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実践編・応用編

経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティング 4

投稿日:2026年4月11日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会では、令和7年2月から10回にわたり、経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングに必要な能力、キャリアコンサルタントが当該能力を得るために有効な制度その他の施策の在り方、及びキャリアコンサルティングの活用活性化のために有効な施策について検討を行ってきました。前回に続き、その結果を報告します。今回が最終回です。

経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会|厚生労働省

キャリアコンサルタントの能力開発の促進

■キャリアコンサルタントの自発的な学びの促進

◆経済社会情勢の変化が加速するとともに、キャリアコンサルタントの活動領域及び活動内容が拡大する中、各キャリアコンサルタントには、自身の活動領域や、将来めざす姿を踏まえ、自ら積極的に学ぶことが求められます。

◆現在、キャリアコンサルタントの能力開発は、養成講習においてすべてのキャリアコンサルタントに求められる基礎的な能力を身につけ、資格を取得した後、更新講習の受講や自己研鑽によってより高度な能力を身につけるとともに、現場で実際にキャリアコンサルティングを行う中で実践的な能力を身につける仕組みになっています。

◆今般、キャリアコンサルタントが自ら能力開発を図っていく上での道筋を示すことを目的として、今後のキャリアコンサルティングに必要な能力について整理したところであり、キャリアコンサルタントには、これを活用して、計画的な更新講習の受講や自己研鑽に積極的に取り組むことを期待しています。また、実施機関においても、本報告書を参考として、より能力開発に資する講習の設定に取り組まれることを期待されます。

◆なお、各キャリアコンサルタントが能力開発に取り組んでいくにあたっては、自身が活動する領域において求められる専門的な能力だけでなく、他の領域において求められる能力についても学んだ上で、キャリアコンサルタントとしてより高い能力を身につけられるよう研鑽していくことが求められます。これにより、各領域で活動するキャリアコンサルタントの連携が促進されるとともに、提供されるキャリアコンサルティングの質が全体として向上することが期待されます。

■今後のさらなる検討

◆本研究会においては、今後のキャリアコンサルティングに必要な能力を体系的に整理したところでありますが、キャリアコンサルタントの能力開発をさらに促進していくためには、これらの能力を身につけるために必要な知識及び技能について、具体的な形で明らかにすることが有効であると考えられます。このため、今後、本研究会において行った整理をベースとして、さらに詳細な調査・検討を行い、必要な知識及び技能について体系的な整理を行うべきである考えております。

なお、上記の整理は、キャリアコンサルティングの現場で実際に必要とされている知識及び技能を具体的に示すことを目的として行われるべきであり、本研究会で行った整理についても、必要があれば、より実態に即した修正が行われるべきであると考えます。

◆また、上記の具体的な調査・検討を行った結果、本研究会においては異なる領域での異なる能力であると整理されている能力についても、共通する知識や技能があることが明らかになってくると考えられます。そのような共通する知識や技能について整理することにより、キャリアコンサルタントに求められる能力について改めて整理され、キャリアコンサルタントの能力開発に資する形でとりまとめることも可能になると考えられます。

■実践的な学びの機会の提供

◆キャリアコンサルタントが、更新講習の受講や自己研鑽だけでなく、現場での実際のキャリアコンサルティングについての学びを行うことは、知識・技能の向上につながるだけでなく、キャリアコンサルタントとして目指す姿を改めて自覚する契機にもなります。

◆また、キャリアコンサルタントには、知識・技能だけでなく、キャリアコンサルティング現場で直面する可能性がある倫理的ジレンマに適切に対応するための職業倫理についても学ぶこと求められますが、そのためには、実践的な学びが有効であると考えます。

◆このような実践的な学びの手法としては、活動経験の少ないキャリアコンサルタントが、経験豊富なキャリアコンサルタントの指導のもと、キャリアコンサルティング場面に陪席し、または実際にキャリアコンサルティングを行うインターンシップのほか、キャリアコンサルタントが個別事例を持ち寄り、その事例の見立てや援助方法の有効性について意見交換を行う事例検討会などの取組も、非常に効果的であると考えられます。

◆また、より実践的な学びの手法のひとつとして、スーパービジョンがあげられます。これは、高い知識・技能及び豊富な経験を有する指導者が、各キャリアコンサルタントの成長課題に応じた教育的介入を行うものであり、キャリアコンサルタントの知識・技能の向上、実践力強化を図る上で高い効果が期待できるものです。

◆厚生労働省においては、キャリアコンサルティングを担う人材の資質向上を促進するため、「中長期的なキャリア形成を支援するためのキャリアコンサルタント向け研修」を実施しています。本研修は、キャリアコンサルタントの資質向上に効果的な研修のモデルとなるものであり、民間においても、本取組を参考としながら資質向上に取り組むことが求められています。

キャリアコンサルティングの活用促進

◆キャリアコンサルタントの国家資格登録者数は、令和7年3月末時点で約8万人に達し、その活動の場は、企業が約4割、需給調整機関が約2割、学校等の教育機関が約2割、地域の各種支援機関が約1割と、様々な分野に広がっています。

◆一方で、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」(令和5年6月)によると、キャリアコンサルタントとして登録している者の約3割はキャリアコンサルティングに関連する活動を行っておらず、その理由は、「キャリアコンサルティングとは関係のない組織、部署等に所属している」「周囲にキャリアコンサルティングの仕事(ニーズ)がない」などが多くなっています。

◆また、厚生労働省の「能力開発基本調査」(令和6年度)によると、「キャリアコンサルティングを行う仕組みがない」とする事業所は約5割となっており、そのような事業所がキャリアコンサルティングを実施しない理由としては、「労働者からの希望がない」というものが最も多くなっています。

◆しかし、一方で、同調査によると、正社員については6割弱、正社員以外については4割弱の労働者がキャリアコンサルタントによる相談の利用を希望しており、実際には、経営層、管理職などにおいてキャリアコンサルティングの意義・効果や制度の認知が進んでいないことや、労働者がキャリアコンサルティングを受ける機会や相談経験が乏しいことが、活用へのハードルとなっている場合も多いと考えられます。このため、様々な立場の関係者がキャリア支援の価値を理解し、実際に体験する機会を拡充していくことが、今後の活用促進に向けて重要になります。

◆このような中、キャリアコンサルティングのさらなる活用を図るためには、キャリア形成やリ・スキリングの重要性・必要性とキャリアコンサルティングの効果について、国民の認知・理解を促進することにより、労働者、企業、学校等教育機関、業界団体等、様々なレベルにおける取組の促進に向けた機運醸成を図っていくことが必要です。

◆なお、キャリアコンサルティングの効果の周知にあたっては、様々な場面での具体的な活用事例の情報提供を行うほか、キャリア支援の成果を可視化・定量化するためのエビデンスに基づく指標(キャリア自律度、エンゲージメントスコア等)を活用することが有効です。

◆さらに、職業能力開発推進者の選任や事業内職業能力開発計画の作成といった職業能力開発促進法の措置について、役割や重要性、キャリアコンサルタントとの関係についてわかりやすく示し、現場で実践されるよう促すことも効果的であると考えられます。

◆こういった取組を進めていくにあたっては、キャリアコンサルタント自身が、キャリアコンサルティングの意義・効果についての理解の促進や、その活用に向けた働きかけや支援について、積極的に役割を果たしていくことが重要です。

◆また、労働者が、実際にキャリアコンサルティングを受け、その効果を実感する機会を増やすことも、キャリアコンサルティングの活用の促進にとって効果的であり、全国のあらゆる地域の労働者が、雇用形態や就業状況にかかわらず、質の高いキャリアコンサルティングを受けられる機会が確保されることが重要です。

◆各領域で活動するキャリアコンサルタントが、自らの知識・技能の向上に向けて研鑽することに加え、例えばITなど専門性の高い業種に精通した者がキャリアコンサルタントの資格を取得して活躍することを促進することも、キャリアコンサルティングの質の向上につながり、ひいてはキャリアコンサルタントの価値向上や活躍の機会の創出に寄与するものと期待されます。

おわりに

◆経済社会情勢が大きく変化する中での自律的・主体的なキャリア形成の重要性や、それを支援するキャリアコンサルティングの有効性については、社会全体の理解が未だ十分とはいえない状況にあります。

◆社会の理解の促進にあたっては、国としての周知の取組に加え、現場レベルで、相談者に対して質の高いキャリアコンサルティングを行うと同時に、組織や環境に対して様々な働きかけを行うことが重要であり、この意味で、キャリアコンサルタントには、これまで以上に大きな役割を果たすことが求められています。

◆本報告書が、キャリアコンサルタントの自発的な学びの促進とキャリアコンサルティングの質の向上の一助となることにより、キャリアに関わる社会的課題の解決に寄与するとともに、キャリアコンサルタント登録制度に対する信頼のさらなる向上につながることを期待しております。

(つづく)Y.H

 

 

-実践編・応用編

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