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実践編・応用編

日本における電波政策の動向 2

投稿日:2026年2月4日 更新日:

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。

前回に引き続き、電波政策の動向について、お話しします。
先進的な電波利用システム
非地上系ネットワーク
HAPS、衛星通信等の非地上系ネットワーク(NTN)は、陸・海・空・宇宙をつないで離島、海上、 山間部等を効率的にカバーし、通信インフラが未整備の地域に対しても通信サービスの提供が可能です。また、自然災害をはじめとする非常時等の通信手段としても有用です。
総務省では、「デジタルインフラ整備計画2030」(2025年6月策定)に基づき、NTNの早期国内展開等に向け、関連する制度整備を進めるなど、サービス導入を促進のための取組を推進しています。

具体的には、HAPSについて、研究開発支援のほか、技術実証の実施を通じて国内制度の整備等を進めるとともに、社会実装に向けて関係府省庁との連携や、海外展開に取り組んでいます。また、HAPSで利用可能な周波数を拡大するための周波数の確保にも取り組んでいます。2023年の世界無線通信会議 (WRC-23)では、我が国が議論をリードし、1.7GHz帯、2GHz帯及び2.6GHz帯は、全世界で、700MHz帯は、第1地域(欧州、アフリカ)・第2地域(北南米)では地域全体で、第3地域(アジア) では我が国を含む14か国で、HAPSの携帯電話用基地局としての利用が可能となる決定が行われました。
また、衛星通信については、これまで、多数の非静止衛星を一体的に運用し、高速大容量の通信サー ビスを提供する衛星コンステレーションの導入、携帯電話端末と人工衛星との直接通信サービスの実現等に必要な制度整備を行ってきたところですが、引き続き周波数の確保、制度整備等を推進していきます。

無線LANの高度化
無線LANは、IEEE(米国電気電子学会)において策定された標準規格が、スマートフォン等に組み込まれ世界的に使用されています。国内でも、駅・空港等の公共の場にアクセスポイントが設置され、オフィスや家庭のみならず、屋外のサービスや学校教育での利用、災害被災地での通信確保等、社会インフラとして国民の重要な通信インフラの一つになっています。 総務省では、諸外国での導入状況や国内のニーズ等を踏まえ、無線LANの高度化に係る検討を継続的に行っています。近年では、無線LANの技術を活用したドローン等の利用拡大により、無線LANを組み込んだ機器の屋外・上空利用のニーズが増えています。その一方で、特に上空で使用できる周波数チャネルの数が不足している現状を踏まえ、2023年から5GHz帯における上空での利用拡大に向けた検討を行い、2024年12月に「5.2GHz帯無線LANの上空利用に係る技術的条件」をとりまとめ、2025年4月に無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)等の改正を行いました。5.2GHz帯無線LANの上空利用が導入されることで、橋梁等のインフラ点検や空撮による映像作成などへの利用の拡充が期待されます。

さらに、将来のモバイル通信のトラヒック増や多様な利用ニーズに対応可能な無線LANシステムの実現に向けて、6GHz帯(5925MHz-6425MHz)無線LANの屋外利用及び6.5GHz帯(6425MHz ~7125MHz)への屋外利用を含む周波数帯域の拡張に係る周波数共用等の技術的条件の検討を行っています。このうち2024年度には、上記の周波数帯を利用する既存の無線局等への有害な干渉を与えないようにするために必要なAFC(Automated Frequency Coordination)システムについて、同システムの構築や動作検証を行うための技術的な検討や、運用するための体制や運用モデルのあり方等に関する検討を実施しました。

ドローンにおける電波利用の拡大
近年、農業、インフラ点検、物流、災害対応、エンターテインメント等の様々な分野でドローンの利用が進んでいます。ドローンの利用にあたって電波の活用は必要不可欠であり、例えば、ドローンの個体識別情報となるリモートIDの送信、地上からドローン機体を制御するためのコマンド送信、ドローンで撮影した映像を操縦者等に伝送するための画像伝送用通信等、それぞれの用途に適した各種の無線システムが利用されています。
総務省では、ドローンの利活用ニーズの拡大を踏まえ、上空での電波利用環境の向上に向けた取組を推進しています。前述の無線LANのほか、主なものは以下のとおりです。

◆携帯電話等の上空利用
携帯電話をドローン等に搭載し、携帯電話網を利用してドローンの制御や画像・データ伝送等を行いたいとのニーズを踏まえ、総務省では、800MHz帯、900MHz帯、1.7GHz帯及び2GHz帯のFDD方式の周波数帯について、2020年12月に簡易な手続きでLTEの上空利用を、また、2023年 4月に高度制限の撤廃や5G方式の利用を可能とする制度整備を行いました。さらに、ドローン等による 撮影動画データの高速アップロード等のニーズに対応するため、2025年5月、5Gやローカル5G等で使用するTDD方式の周波数帯の上空利用を可能とする制度整備を行いました。

◆5.8GHz帯ドローン用特定実験試験局
米国・欧州・中国・韓国等の諸外国においては、5.8GHz帯を使用するドローンが広く普及しています。我が国では5.8GHz帯はITS用の無線システムであるDSRC等に使用されていますが、日本でも 5.8GHz帯を使用した機能検証を行いたいとのニーズもあることから、総務省では、簡易な手続で実験試験局を開設することが可能な特定実験試験局制度の対象とすることに取り組んできました。既存の DSRC等の無線局に影響を与えない周波数や使用地域等の条件の検討を行い、2024年11月、5.8GHz帯ドローン用特定実験試験局の告示を公布しました。

高度道路交通システム
情報通信技術を用いて人や道路、車などをつなぐITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)は、交通事故削減や渋滞緩和などにより、人やモノの安全で快適な移動の実現に寄与するものです。総務省では、これまでVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)やETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)、車載レーダーシステム、700MHz帯高度道路交通システムなどで利用される周波数の割当てや技術基準などの策定を行うとともに、これらシステムの普及促進を図ってきました。
現在、欧州・米国などを中心として、世界的に自動運転の実現に向けた実証・実装が進められており、分合流支援などの高度な自動運転の実現には、カメラやレーダー等の車載センサーに加えて、周囲の車や路側インフラ等と情報交換するV2X(vehicle to everything)通信が重要な役割を担うことが見込まれています。

V2X通信システムとして、世界的には5.9GHz帯を活用したV2X通信システムの実証・実装が進められていることを踏まえ、我が国においても5.9GHz帯のV2X通信への追加割当てに向けた検討を進めています。総務省では、2023年8月に「自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会」において「国際的な周波数調和や既存無線局との干渉などを勘案し、5,895MHz-5,925MHzの最大30MHz幅を目途 にV2X通信向けの割当てを検討する」旨を取りまとめた後、「自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備の推進」として、令和5年度補正予算に205億円を計上し、5.9GHz帯V2X通信の早期導入に向けた環境整備等を進めています。また、2024年6月から、国土交通省・警察庁・総務省の共同設置 の「自動運転インフラ検討会」において、自動運転に資するインフラの在り方について議論を進めています。総務省は、同検討会における議論等を踏まえ、2025年度から、関係省庁と連携して、新東名高速道路等において5.9GHz帯V2X通信及びV2N通信を用いた自動運転トラック実証等に取り組んでいます。
その他、我が国ITS技術の国際標準化・海外展開に資するため、国際電気通信連合無線通信部門 (ITU-R)の報告案への寄書入力や、ITS世界会議等の国際会議における情報発信、インドをはじめとするアジア地域における我が国技術の普及展開などに取り組んでいます。

電波システムの海外展開
電波の安心・安全な利用を確保するため、電波監視システムをはじめとした技術やシステムの役割が大きくなっており、その重要性は、電波の利用が急速に拡大しつつある東南アジア諸国をはじめ、諸外国においても認識されています。そのため、我が国が優れた技術を有する電波システムを海外に展開することを通じ、国際貢献を行うとともに、我が国の無線インフラ・サービスを国際競争力のある有望なビジネスに育てあげ、国内経済の更なる成長につなげることが重要な課題となっています。このような観点から、我が国が強みを有する電波システムについて、アジア諸国を中心としてグローバルに展開するため、官民が協力して戦略的な取組を推進しています。具体的には、我が国の周波数事情に合う周波数利用効率の高い技術が国際標準として策定されるよう、電波システムの海外展開を通じて当該技術の国際的 な優位性を確保することを目的に2017年度より「周波数の国際協調利用促進事業」を実施し、国内外における実証実験、技術のユーザーレベルでの人的交流等を行っています。

また、安全性・信頼性を確保したデジタルインフラに対する世界的な需要の高まりを踏まえ、総務省では、我が国企業のOpen RAN、vRANやそれを活用したシステムの海外展開に取り組んでいます。例えば、フィリピン等の東南アジア諸国において、Open RANの展開に向けた調査・実証を行い、5G のオープン化を進めています。また、海外展開を見据えた我が国におけるOpen RANエコシステムの促進を図る観点から、2022年12月に、国内の複数の通信事業者等により、O-RANアライアンスの規格に準拠した試験・認証を行う拠点「Japan OTIC」が横須賀テレコムリサーチパーク内に設置され、2023年6月には第1号となる認証が発行されたほか、Japan OTICの利用促進に向けた各種講習会が定期開催されています。
さらに、総務省では2024年度より、国内外の複数通信事業者のネットワークを模擬可能な相互接続性検証環境に関する技術試験を実施中です。

電波利用環境の整備
生体電磁環境対策の推進
総務省では、安心・安全に電波を利用できる環境の整備を推進しています。 具体的には、電波が人体の健康に好ましくない影響を及ぼさないようにするため、「電波防護指針」 を策定するとともに、その一部を電波法令における電波の強さなどに関する安全基準として定めています。それらの内容には、電波の安全性に関する長年の調査結果が反映されています。また、国際的なガイドラインとも同等性の担保を図っています。なお、これまでの調査・研究では、この安全基準を下回るレベルの電波と健康への影響との因果関係は確認されていません。総務省では、電波の安全性について、電話相談、説明会の開催やリーフレットの配布などを通じて国民への周知啓発を継続的に行っています。

また、電波利用機器の電波が医療機器へ及ぼす影響を防止するため、「電波の医療機器等への影響の調査研究」を毎年行っており、これまでの調査の結果により得られた知見について、「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針」として取りまとめています。さらに、医療機関での電波利用が進む中で、安心・安全な電波利用に向けて、医用テレメータ、携帯電話、無線LANなどの注意点や電波管理の在り方について、説明会をオンデマンドで配信し、医療従事者などへの周知活動を行っています。これらに関連した取組として、2017年度から「無線システム普及支援事業費等補助金」により医療施設向けに電波遮へい対策事業を実施し、医療施設において携帯電話が安心・安全に利用できる環境を整備しています。

電波の混信・妨害の予防
第5世代携帯電話(5G)等の新たな電波利用が拡大する中で、混信を排除し良好な電波利用環境を維持していくため、総務省では電波の監視を行い、混信を排除するとともに、それらの原因となり得る技術基準に適合しない無線設備(基準不適合設備)の対応の強化に取り組んでいます。
具体的には、一般消費者が基準不適合設備を購入・使用することにより、電波法違反(無線局の不法開設)となることや、他の無線局の運用を阻害するような混信その他の妨害を与えることを未然に防止するため、総務省においてインターネットの通信販売等、市場で広く販売されている無線設備を購入し、それらの電波の強さが電波法に定める「微弱無線設備」の基準に適合しているかどうかの測定を行い、結果を一般消費者の保護のための情報提供として毎年公表する「無線設備試買テスト」の取組が挙げられます。

無線設備試買テストの結果、微弱無線設備の基準に適合しないと判定して公表した無線設備の販売業者に対しては、技術基準に適合した無線設備のみを取り扱うことの徹底や、基準不適合設備の販売の自粛などを要請しています。このほか、2020年度には、「技術基準不適合無線機器の流通抑止のためのガイドライン」を策定しており、無線設備の製造業者、輸入業者及び販売業者が果たすべき努力義務や、インターネットショッピングモール運営者による自主的な取組を明らかにすることにより、基準不適合設備の流通抑止に向けた取組を推進しています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづき)Y.H

-実践編・応用編

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