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海外進出日本企業で働く人々_ベトナム_社会保障についてーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

投稿日:2024年4月28日 更新日:

昨今は海外進出している企業で働く日本人も多数います。彼らを取り巻く状況を知っていることもキャリアコンサルタントには有用なことです。日本とベトナムは、長年にわたって政治、経済、文化、スポーツと幅広い分野で友好関係が続いています。日系企業の進出も盛んで、約2千社がベトナムへ進出しており、キャリアコンサルタントが日系企業で働く人々と接触する機会は年々増加しています。私の友人も、6年間ほどベトナムの日本企業に派遣され、2年ほど前に帰国しました。彼の話しによると、ベトナムは人口に占める若年層の割合が大きいせいか、その企業にも多くの現地の若者が働いていたそうです。その中で、優秀な人材が他の企業に転職する例もあったようで、そのため、賃金上昇によるコスト増で、経営者は頭を抱えていたと語っていました。

社会保険制度 概要

近年GDPは毎年概ね7%程度伸びており経済成長が著しく、それに伴い貧困率も1992年には53%であったものが、2020年には1%まで低下している。社会保険(労働者を対象とした休業・労災に係る給付・退職年金等)、健康保険、失業保険とも国によって運営されており、加入率の増加を目指している。社会保険については、2018年の新たな政令により外国人労働者に対する社会保険料の徴収が定められた。疾病給付等の徴収については2018年12月から、退職年金等の徴収については2022年1月から開始されている。また、2019年の労働法改正により、2021年以降、定年退職年齢は、男性労働者が60歳3か月、女性労働者が55歳4か月となり、その後、2028年に男性が62歳、2035年に女性が60歳になるまで、毎年男性が3か月、女性が4か月ずつ引き上げられることとなっている。医療制度については、政府は医療保険の加入率と病床数の増加を目標に掲げている。2015年から改正医療保険法が施行されて、加入率は既に90%以上に増加している。課題として、合計特殊出生率が低下し、平均寿命の増進等により少子高齢化が急速に進んでいることから(東南アジア諸国と比較しても急速)、将来の高齢化に向けた対策が求められている。

2006年に立法化された社会保険法は、加入率低迷、将来的な財政破綻の予測等の課題があったことから、2014年11月に法律改正が行なわれ、2016年1月1日に施行された。主な改正の内容は、1か月以上3か月未満の労働契約で雇用される者・外国人労働者への適用拡大、産休制度について男性労働者への拡大、年金支給額の改正等である。なお、政令により、外国人労働者に対する強制社会保険に関する社会保険の適用については、疾病給付等の短期保険が2018年12月から、退職年金等の長期保険が2022年1月からとされている。ただし、これは1年以上の労働契約を締結している場合のみが対象とされ、企業内異動の場合は対象外となっている。進出している日本企業の多くはこれに該当している。

(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

■社会保険(強制)
イ 給付内容
①疾病給付金、②妊娠出産給付金、③労働災害・職業病給付金、④退職年金及び⑤遺族給付金があります。2007年1月1日に施行されました。

ロ 管理運営主体
労働傷病兵社会問題省が制度を管理し、ベトナム社会保険機関が保険料の徴収・給付、社会保険基金の運用を行います。

ハ 財源
社会保険基金は、国家予算と独立した財政基金であり、労使拠出の保険料、政府からの拠出金・補助金、運用利益等で成り立っています。

ニ 対象者
3か月以上の期間の定めのある労働契約又は期間の定めのない労働契約による労働者、職員、公務員、軍人、警察官等に適用されます。1か月以上3か月未満の短期契約の労働者、契約により海外へ働きに行く者、企業等の管理者、村レベルの非常勤者、ベトナムで勤務する外国人(企業内異動を除く)も対象になります。

ホ 受給要件・給付内容
(イ)疾病給付金
①労働災害以外の病気やけがにより働けなくなった労働者、②病気になった7歳未満の子の世話をする親である労働者に対して、休業期間中、休職直前月の給与日額の75%が支給されます。給付日数は、①は社会保険料納付期間により異なり、納付年数15年未満の場合は最大30日間、15年以上30年未満の場合は最大40日間、30年以上の場合は最大60日間となっています。また、保健省の定める長期療養を要する病気に罹った場合は納付期間に関係なく、年間最大180日間受給可能です。②は子の年齢により異なり、3歳未満は最大20日間、3歳以上7歳未満は最大15日間であります。

(ロ)妊娠出産給付金
出産前の女性は5回の出産前検診のための休暇を取得できます。女性は出産前後の原則6か月間、男性は原則5日間の出産休暇を取得することができます。

(ハ)労働災害・職業病給付金
労働時間中や通勤中の労働災害又は職業病により、労働能力が5%以上喪失した場合に受給することができます。等級審査の結果、労働能力が5~30%喪失した時は一時金が給付されます。給付額は、労働能力の喪失率が5%である場合、基準賃金の5倍相当です。その後、1%低下するごとに基準賃金の0.5倍が加増されます。労働能力の喪失率が31%以上低下している労働者は、毎月の給付金を受けることができます。給付額は、労働能力が31%低下している場合は、基準賃金の30%であり、その後、1%低下するごとに基準賃金の2%が加増されます。労働災害又は職業病により死亡した場合、その遺族は、基準賃金の36か月分に相当する一時金を受け取ることができます。

(ニ)退職年金
2022年において、原則、男性60歳6か月、女性55歳8か月(2028年に男性が62歳、2035年に女性が60歳になるまで、毎年男性が3か月、女性が4か月ずつ引き上げられる予定)で、20年以上社会保険料を納付している者が受給することができます。

(ホ)遺族年金
①社会保険料の12か月以上の納付実績がある者が死亡した場合
②被保険者が労働災害又は職業病により死亡した場合
③退職年金又は労働災害・職業病給付金を受給中の者が死亡した場合
葬祭一時金と、月々又は一時金の遺族年金が支給されます。葬祭一時金は、死亡した月の基準賃金の10か月相当が支給されます。遺族年金は、被保険者が納付実績、死亡理由等の要件を満たしており、遺族が18歳未満の子、一定年齢以上の配偶者・親、障害を有する配偶者・親等で、無収入又は収入が少ない場合に、毎月支給されます。1名当たりの遺族年金の月額は、基準賃金の50%相当が支給されます。

■任意社会保険
イ 制度の概要
強制社会保険の対象に含まれない、満15歳以上の農民や自営業者を加入対象とし、個人が任意に加入します。退職年金と遺族給付金があります。2008年1月1日に施行されました。

ロ 管理運営主体
労働傷病兵社会問題省が制度を管理し、ベトナム社会保険機関が保険料の徴収・給付及び社会保険基金の運用を行います。

ハ 保険料
保険料の負担は、月収の22%となっています。労働者は、毎月、3か月に1回、6か月に1回、12か月に1回のいずれかの給付期間を選ぶことができます。

■健康保険制度
国(保健省)が、健康保険法に基づき運営しています。企業に雇用される労働者だけではなく、子どもや高齢者、農林漁業従事者も対象になり、国民皆保険を目指しています。加入率は9割程度となっています。
(つづく)M.H

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