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実践編・応用編

キャリコンサルタントの相談実施の包括的な推進

投稿日:2024年11月19日 更新日:

今回はキャリコンサルタントの活動において、相談実施の包括的な推進と効果的な実施能力について説明します。

■キャリアコンサルタントがひととおりの相談実施のためのスキルを理解したうえで求められる「より効果的に進めるための能力」について説明します。キャリアに関わる教育・普及活動をはじめ5つのポイントがあります。
1.キャリアに関する教育・普及活動
2.環境への働きかけの認識と実践
3.ネットワークの認識と実践
4.ョン自己研鑽・スーパービジョン
5.姿勢キャリア開発・形成支援者としての姿勢

■1.キャリアに関する教育・普及活動
キャリアコンサルタントは、個人や組織だけでなく、社会一般に対しても、さまざまな活動を通じてキャリア開発・形成の重要性やその支援活動としてのキャリアコンサルティングの重要性、必要性などについて教育・普及することが求められます。先に説明したように、日本の社会ではキャリアについての認識がそれほど深くありませんので、それぞれの状況におけるニーズを踏まえ、個人の主体的なキャリア開発・形成やキャリア開発・形成の支援に関する教育・研修プログラムの企画、運営をすることも啓発活動として求められます。

■2.環境への働きかけの認識と実践
個人の主体的なキャリア開発・形成は、個人と環境(地域、組織、家族等個人を取り巻く環境)との相互作用によって培われるものです。この点を十分認識し、来談者個人に対する支援だけでは解決できない環境の問題点の発見や指摘、改善提案などの環境に対する介入、あるいは環境への働きかけを関係者と協力して行うことができることも求められます。
先に「方策の実行」支援において、来談者の取り組みを阻害するような状況は改善されなければならず、そのためにキャリアコンサルタントは来談者を取り巻く環境を改善しなければならないこと説明しました。その際には、個人のキャリア開発・形成が単に個人の問題ではなく個人と組織の共生を目指すものであることを、キャリアコンサルタント自身が理解していないと、企業などの責任者を納得させることができません。

■3.ネットワークの認識と実践
①ネットワークの重要性の認識
先に「能力開発の支援」のところで説明したように、来談者に対して適切な情報を提供することができるためにはネットワークが重要です。すなわち、行政機関や公共機関をはじめその他の専門機関や専門家とのさまざまなネットワークです。1人のキャリアコンサルタントができることには限界があるからです。その認識が無い場合はキャリアコンサルティングができません。
②ネットワークの形成
ネットワークの重要性を認識したうえで、関係機関や関係者と日頃から情報交換を行い、協力関係を築いていかなければなりません。ここでいう関係機関や関係者には、自分の専門領域ではない領域の情報を持っている機関(医療機関も含む)あるいは他の専門家も含まれます。繰り返しになりますが、1人のキャリアコンサルタントにできることは限られています。その限界を認識しているからこそ、それを補うためにネットワークが重要になります。
③専門機関への紹介(リファー)の実施
個人や組織等のさまざまなニーズに応えるために、キャリアコンサルタントの任務の範囲、自身の能力の範囲を超えることについては、 自身の持つネットワークを活用して、必要かつ適切なサービスを提供する専門機関や専門家を選択し、紹介斡旋をすることが求められます。
これはキャリアコンサルタントとしての職業倫理でもあります。
④異なる分野の専門家への照会(コンサルテーション)の実施
異なる分野の専門家に意見や助言を求めることをコンサルテーションと言います。個人のキャリア開発・形成の支援を効果的に実施するために、必要な追加情報を入手したり、必要な助言を求めたりすることもキャリアコンサルタントの重要な能力です。そのためにも、ネットワークが必要になります。

■4.自己研鑽・スーパービジョン
①自己研鑽
これまでの説明からもわかるように、キャリアコンサルタントに求められることは多岐にわたります。際限がないと言っても過言でもありません。そのため、キャリアコンサルタントは絶えず自己理解を深めることと能力の限界を認識することの重要性を認識しなければなりません。常に学ぶ姿勢を維持して、さまざまな機会を自ら求めて新たな情報を吸収し、自身の力量を向上させていくことが求められます。
キャリアコンサルティングの対象は常に生身の人間であることから、人間理解の重要性について十分に認識していなければなりません。
②スーパービジョン
キャリアコンサルタントには、自分の活動(特に面談)について指導者から定期的に指導を受けることが求められます。これをスーパービジョンと言います。スーパービジョンは、指導者から定期的には受けなくてもよいと言われるまで受けなければなりません。しかし、定期的には受けなくてもよいといわれた後でも、必要に応じて受けなければなりません。それが自己研鑽だからです。
そのためには、スーパービジョンを受ける準備が必要です。スーパービジョンでは、自分のどこに問題を感じているか、どういう点に指導を求めるか、自分が引っかかっている点はどこか、などを明示できなければなりません。どこが問題かが分からないようでは、熟練レベルとは言えません。
準備としては、面談記録(逐語録)を作成することです。逐語録には、来談者の属性をはじめ、来談動機、主訴、スーパービジョンを受けたい点、などを明記しなければなりません。さらに、自分が感じたこと、自分の見立てなどがわかるように書かなければなりません。もし、来談者の都合で逐語録が作成できない場合には、それに代わるものとして面談の要約を来談者の言葉でまとめなければなりません。このような逐語録や要約の作り方が分からない場合は、その指導を受けることからスーパービジョンが始まることになります。当然ながら、作成した相談記録は医療の現場におけるカルテと同様ですから、その取り扱いも倫理として定められています。
■5.キャリア開発・形成支援者としての姿勢
キャリアコンサルテイングは個人の人生に関わる重要でかつデリケートな活動です。キャリアコンサルタントはそのような役割、責任を担うものであることを十分自覚し、キャリア開発・形成の支援者としての自身のあるべき姿を明確にしなければなりません。
キャリア開発・形成の支援者として、自己理解を深め、自分自身のキャリアプランを明確にして、自身のキャリア開発・形成に取り組んでいなければ、他者の支援はできません。

労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業 |厚生労働省
(つづく)A.K

-実践編・応用編

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