テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス- サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。
以下、厚労省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン(以下ガイドライン)」を紹介していきます。
厚労省のガイドラインは次の取り組みを目指す民間教育訓練機関を対象としています。
① 職業訓練サービスの質の向上
② 職業訓練サービスの質保証の見える化(可視化)
③ 公共職業訓練(委託訓練)及び求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)(以下「公的職業訓練」という。)等の受託等
④ ISO29990の認証取得 等
このガイドラインの各項は「指針」と「指針の補足説明」、「公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例」で構成されており、各項で示す取り組みを参考として、受講されるキャリアコンサルタントを目指す人々に提供するサービス(職業訓練を含む)の質を向上させる指針として活用することを目指しています。
1.各項目の位置付け
(1)ガイドライン本文について
① 「指針」について
その項において「最低限何をしたらよいか」という基本的な取り組みについて簡潔に提示しています。
② 「指針の補足説明」について
「指針」において提示した取り組みについて、どのように取り組めばよいのかを具体的に提示しています。職業訓練サービスの質を向上させるために、このガイドラインに例示されている具体的な方法を参考にして、民間教育訓練機関ごとの実情に応じた取り組みを検討してください。
③ 「公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例」について
「求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)」、「公共職業訓練(委託訓練)」及び「教育訓練給付制度(指定講座)」の認定基準等でそれぞれの制度ごとに基準がありますが、これらに共通する基準に関して認定等を得るための取組例を紹介しています。具体的に認定基準等を確認する場合は以下のホームページを参照してください。なお、「公的職業訓練(委託訓練)」の委託基準については、都道府県で要件を定めているため、都道府県職業能力開発主管課に照会してください。
- 求職者支援訓練の認定基準等についてURL:http://www.jeed.or.jp/js/kyushoku/pdf/ninteikijun.pdf
- 教育訓練給付金の支給の対象となる教育訓練の指定基準についてURL:http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/kyouiku/04.html
(2)その他の記載内容について
① 「PDCAサイクルを活用した職業訓練の運営について」
このガイドラインは、適正な管理と運営の基本ルールとしてPDCAサイクルの採用を前提としています。同時に民間教育訓練機関が受講者に提供する職業訓練サービスの一連の流れにおいても、PDCAサイクルは大いに活用できます。PDCAサイクルを活用した職業訓練の全体像を把握することの他、組織の内外に対して「職業訓練サービスの質の保証」を説明する際等に活用してください。
② 「職業訓練サービスの質の向上のための取組例」について
民間教育訓練機関において実際に取り組まれてい る職業訓練サービスの質の向上のための実践例等を掲載しています。各民間教 育訓練機関が取り組む内容は、それぞれの業種及び業態に合わせた手法のため、全ての実践例が各民間教育訓練機関に適用可能なものではありません。ただし、参考例の中には、更なる職業訓練サービスの質を向上させるための取り組みを 具体化する手がかりも含まれていますので、参考資料もあわせて活用してくだ さい。
③ 「民間教育訓練機関における職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の質の向上のための自己診断表」について
民間教育訓練機関が自らの職業訓練サービスの内容について自己診断を行い、職業訓練サービスの改善のために、改善が必要な事項の「見える化」を行うことを目的とした自己診断表を掲載しています。このガイドラインで説明する取り組みを検討する際に活用してください。
2.定義
<適用範囲>
このガイドラインの適用範囲は職業訓練サービスを提供する民間教育訓練機関とします。
<関連文書>
国際標準化機構(2010)『ISO29990(非公式教育・訓練における学習サービス— サービス事業者向け基本的要求事項)』
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 (2011)『高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する教育訓練サービスに関するガイドライン - 教育訓練ガイドライン』
2.1 用語の定義
このガイドラインにおいては、以下の用語の定義を適用します。
2.1.1 職業訓練サービス
業務遂行や就職するために必要な専門知識並びに技能及び技術等の習得を可能にするために設計されたプロセス又は一連の活動。
2.1.2 民間教育訓練機関
あらゆる規模の民間の組織又は個人で、職業訓練サービスを提供する者。職業訓練サービスの提供に関与する全ての協力者を含む。
2.1.3 協力者
民間教育訓練機関に雇用されていないが、職業訓練サービスを提供するために民間教育訓練機関の傘下で働いている外部の団体又は外部の委託講師や派遣社員等が該当する。
2.1.4 事業計画
提供する職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)全般の事業目標を達成するための行動計画。
2.1.5 ニーズ
事業所や労働者又は求職者が、それぞれの立場や境遇において必要としている職業に関する要素、需要、要望。
2.1.6 カリキュラム
民間教育訓練機関によって作成された訓練計画で、職業訓練サービスに係る目的、内容、訓練成果、指導方法や専門知識並びに技能及び技術の習得方法、評価プロセス等を記載したもの。
2.1.7 講師
受講者に対し直接的又は間接的に指導をする者。民間教育訓練機関によっては「講師」以外に「指導員」、「インストラクター」、「教員」等が該当するが、このガイドラインにおいては「講師」とする。
2.1.8 スタッフ
職業訓練サービスを提供することを支援するための人材。管理者、キャリア・コンサルタント、カウンセラー、窓口担当者、設備担当者等も含まれる。
2.1.9 モニタリング
観察し、記録すること。
2.1.10 マネジメントシステム
品質に関する方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム。
2.1.11品質方針
品質に関する組織としての全体的な意図や方向性のことで、経営陣によって正式に示されたもの。
注記 通常、品質方針は、組織の全体的な方針との整合がとれており、品質目標を設定するための枠組みを与える。
(つづく)平林