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前回に引き続き、健康で安全な生活の確保についてお話しします。
国民の多くは、健康で安全な生活をすることを願っています。一方で、大規模な自然災害が発生しても、機能不全に陥らないで復旧復興に取り組まねばなりません。また、日常生活に潜む危険(感染症等)などから身を守る対策にも万全を記す必要があります。
■循環器病対策について
我が国において、脳血管疾患は死因の第4位、心疾患は第2位であり、2023(令和5)年には循環器病全体で約38万人が亡くなっています。また、これらの疾患は介護が必要となる主な原因となっています。こうした状況を踏まえ、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(平成30年法律第105号)が議員立法により成立し、同法に基づく「循環器病対策推進基本計画」が2020(令和2)年に閣議決定されました。2023年3月に閣議決定された第2期の計画においても、「循環器病の予防や正しい知識の普及啓発」、「保健、医療、福祉サービスの提供体制の充実」、「循環器病の研究推進」の3本を柱に、健康寿命の延伸や年齢調整死亡率の減少を目標として、循環器病対策を総合的かつ計画的に推進していきます。
■腎疾患対策について
腎疾患患者は増加傾向で、2023(令和5)年の年間新規透析導入患者数は約4万人に上り、約34万人が透析療法を受けています。こうした状況を踏まえ、2028(令和10)年度までに年間新規透析導入患者数を3.5万人以下に減少させることなどを目標に掲げた「腎疾患対策検討会報告書」に基づき、慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)患者を早期に適切な診療につなげる診療連携体制を構築するための都道府県モデル事業などを実施しました。2022(令和4)年に立ち上げた「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」において中間評価を実施し、2023年10月に公表しました。中間評価の結果等も踏まえ、引き続き、腎疾患対策を推進していきます。
■リウマチ・アレルギー疾患対策について
アレルギー疾患対策については、議員立法により成立した「アレルギー疾患対策基本法」(平成26年法律第98号)に基づき、「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」(2017(平成29)年3月策定、2022(令和4)年3月一部改正。以下「アレルギー基本指針」という。)を策定しました。アレルギー基本指針は、アレルギー疾患を有する者が安心して生活できる社会の構築を目指し、アレルギー疾患対策の総合的な推進を図ることを目的として、国、地方公共団体が取り組むべき方向性を示すものです。また、2017年に「アレルギー疾患医療提供体制の在り方に関する検討会」で取りまとめられた報告書に基づき、2022年3月までに47都道府県でアレルギー疾患医療拠点病院が選定されました。
2018(平成30)年には、アレルギー疾患に関する情報提供の充実のため、一般社団法人日本アレルギー学会とともにホームページ「アレルギーポータル」を開設し、随時コンテンツを更新しています。また、「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」(2019(平成31)年策定)に基づき、研究事業を推進しています。
花粉症対策については、「花粉症に関する関係閣僚会議」において取りまとめられた「花粉症対策の全体像」(2023(令和5)年5月)及び「花粉症対策初期集中対応パッケージ」)(同年10月)に基づき、厚生労働省では、発症・曝露対策に係る取組みを進めています。
リウマチ疾患対策については、「厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会報告書」(2018年11月)に基づき、リウマチ患者の疾患活動性を適切な治療によりコントロールし、長期的な生活の質を最大限まで改善し、職場や学校での生活や妊娠・出産などのライフイベントに対応したきめ細やかな支援を推進しています。
■肝炎対策について
B型・C型肝炎は、国内最大級の感染症であり、その対策は国民的課題です。肝炎は自覚症状が現れにくいため、肝炎ウイルスに感染していることに気がつかないまま、肝硬変・肝がんなどの重い病気に進行してしまうことも多いです。早期に適切な治療を実施すれば、肝炎の治癒あるいは肝がんなどへの進行を遅らせることが可能であるため、肝炎ウイルス検査の受検者を増やすこと、また、検査の結果、陽性とわかった方が早期に肝臓専門医へ受診することが重要です。
そのため、厚生労働省では、2002(平成14)年度から、肝炎ウイルス検査を開始するなど各種の取組みを実施しており、とりわけ、2008(平成20)年度からは、都道府県などが委託した医療機関における検査の無料化や、肝炎治療に対する医療費助成を行うなど、肝炎総合対策を行っています。また、2014(平成26)年度から、肝炎ウイルス陽性者に対する受診勧奨を実施するとともに、初回精密検査費用及び定期検査費用の助成を行っています。
さらに、2018(平成30)年度から、肝炎ウイルスによる肝がん・重度肝硬変の特徴を踏まえ、患者の医療費の負担の軽減を図りつつ、肝がん・重度肝硬変治療に係るガイドラインの作成など、肝がん・重度肝硬変の治療研究を促進するための取組みを行っています。
2012(平成24)年度からは7月28日を日本肝炎デーと定め、この日を中心に国や地方自治体などで様々な普及啓発活動を行っており、国の「知って、肝炎プロジェクト」では、2024(令和6)年7月23日に普及啓発イベント「知って、肝炎プロジェクト健康デー2024」を開催しました。また、同プロジェクトにおいて、都道府県知事等への表敬訪問等による普及啓発活動も、著名人の方々の協力を得て行っています。今後とも、「肝炎対策基本法」(平成21年法律第97号)及び「肝炎対策の推進に関する基本的な指針」(2011(平成23)年5月策定、2022(令和4)年3月一部改正)を踏まえ、肝炎総合対策を推進していきます。
■過去の集団予防接種などによりB型肝炎ウイルスに感染した方への対応について
過去の集団予防接種やツベルクリン反応検査での注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染したとして国を提訴した5名の原告について、2006(平成18)年6月の最高裁判決により国の損害賠償責任が認められました。その後、これらの原告と同様の状況にあるとして、全国の地方裁判所において集団訴訟が提起され、裁判所の仲介の下、国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で協議が進められた結果、2011(平成23)年6月に国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で「基本合意書」が締結されました。これらの経緯を踏まえ、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(平成23年法律第126号)が2012(平成24)年1月に施行されました。また、基本合意書に基づき、2012年5月から「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」を開催し、2013(平成25)年6月に報告書をまとめました。本報告書においては、予防原則の徹底不十分など、国の体制と体質が大きな問題であったこと、国の予防接種行政の体制と制度の枠組みや具体的運用などに課題があったことがB型肝炎ウイルスの感染拡大を引き起こしたと考えられるとした上で、
・国は、集団予防接種などでの注射針・注射筒の連続使用によるB型肝炎感染拡大の被害者の肉体的・精神的・経済的負担及び社会的差別・偏見の実態を受け止め、早期の被害回復の実現に努力すべきであり、また、原因の如何にかかわらずB型肝炎ウイルスの拡大防止とB型肝炎対策に引き続き取り組んでいく必要があること
・国の予防接種を担当する部署の体制充実、国立感染症研究所・地方衛生研究所などの関係機関の体制充実と国の連携強化、予防接種のリスク管理・対応の役割を担う組織として厚生科学審議会の予防接種制度評価、検討組織の充実などに取り組むこと
・予防接種が、現在は自治事務になっていることを踏まえつつ、各行政機関の責任と役割分担の下、国は現場への技術的助言の徹底のため、きめ細かな取組みに努めていくこと
・医療従事者の予防接種に関する知識・技術レベルの向上を図るための取組みを強化すること
などの再発防止策が提言されました。
2015(平成27)年3月に、国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で、「基本合意書(その2)」が締結され、2016(平成28)年8 月に、給付金の請求期限5年間延長、死亡又は発症後20年を経過した死亡・肝がん・肝硬変の患者などに対する給付金額などを規定する「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平成28年法律第46号)が施行されました。2021(令和3)年6月に、給付金の請求期限を2027(令和9)年3月31日まで延長する「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律」(令和3年法律第78号)が施行され、引き続き特定B型肝炎ウイルス感染者の救済が進められています(2025(令和7)年3月末現在和解者数約11.5万人)。
さらに、青少年が肝炎に関する正しい知識を得ることにより肝炎ウイルスの感染を予防するとともに、集団予防接種によるB型肝炎ウイルスの感染拡大の経緯・歴史などを学び、肝炎ウイルス感染者・患者の方々に対する偏見・差別をなくすことを目的として、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団の協力を得て、副読本「B型肝炎いのちの教育」を作成し、2020(令和2)年度より全国の中学3年生の教員向けに配布を行っています。
難病・小児慢性特定疾病対策、移植対策の推進
■難病対策について
難病対策については、1972(昭和47)年10月に策定された「難病対策要綱」に基づき本格的に推進されるようになって50年以上が経過しました。その間、各種の事業を推進してきた結果、難病の実態把握や治療方法の開発、難病医療の水準の向上、患者の療養環境の改善及び難病に関する社会的認識の促進に一定の成果をあげてきました。
しかしながら、医療の進歩や患者及びその家族のニーズの多様化、社会・経済状況の変化に伴い、同じような疾病であっても、医療費助成の対象となる疾病とならない疾病があり、疾病間で不公平感があるなど、様々な課題が指摘されるようになりました。特に、都道府県における財政的超過負担の問題は制度自体の安定性を揺るがすものとされ、難病対策全般にわたる改革が強く求められるようになっています。
このため、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会において、2013(平成25)年12月に「難病対策の改革に向けた取組について(報告書)」が取りまとめられ、2015(平成27)年1月に 「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号。以下「難病法」という。)が施行されました。難病法では、医療費助成の対象となる疾病を指定難病として指定することとしており、2025(令和7)年4月までに、同法の施行前に特定疾患治療研究事業で対象としていた56疾病から348疾病まで指定難病の拡充を順次進めてきました。
難病に関する研究については、診療ガイドラインの確立や改訂、難病患者のQOL向上に資する知見の収集及びこれらの普及啓発といった、主に政策的な研究を行う「難治性疾患政策研究事業」と、病態解明、医薬品・医療機器等の実用化を視野に入れた画期的な診断法や治療法及び予防法の開発を目指す「難治性疾患実用化研究事業」に分類して実施しています。
難病患者の生活支援や保健医療福祉の充実については、難病法に基づいて、難病患者の療養生活の質の維持向上を支援することを目的とした療養生活環境整備事業として難病相談支援センターや在宅人工呼吸器使用患者支援事業等を実施しており、難病患者等の生活支援や保健医療福祉の充実を図っています。
また、難病患者やその家族及び医療関係者が求めている最新の医学・医療情報については、難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp)で提供している。
さらに、難病の医療提供体制の整備については、2016(平成28)年10月に、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会において「難病の医療提供体制の在り方について(報告書)」が取りまとめられました。この報告書を踏まえ、「都道府県における地域の実情に応じた難病の医療提供体制構築について」(平成29年4月14日付厚生労働省健康局難病対策課長通知)を発出し、2018(平成30)年度より各都道府県において、難病の医療提供体制の構築に向けた体制整備が進められています。
また、難病法附則に基づく施行5年後の見直しについて、2021(令和3)年7月に取りまとめられた「難病・小慢対策の見直しに関する意見書」等を踏まえ、2022(令和4)年12月に難病法の一部改正を含む「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第104号)が公布され、難病法の改正は2024(令和6)年4月に全面施行されました。
■小児慢性特定疾病対策について
慢性疾患を抱え、その治療が長期間にわたり身体面、精神面及び経済面で困難な状況に置かれている子どもやその家族を支援するため、2015(平成27)年1月の「児童福祉法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)の施行により、持続可能で公平かつ安定的な医療費助成制度を確立するとともに、2025(令和7)年4月までに、改正法の施行前に対象としていた医療費助成の対象疾病である514疾病(11疾患群)から801疾病(16疾患群)まで対象疾病の拡充を順次進めてきました。
慢性疾患を抱える子どもについては、幼少期から慢性的な疾病にかかっていることにより、学校生活での教育や社会性の涵養に遅れが見られ、自立を阻害されている場合があることから、医療面での支援のみならず、社会参加に向けた自立支援等、地域による総合的な支援の強化を図る「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」を改正法により2015年1月から児童福祉法に位置づけたところであり、同法に基づき都道府県等において実施されています。また、国立研究開発法人国立成育医療研究センターが運営している小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp)において、子どもやその家族、医療関係者等に必要な情報を提供しています。
さらに、小児期から成人期への移行期にある小児慢性特定疾病児童等への適切な医療の提供に関する課題を解消するため、移行期医療支援体制整備事業を実施するなど、総合的な対策を推進しています。
また、改正法附則に基づく施行5年後の見直しについて、2021(令和3)年7月に取りまとめられた「難病・小慢対策の見直しに関する意見書」等を踏まえ、2022(令和4)年12月に児童福祉法の一部改正を含む「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第104号)が公布され、児童福祉法の改正は2024(令和6)年4月に全面施行されました。
(つづく)Y.H
(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書