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実践編・応用編

日本における労働経済の推移

投稿日:2025年7月2日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
2022年の我が国の経済を見ると、感染防止策と経済活動の両立が図られる中で、個人消費の持ち直しや設備投資に牽引され、実質GDPは小幅ながら前年より増加しました。企業の業況は非製造業を中心に持ち直し、経常利益は高水準に維持する中で、設備投資は活発化した。一方で、企業の倒産は3年ぶりに前年を上回っている。今回は、労働経済の推移について、お話します。

◆一般経済の動向
■GDPは緩やかな回復がみられた
2023年のGDPについてみると、年前半は外需が好調だったことに加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下「感染症」という。)の5類感染症移行により、経済社会 活動の正常化が進み、インバウンド需要の回復やサービス消費の持ち直しがみられたことで高い成長が実現しました。一方、年後半は、賃金上昇が物価上昇に追い付いていない中、消費が力強 さを欠くなど、マイナス成長となりました。 2023年の名目・実質GDPの推移をみると、名目GDPについて、2022年第Ⅳ四半期(10-12月期)は570兆円程度であったものが、2023年第Ⅱ四半期(4-6月期)には595兆円まで増加しており、半年間で30兆円近く増加しました。また、同期間において、実質GDPも550兆円から560兆円超まで増加しています。ただし、2023年後半においては、名目・実質ともに、GDPはほぼ横ばいとなっています。

実質GDPの成長率について、需要項目別の寄与度をみていきます。 2023年の動きを四半期ごとにみると、第Ⅰ四半期(1-3月期)は、半導体市況の軟化等を背景として、アジア向けを中心に輸出が弱含み、外需(純輸出)がマイナスに寄与したものの、経済社会活動が活発化動向サービス消費の持ち直し等により民間最終消費支出がプラス寄与となたことから、プラス成長となりました。第Ⅱ四半期(4-6月期)は、物価上昇の影響により、民間最終消費支出がマイナス寄与となったが、外需がプラスに寄与したことで、結果としてGDPはプラス成長となりました。第Ⅲ四半期(7-9月期)は、輸出が伸び悩む中、引き続き民間最終消費支出がマイナスに寄与し、マイナス成長となりました。第Ⅳ四半期(10-12月期)も民間最終消費支出は、マイナスに寄与したものの、外需がプラスになったことに加え、半導体や自動車関連で、生産能力強化のための工場新設等の投資が実行され始めたことから民間総資本形成がプラスに寄与し、2四半期ぶりのプラス成長となりました。

◆企業の動向

■企業の業況は、製造業・非製造業ともに好調な状況がうかがえました。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、企業の業況判断をみていきます。製造業・非製造業別にみると、「製造業」「非製造業」ともに、2020年に急速に悪化したのち、2021~2022年にかけて持ち直しが続きました。「製造業」については、2022年末に半導体不足や原材料価格の高騰等により景況感が悪化したものの、2023 年半ば以降は改善し、0を上回って推移しました。「非製造業」においては、2022年の景況感の改善が2023年も続いており、プラス幅が拡大しました。
2023年の動きをより詳細にみると、「製造業」では、3月調査において、米国の金融引き締めにより世界経済が減速する中で需要が落ち込み、一般機械と電気機械を中心に景況感は悪化しました。6月調査以降は、食料品製造業等における価格転嫁の進展や半導体不足の解消による 自動車生産の回復が全体を押し上げたことなどにより、景況感に改善がみられ、12月調査で はプラスに転じました。他方で、「非製造業」については、経済社会活動の活発化に伴うサービス消費やインバウンド需要の回復の影響で、2022年に引き続きプラス幅が拡大し、感染拡大前 の水準を超える高い伸びとなりました。企業規模別の業況判断D.I.の推移をみてみますと。製造業のうち、「大企業製造業」は年間を通じて0を上回って推移しました。「中小企業製造業」は、2019年6月調査以降0 を下回って推移していたものの、2023年12月調査時には改善し、19四半期ぶりにプラスと なりました。非製造業についてみると、「大企業非製造業」は経済社会活動の活発化等により改善が続きました。「中小企業非製造業」は、2023年9月調査時の業況感が6四半期連続で改善し、感染拡大前で最も高かった2019年3月調査と同じ水準まで回復しました。
鉱工業生産指数及び第3次産業活動指数の推移をみていきます。 鉱工業生産指数についてみると、2023年1月は、外需の悪化等の原因により一時的に生産指数は低下したものの、年間を通しては横ばいで推移しました。サービス部門の活動動向を示す第3次産業活動指数の動きをみていきます。2023 年は感染症の影響が緩和され、企業間の取引活動が活発化したことなどを受け、持ち直しの動 きがあったものの、10月以降は電気・ガス・熱供給・水道業を中心に指数が低下したことで、消費やインバウンド需要の回復の影響で、2022年に引き続きプラス幅が拡大し、感染拡大前 の水準を超える高い伸びとなりました。 企業規模別の業況判断D.I.の推移は、製造業のうち、「大企業製造業」は年間を通じて0を上回って推移しましたた。「中小企業製造業」は、2019年6月調査以降0を下回って推移していたものの、2023年12月調査時には改善し、19四半期ぶりにプラスとなりました。非製造業についてみると、「大企業非製造業」は経済社会活動の活発化等により改善が続きました。「中小企業非製造業」は、2023年9月調査時の業況感が6四半期連続で改善し、感染拡大前で最も高かった2019年3月調査と同じ水準まで回復しました。 次に、鉱工業生産指数及び第3次産業活動指数の推移をみていきます。 鉱工業生産指数についてみると、2023年1月は、外需の悪化等の原因により一時的に生産指 数は低下したものの、年間を通しては横ばいで推移しました。
サービス部門の活動動向を示す第3次産業活動指数の動きをみていきます。2023 年は感染症の影響が緩和され、企業間の取引活動が活発化したことなどを受け、持ち直しの動きがあったものの、10月以降は電気・ガス・熱供給・水道業を中心に指数が低下したことで、足踏みがみられました。(出典)厚生労働省 令和6年版 労働経済の分析

■企業の倒産件数は2019年以来4年ぶりに8,000件台となりまし。
企業倒産の状況をみると、2023年の倒産件数は、2年連続で前年を上回り、2019年以来4年ぶりに8,000件台となりました。感染拡大時の急激な業績悪化への支援策であった「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」の民間返済が2023年7月 から本格化したことで、資金繰りが厳しくなった企業の増加や、原材料価格の高騰等が追い打 ちをかけたことなどが要因であると考えられます。倒産の状況をみると、2023年は人手不足関連倒産が倒産件数全体に占める割合は低下したものの、人手不足関連倒産の件数は調査開始以降最多となりました。内訳をみると、「後継者難型」の件数が7割以上と最も多く、次いで「人件費高騰型」「求人難型」「従業員退職型」と続いています。
倒産要因の中でも特に「人件費高騰」による倒産件数は前年比8倍超となり、大幅な増加と なりました。また、前年よりも大きく増加している「求人難型」については、賃上げの局面の中 で、求職者が賃金水準などにおいて、より良い労働条件を求めるようになり、企業の提示する 賃金水準等とのミスマッチがあった可能性も示唆されます。企業存続に向けても、賃上げ分の原資の確保のため、企業の商品・サービスへの価格転嫁が更に重要度を増すものと考えられます。(出典)厚生労働省 令和6年版 労働経済の分析

◆物価・消費の動向
■消費者物価指数(総合)は高い上昇率を維持
消費者物価指数(総合)(以下「消費者物価指数」という。)の推移を財・サービス分類別寄与度とともにみていきます。消費者物価指数は、2021年9月に前年同月比プラスとなって以降、2023年1月まで上昇率は拡大していき、2月以降は前年同月比2~3%台で推移しました。 財・サービス分類別寄与度をみると、電気・ガス価格激変緩和対策等4により、2023年2月以降、「電気・都市ガス・水道」はマイナスに寄与しました。一方で、経済社会活動が正常化する中で、2022年から続く円安進行による原材料高の影響を受けた「外食」や、訪日外国人客の 回復による「宿泊料」の高騰も相まって、「一般サービス」はプラス寄与となってます。また、 2023年の財については2022年に引き続き、原材料価格の高騰によって「食料工業製品」「他の工業製品」等を中心にプラス寄与となった結果、消費者物価指数は高い上昇率を維持しました。

■消費者態度指数は持ち直し改善に向けた動き
消費者態度指数の動向をみていきます。消費者態度指数は、2020年前半の感染症の拡大によって急速に低下したものの、その後は上昇傾向で推移しました。2021年末には物価高を背景に再び低下に転じ、2022年は低下傾向で推移しました。その後、2022年末から2023年前半にかけては経済正常化の本格化への期待もあって、上昇傾向で推移しました。2023年半ばには、食品の値上げラッシュなどの物価上昇が続く中で、一時的に持ち直しに足踏みがみられたものの、年間を通してみると、改善の動きがみられました。ただし、2023年12 月の水準は感染拡大前の2019年以前の水準まで回復していません。 消費者意識指標についてみると、2023年には「暮らし向き」「雇用環境」「収入の増え方」 「耐久消費財の買い時判断」の全ての項目で改善に向けた動きがみられました
(つづく)Y.H

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