を図る必要がある。また、心の健康づくり計画の実施に当たっては、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある。これらの取組においては、教育研修、情報提供及び「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」並びに「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルスケアが継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要である。
さらに、事業者は、メンタルヘルスケアを推進するに当たって、次の事項に留意することが重要である。
① 心の健康問題の特性
② 労働者の個人情報の保護への配慮
③ 人事労務管理との関係
④ 家庭・個人生活等の職場以外の問題

3 衛生委員会等における調査審議
メンタルヘルスケアの推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うことが必要である。また、心の健康問題に適切に対処するためには、産業医等の助言を求めることも必要である。このためにも、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用することが効果的である。
労働安全衛生規則において、衛生委員会の付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が規定されており、4に掲げる心の健康づくり計画の策定はもとより、その実施体制の整備等の具体的な実施方策や個人情報の保護に関する規程等の策定等に当たっては、衛生委員会等において十分調査審議を行うことが必要である。

また、ストレスチェック制度に関しては、心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針により、衛生委員会等においてストレスチェックの実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえてストレスチェック制度の実施に関する規程を定めることとされていることから、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行うことが望ましい。
なお、衛生委員会等の設置義務のない小規模事業場においても、4に掲げる心の健康づくり計画及びストレスチェック制度の実施に関する規程の策定並びにこれらの実施に当たっては、労働者の意見が反映されるようにすることが必要である。

4 心の健康づくり計画
メンタルヘルスケアは、中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要であり、また、その推進に当たっては、事業者が労働者の意見を聴きつつ事業場の実態に則した取組を行うことが必要である。このため、事業者は、3に掲げるとおり衛生委員会等において十分調査審議を行い、心の健康づくり計画を策定することが必要である。心の健康づくり計画は、各事業場における労働安全衛生に関する計画の中に位置付けることが望ましい。
メンタルヘルスケアを効果的に推進するためには、心の健康づくり計画の中で、事業者自らが事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明するとともに、その実施体制を確立する必要がある。心の健康づくり計画の実施においては、実施状況等を適切に評価し、評価結果に基づき必要な改善を行うことにより、メンタルヘルスケアの一層の充実・向上に努めることが望ましい。心の健康づくり計画で定めるべき事項は次に掲げるとおりである。
① 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること。
② 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること。
③ 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること。
④ メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること。
⑤ 労働者の健康情報の保護に関すること。
⑥ 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること。
⑦ その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること。
なお、ストレスチェック制度は、各事業場の実情に即して実施されるメンタルヘルスケアに関する一次予防から三次予防までの総合的な取組の中に位置付けることが重要であることから、心の健康づくり計画において、その位置付けを明確にすることが望ましい。また、ストレスチェック制度の実施に関する規程の策定を心の健康づくり計画の一部として行っても差し支えない。
(つづく)

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