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実践編・応用編

中学校学習指導要領の改訂 キャリア関係4

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キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
文部科学省は、平成29年3月に中学校学習指導要領の改訂を行いました。前回に続き、その内容について解説します。今回が、最終回です。
特別活動の基本的な生活と教育活動全体における意義
特別活動とは、様々な集団活動を通して、自己や学校生活を捉え、課題を見いだし、その改善・解消に向け、よりよい集団や学校生活を目指して行われる様々な活動の総体です。その活動の範囲は学年・学校段階が上がるにつれて広がりをもっていき、社会に出た後の様々な集団や人間関係の中でその資質・能力は生かされていくことになります。このことから、特別活動の基本的な性格を次のとおり捉えることができます。

■人間形成と特別活動
社会の変化は加速度を増し、複雑で予測困難となってきています。しかもそうした変化が、どのような職業や人生を選択するかに関わらず、全ての生徒の生き方に影響するものとなっています。すなわち、これからの複雑で変化の激しい社会において、将来、社会的・職業的に自立して生きるための「生きる力」を育成することが、一層求められています。

特に、グローバル化や情報化の進む社会において、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に選択・判断しながら,自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、多様な他者と共に生き、課題を解決していくための力がますます重要となります。

加えて、平和で民主的な国家及び社会の在り方に責任を有する主権者として、また、自己の個性や能力を生かして活躍する自立した人間として、基本的な生活習慣の確立、適切な判断や意思決定に基づき、主体的に社会参画することが、強く求められているところです。

このような複雑で変化の激しい社会をたくましく生きていかなければならない生徒には、多様な他者と協働して創造的に課題を解決する力や、希望や目標をもって生きる態度を身に付けることが重要です。

これまで、特別活動は、学校における集団活動や体験的な活動を通して、各教科や道徳等で身に付けた力を、実際の生活において生きて働く汎用的な力とするため人間形成の場として、教育課程上の重要な役割を担ってきました。また、生徒が学校生活を送る上での基盤となる力や実際の生活において生きて働く力とするための人間形成の場として機能してきました。

学校は人と人とが関わり合う一つの社会です。生徒は、多様な他者と関わり合って生き、特別活動を通して学校における生活の向上に努め、多様な他者と関わり合ってよりよく生きようとすることを学びます。

このような資質・能力は、学校の教育活動全体を通して育成されるものでありますが、特に、特別活動は、学校における様々な集団活動や体験的な活動を通して、生徒の人間形成を図ることを特質としており、極めて大きな役割を担うものです。

学校生活や学習の基盤としての集団づくり
特別活動は、学級や学校の様々な集団づくりに重要な役割を果たしています。特別活動で
は、学校の内外で、多様な他者と関わり合う集団活動の機会が豊富にあります。各活動・学校行事を通して、生徒は、多様な集団活動を経験し、集団における行動や生活の在り方を学び、よりよい集団づくりに参画します。

特に学級の集団づくりは、生徒一人一人のよさや可能性を生かすと同時に、他者の失敗や短所に寛容で共感的な学級の雰囲気を醸成します。学級活動における自発的、自治的な活動や、学級として学校行事に取り組むことを通して、学級に所属する生徒一人一人が、学級への帰属意識や生活上の規範意識を高め、自分の居場所として安心して学習に励むことのできる学級づくりにつながっていきます。また、学級活動を通して、個々の生徒の生活や学習上の課題を解消することや、学ぶ意義についての理解を深め、自己の進路の実現を図ろうとする、自己実現に向けた生徒の活動を通して、生徒が各教科等の学習に主体的に取り組むことができるようになっていきます。

このような指導は、個々の生徒の学校生活の基盤づくりや教科における学習環境づくりに欠くことのできない重要な役割を担います。なお、こうした指導について生徒指導の視点からは、学業指導と呼びます。一方、集団づくりにおいて、「連帯感」や「所属感」を大切にするあまり、ともすれば、教師の期待する生徒像や集団の姿からの逸脱を許容しないことで、過度の同調圧力につながりかねないという問題もありました。

また、グローバル化や情報化の進展する社会において、現在の社会がどのような社会であるかということを基準にするのではなく、将来とは予測することが困難なものであるという前提で生徒が学習することが必要なものが何かを提起する必要があります。例えば、近年、地域を問わず、外国籍の生徒やいわゆる外国につながる生徒が学校に増えてきているように、様々な社会的・文化的背景をもつ他者と共に生活するということが急速に身近になりつつあります。また、実際に他者と対面する現実空間だけでなく、インターネットなどを通した仮想空間での他者との関わりも増え、地域や国という境界を超えて人と人とのつながりが広がっています。このような社会の変化において、生徒は、多様な他者と関わり今までに経験したことも見たこともない文化に向き合って生きることになります。人と人との関わりも変容していく社会において、生徒には自立した人間として他者とよりよく協働することができる資質・能力を育むことが求められています。

こうしたことを踏まえ、特別活動における様々な集団活動においては、その過程が、一人一人のよさや可能性が認められるものでなければならないことを、特別活動の目標において明確に示しました。このように学校生活や学習の基盤としての集団づくりは、生徒の現在及び将来に強く関わるものであり、これまでも特別活動として特に大事にしてきたものを今回の改訂において明確にしたものです。

◆発達的な特質を踏まえた指導
中学校は,義務教育として、生徒の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培うとともに、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うという役割を担っています。同時に、学校教育においては、児童生徒の心身の発達に応じて、体系的な教育を組織的に行わなければならず、中学校教育においては、小学校との円滑な接続や中学校卒業後の進路との接続も視野に入れつつ、中学生の発達の段階を踏まえた教育活動
の充実を図ることが求められます。中学校段階の生徒の成長の過程における主な特徴としては、思春期に入り、親や周りの友達と異なる自分独自の内面の世界があることに気付いていくことが挙げられます。また、内面の世界が周りの友達にもあることに気付き、友人との関係が自分に意味を与えてくれると感じます。さらに、未熟ながらも大人に近い心身の力をもつようになり、大人の社会と関わる中で、大人もそれぞれ自分の世界をもちつつ、社会で責任を果たしていることに気付くようになる時期です。

このように中学生の時期には、自我の目覚めや心身の発達により自主独立の要求が高まることから、生徒の自発的、自治的な活動を可能な範囲で尊重し、生徒が自らの力で組織を作り、活動計画を立て、協力し合って学びに向かう集団づくりができるように導くことが大切になります。しかし、生徒の自主性が高まるとはいえ、生活体験や社会体験もまだ十分でなく、自分の考えにも十分な自信がもてない時期でもあるため、当然教師の適切な指導や個別的な援助などが必要です。そのためには、個々の生徒をよく理解するとともに、集団の場面における指導や個別的な援助の在り方の工夫に努め、生徒の自主的、実践的な活動を促していくことが大切です。また、学校生活においても、新しい友達との出会いや、教科担任制による多様な教師との出会い、社会的関心の広がり、そして進路の選択など新しい環境や課題に直面していく時期です。そうした中、生徒は、現在及び将来における自己の生き方について模索しめますが、個々の価値観が多様化し、人間としての生き方にも様々な変化や問題点が生じている現代の社会にあっては、全ての生徒が望ましい生き方を自覚し、これを深められるとは限りません。中には、自己の生き方に不安を抱き、自己を見失う生徒もおり、また、挫折や失敗によって、自信のない生き方をしている生徒も少なくはないです。現実から逃避し、今の自分さえよければよいといったように自分自身の成長の可能性を自ら閉ざすことなく、他者、社会、自然などの環境との関わりの中で生きるという自覚を伴って成長していくことができるようにすることが大切です。そのためには、学校における多様な集団活動の充実を図るとともに、社会的な体験を重視し、人間としての望ましい在り方や生き方の自覚を深め、主体的に物事を選択し、現在及び将来を豊かに生きるための資質・能力を養う特別活動の充実が重要です。

なお、本解説においては、特別活動の場面における教師から生徒への適切な働きかけを全て「指導」と表現していますが、その中には、単に教師が望ましいと考える方向へと導こうとする(狭い意味での「指導」)だけでなく、生徒自らが成長しようとしたり、生徒同士で互いに成長し合おうとしたりすることを尊重し、それを促す(「援助」)ことの、両方の側面から関わっていく必要があります。

■特別活動の教育活動全体における意義
特別活動は、「集団活動」と「実践的な活動」を特質とすることが強調されてきました。学級や学校における集団は、それぞれの活動目標をもち、目標を達成するための方法や手段を全員で考え、共通の目標を目指して協力して実践していくものです。特に、実践的な活動とは、生徒が学級や学校生活の充実・向上を目指して、自分たちの力で諸問題の解決に向けて具体的な活動を実践することを意味しています。したがって、生徒の実践を前提とし、実践を助長する指導が求められるのであり、生徒の発意・発想を重視し、啓発しながら、「なすことによって学ぶ」を方法原理とすることが大切です。
この特質を継承しながら、次の教育的意義が、今回の改訂では更に強調されています。

◆特別活動の特質を踏まえた資質・能力の育成
特別活動は、学校生活を送る上での基盤となる力や、社会で他者と関わって生きて働く力を育む活動として機能し、人間形成の中でも特に、情意面や態度面の資質・能力の育成について強調してきました。今回の改訂では、各教科等を通して育成することを目指す資質・能力として「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」をバランスよく育むことを重視しています。

そのために重要なことは、目標に「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み」とあるように、自主的、実践的な活動を重視するということです。様々な集団活動の中で、「思考力判断力、表現力等」を活用しながら他者と協力して実践することを通して、「知識及び技能」は実感を伴って体得され、活動を通して得られたことを生涯にわたって積極的に生かそうとす「学びに向かう力、人間性等」が育成されていきます。特別活動の内容は、各教科等に広く関るものでありますが、こうした特徴をもつ特別活動だからこそ目指す資質・能力を育むことが大切になります。

このため、今回の改訂では、特別活動全体を通して育成を目指す資質・能力を第1の目標において示すとともに、各活動・学校行事の特質を踏まえて育成を目指す資質・能力についての基本的な考え方を、各活動・学校行事の目標の中で明示したところです。

◆学級経営の充実と特別活動
学級は、生徒にとって、学習や生活など学校生活の基盤となる場です。生徒は、学校生活の多くの時間を学級で過ごすため、自己と学級の他の成員との個々の関係や自己と学級集団との関係は、学校生活そのものに大きな影響を与えることとなります。教師は、個々の生徒が、学級内でよりよい人間関係を築き、学級の生活に適応し、各教科等の学習や様々な活動の効果を高めたいと考え、学級内での個別指導や集団指導を工夫していきます。学級経営の内容は多岐にわたりますが、学級集団としての質の高まりを目指したり、教師と生徒、生徒相互のよりよい人間関係を構築しようとしたりすることは、その中心的な内容です。そのため、学級担任が学校の教育目標や学級の実態を踏まえて作成した学級経営の目標・方針に即して、必要な諸条件の整備を行い運営・展開されるものです。その点では、生徒が自発的、自治的によりよい生活や人間関係を築こうとして様々に展開される特別活動は、結果として生徒が主体的に集団の質を高めたり、よりよい人間関係を築いたりすることになります。

学級がよりよい生活集団や学習集団へと向上するためには、教師の意図的・計画的な指導とともに生徒の主体的な取組が不可欠です。学級経営は、特別活動を要として、計画され、特別活動の目標に示された資質・能力を育成することにより、更なる深化が図られることとなります。こうしたことを通して、学びに向かう集団づくりの基盤となり、各教科等で「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業改善を行う上では、こうした基盤があることは欠かせないものです。

出典  中学校学習指導要領 – 検索
(つづく)M.H

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