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概要
放送は、民主主義の基盤であり、災害情報や地域情報などの社会の基本情報の共有というソーシャル・キャピタルとしての役割を果たしてきました。従来アナログで行われていたテレビ放送は、2012年3月末をもって完全デジタル化し、ハイビジョン画像の映像、データ放送の実現など、放送サービスの高度化が進展しました。総務省では、ハイビジョンより高精細・高画質な4K・8K放送サービスを促進するため、放送事業者・メーカー等との連携の下、4K8K衛星放送の受信方法や4K・8Kコンテンツに関する周知広報を行うとともに、4K放送を行う事業者の認定を行うなど、全国の多くの方々に4K・8Kの躍動感と迫力のある映像で楽しんでいただけるように必要な取組を進めてきました。また、被災情報や避難情報などを国民に適切に提供できるよう、2024年1月に発生した石川県能登地方の地震・同年9月の能登半島豪雨での教訓を踏まえ、激甚災害等で被災した地上基幹放送に係る送信所設備等の復旧事業及び耐震対策等の放送ネットワークの強靱化・耐災害性強化に資する取組を推進 してきました。さらに、放送を通じた情報アクセス機会の均等化を実現するため、放送事業者等における字幕番組、解説番組、手話番組等の制作費及び生放送番組への字幕付与設備の整備費に対する助成や、字幕放送等の普及目標値を定める「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を策定する等の取組により、視聴覚障害者等向け放送の普及を促進してきたところです。このほか、放送については、放送番組の「送り手」だけでなく「受け手」の存在も重要であることから、総務省では、特に小・中学生及び高校生を対象に放送メディアに対するリテラシーの向上に取り組んでおり、教材や教員向け授業実践パッケージ等の提供を行っています。
今後の課題と方向性
ブロードバンドの普及やインターネット動画配信サービスの伸長、視聴デバイスの多様化などを背景に、視聴者の視聴スタイルが変化しテレビ離れが加速するなど、放送を取り巻く環境は大きく変化しています。視聴者は情報を放送からのみならずインターネットから得ることが増え、地上テレビジョン放送の広告費は長期的には低下傾向が続く可能性があり、構造的な変化が迫られています。他方、インターネット空間においては偽・誤情報等の問題も顕在化しており、情報空間の健全性の確保が課題となっているところ、放送は信頼性の高い情報発信、「知る権利」の充足、「社会の基本情報」の共有や多様な価値観に対する相互理解の促進といった役割を果たしており、むしろこのデジタル時代においてこそ、その役割に対する期待が増大しています。
このような状況の変化に対応して、放送の将来像や放送制度の在り方について中長期的な視点で検討するとともに、放送事業の基盤強化、放送コンテンツの流通の促進、放送ネットワークの強靱化・耐災害性の強化等の課題に取り組む必要があります。
デジタル時代における放送制度
総務省では、デジタル化が社会全体で急速に進展する中で、放送の将来像や放送制度の在り方について、中長期的な視点から検討するため、2021年11月から「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」(以下「放送制度検討会」という。)を開催しています。
放送制度検討会では、2022年8月に「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ」(以下「第1次取りまとめ」という。)を公表し、2023年10月には「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第2次)」(以下「第2次取りまとめ」という。) を公表しました。総務省では、第1次取りまとめを踏まえて、マスメディア集中排除原則を緩和するための省令改正を行ったほか、一の放送対象地域において複数の特定地上基幹放送事業者が中継局設備を共同で利用することを可能とすることなどの措置を講ずることを内容とする法改正を行いました。
中継局設備の共同利用については、特定地上基幹放送事業者の経営効率化を図るため、その実現に向 け、2023年12月の全国協議会の発足を始めとして、2024年5月までに全国各地においても地域協議会が立ち上げられ、共同利用実現に向けたロードマップの作成、関係者の役割分担、各地域での中継局更新計画の策定・実行の在り方の3点について検討を進めました。2024年12月には共同利用のための準備会社である株式会社日本ブロードキャストネットワークがNHKの出資により設立されました。事業計画の検討等地上波中継局の共同利用の実現を目指し、同社において取組が進められています。
また、放送制度検討会の下で「公共放送ワーキンググループ」を開催し、NHKのインターネット配信の在り方等について検討を行い、2023年10月及び2024年2月に公表された二度の「取りまとめ」を踏まえ、2024年5月に成立した「放送法の一部を改正する法律」(令和6年法律第36号。以下「改正放送法」という。)において、インターネットを通じて放送番組等の配信を行う業務をNHKの必須業務とすること等が規定されました。改正放送法では、NHKがインターネットを通じた番組関連情報の配信を自らの判断と責任において行うため、自ら業務規程を定める仕組みとなっており、総務省では、その内容について、学識経験者及び利害関係者の意見を聴き、公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであることなどに適合することを確認することとされています。
その後、放送制度検討会では、2024年12月に「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第3次)」(以下「第3次取りまとめ」という。)を公表しました。第3次取りまとめは、放送の将来像や小規模中継局等のブロードバンド等(ケーブルテレビ、配信サービス等)による代替に向けた制度の在り方、ラジオ放送の経営の選択肢等についての検討結果のほか、
①小規模中継局等のブロードバンド等による代替の実現可能性
②NHKの国際放送の在り方
③放送コンテンツの制作・流通の促進に向けて必要な対応策
④衛星放送にかかるインフラコストの低減
等について専門的な検討を行った成果を取りまとめたものとなっています。
なお、総務省では、第3次取りまとめ等も踏まえ、地上基幹放送事業者がやむを得ず中継局を廃止する際には、ケーブルテレビや配信サービス等によってその放送番組を引き続き視聴できるようにするための措置を講じる努力義務を課すこと等を内容とする「電波法及び放送法の一部を改正する法律案」を2025 年の第217回国会(常会)に提出し、2025年4月に成立したところです。
さらに、近年、我が国における災害は激甚化、頻発化しており、2024年8月に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表されるなど、近い将来、南海トラフ地震をはじめ、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震といった広域大規模災害の発生も懸念されています。このような状況を踏まえ、2025年2月には放送制度検討会の下に新たに「広域大規模災害を想定した放送サービスの維持・確保方策の充実・強化検討チーム」を設け、これまでの取組に加え、今後の広域大規模災害を想定した放送サービスの維持・確保方策の充実・強化について、関係事業者等の協力を得つつ、集中的に検討を行っています。
放送事業の基盤強化
AMラジオ放送に係る取組
民間AMラジオ放送事業者が使用しているAM送信設備には設置後50年以上が経過しているものが多く、老朽化が深刻な状況となっています。こうした中、民間AMラジオ放送事業者においては、AMラジオ放送の難聴を解消することなどを目的として導入されたFM補完放送の開始によってAMとFMの両方の設備に係るコスト負担が発生しているほか、事業収入が減少傾向にあるため、AMラジオ放送設備の更新費用が経営上の課題となっています。
このような厳しい経営状況を踏まえ、民間AMラジオ放送事業者が、経営判断としてAM放送から FM放送への変更(FM転換)やFM転換を伴わないAM放送を行う中継局の廃止を行った場合の影響を検証するため、総務省では、6か月以上の期間AM局の運用休止を行うことを可能とする特例措置を設けることとし、その内容や要件、手続きについて示す「AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針(2023年3月公表、2024年12月改定)」を公表しました。2023年11月に行われた放送事業者への一斉再免許の際に、当該基本方針に基づく特例措置の適用を受け、一部のAM局において、2024年 2月以降、順次運用休止が実施されているところです。これらのAM局に加え、2025年12月以降、再度の特例措置の適用を受け、運用休止が実施される予定です。総務省では、運用休止の結果を踏まえ、必要な制度整備について検討を行う予定です。
衛星放送の将来像
総務省は、2023年10月に公表された第2次取りまとめを踏まえ、衛星放送を取り巻く環境が変化する中で、衛星放送における課題を解決し、持続可能な衛星放送の将来像を描くべく、2023年11月から2024年9月まで、放送制度検討会の下で「衛星放送ワーキンググループ」を開催し、同年12月に取りまとめを行いました。 「衛星放送ワーキンググループ」では、「衛星放送に係るインフラコストの低減」、「地上波代替における衛星放送の活用」、「右旋帯域の有効利用」、「衛星基幹放送の認定における通販番組の扱い」及び「災害発生時における衛星放送の活用」について、具体的・専門的な議論を行ってきました。これを受け、総務省では、2025年2月に「地上波代替における衛星放送の活用」について技術的課題や視聴者負担の受容性の検証等を行うとともに、同年3月に「右旋帯域の有効利用」について圧縮効率の高いHEVC方式を2K放送に使用する選択肢を設ける制度整備を行うなど、「衛星放送ワーキンググループ」における議論の結果や提言等を踏まえた取組を進めています。
4K8K衛星放送の普及
2018年12月にBS放送及び東経110度CS放送が始まりました4K8K衛星放送は、2024年7月には4K8K衛星放送を視聴することが可能な受信機等の累計出荷台数が2,000万台を超え、着実に普及が進んでいます(2025年3月末時点では約2,250万台)。
総務省においては、4K8K衛星放送の普及に向け、放送事業者、メーカー、関係団体等と連携し、4K8K衛星放送の特長である超高精細映像の魅力の訴求や受信環境整備の促進に取り組んでいます。
また、2025年4月には、総務省が2023年11月に認定を行ったBS放送の右旋帯域における4K放送 が開始されたところであり、引き続き、4K放送の拡充に取り組むこととしています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)Y.H