キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
前回に引き続き、健康で安全な生活の確保についてお話しします。
国民の多くは、健康で安全な生活をすることを願っています。一方で、大規模な自然災害が発生しても、機能不全に陥らないで復旧復興に取り組まねばなりません。また、日常生活に潜む危険(感染症等)などから身を守る対策にも万全を記す必要があります。
■移植対策について
■臓器移植の実施状況
「臓器の移植に関する法律」(平成9年法律第104号。以下「臓器移植法」という。)が施行された1997(平成9)年10月16日から2025(令和7)年3月31日までの間に、同法に基づき1,181名の方から脳死下での臓器提供が行われており、2024(令和6)年度において、臓器提供者数は過去最多となっています。
一方で、欧米や他のアジア諸国と比べ、国内における人口当たりの臓器提供者数は低い水準となっています。今後の更なる臓器提供者数の増加に対応していくため、2024年12月の厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において、臓器を提供する施設、臓器のあっせんを行う機関及び移植を実施する施設が十分に機能するように、それぞれの課題に対する対応方針が取りまとめられました。
対応方針を踏まえて、厚生労働省では、臓器を提供する施設の体制整備や連携強化を更に推進するとともに、現在は公益社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下「JOT」という。)のみが担っている眼球を除く臓器のあっせんについて、複数の機関が行えるようにすることや、移植を希望する方が医療機関側の都合によらず移植を受ける機会が確保されるように、移植を実施する施設を複数登録できる仕組みを整備することなど、臓器移植体制の見直しを進めています。
■臓器移植の適切な実施に向けた普及啓発
臓器移植法において、国及び地方公共団体は、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずることとされています。2021(令和3)年に実施された「移植医療に関する世論調査」(内閣府大臣官房政府広報室)では、臓器提供に関する意思を「表示している」と回答した者の割合の合計が10.2%となっており、また、家族や親しい方と臓器提供について話をしたことがあると回答した者の割合の合計は43.2%でした。本人の意思表示とともに、臓器移植について家族と対話する等、臓器移植について知る・考える文化を醸成することが重要です。
このため、厚生労働省においては、関係府省庁やJOTと連携し、運転免許証やマイナンバーカードの交付等の際に、リーフレットを配布する等の方法により、意思表示欄への記載方法などを周知しています。また、毎年10月を「臓器移植普及推進月間」とし、各地方公共団体等と共に全国の著名なランドマーク等を移植医療のシンボルカラーであるグリーンにライトアップする「グリーンリボンキャンペーン」のほか、様々な媒体を使った臓器移植医療の周知等を行っており、より多くの人に臓器移植について知っていただくとともに、家族等と話し合うことや臓器提供に関する意思表示をすることの重要性を理解していただけるような取組みを実施しています。
医薬品・医療機器の安全対策の推進等
■医薬品等の安全対策
医薬品等は、基本的にヒトの身体に何らかの影響を及ぼして疾患の治療などを行うものであるため、それが期待どおりに治療効果として現れる一方で、予期しない副作用が起きることもあります。医薬品等の使用においては、これらのベネフィットとリスクのバランスが重要であることから、治験等のデータに基づき有効性と安全性の両面についての検討を行い、厚生労働大臣の承認を得てから販売されます。しかし、治験等を通じて医薬品等の承認までに得られる安全性に関する情報には限界があるため、市販後に副作用情報などを収集し、その情報を適切に分析・評価した上で、必要な安全対策上の措置を迅速に講じていくことが必要です。
◆副作用情報等の報告制度
市販後の副作用情報等は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)に基づいて医薬品等の製造販売業者又は医薬関係者から厚生労働大臣に報告することとされており、副作用等の国内症例報告件数は、製造販売業者及び医薬関係者ごとに、2023 (令和5)年度においては、医薬品は年間65,156件及び9,701件、医療機器は28,535件及び326件、再生医療等製品は633件及び0件でした。
また、2019(平成31)年3月26日より、患者又はその家族からの、医薬品による副作用が疑われる症例についての報告受付を正式に開始しました。
◆副作用情報等の評価及び提供
厚生労働省は、PMDAと連携し、企業や医薬関係者から報告された副作用情報等について、迅速・的確に評価するとともに、その結果に基づいて、必要に応じて電子化された添付文書の「使用上の注意」の改訂の指示を行うなどの安全対策上の措置を講じています。
また、緊急かつ重要な情報については、企業に対して緊急安全性情報(イエローレター)や安全性速報(ブルーレター)による情報提供を指示するなどにより、医療機関などへ迅速に情報提供を行っています。
さらにこれらの医薬品等の安全対策情報が迅速に入手できるよう、タイムリーに情報を配信するメールサービスとして、「医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)」の提供を行っています。
■医薬品の販売制度
医薬品は、主に医師などの処方箋に基づき調剤される医薬品である医療用医薬品と、薬剤師等から提供された情報に基づき、需要者の選択により処方箋なしで薬局・店舗販売業で購入することができる医薬品である要指導医薬品及び一般用医薬品に分類されます。
要指導医薬品は、使用に特に注意が必要なことから、薬剤師が対面で、使用する本人に対して必要な情報提供及び薬学的知見に基づく指導を行う必要があります。一方、一般用医薬品については、そのリスクの大きさに応じて第1類医薬品、第2類医薬品及び第3類医薬品の3つに分けられており、そのリスク区分に応じた情報提供等の販売ルールが整備された上で、インターネット等による販売(特定販売)も可能になっています。厚生労働省のホームページには、一般用医薬品のインターネット販売を行うサイトのリストを掲載し、国民が安心して一般用医薬品を購入できるようにするための措置を行っているほか、一般消費者を調査員とし、全国の薬局・店舗販売業等を対象として、医薬品の販売ルールを遵守しているかを確認するための調査を行っています。
情報通信技術の進歩やセルフケア・セルフメディケーションの推進、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインでの社会活動の増加など、一般国民における医薬品を巡る状況は大きく変化しており、加えて、一般用医薬品の濫用など安全性確保に関する課題も生じてきている状況にあります。これらにかんがみ、医薬品のリスクを踏まえ、医薬品の安全かつ適正な使用を確保するとともに、国民の医薬品へのアクセスを向上させる観点から、医薬品販売制度の必要な見直し等について検討を行うため、「医薬品の販売制度に関する検討会」を開催し、議論を行い、2024(令和6)年1月にとりまとめを公表しました。2024年4月以降、厚生科審議会医薬品医療機器制度部会において上記の検討会のとりまとめも踏まえて議論が行われ、2025(令和7)年1月にとりまとめられています。これを踏まえ、必要な制度見直し等に向けた検討を進めていくこととしています。
■医療用医薬品の品質確保対策
◆偽造品対策
2017(平成29)年1月、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が卸売販売業者、薬局を通じて、患者に渡る事案が発生しました。偽造品を使用した場合、期待する治療効果が得られず、健康被害が生じる可能性もあり、偽造品の流通は保健衛生上の大きな問題であります。
本事案を受け、2017年10月に、薬局開設者等に課される医薬品の譲受・譲渡時の記録事項として、相手方の身元確認の方法、ロット番号、使用期限等を追加すること等について省令改正を行っています。
一方、海外から個人輸入される医薬品の一部に偽造品が含まれることが知られていることから、2013(平成25)年に「あやしいヤクブツ連絡ネット」を開設し、個人輸入された医薬品等に関連する健康被害等の情報収集、ホームページ(https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/)やX(旧Twitter)などを通じた国民への情報提供、電話での相談対応を実施しています。
さらに、2014(平成26)年からインターネットパトロール事業を開始し、医薬品の不正なインターネット販売を能動的に監視し、違反サイトについてはレジストラ等にドメインの停止を要請するなどの対応を行っています。
また、模造医薬品の流通等の不正事案に迅速に対処するため、2020(令和2)年9月に麻薬取締官及び麻薬取締員に模造医薬品に関する取締り権限が付与されました。
◆後発医薬品等への信頼回復
2020(令和2)年以降、後発医薬品の製造業者等について、製造管理及び品質管理上の法令違反などによって行政処分が相次ぎ、後発医薬品等の品質や安全性に対する国民の信頼を失墜させる事案が続いて発生しました。これを踏まえ、類似事案の再発を防止し、医薬品の適切な品質と安全性を確保するため、①医薬品製造販売業者等に対する法令遵守体制整備の義務付け、②製造業者に対する無通告立入検査の強化、③行政処分基準の厳格化などの措置を講じました。
さらに、薬事監視のより一層の強化を図るため、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」における議論を踏まえ、PMDAと都道府県との合同による無通告立入検査の拡充、国と都道府県間の査察結果の共有を含む情報連携の強化等の取組みを実施しています。また、定期のGMP適合性調査について、製造所の不適合リスクの評価に基づき、リスクの高い製造所に対して重点的な調査を行うことを可能とする等のGMP適合性調査の見直しについて厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において議論が行われ、2025(令和7)年1月に具体的な対応の方向性がとりまとめられています。これを踏まえ、必要な制度見直し等に向けた検討を進めていくこととしています。
■薬剤師の資質向上と薬局機能の強化等
◆薬剤師の資質向上
医療の高度化、医薬分業の進展などに伴う医薬品の適正使用の推進といった社会的要請に応えるため、大学における薬学教育及び卒後の生涯学習を充実させることにより、薬剤師の資質向上に努める必要があります。これを踏まえ、大学における薬学教育については、臨床に係る実践的な能力を培うことができるよう、2006(平成18)年度から、修業年限を4年から6年に延長し、6年制課程を修めて卒業した者に薬剤師国家試験の受験資格を与えることとしました。
また、2023(令和5)年2 月に薬学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂され、2024(令和6)年度入学生から適用された。本改訂によるモデル・コア・カリキュラムでは、新たな「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」を提示し、課題の発見と解決を科学的に探究する人材の育成を目指す内容とされました。さらに、各大学の創意・工夫に基づいたカリキュラム作成の自由度が高められたほか、多職種連携の推進の観点から医学・歯学・薬学の教育内容が一部共通化されました。
卒後の臨床研修については、薬剤師の臨床現場における実践能力の向上のため、医療機関や薬局で実施される薬剤師に対する研修の標準化に活用されることを目的に、薬剤師の臨床研修において実践すべき研修内容や方法を示した「薬剤師臨床研修ガイドライン(医薬局総務課、医政局総務課連名事務連絡)」を2024年3月28日に発出しました。
◆薬局機能の強化と患者本位の医薬分業の推進
薬局は、医療提供施設として、地域医療計画の下、在宅医療や医薬品等の供給などを通じて地域医療に貢献することが期待されています。
また、処方箋を交付する医師とその処方箋に基づき調剤する薬剤師が、それぞれの専門分野で業務を分担する医薬分業については、医薬品の適正使用の観点から、その推進に努めています。2023(令和5)年度の院外処方箋発行枚数は8.5億枚に達し、処方箋受取率は80.3%(公益社団法人日本薬剤師会「処方箋受取率の推計」(2023(令和5)年度))と推計されています。
近年、少子高齢化の進展に伴い、医療需要が増大する一方、医療の担い手確保が困難になる中、在宅患者への夜間・休日等の緊急時の対応や、離島・へき地等での薬剤提供が課題として指摘されています。また、薬局・薬剤師は、高度化、普及してきたICT技術等を活用しつつ、関係職種と連携しながら、専門性を発揮することも求められています。加えて、地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局、健康サポート薬局についても、上記の課題を踏まえつつ、その機能や果たすべき役割などを整理することが必要です。このような薬局・薬剤師に関する諸課題について検討を行うため、2023(令和5)年12月から「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」を開催しており、2024(令和6)年9月には、地域における薬局・薬剤師のあり方に関するこれまでの議論を「これまでの議論のまとめ」としてとりまとめました。厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において、上記の検討会のとりまとめも踏まえて議論が行われ、2025(令和7)年1月にとりまとめられています。これを踏まえ、制度見直し等に向け、必要な対応を行っています。
このほか、国民が利点を実感できるような質の高い医薬分業を地域の実情に応じた医療計画等に基づく推進、厚生労働省ホームページ上の「おくすりe情報」や「薬と健康の週間」(毎年10月17日から10月23日に開催)での広報活動等を通じた医薬品の適正使用等の啓発や、2024年4月から運用を開始した全国統一システムである医療情報ネット(ナビイ)による薬局の情報提供を行っています。
また、薬局における医療安全のため、2009(平成21)年度から調剤時の医薬品の取り違いの発見や疑義照会による健康被害の防止等のヒヤリ・ハット事例等の情報を収集・分析し、情報提供する事業(薬局医療安全対策推進事業)を実施し、医薬分業の質の向上に努めています。
(つづく)Y.H
(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書