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実践編・応用編

日本の安心できる年金制度の確立

投稿日:2026年8月4日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

少子高齢化は、老後生活を支える年金の支給水準に大きな影響を与えています。それは、年金を負担する現役世代が減少する一方で、年金を受け取る高齢者が増えるためです。

国民の多くは、年金制度は今後どうなっていくのか、或いはまた将来自分がどの位年金を受け取ることができるのか、そんな不安を持っています。今回は、安心できる年金制度の確立についてお話しします。

公的年金制度は、予測することが難しい将来のリスクに対して、社会全体であらかじめ備えるための制度であり、現役世代の保険料負担により、その時々の高齢世代の年金給付をまかなう世代間扶養である賦課方式を基本とした仕組みで運営されています。賃金や物価の変化を年金額に反映させながら、生涯にわたって年金が支給される制度として設計されており、必要なときに給付を受けることができる保険として機能しています。

直近の公的年金制度の適用状況に関しては、被保険者数は全体で6,745万人(2023(令和5)年度末)であり、全人口の約半数にあたります。国民年金の被保険者の種別ごとに見てみると、いわゆるサラリーマンや公務員等である第2号被保険者等が4,672万人(2023年度末)と全体の約69%を占めており、自営業者や学生等である第1号被保険者が1,387万人、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者は686万人(2023年度末)となっています。被保険者数の増減について見てみると、第2号被保険者等は対前年度比54万人増で、近年増加傾向にある一方、第1号被保険者や第3号被保険者はそれぞれ対前年度比18万人、36万人減で、近年減少傾向にあります。これらの要因として、後述する被用者保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大や加入促進策の実施、高齢者等の就労促進などが考えられます。

また、公的年金制度の給付の状況としては、全人口の約3割にあたる3,978万人(2023年度末)が公的年金の受給権を有しています。高齢者世帯に関してみれば、その収入の約6割を公的年金等が占めるなど、年金給付が国民の老後生活の基本を支えるものとしての役割を担っていることがわかります。

公的年金制度については、2004(平成16)年の年金制度改革により、中長期的に持続可能な運営を図るための財政フレームワークが導入されました。具体的には、基礎年金国庫負担割合の引上げと積立金の活用により保険料の段階的な引上げ幅を極力抑えた上で、保険料の上限を固定し、その保険料収入の範囲内で年金給付をまかなうことができるよう、給付水準について、前年度よりも年金の名目額を下げずに賃金・物価上昇の範囲内で自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)が導入されました。

保険料の段階的な引上げについては、国民年金の保険料は2017(平成29)年4月に、厚生年金(第1号厚生年金被保険者)の保険料率は同年9月に、それぞれ完了しました。これにより、消費税率の引上げ(5%→8%)による財源を充当した基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げとあわせ、収入面では、公的年金制度の財政フレームは完成をみました。

一方、給付面では、マクロ経済スライドについて、前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持しつつ、未調整分を翌年度以降に繰り越して調整する見直しが2016(平成28)年の制度改正で行われました。

2025(令和7)年度の保険料水準は、厚生年金保険料率が18.3%、国民年金保険料が17,510円となっている。一方、同年度の給付水準は、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む「モデル年金額」)が月額232,784円、国民年金(1人分の老齢基礎年金(満額))が月額69,308円となっています。

■持続可能で安定的な公的年金制度の確立

◆令和6(2024)年財政検証と今後の見通し

公的年金制度では、少なくとも5年に一度、将来の人口や経済の前提を設定した上で、長期的な年金財政の見通しやスライド調整期間の見通しを作成し、年金財政の健全性を検証する「財政検証」を行っています。令和6(2024)年財政検証では、幅の広い4ケースの経済前提を設定し、どのような経済状況の下ではどのような年金財政の姿になるのかということを幅広く示し、また、一定の制度改正を仮定したオプション試算を行うことで、持続可能性や年金水準の確保のためにどのような対応があり得るのかなどを検証しました。

この結果、近年の女性や高齢者の労働参加の進展、積立金の運用が好調であったことにより、前回2019(令和元)年財政検証と比べて将来の給付水準が上昇し、1人当たり成長率をゼロと見込んだケース以外では、今の年金制度の下で、将来的に所得代替率50%検証において初めて実施した年金額の分布推計では、若年世代ほど労働参加の進展により厚生年金の被保険者期間が延伸し、年金額の増加に寄与することが確認されました。

オプション試算の結果では、被用者保険の更なる適用拡大、基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了、標準報酬月額の上限の見直し等といった制度改正を行うことが年金の給付水準を確保する上でプラスの効果を持つことが確認されました。

■公的年金制度の最近の動向について

◆令和6(2024)年財政検証等を踏まえた社会保障審議会年金部会における議論・関連法案の提出

社会保障審議会年金部会では、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第40号。以下「令和2年年金改正法」という。)に規定された検討課題や、令和6(2024)年財政検証の結果、制度改革を実施した場合を仮定して行ったオプション試算の結果等を踏まえ、平均寿命・健康寿命の延伸や家族構成・ライフスタイルの多様化、女性・高齢者の就業拡大、今後見込まれる最低賃金の上昇・持続的な賃上げという社会経済の変化に対応する観点から取り組むべき課題、年金制度が有する所得保障機能の強化の観点から取り組むべき課題への対応を大きな2つの柱として、次期年金制度改革に向けた具体的な見直しの方向性について検討を行い、2024(令和6)年12月25日に「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を取りまとめました。

「社会保障審議会年金部会における議論の整理」等を踏まえ、被用者保険の適用拡大、在職老齢年金制度の見直し、遺族年金の見直し、標準報酬月額の上限の段階的引上げ等を盛り込んだ「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」(以下「令和7年年金改正法案」という。)を第217回通常国会に提出しました。

①被用者保険の適用拡大等

経済財政運営と改革の基本方針2024では、勤労者皆保険の実現のため、企業規模要件の撤廃を始め短時間労働者への被用者保険の適用拡大の徹底、常時5人以上を使用する個

人事業所の非適用業種の解消等について結論を得ることとされています。

また、全世代型社会保障構築会議においても、国民の価値観やライフスタイル、働き方の多様化が進む中で、格差の固定化や貧困の防止を図り、社会の分断を防ぐ観点からも、働き方、雇い方に中立的な社会保障制度の構築が求められてきました。

このことから、2024年2月より、「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」(保険局長及び年金局長が開催)において、適用拡大に伴う関連データや動向の検証、関係者からのヒアリング等による実態把握、更なる適用拡大に伴う諸課題の分析・整理が行われ、2024年7月3日に議論の取りまとめが行われました。

また、令和6(2024)年財政検証においては、被用者保険の更なる適用拡大に係るオプション試算を実施し、適用拡大の対象者の規模が大きいほど所得代替率や基礎年金の水準確保に効果が大きいことを確認しています。

これらを踏まえ令和7年年金改正法案には、短時間労働者の被用者保険の適用要件のうち、「当分の間」の経過措置として設けられた企業規模要件については、労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、企業規模に応じて十分な準備期間を設けた上で撤廃する内容や、賃金要件については、本要件が就業調整の基準(いわゆる「106万円の壁」)として意識されていることや、最低賃金の引上げに伴い労働時間要件を満たせば賃金要件を満たす地域や事業所が増加していることを踏まえ撤廃する内容を盛り込みました。また、労働者の勤め先等に中立的な制度を構築する観点等から、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消する内容を盛り込んでいます。

②在職老齢年金制度の見直し

高齢者の活躍を後押しし、できるだけ就業調整が発生しない、働き方に中立的な仕組みとする観点から、一定の賃金のある老齢厚生年金受給権者を対象とした在職老齢年金制度について、令和7年年金改正法案に、支給停止の基準額を引き上げる内容を盛り込みました。

③遺族年金の見直し

就業率や賃金格差の男女差の縮小という社会経済の変化に合うものとし、男女を問わず遺族厚生年金を受給しやすくする仕組みとするため、令和7年年金改正法案に、段階的に、18歳未満の子のない20~50代の配偶者を原則5年の有期給付の対象とする内容と、60歳未満の男性を新たに支給対象とし、また、これに伴う配慮措置として、所得状況・障害状況に応じた5年経過後の給付継続、死亡分割制度及び有期給付加算の新設、収入要件の廃止等を行う内容を盛り込みました。

また、子に支給する遺族基礎年金について、離婚の増加等の子を取り巻く家庭環境の変化を踏まえ、配偶者に遺族基礎年金の受給権が発生しない場合において子の生活の安定を図る遺族基礎年金の目的を達成するため、遺族基礎年金の受給権を有さない父母と生計を同じくすることによる支給停止に係る規定を見直す内容を令和7年年金改正法案に盛り込んでいます。

④厚生年金保険等の標準報酬月額の上限引上げ

標準報酬月額上限該当者は、負担能力に対して相対的に軽い保険料負担となっており、今後、賃上げが継続すると見込まれる中で、保険料と保険給付額の算定の基礎となる標準報酬月額の上限に該当する者について負担能力に応じた負担とそれに応じた給付を実現しつつ、厚生年金制度の財政の改善により、低年金者を含む全体の給付水準の底上げを図るため、標準報酬月額の上限を引き上げる内容を令和7年年金改正法案に盛り込みました。

◆2025(令和7)年度の年金額改定

年金額は、物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて、毎年度改定を行う仕組みとなっています。物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする観点から、名目手取り賃金変動率を用いて改定することが法律で定められています。このため、2025年度の年金額は、名目手取り賃金変動率(2.3%)を用いて改定することとなりました。

また、2025年度のマクロ経済スライドによる調整(▲0.4%)が行われました。よって、2025年度の年金額の改定率は、1.9%となりました。

◆年金生活者支援給付金について

年金を受給しながら生活をしている高齢者や障害者などの中で、年金を含めても所得が低い方々を支援するため、月額5,000円を基準とし、年金に上乗せして支給する「年金生活者支援給付金制度」が、2019(令和元)年10月より施行されました。年金生活者支援給付金は、消費税率を10%に引き上げた財源を基に支給されています(2025(令和7)年度の支給基準額は、月額5,450円)。

◆年金積立金の管理・運用

①年金積立金の管理・運用の概要

年金積立金の運用は、「積立金が、被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、もっぱら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行う」ことが法律で定められています。

令和6(2024)年財政検証及び年金積立金の運用において将来合理的に期待できる運用利回りの水準を踏まえ、長期の実質的な運用利回り(年金積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.9%を運用目標とし、厚生労働大臣が定めた年金積立金管理運用独立行政法人(以下「GPIF」という。)の中期目標において、「長期的に年金積立金の実質的な運用利回り1.9%を最低限のリスクで確保すること」とされています。これを受けて、GPIFにおいて、リターン・リスク等の特性が異なる複数の資産への分散投資を基本として、長期的な観点からの資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、市場に与える影響に留意しつつ、年金積立金の管理・運用を行っています。

②年金積立金の管理・運用の考え方

年金積立金は、ただちに取り崩す必要がない資金であるため、市場の一時的な変動に過度にとらわれる必要はなく、様々な資産を長期にわたって保有する「長期運用」により、安定的な収益の獲得を目指しています。長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を決めて長期間維持していく方が、効率的で良い結果をもたらすとされています。GPIFでは、基本ポートフォリオに基づいて運用を行っており、実際の運用における資産構成割合が基本ポートフォリオからかい離した場合には適時適切に資産の入替え等(リバランス)を行っています。

株式は、短期的な価格変動リスクは債券よりも大きいものの、長期的に見た場合、債券よりも高い収益が期待できることから、株式を適切に組み入れて運用することで、最低限のリスクで年金財政上必要な利回りを確保することを目指しています。また、国内だけでなく、外国の様々な種類の資産に分散して投資することで、収益獲得の機会を増やし、世界中の経済活動から収益を得ると同時に、資産分散の効果により、大きな損失が発生する可能性を抑える運用を行っています。

GPIFが重視しているリスクは、「市場の一時的な変動による短期的なリターンの変動(ブレ幅)」ではなく、「年金財政上必要とされている長期的な収益が得られないこと」であり、GPIFは、短期的なリターンの変動にも配慮しながら、長期的な収益が得られないリスクを抑えることを重視した運用を行っています。

③年金積立金の運用状況

GPIFの2023(令和5)年度の運用状況は、内外株式市場の大幅な上昇や円安等により、収益率+22.67%(年率)、収益額+45兆4,153億円(年間)、運用資産額245兆9,815億円(2023年度末時点)となり、自主運用を開始した2001(平成13)年度から2023年度までの累積では、収益率+4.36%(年率)、収益額+153兆7,976億円(うち利子・配当収入のインカムゲインは51兆1,901億円)となっています。また、年金積立金全体の実質的な運用利回りは、2001年度以降の23年間の平均で4.33%となり、運用目標(2015(平成27)年度から2024(令和6)年度まで実質的な運用利回り+1.7%)を上回っています。

なお、GPIFの2024年度第1四半期から第3四半期までの運用状況(速報)は、外国株式の価格上昇や円安の進行等から、収益率は+4.26%(期間収益率)、収益額は+10兆5,487 億円(2024年4~12 月)、2024年度第3四半期末時点の運用資産額は258 兆6,936億円となっており、自主運用を開始した2001年度から2024年度第3四半期までの累積では、収益率は+4.40%(年率)、収益額は164兆3,463億円(うち利子・配当収入は55兆94億円)となっています。

(つづく)Y.H

(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書

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