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実践編・応用編

持続可能な医療・介護の実現  4

投稿日:2026年9月26日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

前回に引き続き、持続可能な医療・介護の実現についてお話しします。少子高齢化によって、ますます労働力の減少が進んでいます。医療・介護も例外ではなく、将来的に医師や看護師、介護従事者が減っていくことは避けられません。つまり、社会と同じく需要と供給のバランスが崩れてしまう可能性があります。このバランスをどう保っていくかが、医療・介護業界の課題です。また、医療費も今後増える一方であり、税金が減ってしまえば、必然的に社会保障費の確保が難しくなってきます。

安定的で持続可能な医療保険制度の実現

■医療保険制度改革の推進

我が国は、国民皆保険制度の下で世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現してきました。一方で、今後を展望すると、いわゆる団塊の世代が2025(令和7)年までに全て人口減少時代」を迎える中で、人口動態の変化や経済社会の変容を見据えつつ、全ての世代が公平に支え合い、持続可能な社会保障制度を構築することが重要です。

こうした状況を踏まえ、給付と負担のバランスを確保しつつ、現役世代の負担上昇の抑制を図り、増加する医療費を全ての世代が能力に応じて公平に支え合う観点から、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が2023(令和5)年5月に成立しました。今回の医療保険制度改革の主な内容は下記(1)から(3)までです。

(1)こども・子育て支援の拡充

◆出産育児一時金に係る後期高齢者医療制度からの支援金の導入

出産に要する経済的負担の軽減を目的とする出産育児一時金については、出産費用が年々上昇する中で、平均的な標準費用が全てまかなえるよう、2023(令和5)年4月より、42万円から50万円に大幅に増額しました。この出産育児一時金に要する費用は、原則として現役世代の被保険者が自ら支払う保険料で負担することとされていますが、後期高齢者医療制度の創設前は、高齢者世代も、出産育児一時金を含め、こどもの医療費について負担していました。また、生産年齢人口が急激に減少していく中で、少子化をめぐって、これまで様々な対策を講じてきましたが、いまだに少子化の流れを変えるには至っていない状況にあります。このため、今般、育てを社会全体で支援する観点から、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援する仕組みを2024(令和6)年度から導入しました。

併せて、妊婦の方々が、あらかじめ費用やサービスを踏まえて適切に医療機関等を選択できる環境の整備が重要であることから、出産費用の「見える化」を進めるべく、医療機関等ごとのサービス内容や出産費用の状況などを公表するウェブサイト『出産なび』の運用を2024年5月から開始したところです。

また、こうした出産費用の「見える化」の効果等の検証を行った上で、次の段階として、2026(令和8)年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討するために、2024年6月末から、厚生労働省とこども家庭庁が共同で、有識者による検討会(「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」)を設置し、議論を行っています。

◆国民健康保険における産前産後期間の保険料免除

子育て世帯の負担軽減、次世代育成支援等の観点から、2024年1月から、出産する被保険者に係る産前産後期間相当分(4か月間)の均等割保険料及び所得割保険料を公費により免除する措置を講じています。

  • 高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し

◆後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し

高齢者人口は2040(令和22)年をピークに増え続け、特に、2025(令和7)年には団塊の世代が全て後期高齢者となります。後期高齢者の保険料が、後期高齢者医療制度の創設以来1.2倍の伸びに止まっているのに対し、現役世代の負担する支援金が1.7倍になっている状況を踏まえ、現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、負担能力に応じて、全ての世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みが必要です。

このため、後期高齢者1人当たり保険料と現役世代1人当たり後期高齢者支援金の伸び率が同じになるよう後期高齢者医療における高齢者の保険料負担割合を2024(令和6)年度に見直しました。

後期高齢者の保険料は、所得にかかわらず低所得の方も負担する定額部分(均等割)と所得に応じて負担する定率部分(所得割)により賦課する仕組みであり、制度改正による、2024年度からの負担に関しては、

・均等割と所得割の比率を見直すことで、約6割の方(年金収入153万円相当以下の方)については、制度改正に伴う負担の増加が生じないようにするとともに、

・さらに約12%の方(年金収入211万円相当以下の方)についても、2024年度は制度改正に伴う負担の増加が生じないようにする

こと等の配慮を行いました。

◆被用者保険における負担能力に応じた格差是正の強化

前期高齢者の医療給付費負担については、前期高齢者の偏在による負担の不均衡を是正するため、前期高齢者の加入者数に応じて、保険者間で費用負担の調整(前期財政調整)を行っています。

今般、世代間のみならず世代内でも負担能力に応じた仕組みを強化する観点から、前期財政調整において、被用者保険者間では、現行の「加入者数に応じた調整」に加え、部分的(範囲は1/3)に「報酬水準に応じた調整」を2024年度から導入ました。

加えて、現役世代の負担をできる限り抑制し、企業の賃上げ努力を促進する形で、健保組合等を対象として実施されている既存の支援を見直すとともに、更なる支援を行っています。

具体的には、

・高齢者医療運営円滑化等補助金について、賃上げ等により一定以上報酬水準が引き上がった健康保険組合に対する補助を創設するなど、拠出金負担の更なる軽減

・健康保険組合連合会が実施する健保組合に対する高額医療交付金事業について、国費による財政支援の制度化

・特別負担調整への国費充当の拡大による、負担軽減対象となる保険者の範囲の拡大を行いました。

(3)医療保険制度の基盤強化等

◆国保運営方針の運営期間の法定化及び必須記載事項の見直し

財政運営の安定化や、2018(平成30)年度国保改革による「財政運営の都道府県単位化」の趣旨の更なる深化を図る観点から、保険料水準の統一に向けた取組みや医療費適正化の推進に資する取組みを進めることが重要です。こうしたことを踏まえ、2024(令和6)年度から、都道府県内の国保運営の統一的な方針である国保運営方針について、その対象期間を、医療費適正化計画や医療計画等との整合性を図る観点から、「おおむね6年」とし、「医療費の適正化の取組に関する事項」と「市町村が担う事務の広域的及び効率的な運営の推進に関する事項」を必須記載事項としました。

◆第三者行為求償の取組み強化

国保財政を支出面から適正に管理するため、2025(令和7)年度から、国保の財政運営の責任主体である都道府県が、保険給付の適正な実施を確保するため、広域的又は専門的な見地から必要があると認められる場合に、市町村の委託を受けて、第三者行為求償事務を行うことを可能とすることとしています。また、市町村が、第三者行為求償事務を円滑に実施できるよう、官公署、金融機関などの関係機関に対し、保険給付が第三者の行為によって生じた事実に係る資料の提供等を求めることを可能としました。

■予防・健康づくり

(1)保険者による予防・健康づくり支援の取組み

◆取組みの横展開・見える化

健康寿命の延伸と医療費の適正化を図るため、2015(平成27)年7月に、民間主導の日本健康会議が発足し、保険者の予防・健康づくりの取組みの「見える化」や先進事例の「横展開」を進めています。同会議は具体的な活動指針となる「健康なまち・職場づくり宣言2020」を策定し、取組みの最終年度である2020(令和2)年度には多くの宣言で目標を達成しました。2021(令和3)年度には新たに「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」を策定し、コミュニティの結びつき、一人ひとりの健康管理、デジタル技術等の活用に力点を置いた予防・健康づくりを推進することをコンセプトとして、第二期日本健康会議の活動が進められています。

◆高齢者の特性を踏まえた保健事業の推進

高齢者に対する保健事業を、加齢に伴い心身機能が低下する等の高齢者の特性を踏まえたものとするためには、市民に身近な市町村が中心となり、介護保険の地域支援事業や国民健康保険の保健事業と後期高齢者の保健事業を一体的に実施することが重要です。

そのため、2020年4月に施行された「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」により、これら3つの事業を一体的に実施するための体制整備等を行いました。具体的には、都道府県後期高齢者医療広域連合が各市町村に保健事業の実施を委託して、市町村の医療専門職が地域の健康課題を整理・分析した上で、「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第3版」等を参考に、高齢者の個別支援や介護予防の通いの場等に関与する取組み等を行うこととし、2024(令和6)年度には、ほぼ全ての市町村で事業を実施しています。

■医療費適正化

国及び都道府県は、高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費適正化計画を策定しています。

2024(令和6)年度からの第4期医療費適正化基本方針には、これまで取り組んできた特定健診・保健指導の実施率の向上、後発医薬品の使用促進や医薬品の適正使用(重複投薬、多剤投与の適正化)等に加え、新たな取組目標として、複合的なニーズを有する高齢者への医療・介護の効果的・効率的な提供や、医療資源の効果的・効率的な活用を加え、既存の目標についても、デジタル等を活用した効果的な取組みを推進するとともに、計画の実効性の確保のため、都道府県が関係者と連携するための体制を構築することを盛り込みました。これに即して、都道府県は第4期医療費適正化計画(2024年度から2029(令和11)年度)を策定し、取組目標の達成に向けて、保険者協議会等と連携しながら取組みを進めています。

■診療報酬・薬価改定

◆診療報酬改定

2024(令和6)年度診療報酬改定では、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえ、ポスト2025(令和7)年のあるべき医療・介護の提供体制を見据えつつ、DX等の社会経済の新たな流れも取り込んだ上で、効果的・効率的で質の高い医療サービスの実現に向けた取組みを進める観点から、診療報酬の改定率をプラス0.88%とした。

改定に当たっては、「令和6年度診療報酬改定の基本方針」に示された、

  1. 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
  2. ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
  3. 安心・安全で質の高い医療の推進
  4. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

の4つの視点を柱とし、改定を行いました。

また、2024年6月の診療報酬改定の施行後にも、2024年度中に下記のような見直しを行いました。

①ベースアップ評価料の提出書類の簡素化

2024年度診療報酬改定において、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、賃上げを実施していくため、ベースアップ評価料の新設等を行いました。2024年度中に善実績報告書の記載項目を削減し、診療所専用の簡素化様式を公開するなど、計3回にわたる簡素化を図りました。また、ベースアップ評価料特設ウェブページにて、届出様式の記載説明資料や動画、届出支援ツールを公開しました。

②医療DXに係る診療報酬上の評価の見直し

2024年度診療報酬改定において、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため、医療DXに対応する体制を確保している場合の診療報酬上の評価が新設されました。

この評価について、令和6年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見等に基づき、マイナ保険証の利用状況や電子処方箋の整備状況等を踏まえ、2024年度中に2回の見直しを行いました(2024年10月施行、2025年4月施行)。

③中間年改定の年に行う期中の診療報酬の見直し

診療報酬改定は通例として2年に一度行うものですが、2024年度においては、緊急で対応すべきもの、また、対応が重要と考えられるものとして、入院時の食費基準額の見直し、歯科衛生士や歯科技工士のタスクシフト・手間への評価の見直し、長期収載品の選定療養化や医薬品供給不安に伴う服薬指導の評価の見直しを行いました。

入院時の食費基準額の見直しについては、2024年度診療報酬改定で1食当たり30円引き上げ、640円から670円に改定したところですが、食材費等の高騰はさらに続いており、医療の一環として提供されるべき食事の質を確保する観点から、さらに1食当たり20円の引上げを行いました。

また、歯科衛生士や歯科技工士のタスクシフト・手間への評価の見直しについては、より専門的な業務を行う歯科衛生士及び歯科技工士を確保し、限られた人材で歯科医療を効率的に提供する観点から、歯科技工士連携加算1(印象採得)について50点から60点へ引き上げる等の対応を行いました。

長期収載品の選定療養化や医薬品供給不安に伴う服薬指導の評価の見直しについては、医薬品供給不安の中での対応や、2024年10月1日から施行された長期収載品の選定療養に関する患者への説明など、保険薬局の業務負担が更に増加していること等を踏まえ、特定薬剤管理指導加算3について5点から10点への引上げを行っています。

◆薬価改定

2024(令和6)年度薬価改定では、革新的新薬のイノベーションの適切な評価や、後発品企業の産業構造の転換の促進及び医療上必要性の高い品目の安定供給の確保のための薬価上の措置を行いました。2025(令和7)年度薬価改定では、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(2016(平成28)年12月20日、内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)に基づいて、令和6年医薬品価格調査の結果等を踏まえ、改定の対象品目については、国民負担の軽減はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、品目ごとの性格に応じて対象範囲を設定し、また薬価改定基準の適用については、創薬イノベーションの推進の観点から、追加承認品目等に対する加算を臨時的に実施ました。さらに、安定供給確保が特に求められる医薬品に対して、臨時的に不採算品再算定を実施するとともに、最低薬価の引上げ等を行っています。

(つづく)Y.H

(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書

-実践編・応用編

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