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実践編・応用編

社会インフラの老朽化にたいする対策が急務

投稿日:2025年3月2日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると組織の背景を理解するに有益な情報をお伝えします。
本年1月に埼玉県八潮市で下水道管老朽化による大規模な道路陥没事故が起きました。トラック1台が穴に転落し、運転手が安否不明となりました。原因は呼び径4.75メートルの下水道管の破損とみられています。

■インフラ長寿命化計画
高度経済成長期以降に集中的に整備されたインフラの老朽化は深刻であり、今後、建設から50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加していきます。インフラを計画的に維持管理・更新することにより、国民の安全・安心の確保や維持管理・更新に係るトータルコストの縮減・平準化等を図る必要があります。
令和3年6月に策定した「第2次国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」に基づき、損傷が軽微な段階で補修を行う「予防保全型」のインフラメンテナンスへの本格転換がなされつつあります。新技術・官民連携手法の普及促進等によるインフラメンテナンスの生産性向上、集約・再編等によるインフラストック適正化等の取組みを推進し、インフラが持つ機能が将来にわたって適切に発揮できる、持続可能なインフラメンテナンスの実現が重要です。
地域インフラ群再生戦略については、今後、予防 保全への転換を進めることにより費用の縮減・平準化を図り、持続的・効率的なインフラメンテナンスを推進することが重要となります。 しかし、多くの地方公共団体では、適切な維持管理を進める上で体制面・予算面に課題を抱えています。このような状況を踏まえ、今後は、各地方公共団体が個々のインフラを管理するのではなく、広域・複数・多分野のインフラを群としてとらえ、戦略的にマネジメントを行う 「地域インフラ群再生戦略マネジメント」を推進していく必要があります。令和5年12 月に11件40地方公共団体を先行的に課題解決に取り組むモデル地域に選定しました。まずはモデル地域において取組みを進め、その知見を全国展開へつなげていくことで、持続可能なインフラメンテナンスの実現を図っていくとしています。

■社会資本整備の推進
社会資本整備重点計画は、「社会資本整備重点計画法」に基づき、社会資本整備事業を重点的、効果的かつ効率的に推進するために策定する計画です。第4次計画の策定(平成27年)以降、自然災害の激甚化・頻発化やインフラの老朽化の進展、人口減少による地域社会の変化や国際競争の激化、デジタル革命の加速やグリーン社会の実現に向けた動き、ライフスタイル・価値観の多様化等、社会情勢は大きく変化しました。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大が、社会経済活動のあり方や人々の行動・意識・価値観に多大な影響を及ぼしました。こ うした点を踏まえ、第5次計画(令和3年5月閣議決定)では、計画期間内(5年)に達成すべき6つの重点目標を設定するとともに、インフラのストック効果を最大限発揮させるため、「3つの総力」と「インフラ経営」の視点を追加しました。
「3つの総力」とは以下のものです。
①様々な主体の連携による「主体の総力」
②ハード・ソフ ト一体で相乗効果を生み出す「手段の総力」
③整備だけでなく、将来の維持管理・利活用まで見据えた取組みを行う「時間軸の総力」

「インフ ラ経営」については、インフラを、国民が持つ「資産」としてとらえ、整備・維持管理・利活用の各段階において、工夫を凝らした新たな取組みを実施することにより、インフラの潜在力を引き出すとともに、インフラによる新たな価値を創造します。また、持続可能で質の高い社会資本整備を下支えするための取組みとして、「戦略的・計画的な社会資本整備のための安定的・持続的な公共投資」と「建設産業の担い手の確保・育成、生産性向上」が必要です。

さらに、新たに設定された重点目標を達成するため、全国レベルの第5次計画に基づき、 北海道から沖縄まで全国10ブロックにおいて 「地方ブロックにおける社会資本整備重点計画」 を令和3年8月に策定し、個別事業の完成時期や今後見込まれる事業費を記載するなど、事業の見通しをできるだけ明確化しました。これにより、各地方の特性、将来像や整備水準に応じた重点的、効率的、効果的な社会資本の整備を推進することとしています。

◆国土政策の推進
国土形成計画は、総合的かつ長期的な国土づくりの方向性を示すものです。第三次国土形成計画(令和5年7月閣議決定)では、我が国が直面するリスクと構造的な変化を踏まえ、地方に軸足を置いたビジョンとして、目指す国土の姿に「新時代に地域力をつなぐ国土」を掲 げています。
そのための国土構造の基本構想は次の通りです。
①広域レベルにおいては、広域圏の自立的発展と日本海側・太平洋側二面活用等の広域圏内・広域 圏間の連結強化を図る「全国的な回廊ネットワークを構築する。
②リニア中央新幹線等により三大都市圏を結ぶ「日本中央回廊」を形成する。
③ 「シームレスな拠点連結型国土」の構築を図ることにより、地域の魅力を高め、地方への人の 流れの創出・拡大を図る。

また、国土の刷新に向けた4つの重点テーマを掲げています。

①デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成

②持続可能な産業への構造転換

③グリーン国土の創造

④「人口減少下の国土利用・ 管理

 

国ではこれらを支える横断的な重点テーマとして、「国土基盤の高質化」、「地域を支える人材の確保・育成」を位置付け、相互に連携しながら相乗効果を発揮できるように、統合的に取り組むこととしています。

計画の実装に当たっては、地域生活圏の形成をはじめ、計画が描く将来ビジョンを国民全体で共有していくとともに、関係省庁とも緊密に連携しながら推進しく必要があります。また、令和5年10月に国土審議会の下に推進部会を設置し、検討を行っていくとし、二地域居住等の促進については、推進部会の下に設置された移住・二地域居住等促進専門委員会において検討を行い、中間とりまとめを公表しました。今後はそれに基づき、計画の掲げる「地方への人の流れの創出・拡大」の実現を図っていくとしています。

国土利用計画(全国計画)は、国土の利用に関する基本的な方向を示すものです。第六次国土利用計画(全国計画)(令和5年7月閣議決定)では、人口減少や高齢化等の国土利用をめぐる基本的条件の変化と課題を踏まえ、「地域全体の利益を実現する最適な国土利用・管理」、「土地本来の災害リスクを踏まえた賢い国土利用・管理」、「健全な生態系の確保によりつながる国土利用・管理」等を基本方針とし、持続可能で自然と共生した国土利用・管理を目指すこととしています。

第六次国土利用計画(全国計画)では、特に、中山間地域や都市の縁辺部において、人口 減少により、従来と同様に労力や費用をかけて土地を管理し続けることは困難になることが想定されることから、地域の目指すべき将来像を見据えた上で、優先的に維持したい農地を  はじめとする土地を明確化し、粗放的な管理や最小限の管理を導入するなど、地域の合意形成に基き、管理方法の転換等を図る「国土の管理構想」を全国で進めることとされました。

(出典) 国土交通省 令和6年版 国土交通白書

(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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