最近の労働法規の大きな動きの一つが働き方改革関連法です。キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う上で関係があります。働きかた改革を推進する多様で柔軟な働きかたをかなえる制度・施策の一つであるテレワークについて、前回の続きからの説明を続けます。
コロナの蔓延で在宅勤務が一挙に広まりました。キャリアコンサルタントにはぜひ知っておいてもらいたい法律です。
留意点3 フレックスタイム制
・清算期間やその期間における総労働時間等を労使協定において定め、清算期間を平均し、1週当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、労働者が始業及び終業の時刻を決定し、生活と仕事との調和を図りながら効率的に働くことのできる制度ですが、テレワークにおいても本制度を活用することが可能
2-2-2 事業場外みなし労働時間制
テレワークにより、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、労働基準法で規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます。
・事業場外みなし労働時間制適用の要件1
情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
・事業場外みなし労働時間制適用の要件2
随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
2-2-3 裁量労働制の対象となる労働者のテレワークについて
裁量労働制の要件を満たし、制度の対象となる労働者についても、テレワークを行うことが可能です。
この場合、労使協定で定めた時間又は労使委員会で決議した時間を労働時間とみなすこととなりますが、労働者の健康確保の観点から、決議や協定において定めるところにより、勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有します。
2-3 休憩時間の取扱いについて
労働基準法では、原則として休憩 時間を労働者に一斉に付与することを規定していますが、テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能です。
2-4 時間外・休日労働の労働時間管理について
・実労働時間やみなされた労働時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働を行わせる場合⇒時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の締結、届出及び割増賃金の支払が必要
・現実に深夜に労働した場合⇒深夜労働に係る割増賃金の支払が必要
3 長時間労働対策について
業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されている。また使用者には、単に労働時間を管理するだけでなく、長時間労働による健康障害防止を図ることが求められています。
テレワークにおける長時間労働等を防ぐ具体的な手法としては
・メール送付の抑制
・システムへのアクセス制限
・テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等
・長時間労働等を行う労働者への注意喚起
4 労働安全衛生法の適用及び留意点
4-1 安全衛生関係法令の適用
労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があります。
具体的には、
◆必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法)
◆長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則)
◆ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法)等の実施により、テレワークを行う労働者の健康確保を図ることが重要です。
4-2 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意
テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい。
5 労働災害の補償に関する留意点
テレワークを行う労働者については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負うことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められません。
6 その他テレワークの制度を適切に導入及び実施するに当たっての注意点
■労使双方の共通の認識
◆ 導入の目的
◆ 対象となる業務
◆ 労働者の範囲
◆ テレワークの方法など
■業務の円滑な遂行
テレワークを行う労働者が業務を円滑かつ効率的に遂行するためには、業務内容や業務遂行方法等を明確にして行わせることが望ましい。また、あらかじめ通常又は緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことが望ましい。
■業績評価等の取扱い
評価者や労働者が懸念を抱くことのないように、評価制度及び賃金制度を明確にすることが望ましい。
■通信費、情報通信機器等のテレワークに要する 費用負担の取扱い
・テレワークに要する通信費
・情報通信機器等の費用負担
・サテライトオフィスの利用に要する費用
・専らテレワークを行い事業場への出勤を要しないとされている労働者が事業場へ出勤する際の交通費など
■社内教育等の取扱い
OJTによる教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのないよう、社内教育等の充実を図ることが望ましい。
■テレワークを行う労働者の自律
テレワークを行う労働者においても、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、作業能率を勘案して自律的に業務を遂行することが求められます。
(つづく)A.K