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実践編・応用編

サイバーセキュリティ政策の動向 2

投稿日:2026年2月12日 更新日:

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。

前回に引き続き、サイバーセキュリティ政策の動向について、お話しします。
サイバー攻撃対処能力の向上と新技術への対応
セキュリティ人材の育成
サイバー攻撃が巧妙化・複雑化している一方で、我が国のサイバーセキュリティ人材は質的にも量的にも不足しており、その育成は喫緊の課題であります。このため、総務省では、NICTの「ナショナルサイバートレーニングセンター」を通じて、サイバーセキュリティ人材育成の取組(CYDER、CIDLE及びSecHack365)を積極的に推進しています。

実践的サイバー防御演習(CYDER)
CYDER(CYber Defense Exercise with Recurrence)は、国の機関、地方公共団体、独立行政法人及び重要インフラ事業者などの情報システム担当者等を対象とした実践的サイバー防御演習です。受講者は、組織のネットワーク環境を模した大規模仮想LAN環境下で、実機の操作を伴ってインシデントの検知から対応、報告、回復まで、サイバー攻撃への一連の対処方法を体験します。2024年度は、従来から実施している初級・中級・準上級の集合演習に加え、サイバー攻撃の仕組みやトレンド、インシデントハンドリングの基礎を学べる「プレCYDER」を本格実施しました。CYDER集合演習の受講者は、2024年度は4,225人で、2017年度からの合計で2万5千人超となっています。

◆若手セキュリティ人材の育成プログラム
SecHack365は、日本国内に居住する25歳以下の若手ICT人材を対象として、新たなセキュリティ対処技術を生み出しうる最先端のセキュリティ人材(セキュリティイノベーター)を育成するプログラムです。NICTの持つ実際のサイバー攻撃関連データを活用しつつ、第一線で活躍する研究者・技術者が、セキュリティ技術の研究・開発などを1年かけて継続的かつ本格的に指導します。2024年度は39名が修了し、2017年度からの合計で328名が修了しています。

サイバーセキュリティ統合知的・人材育成基盤の構築
我が国のセキュリティ事業者は、海外のセキュリティ製品を導入・運用する形態が主流です。このため、我が国のサイバーセキュリティ対策は、海外製品や海外由来の情報に大きく依存しており、国内のサイバー攻撃情報などの収集・分析などが十分にできていません。また、海外のセキュリティ製品を使用することで、国内のデータが海外事業者に流れ、我が国のセキュリティ関連の情報が海外で分析される一方で、分析の結果として得られる脅威情報を海外事業者から購入する状況が継続しています。

その結果、国内のセキュリティ事業者では、コア部分のノウハウや知見の蓄積ができず、また、グローバルレベルの情報共有における貢献や国際的に通用するエンジニアの育成を効果的に実施することが難しくなっています。利用者側企業でも、セキュリティ製品やセキュリティ情報を適切に取り扱える人材が不足しています。サイバーセキュリティ人材の育成を含めて我が国のサイバー攻撃への自律的な対処能力を高めるためには、国内でのサイバーセキュリティ情報生成や人材育成を加速するエコシステムの構築が必要です。

総務省では、サイバーセキュリティに関する国内トップレベルの研究開発を実施しているNICTと連携し、NICTが培ってきた技術・ノウハウを中核として、サイバーセキュリティに関する産学官の巨大な結節点となる先端的基盤「サイバーセキュリティ統合知的・人材育成基盤」の構築・運用を行うことで、我が国のサイバーセキュリティ対応能力を向上させる取組であるCYNEX(サイネックス: CYbersecurity NEXus)を2021年度より推進しています。2023年10月には、CYNEXに参画する産学官の組織で構成する「CYNEXアライアンス」を発足させ、CYNEXの本格展開を開始しました。2025年度も引き続き、官公庁及び民間企業や教育機関等との連携を拡大しながら、我が国のサイバーセキュ リティ情報を幅広く収集・分析し、更にその情報を活用して国産セキュリティ製品の開発を推進するとともに、高度なセキュリティ人材の育成や官公庁及び民間企業・教育機関等での人材育成支援を行うことで、我が国におけるサイバーセキュリティ対応能力のより一層の強化を目指します。

また2023年度より、「政府端末情報を活用したサイバーセキュリティ情報の収集・分析に係る実証事業(CYXROSS)」について、一部の府省庁に安全性・透明性を検証可能なセンサーを導入し、得られたサイバーセキュリティ情報をNICTへ集約し、NICTの能力を活用して分析することで、我が国のセキュリティ対策を強化する取組を開始しました。2025年度は、引き続きサイバーセキュリティ情報の集約・分析を拡充するとともに、センサー導入府省庁を拡大することで、我が国独自のサイバー攻撃分析能力を強化します。

サイバーセキュリティにおける生成AI等に関する取組
近年、あらゆる分野において生成AIの実装が急速に進んでいる一方で、生成AIを巡るリスクとして、偽・誤情報の拡散、プライバシーの侵害、知的財産権の侵害等に加えて、サイバー攻撃への悪用等によるサイバーセキュリティのリスクが新たに指摘されています。他方、サイバー攻撃の大規模化・複雑化・巧妙化に伴い、サイバーセキュリティ対策の業務負荷が課題となっている中、サイバー攻撃対策への生成AI等の利活用が期待されています。こうした背景を踏まえ、生成AI等のAI技術を巡る最新動向を把握しつつ、AIに起因するセキュリティリスクを可能な限り回避・低減するための「Security for AI」に取り組むとともに、AIをセキュリティ対策に効果的に活用するための「AI for Security」に取り組むことが必要です。「Security for AI」の取組については、AIの安全かつ効果的な開発・提供に向けたセキュリティガイドラインの策定等のほか、NICTと米国等の様々な専門機関との連携によるAI安全性の研究開発を実施することで、生成AIの安心安全な利用を促進していきます。
「AI for Security」の取組については、サイバー脅威情報の収集・分析や生成AI等を活用した攻撃インフラの検知の精緻化・迅速化を行うことで、生成AIのサイバーセキュリティ対策への積極的な活用を促進していきます。

サイバーセキュリティの底上げ
地域に根付いたセキュリティコミュニティ
我が国の安全・安心なサイバー空間の確保の観点からは、地域におけるサイバーセキュリティの確保も重要な課題です。他方、地域の企業や地方自治体では、首都圏や全国規模で展開する企業と比較してサイバーセキュリティに関する情報格差が存在するほか、人材等の経営リソースの不足などの理由により、単独で十分なセキュリティ対策を取ることが難しかったり、セキュリティ対策の必要性を認識するに至らなかったりするおそれがあります。総務省では、地域における関係者間での「共助」の関係を基本としたセキュリティ分野におけるコミュニティ(「地域SECUNITY」)の形成を促進しており、2022年度までに、総合通信局等の管区を 基準とした全11地域での設立を完了しました。2024年度にはセミナー等20件、インシデント対応演習14件、若年層向けCTF(Capture The Flag)3件を実施した他、7会場同時開催の全国型CTFイベントも開催しました。地域SECUNITYの取組拡大に向けて、2025年も引き続き、イベント開催などの支援を実施していきます。

テレワークセキュリティ
テレワーク導入企業に対して実施したアンケートでは、セキュリティ確保がテレワーク導入の最大の課題になっています。総務省では、こうしたセキュリティ上の不安を払拭し、企業が安心してテレワークを導入・活用できるよう、2004年から「テレワークセキュリティガイドライン」を策定・公表 しています。 テレワークは新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として広がり、働き方改革の中心にも据えられています。クラウド活用の進展やサイバー攻撃の高度化などセキュリティ動向の変化を踏まえ、2021年5月にガイドラインを改訂し、実施すべきセキュリティ対策や具体的なトラブル事例などを全面的に見直しました。また、中小企業などではセキュリティの専任担当がいない場合や、セキュリティ対策の担当者に専門的な知識が不足している場合が想定されるため、最低限のセキュリティを確実に確保することに焦点を絞った「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)」を2020年から策定・公表しています。チェックリストに従ってセキュリティ対策を実施する際に、テレワークで利用する製品をどのように設定するか解説した「設定解説資料」も公表しており、2024年7月に「設定解説資料」を更新しました。

無線LANセキュリティ
無線LANは自宅や職場での利用に加え、街なかの公衆無線LANサービスなど幅広く利用が進んでいます。ただし、適切なセキュリティ対策をとらなければ、無線LAN機器を踏み台とした攻撃や情報窃取などの被害を受けるおそれがあります。このため総務省では、無線LANのセキュリティ対策に関して、利用者・提供者のそれぞれに向けたガイドラインを策定しており、2025年2月に、最新のセキュリティ動向や技術動向に対応させた改定を行いました。公衆無線LANサービスを利用する者に向けた「公衆Wi-Fi利用者向け簡易マニュアル」と、自宅に 無線LANを設置し利用する者に向けた「自宅Wi-Fi利用者向け簡易マニュアル」では、利用者が留意すべきセキュリティ対策ポイントを解説しています。飲食店や小売店をはじめとする無線LANの提供者に向けた「公衆Wi-Fi提供者向けセキュリティ対策の手引き」では、利用者と提供者自身のための2つの観点から、必要な対策を解説しています。また、無線LANのセキュリティ対策に関する周知啓発を目的として、最新のセキュリティ対策等を学べる無料のオンライン講座をサイバーセキュリティ月間(2/1~3/18)に合わせて毎年度開講しています。2024年度は、2025年2月5日から3月18日までオンライン講座「今すぐ学ぼう Wi-Fiセキュリティ動向を踏まえ記事内容を更新しました。

国際連携のさらなる推進
サイバー空間はグローバルな広がりをもつことから、サイバーセキュリティの確立のためには諸外国との連携が不可欠です。このため、総務省では、サイバーセキュリティに関する国際的合意形成への寄与を目的として、各種国際会議やサイバー対話などでの議論や情報発信・情報収集を積極的に実施しています。また、世界全体のサイバーセキュリティのリスクを減らすためには、開発途上国に対するサイバーセキュリティ分野における能力構築支援の取組も重要です。総務省では、ASEAN地域において、日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(AJCCBC:ASEAN Japan Cybersecurity Capacity Building Centre)を通じた人材育成プロジェクトを推進するなど、ASEAN地域を中心に、サイバーセキュリティ能力の向上に資する取組を行っています。2023年度からは、AJCCBCの活動で培ったノウハウ等を活用して、大洋州の島しょ国・地域向けに新たに能力構築支援の演習を実施するなど、活動地域の拡大を図っています。加えて、通信事業者などによる民間レベルでの国際的なサイバーセキュリティに関する情報共有を推進するために、ASEAN各国のISPが参加するワークショップや、日米・日EU間でのISAC (Information Sharing and Analysis Center)との意見交換会などを開催しています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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