キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。
前回に引き続き、放送政策の動向について、お話しします。
放送コンテンツ制作・流通
コンテンツなどの効果的なネット配信
放送制度検討会の第1次取りまとめにおいて、ローカル局をはじめとする放送事業者の設備負担を軽減し、コンテンツ制作に注力できる環境を整備していくことが重要であると言及されています。こうした環境を整備する観点からは、放送事業者によるコンテンツの制作の促進に加え、そうしたコンテンツがより幅広く視聴されるよう、放送やインターネット上における流通の一層の促進が重要となると考えられます。特に、地域情報の発信において、今後、ローカル放送局には大きな役割が期待されています。
インターネット動画配信サービスの伸長や視聴スタイルの多様化など放送を取り巻く環境が変化する中、放送がこれまで果たしてきた社会基盤としての役割を引き続き果たし続けるためには、放送波に限らず、インターネットにおける多様なプラットフォームの活用促進によって、我が国の放送コンテンツが国内外で広く流通することが重要であると考えられます。このような考えの下、放送制度検討会の下に開催される会合として、「放送コンテンツの制作・流通の促進に関するワーキンググループ」を2022年12月から開催し、インターネット時代における、放送コンテンツの制作・流通を促進するための方策の在り方について、関係事業者等の協力を得つつ検討を行いました。
2024年12月に公表された第二次取りまとめにおいては、視聴者がインターネット経由で放送コンテンツを容易に視聴できる環境の早期実現のため、インターネットに接続するテレビ受信機(コネクテッドテレビ等)において、視聴者の利便性向上に向けたNHKと民放の放送コンテンツの一覧性を確保した仮想プラットフォームの実現に向け、視聴者にとっての新規性・多様性と視聴者の趣味嗜好に沿ったコンテンツ表出のバランス、ローカル局のコンテンツに地方の視聴者が容易に視聴できる環境づくり等に留意しながら、政府による実証等を通じて、官民連携による取組を深めていくべき方針が示されました。
視聴データ活用とプライバシー保護
インターネットに接続されたテレビ受信機などから放送番組の視聴履歴などを収集・分析することで、例えば、地域ごとの視聴者のきめ細かい視聴ニーズに寄り添った番組制作や災害情報の提供などに有効に活用することが可能となる一方、個々の視聴者の政治信条や病歴のようなセンシティブな個人情報を推知することなども技術的には可能となってしまうという課題があります。
総務省では、放送分野の個人情報保護について、放送の公共性に鑑み、放送受信者等の個人情報を取り扱うすべての者が遵守するべき放送分野固有のルールを2022年3月に「放送受信者等の個人情報保護に関するガイドライン」として定め、累次の改正を行ってきました。引き続き、視聴データ等の活用による放送受信者の利益の向上とプライバシー保護の両立を推進していくことにしています。
放送番組の同時配信
スマートデバイスの普及などに伴う視聴環境の変化を踏まえ、放送事業者は、放送番組のインターネットでの同時配信等(同時配信、追っかけ配信及び見逃し配信をいう。以下同じ。)の取組を進めています。これは、高品質なコンテンツの視聴機会を拡大させるものであり、視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興・国際競争力の確保などの観点から重要な取組となっています。一方で、放送番組には多様かつ大量の著作物等が利用されており、同時配信等にあたって著作権等の権利処理ができないことによるマスキング等の処理(いわゆる「フタかぶせ」)が生じる場合があるなど、権利処理上の課題が存在しており、同時配信等を推進するに当たっては、著作物等をより迅速かつ円滑に利用できる環境を整備する必要があります。
そこで、総務省において、同時配信等に係る権利処理の円滑化に向け、「著作権法」(昭和45年法律第48号)を所管する文化庁とともに関係者から意見を聴取するなど、制度改正の方向性を検討した結果、2021年の第204回国会(常会)で「著作権法の一部を改正する法律」(令和3年法律第52号)が成立し、当該円滑化に関する措置が講じられました。改正後、2022年4月には民放5系列揃っての同時配信が実現するなど、本格化しつつある同時配信等について、総務省は、権利処理の動向を注視しながら、更なる円滑化に向けた検討を行っています。特にローカル局においては、権利処理に係る事務作業に対応する人員やノウハウが不足していることから、権利処理の効率化に資するシステムの構築に関する検証を実施しています。
放送コンテンツの適正な製作取引
総務省では、2018年度から放送コンテンツ分野における製作環境の改善及び製作意欲の向上などを図る観点で、有識者などで構成される「放送コンテンツの適正な製作取引の推進に関する検証・検討会議」を開催し、同会議での議論などに基づき、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」(2009年2月策定。以下「ガイドライン」という。)を累次改定し、放送事業者及び番組製作会社に対して、放送コンテンツの製作取引の適正化を促す取組を進めています。
具体的には、放送コンテンツの製作取引の状況を把握するため、定期的にアンケート調査を実施するとともに、ガイドラインの遵守状況について放送事業者及び番組製作会社に対してヒアリングを行うなどの実態把握を進め、発覚した問題点について「下請中小企業振興法」(昭和45年法律第145号)第4条に基づく指導などを行うほか、ガイドラインの周知・啓発のための講習会を開催し、製作取引に関する個別具体的な問題について弁護士に無料で相談できる窓口である「放送コンテンツ製作取引・法律相談ホットライン」を開設しています。また、2023年度から著作権の帰属、適正な製作費の在り方や番組製作現場の就業環境の実態などについて同会議で議論を行い、その結果を踏まえ、2024年10月に改訂ガイドライン(第8版)を公表しました。
放送コンテンツの海外展開
動画配信サービスが伸張する中、我が国放送コンテンツが競争力を確保し、拡大する市場を取り込むためには、海外での放送・配信を前提としたコンテンツを製作し、海外展開を積極的に図る必要があります。また、コンテンツの海外発信は、日本の魅力を海外に伝え、我が国の自然・文化等への関心を高めることにつながり、我が国に対するイメージ向上への寄与が見込まれるため、外交的な観点からも極めて重要です。
このため、総務省では、放送コンテンツの海外展開の推進に向け、引き続き、国内外で開催されるコンテンツの国際見本市(TIFFCOM(日本)、ATF(シンガポール)、MIPCOM(フランス)等)において、官民連携によるセミナー開催などにより効果的な情報発信を行い、海外展開を後押しします。また、2025年度からは、新たに、先進的設備等を活用した実写コンテンツの製作支援、人材育成に取り組むとともに、配信への視聴環境の変化を踏まえ、国内の配信事業者と連携した我が国のコンテンツの海外発信に取り組みます。
放送・配信コンテンツ産業の戦略
世界のコンテンツ市場は、今後更なる成長が予測されており、我が国においてもコンテンツ産業を基幹産業と位置付け、戦略的に取り組むこととしています。このうち、特に放送コンテンツについては、外部環境や収益構造の変化に晒されており、放送コンテンツ産業の持続的な発展に当たっては、産業競争力の確保が不可欠となっています。このような状況を踏まえ、2025年3月、放送制度検討会の下に新たに「放送・配信コンテンツ産業戦略検討チーム」を立ち上げ、放送コンテンツ産業の更なる振興に向けた課題と対応策、官民連携の在り方、配信コンテンツ市場の現状の把握や今後の振興に向けた方策について、関係事業者等の協力を得つつ、集中的な検討を行っています。
視聴覚障害者等向け放送
視聴覚障害者等がテレビジョン放送を通じて円滑に情報を入手することを可能にするため、総務省は字幕放送、解説放送及び手話放送の普及目標を定める「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を策定(2018年2月、2023年10月改定)し、放送事業者の自主的な取組を促しています。また、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」 (平成5年法律第54号)に基づき、字幕番組、解説番組、手話番組等の制作費に対する助成を行っています。また、生放送番組への字幕付与には多くの人手とコストがかかることに加え、特殊な技能を有する人材等を必要とすることから、2020年度からは、最先端のICTを活用したシステムを含む生放送番組への字幕付与に係る機器の整備費に対する助成も行っています。
放送ネットワークの強靱化
ケーブルネットワークの耐災害性強化
総務省では、災害時においても確実かつ安定的な情報伝達の確保されるよう、ケーブルテレビ網の光化や複線化など耐災害性強化の取組への支援を行うとともに、2024年1月に発生した石川県能登地方の地震により被害を受けたケーブルテレビの災害復旧支援を行うため、令和6年度補正予算及び令和7年度当初予算において、「ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化事業」を実施しています。令和6年度補正予算より、条件不利地域要件を緩和し、財政力指数要件を撤廃したほか、非常用電源設備単独の整備について支援できるように措置を行っています。また、老朽化等の課題が生じつつある辺地共聴施設について、令和7年度当初予算において、「地上基幹放送の小規模中継局等のブロードバンド等による代替等支援事業」により、高度化改修や代替に対する支援を実施しています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)Y.H