キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

日本における高齢社会対策の推進について2

投稿日:2025年10月17日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

前回に引き続き高齢社会対策の推進についてお話します。我が国は、既に超高齢社会に突入しており、高齢者の割合が大きくなっていく中で、高齢者が暮らしやすい社会をつくることは、他の世代の人々にとっても暮らしやすい社会の実現につながります。すべての世代の人々が超高齢社会をを構成する一員として、今何をすべきかを考え、互いに支え合いながら希望が持てる未来を切りひらいていく必要があります。
◆ 健康・福祉

●健康づくりの総合的推進

〇 生涯にわたる健康づくりの推進

健康づくりのための国民運動である「健康日本21(第三次)」において設定されている目標達成に向けた取組等により、生涯を通じた健康の増進を図る。企業、団体、地方公共団体に対し、相互に協力・連携しながら、労働者、構成員、地域住民等が自発的に健康づくりに参画することができる取組の実施を促す。

高齢者の介護予防や生活習慣病予防等の健康情報等を掲載するウェブサイトやアプリの活用等広報の充実を図るとともに、学校保健との連携等ライフステージに応じた健康リテラシー向上の取組を図る。幼少期の経済状況や逆境体験の有無等の成育環境による将来の健康状態への影響等を考慮しつつ、「こども大綱」(令和5年12月22日閣議決定)に基づき、良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにするという基本的な方針の下、こども施策を推進する。

医療保険者による特定健康診査・特定保健指導の着実な実施や、データヘルス計画に沿った取組等、加入者の予防健康づくりの取組を推進していくとともに、糖尿病を始めとする生活習慣病の重症化予防の先進的な事例の横展開を進める。高齢者を含む多様な主体におけるスポーツの機会を創出するとともに、心身の維持・向上に適した方法や目的を定めた運動・スポーツの実施を促進し、人々が高齢期を含めそれぞれのライフステージにおいて最高の能力が発揮できる状態(ライフパフォーマンスの向上)を目指す。

高齢期の健全な食生活の実現にも資するよう、こどもから大人に至るまで、生涯を通じた食育の取組を推進する。その際、高齢者の一人暮らし等、家庭環境や生活が多様化する中で、地域や関係団体の連携・協働を図りつつ、食や生活に関する基礎の習得にもつながる共食の機会の提供等を行う取組や、大人を対象に日々の消費行動をより健全なものへと転換する「大人の食育」等の取組を推進する。あわせて、食育の推進に向けて、学校、企業、生産者等の様々な主体を巻き込んだ国民運動を進める。

〇 介護予防の推進
高齢者の自立支援と生活の質の向上を目指すために、機能回復訓練等の高齢者本人へのアプローチとともに、地域づくり等の高齢者本人を取り巻 く環境へのアプローチについて、そのための人材養成も含め、バランスのとれた効果的・効率的な介護予防を推進する。特に、心身機能の向上や地域活動への参加を促すために、住民主体の「通いの場」を設置・活用しながら、高齢者が地域活動の担い手として、役割や生きがいを持てる地域社会の構築を行う。

●持続可能な介護保険制度と介護サービスの充実
〇 地域包括ケアシステム構築の深化・推進
医療・介護の複合ニーズが高まる85歳以上人口の急増を見据え、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、在宅医療や在宅介護の質・量両面での充実を含め、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を一層進めていく。

〇 必要な介護サービスの確保
介護保険制度については、高齢者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療福祉サービ スを行う制度として定着しており、着実な実施を図る。 地方公共団体における介護保険事業計画等の状況を踏まえ、要介護高齢 者の需要に応じた良質な介護サービス基盤の計画的な整備を進める。 介護職員の処遇改善や介護の仕事の魅力向上を図るとともに、ICT等のテクノロジーの活用による業務負担の軽減や研修の受講促進等を通じた 多様な人材が働きやすい環境整備、中高年齢者・外国人等の多様な人材の参入促進等により人材確保を図る。

また、訪問介護、通所介護等の在宅サ ービスの充実を図るとともに、認知症対応型共同生活介護事業所、特別養 護老人ホーム、老人保健施設等の介護基盤や、サービス付きの高齢者向住宅等の高齢者の住まいの整備等を進める。福祉用具・住宅改修の適切な普及・活用の促進や介護労働者の雇用管理の改善、公共職業安定所及び民間による労働力需給調整機能の向上等を図る。

〇 介護サービスの質の向上
高齢者介護サービスを担う介護支援専門員、訪問介護員、介護福祉士等の資質の向上を図るとともに、利用者が介護サービスを適切に選択し、良質なサービスを利用できるよう、ICT等を活用した事業者の情報公開等を進める。介護ロボットやICT機器等の介護テクノロジーの導入や定着に向けた支援を行うなどにより、介護職員の業務負担の軽減及びケアの質の確保に資する介護現場の生産性向上を一層推進する。

高齢者の尊厳の保持を図る観点から、特別養護老人ホームの個室ユニッ ト化を進めるとともに、介護従事者等による高齢者虐待の防止に向けた取組を推進する。

〇 仕事と介護の両立支援
家族の介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度の目的の理解を促進するとともに、円滑な介護休業の取得や介護休業からの復帰、柔軟な働き方の実現に取り組む中小企業に対する効果的な支援を行うなど、仕事と介護を両立することができる雇用環境の整備を推進する。 仕事と介護の両立支援に関する企業経営上の位置付けを整理した「仕事 と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(令和6年3月経済産業省)の普及を進めるとともに、企業の経営層が両立支援の知見を共有できる仕組みづくりや、地域の中で中小企業の両立支援を支えるモデル構築・普及等を行う。

働く家族介護者の負担軽減の観点において、民間事業者等と連携し、介護需要の多様な受け皿のモデル提示や、介護保険外サービスの信頼確保のための環境整備を進進める。

●持続可能な高齢者医療制度の運営
後期高齢者の窓口3割負担(「現役並み所得」)の判断基準の見直し等につ いては、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和5 年12月22日閣議決定)において、年齢に関わりなく、能力に応じて支え合 うという観点から、2028年度(令和10年度)までに実施について検討する こととされていること等を踏まえ、現役世代の負担が増加することや、2022年(令和4年)10月に施行された後期高齢者医療制度における窓口負担割合 の見直し(一定以上所得のある者への2割負担の導入)の施行の状況等に留意しつつ、検討を進める。

●認知症施策の総合的かつ計画的な推進
共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号) を踏まえて、誰もが認知症になり得ることを前提に、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる社会を実現するため、「認知症施 策推進基本計画」を策定し、認知症施策の総合的かつ計画的な推進を図る。

国民一人一人が、認知症に関する正しい知識と理解を深められるよう、地 域や職域で認知症の人や家族を手助けする認知症サポーターの養成を進めるとともに、生活環境の中で認知症の人と関わる機会が多いことが想定され る業種の従業員等向けの養成講座の開催の機会の拡大や、学校教育等における認知症の人等を含む高齢者への理解の増進等を図る。また、認知機能低下 のある人や、認知症の人に対して、早期発見・早期対応が行えるよう、かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症地域支援推進員、認知症サポート医、認知症初期集中支援チーム、居宅介護支援事業所、認知症疾患医療センターを含む専門医療機関等について、地域の実情に応じた機能の強化や各機関の間の連携強化を図る。

●がん対策の推進
高齢期の主要な死因であるがんについて、地域の関係機関等との連携による、個々の状況に応じた適切ながん医療の提供体制の整備、高齢のがん患者に対する医療の実態把握、意思決定支援の取組等を推進する。
「がん研究10か年戦略(第5次)」(令和5年12月25日内閣府特命担当大臣(科学技術政策)、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣)に基づ き、「がん対策推進基本計画」(令和5年3月28日閣議決定)に明記されて いる政策課題の解決に向けた政策提言に資する調査研究等に加えて、革新的 な診断法や治療法を創出するため、シーズの探索・育成、がんに関する先端 的な科学技術の活用、異分野融合等の分野横断的な研究、低侵襲性診断技術や早期診断技術の開発、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の維持向上の観点を含めた高齢のがん患者に適した治療法等を確立する研究、迅速 な社会実装に向けた研究開発等を推進する。

●人生の最終段階における医療・ケアの体制整備
人生の最終段階における医療・ケアについては、医師等の医療従事者から 適切な情報の提供と説明がなされた上で、これに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人の意思決定を基本として行われることが重要である。このため、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセスであるACP(アドバンス・ケア・プランニング)について、患者の相談に適切に対応できる人材の育成等による体制整備を行うとともに、国民向けの情報提供・普及啓発を推進する。
(出典) 内閣府 令和6年 高齢社会対策大綱
(つづく)Y.H

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

今後の日本の経済社会の構築3

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に続き、経済の社会の構築について、お話しします。今後の日本経済は、より高い製品開発能力を獲得し、製品の付加価値を高めながらアジアを中心とする諸外国との経済分業の下で、互恵的な経済社会の発展を追及していくことが基本的な方向です。 ◆総合的・一体的な物流施策の推進 ■物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化 総合物流施策大綱の1つ目の柱として、「①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流)」を掲げています。これまで生産性向上等の観点からその必要性が認識され …

海外進出日本企業で働く人々_インドネシア_社会保障施策

インドネシアは、ASEAN地域で最も人口が多く、約2億7千万人を擁しています。この巨大の人口が国内市場の規模を拡大し続ける要因となっています。またASEANで最大のGDPを有しており、東南アジアの地域経済において重要な立ち位置にあります。インドネシアに進出している日本企業は約1500社となっていますが、近年の不安定な中国や台湾問題を考慮するとインドネシアへ進出する日本企業は今後まだまだ増えていくだろうと見られています。そんな中、キャリアコンサルタントが日本企業で働く人とコンサル業務でかかわる事も多くなっています。今回は、インドネシアの社会保障施策についてお話しします。 ■社会保障施策 ●医療保 …

no image

日本的経営とワールドクラスのギャップ②

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。 経済産業省製造産業局が2024年5月に公表した資料「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」からスライド16ページ「日本的経営とワールドクラスのギャップ②」について、図表の内容をもとに文章形式で体系的かつ詳細に解説をします。 (出典)経済産業省 016_04_00.pdf ◆ 「日本的経営とワールドクラスのギャップ②」詳細解説 このスライドは、日本企業がグローバル競争の中で直面する組織運営・意思決定・価値観といったマネジメントシステムと組織文化の課題を、ワールドクラス企業の実態と比較して明示しています。特に、「オフィサーの役割」「意思 …

持続可能な医療・介護の実現 5

 キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 持続可能な医療・介護の実現についての最終回です。少子高齢化によって、ますます労働力の減少が進んでいます。医療・介護も例外ではなく、将来的に医師や看護師、介護従事者が減っていくことは避けられません。つまり、社会と同じく需要と供給のバランスが崩れてしまう可能性があります。このバランスをどう保っていくかが、医療・介護業界の課題です。また、医療費も今後増える一方であり、税金が減ってしまえば、必然的に社会保障費の確保が難しくなってきます。 ■医療・介護の連携 要介護認定率や認知症の発生率等が高い75歳以上の高齢者の増加に伴い、医療ニーズと …

欧州連合(EU)における労働施策について

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 日本と欧州連合(EU)とは、共に世界貿易の担い手であり、二者間の貿易関係は、双方にとって重要です。二国は、戦略的な貿易パートナーであり、2019年2月に発動した日・EU経済連携協定は多くの経済的メリットを生み出しています。また、安全保障から気候変動・エネルギー・デジタル等広範な分野において協力しています。今回は、EU における労働施策についてお話しします。 ◆雇用・失業情勢 2022年第1~3四半期のEU全体およびユーロ圏の実質GDP成長率はいずれも1.0%を下回っています。 ◆雇用失業対策 ■雇用失業情勢 EU27加盟国全体の2 …