実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 83 | テクノファ

投稿日:2021年6月26日 更新日:

このコーナーは、テクノファのキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はM.Iさんからの発信です。

私がキャリアコンサルタントとしての活動を通して感じていることについてお伝えすることの第二弾です。今回は大学とのかかわりについて書いていきます。一般的に、大学でキャリアコンサルタントが担っている役割としては、
*キャリアセンター等で学生たちを対象にした相談業務
*キャリアデザイン科目等の講師
といったものが主な分野になるのではないでしょうか。

私は地元の私立大学で非常勤講師を担当させていただいています。そもそものきっかけは、導入レベルのキャリアコンサルタント養成講座で大学の教授と出会い、大学における学生たちのキャリア開発支援に関する現状や課題をお聞きする機会があったことでした。その時は「いつかお役にたてることがあれば、連絡ください」くらいのことで終わったのですが、数年後、学外にサテライトオフィスを設置するということでご連絡をいただきました。

そこでは、卒業生を対象に就職活動、離転職の相談などを中心にした担当しました。
このオフィスでの3年間でたくさんの卒業生と出会い、それぞれの現実や思いに触れながら、地方都市でキャリアコンサルタントとして活動していく上で必要なことにも気づくことができ、その後の実務上のヒントにもなっています。

またサテライトオフィス勤務3年目からは、大学におけるキャリアデザイン科目のうち「コミュニケーション力育成」「社会人の仕事術」という二科目の講師も務めさせていただくことになりました。私は学生時代に高校の教諭を目指していた時期もあり、いつか教壇に立てたらという漠然とした思いはあったのですが、まさか、キャリアコンサルタントとして大学の非常勤講師を務めることになるとは想像もできない出来事でした。

大学の講義はシラバスに基づいて進んでいきますが、それぞれの講義の事例や資料、ワーク等の内容については任せていただき、日ごろから考えていた「学生として身につけて欲しい能力」に気づき、習得できるような内容を心がけ取り組んでいきました。

特に伝えていきたい内容は「内的キャリア」「自己決定・自己責任」といった考え方をベースに置き、学生時代に取り組んでほしいキャリア開発についてのものでした。

解説や個人作業、グループワークを通しての対話式の講義は、学生たちにとって未経験の部分が多く、新鮮な驚きを感じた学生も多かったようです。当初は、全く未経験な大学での講義に慣れず、戸惑うことも多く、学生たちとも十分な交流ができたかは自信がありませんでしたが、後日色々と感想を教えてくれた学生もいて、卒業後もSNSなどを通して繋がっています。

現在は教員を目指す学生を対象にした「職業指導」の講義も担当しており、彼らが実際に教育現場で実施していくキャリア教育についても、更に研究していく必要性を感じています。その点では、NPO日本キャリアカウンセリング研究会で行われている大学での実務者同士での交流は貴重なものです。他の方々の実践例をお聞きすることもあり、その背景や大学での環境、学生たちの生の様子、抱えている課題など話題が尽きることがありません。

講義における学生とのやりとりやテーマ設定等についてのヒントを得ることも多いです。やはり、同じ立場の専門家同士で交流することが、とても重要なことだということを実感します。大学内においても、他の先生方や職員の皆さんへもキャリア開発の重要性と可能性について伝え、広げていくことが今後の課題にもなっていきそうです。

また、企業の経営や人事に携わっている方々との交流もありますので、教育現場の様子を伝えたり、教育現場への要望をお聞きしたりすることも増えてきました。偶然にも教育現場と社会との間をつなぐ場所に立っていることもあり、今後は今の立場で地域におけるキャリアコンサルタントとしての役割を見つけ、果たしていきたいと思っています。
(つづく)K.I

-実践編・応用編

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