キャリアコンサルタント国家試験に役立つ法整備について勉強しましょう。今回はキャリアコンサルタントの業務に係りがある、働き方改革を実行するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)の説明をします。
働き方改革関連法は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等を目的とした法律で、「労働基準法」、「労働安全衛生法」、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」、「じん肺法」、「雇用対策法」、「労働契約法」、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」の8つの労働に関する法律の他に、関連する複数の法律の改正をひとつにまとめたものです。2018年6月に可決、成立し7月に法律公布、改正された関連法律は順次施行されています。キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティング業務を行う上でかかわりがある法律の改正を伴うものです。関連する法律の改正内容を規定する、働き方改革関連法を要約して下記します。
●働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
上記のように、この法律は多くの法律に関連していますが、先に説明した労働に関する8つの法律についての主な改正点は次のようになります。
1.第一条 労働基準法関係
・フレックスタイム制の拡充
・時間外労働の上限規制
・年5日の年次有給休暇の確実な取得
・高度プロフェッショナル制度の創設
・月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ
・労働条件の明示の方法
・過半数代表者の選任
2.第二条 じん肺法関係
・健康情報の取扱いルールの明確化・適正化
3.第三条 雇用対策法関係
題名改正
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
・国による基本方針の策定
・関係機関への要請
・中小企業における取組の推進のための関係者間の連携体制の整備
4.第四条 労働安全衛生法関係
・産業医の独立性・中立性の強化
・産業医等への情報提供の充実・強化
・産業医の活動と衛生委員会等との関係の強化
・労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制整備等
・労働者の心身の状態に関する情報の取扱い
・産業医等の業務の内容等の周知
・長時間労働者に対する面接指導
5.第五条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律関係
・派遣元事業主の派遣労働者に対する不利益な取扱いの禁止
・①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②同種業務の一般労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金などの要件を満たす労使協定による待遇、のいずれかを確保することが義務化。
6.第六条 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法関係
・勤務間インターバル制度の導入
・取引上の必要な配慮
・労働時間等設定改善企業委員会
7.第七条 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律関係
題名改正
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
・基本的理念策定
・個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断される
・正規雇用労働者との同一条件での差別的な取扱いの禁止
・待遇内容、正規雇用労働者との待遇差などの説明義務の強化
・事業主による短時間・有期雇用労働者に対する不利益な取扱いの禁止
8.第八条 労働契約法関係
・目的規定改正
・第二十条の期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を削除
厚生労働省参考資料 出典 https://www.mhlw.go.jp/content/000611834.pdf
今回は、キャリアコンサルタントのキャリアコンサルティング業務に係る働き方改革で、働き方改革関連法で改正された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」の改正項目を説明します。
●労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
改正項目
比較対象労働者の賃金などの待遇に関する情報の提供が義務付けられ、情報提供がなければ労働者派遣契約を締結することができないことが新設。
労働者派遣に関する料金の額について、派遣元事業主が、派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれかを選択することが義務化に改正。
派遣労働者と派遣先に雇用される労働者の間の待遇に、不合理と認められる相違を設けてはならないことが改正。
派遣元企業は派遣労働者に対して待遇に関する説明をする義務が新設。
派遣元事業主は、苦情の自主的な解決を図ることが新設。
下記条文のアンダーラインは働き方改革関連法により新設された条文、及び影響のある変更のあった条文です。
(目的)
第一条 この法律は、職業安定法と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。
(用語の意義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(船員に対する適用除外)
第三条 この法律は、船員職業安定法第六条第一項に規定する船員については、適用しない。
第四条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。
一 港湾運送業務
二 建設業務
三 警備業法により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
(契約の内容等)
第二十六条 労働者派遣契約の当事者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。
7 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、第一項の規定により労働者派遣契約を締結するに当たつては、あらかじめ、派遣元事業主に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報その他の厚生労働省令で定める情報を提供しなければならない。
8 前項の「比較対象労働者」とは、当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする者に雇用される通常の労働者であつて、その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が、当該労働者派遣に係る派遣労働者と同一であると見込まれるものその他の当該派遣労働者と待遇を比較すべき労働者として厚生労働省令で定めるものをいう。
9 派遣元事業主は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から第七項の規定による情報の提供がないときは、当該者との間で、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事する業務に係る労働者派遣契約を締結してはならない。
10 派遣先は、第七項の情報に変更があつたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、派遣元事業主に対し、当該変更の内容に関する情報を提供しなければならない。
11 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者及び派遣先は、当該労働者派遣に関する料金の額について、派遣元事業主が、第三十条の四第一項の協定に係る労働者派遣以外の労働者派遣にあつては第三十条の三の規定、同項の協定に係る労働者派遣にあつては同項第二号から第五号までに掲げる事項に関する協定の定めを遵守することができるものとなるように配慮しなければならない。
(不合理な待遇の禁止等)
第三十条の三 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
2 派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であつて、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない。
第三十条の四 派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その雇用する派遣労働者の待遇(第四十条第二項の教育訓練、同条第三項の福利厚生施設その他の厚生労働省令で定めるものに係るものを除く。以下この項において同じ。)について、次に掲げる事項を定めたときは、前条の規定は、第一号に掲げる範囲に属する派遣労働者の待遇については適用しない。ただし、第二号、第四号若しくは第五号に掲げる事項であつて当該協定で定めたものを遵守していない場合又は第三号に関する当該協定の定めによる公正な評価に取り組んでいない場合は、この限りでない。
一 その待遇が当該協定で定めるところによることとされる派遣労働者の範囲
二 前号に掲げる範囲に属する派遣労働者の賃金の決定の方法(次のイ及びロ(通勤手当その他の厚生労働省令で定めるものにあつては、イ)に該当するものに限る。)
イ 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となるものであること。
ロ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があつた場合に賃金が改善されるものであること。
三 派遣元事業主は、前号に掲げる賃金の決定の方法により賃金を決定するに当たつては、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、その賃金を決定すること。
四 第一号に掲げる範囲に属する派遣労働者の待遇(賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定の方法(派遣労働者の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く。)の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違が生じることとならないものに限る。)
五 派遣元事業主は、第一号に掲げる範囲に属する派遣労働者に対して第三十条の二第一項の規定による教育訓練を実施すること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
2 前項の協定を締結した派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、当該協定をその雇用する労働者に周知しなければならない。
(つづく)Y.H