ICT利活用の推進
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概要
2000年に情報通信技術戦略本部が設置され、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)が制定されて以降、我が国では、e-Japan戦略やデジタル田園都市国家構想総合戦略など様々な国家戦略を掲げ、ICTの利活用を推進してきました。これらの方針を踏まえ、総務省では、少子高齢化とそれに伴う労働力の不足、医療・介護費の増大、自然災害の激甚化など、我が国が抱える社会・経済問題やデジタル空間の進展に伴う新たな課題等の解決に向け、地域社会のDX化や新たな情報通信技術、データ流通による社会活性化、情報の利用環境など様々な分野におけるICTの利活用を推進してきました。
今後の課題と方向性
我が国は、少子高齢化による労働人口の減少や国内市場の縮小が見込まれるなど、厳しい経済環境にあります。また、災害の激甚・頻発化への対処や、50年以上経過する公共インフラの老朽化対応など、課題が山積しています。
このような課題を解決する上で、デジタルは、地域社会の生産性や利便性を飛躍的に高め、産業や生活の質を大きく向上させ、地域の魅力を高める力を持っています。政府は2024年度に「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置し、「地方こそ成長の主役」との発想に基づき、日本経済成長の起爆剤としての大規模な地方創生策の検討を開始し、「地方創生2.0の「基本的な考え方」」や「地方創生2.0 「基本構想」」において、デジタル・新技術の徹底活用を柱の一つに掲げています。
そして、SNSプラットフォーム事業者が提供するサービスは生活の利便性向上に貢献する一方、インターネット上で流通する誹謗中傷や偽・誤情報の流通・拡散の問題が顕在化しています。さらに、生成 AIや仮想空間(メタバース)といった新たな情報通信技術の登場により、デジタル空間が大きく変容 しています。こうした課題等を踏まえ、地域社会・経済の活性化に資するDX(デジタル変革)の推進やデジタル空間の健全性確保と新たな発展の牽引、そして、安心・安全な情報利用環境の整備を行うことが重要です。
地域社会・経済の活性化に資するDX化
日本の地域社会・経済は、少子高齢化と人口減少による働き手不足や市場規模の縮小、頻発する自然災害や老朽化するインフラなどの様々な課題に直面しており、上記で述べたように、政府は 「地方創生2.0の「基本的な考え方」」(令和6年10月11日閣議決定)や「地方創生2.0「基本構想」」(令和7年6月13日閣議決定)において、デジタル・新技術の徹底活用を柱の一つに掲げています。
地域経済・社会を維持・発展させ、地域住民の生活を支えるためには、AIを含むデジタル技術の徹底活用により、地域課題を解決(地域社会DX)し、イノベーションにより付加価値を創出していくことが求められます。そのためには、その中核的担い手となりうるデジタル技術を活用する企業が、地域のニーズに合った事業展開をできるよう支援することが重要です。
このような背景のもと、総務省では、2025年2月から、「地域社会DXの推進に向けた情報通信政策の在り方」について情報通信審議会に諮問しています。本審議会では、日本の地域社会・経済を取り巻く状況や、AIを含むデジタル技術の最新動向を踏まえた、地域社会DXの推進に向けた情報通信政策の在り方について課題を整理し、必要な政策の方向性を検討しています。
デジタル技術を活用した社会課題解決
◆地域社会DX推進パッケージ事業
ICT技術を活用した地方創生2.0の実現に向け、デジタル技術の実装による地域社会課題の解決(地域社会DX)を図るため、総務省では、2024年度から「地域社会DX推進パッケージ事業」を開始しました。本事業では、①デジタル人材/体制の確保支援、②先進的ソリューションの実用化支援(実証事業)、③地域のデジタル基盤の整備支援(補助事業)等の総合的な施策を通じて、デジタル実装の好事例を創出するとともに、必要な効果的・効率的な情報発信等を実施することで、全国における早期実用化を促進するものです。特に①については、都道府県を中心とした持続可能な地域のDX推進体制の構築への支援、デジタル実装に必要となる地域課題の整理、導入・運用計画の策定に対する専門家による助言の提供など、地域のニーズに応じて選択が可能な複数の支援策を講じています。
◆デジタル技術活用の普及
地方公共団体が地域社会DXを推進するにあたって、参考となる知見、ノウハウ等の情報不足、各種情報の分散といった課題が指摘されています。これらの課題解決のため、総務省では、各地域における先進事例に関する調査を行い、調査結果等により得られた地域社会DX推進に資する情報を一元的に提供するポータルサイト「地域社会DXナビ」を2024年10月に公開し、地域社会DXナビを通じた継続的情報発信により、地方公共団体、地域企業等におけるデジタル技術活用の普及を促進しています。
また、安全性・信頼性、供給安定性及びオープン性が確保された5G設備の導入を促す観点から、ローカル5G免許人が取得した一定のローカル5G設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置を設けており、適用対象を主に住宅用インターネットサービスの提供のために利用されるローカル5G設備に見直すとともに、2026年度末まで適用期限を延長しています。
地域デジタル人材支援の充実
地域情報化アドバイザー派遣制度
総務省では、2007年度から、ICTを地域の課題解決に活用する取組に対して、地方公共団体等からの求めに応じて、ICTの知見、ノウハウを有する専門家(「地域情報化アドバイザー」)を派遣し、助言・提言・情報提供等を行うことにより、地域におけるICT利活用を促進し、活力と魅力ある地域づくりに寄与するとともに、地域の中核を担える人材の育成を図っています。さらに、2025年度からは、地方公共団体からの推薦に加え、地方公共団体等と共同で事業を実施していること等を要件に地場企業等にも派遣対象を拡大しました。
「地域情報化アドバイザー」は、2025年度、大学での研究活動や地域における企業活動、NPO活動等を通じた地域情報化に知見・ノウハウを持つ民間有識者等242名に委嘱しており、2024年度には297件の派遣を行いました。
デジタル人材ハブ
デジタル人材を地域へ派遣するシェアリングスキームは、複数存在しており、派遣対象、派遣期間、目的及び有するスキルなどがそれぞれ異なるところ、デジタル人材を求める地域が、目的に応じた適切な制度や人材のマッチングを支援する「デジタル人材ハブ(仮称)」を2025年度に設けることを予定 しています。
デジタル人材ハブの主な機能としては、地域情報化アドバイザー派遣制度等、総務省が実施するデジタル人材のシェアリングスキームについて、目的に応じ適切な制度を選択できるよう支援することや、DX人材を必要としている自治体及び地域社会に対し、人材リストを提供するスキームの中から目的に応じた適切な人材の情報の提供等を検討しており、デジタル人材ハブを通じ、適切なマッチングを行うことで、地域情報化の推進を加速させています。
テレワークの概要
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大を経て、2024年の企業のテレワーク導入率は全国 47.3%と一定程度の普及が進んだ一方で、近年は一部企業で出社回帰の傾向がみられるとともに、依然として都市部と地方部、業種間での格差が生じている状況にあります。 このような状況の中、テレワークに関する機運醸成の観点から、テレワーク月間実行委員会(内閣官房内閣人事局、内閣府地方創生推進室、デジタル庁、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、観光庁、環境省、一般社団法人日本テレワーク協会、日本テレワーク学会)の主唱により、毎年11月をテレワークの集中取組期間である「テレワーク月間」として、テレワークの実施に際しての効果測定 (働き方改革寄与、業務効率化等)の調査や、関係府省庁等によるイベントやセミナーを開催しています。 また、先進事例の選定・公表を通じて企業などのテレワーク導入のインセンティブを高め、テレワーク の導入を検討する企業にとっての参考事例の蓄積にもつなげるため、総務省では、2015年から、テレワークの十分な利用実績が認められる企業の表彰を行っています。
2024年には、テレワークの活用が一定程度広がった現状を踏まえ、テレワークの制度導入や十分な活用実績に留まらず、テレワークの活用による経営効果の発揮や、テレワークの導入が馴染まないと思われている業態の企業におけるテレワーク活用・業務改革等において、特色ある取組を実施しており、その内容が優れている企業・団体を「テレワークトップランナー2024」として選定・公表し、特に優れた取組を行っている企業には「総務大臣賞」を授与しました。
重要データの安心・安全な活用
防災情報システムの整備
我が国は世界有数の災害大国であり、大規模な自然災害が発生する都度、社会・経済的に大きな損害を被ってきました。今後も南海トラフ地震をはじめとする大規模な自然災害の発生が予測される中で、ICTを効率的に活用し災害に伴う人的・物的損害を軽減していくことが重要です。
◆災害対策用移動通信機器の配備
総務省では、携帯電話などの通信が遮断した場合でも被災地域における通信が確保できるよう、地方自治体などに、災害対策用移動通信機器を貸し出しています(2025年5月現在、簡易無線1,065台、MCA無線179台及び衛星携帯電話100台を全国の総合通信局等に配備)。また、2024年1月に発生した石川県能登地方の地震を機に、新たに衛星インターネット機器や公共安全モバイルシステム等を整備しました。これらの機器は、避難所における通信環境構築のほか、初動期における被災情報の収集伝達から 応急復旧活動の迅速かつ円滑な遂行までの一連の活動に必要不可欠な情報伝達を補完するものとして活用されています。
◆全国瞬時警報システム(Jアラート)の運用
消防庁では、弾道ミサイル情報、緊急地震速報、大津波警報など、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を、携帯電話などに配信される緊急速報メール、市町村防災行政無線などにより、国から住民まで瞬時に伝達するシステムである「全国瞬時警報システム(Jアラート)」を整備しています。Jアラー トによる緊急情報を迅速かつ確実に伝達するため、Jアラート関連機器に支障が生じないよう正常な動作の確認の徹底を市町村に対し呼びかけるとともに、Jアラートの情報伝達手段の多重化を推進しています。
医療分野におけるICT利活用の推進
我が国は超高齢化社会に突入しており、医療・介護費の増大や医療資源の偏在などの課題に直面しています。このため、総務省では、医療・介護・健康データを利活用するための基盤を構築・高度化することにより、医療・健康サービスの向上・効率化を図るべく、主に「遠隔医療の普及」と「PHRデータの活用」を推進しています。
具体的には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED:Japan Agency for Medical Research and Development)による研究事業として、医師の偏在対策の有力な解決策と期待される遠隔医療の普及に向けて、2022年度から手術支援ロボットを使用した遠隔手術支援に係る研究開発を行い、成果は日本外科学会による「遠隔手術ガイドライン」の改定版として、2025年夏目途に公表予定です。また、2023年度からは、医療の高度化や診察内容の精緻化を図るため、各種PHRサービスから医師が求めるPHRを取得するために必要なデータ流通基盤を構築・高度化するための研究開発を実施しています。
このほか、医療情報を取り扱う情報システム・サービスに対するサイバー攻撃の多様化・巧妙化によるセキュリティ対策の変化や医療機関等と医療情報システム事業者との間の取決めの重要性が高まっていることを踏まえ、2024年度に「医療情報を取り扱う情報システム・サービス提供事業者における安全管理ガイドライン」(総務省・経済産業省)の改定を行いました。さらに、2025年度においては、安全・ 安心なPHRサービスの利活用促進のため、「PHRサービス提供者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」(総務省・厚生労働省・経済産業省)についても、PHRサービスの多様化、セキュリティ 要件の見直し等に伴い、約3年ぶりの改定を行いました。
教育分野におけるICT利活用の推進
総務省では、教育分野でのICTの利活用を推進するため、文部科学省と連携し、2021年度から2022 年度にかけて、学校外で事業者が保有するデジタル学習システム間でのデータ連携を可能とする基盤である「デジタル教育プラットフォーム」の実現に向け、必要な技術仕様(参照モデル)を策定しました。加えて、2023年度以降、教育データの安全・安心な利活用による個別最適な学びを実現するため、教育分野におけるPDS(Personal Data Store)の活用に向けて、実証も交えながらPDSの技術的要件等の確認や実運用上の留意点を抽出し、具備すべき要件を明確化するなど、検討を進めています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)Y.H