キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

「キャリア・カウンセラー」からの近況や情報

投稿日:2025年3月3日 更新日:

活躍している「キャリア・カウンセラー」からの近況や情報などを発信いたします。今回の便りはキャリア・カウンセラー”鈴木秀一さん”です。
================================================
身を滅ぼす罠としての「プライド」

今回は「プライド」について考えてみたい。(※:あくまで個人や団体に向けた非難では無いことを予め断わっておく。)
先日、自動車メーカーである日産とホンダの経営統合に向けた協議が決裂し、破談になったというニュースが流れた。ホンダが日産に対して提案した「日産が子会社として統合を受け入れるのなら・・云々」との文言について日産の経営陣らが大いに不快感を示したことに起因しているらしい。

このニュースは私を大いに落胆させたと同時に、なぜか世間を騒がせている例のフジテレビの件と重なって平家物語の冒頭にある「驕れる者は久しからず ただ春の夜の夢の如し」の一節が思い起こされた。日産側としては協議にあたって、話し合いの当初から「互いが対等な立場であること」に執拗な拘りを見せてはいたものの、実質的に両社の時価総額を観れば、日産を1とすればホンダは5倍もの規模であり、とても対等な立場などとは言い難い状況にあった。

ホンダに対して国土交通省から何らかの働き掛け(依頼)があったという情報もあるにせよ、構図的には「経営危機に瀕している日産に対してホンダが救いの手を差し伸べた」という流れがある以上、助けてもらう立場に在る日産はホンダに頭が上がらないはずである。しかし日産は、ホンダから要望されていた再建計画にも取り組まぬまま一ヶ月以上も放置していたとのこと。

さすがにホンダも痺れを切らしていたと思われる。過去のテレビCMで盛んに繰り返された「技術の日産」や矢沢永吉を使ったCM「やっちゃえ日産」というお決まりのフレーズも今となっては虚しく響く・・

現時点における日産は、ホンダ以外の他社メーカーとの比較においても技術的な後れは否めないだろう。巷では「やっちゃったな日産」などと冷笑する声もあるようだ・・

(-_-;) 悲しくなってしまう。日産は過去の栄光を握りしめたまま手放すことができなかったようだ。半世紀前までは日本屈指の自動車メーカーとしてトヨタと肩を並べる大企業であったことが忘れられないのか、それとも自分たちより歴史の浅い企業に対する『上から目線』の態度が漏れてしまうのか、いずれにしても起死回生に向けた千載一遇ともいえるチャンスを棒に振ってしまったわけである。

私事だが、少年時代に憧れたフェアレディZやブルーバード、青年期にも欲しくて堪らなかったスカイラインのGT-Rやシルビアなど、日産は数々の名車を世に送り出した大好きなメーカーだったことを付け加えておく。

それ故、きっといつか復活を果たし、ライバルとしてトヨタの前に立ち現れてくれるに違いない!と密かに期待していた。このまま朽ちて行く姿など見たくない想いもある。この記事を書きながらも、若かった私に夢を与えてくれた名車群が思い出されて涙が溢れてくる。そんな私なればこそ、ここまで日産を衰退させてしまった経営陣に対して赦せない気持ちが湧き起こるのを抑えられないのだ。

さて「プライド」を辞書で調べてみると以下のような2種類の解釈があるようだ。
〇 そもそもプライドとは「誇り」「自尊心」の意味で使われる英単語である。
〇 その他にも「うぬぼれ」や「傲慢」または「虚栄心」など、あまり宜しくない意味でも用いられることもある。

今回の場合、誇りに思う気持ちというより「長い歴史と伝統に裏打ちされた技術や能力が認められるべきであり、格下だったはずのホンダなどよりも依然として自分たちの方が優れているはずだ。」といった慢心を脇に置けなかったというべきだろう。

プライドを持つことはけっして悪いことではないのだろうが、現状を認めようとせず一時の感情に任せて反応的に破談にしてしまった結果、大勢の従業員や下請け関連会社の社員、その家族たちの営みを危険に晒したことは否定できない。

このままでは数万人に及ぶ関係者が路頭に迷うことにもなりかねない。経営の神様と称された故・松下幸之助氏は「企業は人なり」という言葉を残している。これは、企業にとって人材こそが最大の財産だという意味なのだが、大企業の経営者なればこそ意地やプライドなどを捨てても従事する人たちの生活を守ろうとする姿勢を見せてほしかった。

だが、彼らとしては兎にも角にも腹が立って仕方がなかったようだ・・この際、プライドを守ることなどよりも優先しなくてはならないことが幾つもあるだろうに、役員たち個々人の感情の揺れが決定に影響してしまったことが残念でならない。

余談だが、役員数についてもホンダの26名に対し、日産の63名という多さも他では見られない異様な常態だと言わざるを得ない。(天下のトヨタでさえ29名だという。)おそらくホンダが提案した「子会社化」とは、このような役員人事にまで手を入れようという意図があってのことだったのだろう。

一般的に「あの人ってプライドが高いよね・・」といった具合に、プライドは「自我の肥大」を示す意味で遣われることが多いようだが、過去に私の付近にも「いったい俺を誰だと思ってるんだ!」などと言い出す残念なカウンセラーがいたのが思い出される。

仮にも『心』について学んだ者ならば、せめて少しは「自己観察」ができていてほしいものだが、膨れ上がった自我の肥大にも気づけないようでは到底まともな仕事(カウンセリング)ができるとは思えない。謙虚さを失い、周囲に対してマウントを取るように堕ちてしまった方と一緒に居ても不快に
なるだけなので距離を置くようにしているが、おそらく徐々に孤立し、周囲から呆れられながらも自身の有り様に気づくこともなく「裸の王様」になってしまうことだろう。

このような展開は本人にとって明らかに大きな損失であるはずなのだが、自分を俯瞰することができず、心の内部で起こっていることを自覚できなければ、せっかく社会的に地位が高い位置に居ても、名誉な職に就けたとしても、周囲から尊敬されることもなく、むしろ敬遠されてしまうだろう。

以前、ある方が笑いながら「先生などと呼ばれて喜ぶほど私は愚かではないよ」と大勢の前で呟いたのを聞いて不思議に思ったことがあったが、これはつまり「先生などと呼ばれて有頂天になっているようでは、もはや成長の可能性が断たれたも同然。私はそうならないように注意しているよ。」といった自戒の念である。

たしかに偉そうにふんぞり返っている者には誰も敢えて指摘などしてくれないだろうし、叱ってくれる人もいなくなる。・・ということを表している。
「自我の肥大」が、そのままイコール「プライドの高さ」というわけではないだろうが、自分は何か特別な存在でもあるかのような錯覚に陥ってしまうのは人生において大きな損失であり、仏教で云うところの「魔境」のようなものかもしれない。

常に謙虚な姿勢を持ち続けるのは容易なことではないようだ。その意味において、もし他者から何らかの指摘を受けた場合には、感謝の気持ちを以て素直に受け取れる人間になりたいものである。(参照:「ジョハリの窓」)

今回の破談劇やフジテレビの問題もまた「ところで自分はどうなのだろう?」と、いまの自身を振り返る機会にしてみてはいかがだろうか?

=======================================================
【トピック1】更新講習のご案内
=======================================================
更新講習のご案内です。
「LGBTと向かい合う中長期キャリア形成支援-応用編」大募集中です!!
~中長期的なキャリア形成を視野に入れた、支援スキルの向上演習~
https://www.tfcc.jp/renewal/cd22.html
(コースID:CD22) <技能講習 7時間> 募集中! 【No.8】開催日:2025年3月22日(日) Webセミナー

知識講習(コースID:CD10) <知識講習 8時間>
https://www.tfcc.jp/renewal/cd10.html
知識講習はオンデマンドで学ぶことができます。
===================================================
【トピック2】JCC主催特別講座「One Day PCAGIP事例検討セミナー」のご案内
===================================================
NPO法人JCC主催特別講座
現在、多くの企業では社員のキャリア自律が求められています。
しかしながら、キャリアコンサルタント養成講座では問題解決のための面談技術が訓練され、キャリア開発を主眼とした訓練は行われていません。
また、セルフ・キャリアドックや1on1といった場面でも、社員は悩みを抱えて来談するとは限りません。この場合、キャリア形成の状況をアセスメントによって今後すべきキャリア発達の課題を明確にし、課題達成を促進する面談が求められます。

今回紹介する「開発的キャリアカウンセリング」は、企業内でキヤリア発達した姿を「個と組織の適合状態」と設定して、そこに向けて段階的に支援するプロセスを定義しました。このプロセスにそって、クライエントをアセスメントし、必要な支援を行っていくフレームワークを紹介します。
また、その中で求められる支援方法のうち特に重要な技術についてワークを交えて学んでいきます。
日時3月16日(日)
場所 オンライン(Zoom利用)
講師 高橋浩先生
定員20名(先着順)
参加費 一般13,000円(税込)、JCC会員 11,000円(税込)
Peatixサイト(https:// jcc24nk4.peatix.com)
または、JCCのホームページ(https://npo-jcc.org/)からお申込みください。
——————————————————————————–
▼編集後記▼
本日はとても天気に恵まれて、温かい一日でした。
来週はまた、ひどく冷え込むようです。この気温の乱高下、体調を整えるだけで、精一杯になってしまいます。知らないうちに、体は調整してくれているのだけど、それはそれなりに、エネルギーを使っているわけで、思いのほか消耗していたりします。
私たちの体に体力のメモリが目に見えればいいですが、そうなってはいないので、自分の体調の目安をわかっているといいですね。木の芽時という言い方もします。ご自愛ください。
(い)

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

暮らしの安心確保について2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 暮らしの安心確保についての最終回です。高齢になっても、住み慣れた地域で安心して暮らしていくことは、国民共通の願いです。そのためには、地域共生社会の実現に向けて努力することが重要です。 ■生活保護基準の見直しについて 生活保護基準の見直しについては、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られるよう、定期的に検証を行っています。2022(令和4)年12月に取りまとめられた社会保障審議会生活保護基準部会の報告書を踏まえ、食費や光熱費などの日常的に必要な費用に対応する生活扶助基準について、同部会の検証結果を反映することを基本とした上で …

海外進出日本企業で働く人々_韓国_労働市場

昨今は海外進出している企業で働く日本人も多数います。彼らを取り巻く状況を知っていることもキャリアコンサルタントには有用なことです。今回は韓国の労働市場についてお伝えします。 ■2023年最近の動向 1.尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権の「6大国政目標」と「110大国政課題」 2022年5月10日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任し、「6大国政目標」が定められました。具体的には、①常識を取り戻した正しい国、②民間が引っ張り、政府が後押しするダイナミックな経済、③あたたかく寄り添い、誰もが幸せな社会、④自律と創意で作る揺るぎない未来、⑤自由、平和、繁栄に寄与するグローバルな中枢国家、⑥韓国の …

海外進出日本企業で働く人々_イギリス_労働施策 5

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 英国の労働施策を紹介してきましたが、今回が最終回です。英国は、ヨーロッパ最大の人口を誇る巨大消費市場やビジネスハブとしての優位性を持ち合わせており、英国政府も外国企業への投資を促進するための税制上のインセンティブを提供しています。例えば他の多くの国に比べて、法人税率が低く設定されていることは良く知られています。そうした中、英国に拠点を持つ日系企業は約960社、最も多く進出しているのが製造業で約330社です。 ◆労働組合員数及び組織率 組織率は、男性よりも女性が高い割合で推移しています。部門別の組織率の差は大きく、2021年の公的部 …

日本における文化芸術立国の実現

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 世界各国は、近年文化芸術が有する創造性を社会の活性化に生かし、また、文化芸術を発信することによって、国の魅力を高めようとする戦略が見られます。文化庁においても「クール・ジャパン」とも称される現代の日本の文化のみならず、古くからの優れた伝統文化と併せて魅力ある日本の姿を発信することにより、世界における日本文化への理解を深めるための施策を推進しています。今回は文化芸術立国についてお話します。 ●文化芸術推進基本計画 政府は、文化芸術基本法に基づき、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、文化芸術推進基本計画を策定してい …

海外進出日本企業で働く人々_スウェーデン_社会保障施策 3

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 スウェーデンの社会保障施策の最終回です。スウェーデンは、「北欧の中の日本」と言われるほど両国の国民性には幾つかの共通点があります。例えば、几帳面で真面目・シャイな我慢強い性格のところです。また、グループ内の和の尊重や謙虚さも日本人に通じるところがあります。社会保障制度が手厚い北欧諸国の中でも、スウェーデンは特に育児に対する支援が手厚く、子供の大学までの教育費や18歳までの医療費が無料で、育児休暇などの制度も充実しています。スウェーデンに進出している日系企業の拠点数は、約160社です。またコミューンとは、日本の市町村に当たるものです …