キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会では、令和7年2月から10回にわたり、経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングに必要な能力、キャリアコンサルタントが当該能力を得るために有効な制度その他の施策の在り方、及びキャリアコンサルティングの活用活性化のために有効な施策について検討を行ってきました。前回に続き、その結果を報告します。
経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会|厚生労働省
■需給調整領域において追加・強化が必要な能力
(需給調整領域のキャリアコンサルタントが果たすべき役割)
◆需給調整機関(職業紹介事業者、労働者派遣事業者、公共職業安定機関等)でのキャリアコンサルティングにおいては、職業紹介や労働者派遣に関する法律を理解した上で、求職者や派遣労働者に必要な情報を提供することにより職業・職種の選択を支援し、適切なマッチングにつなげていくことが求められます。
(職業紹介事業者及び公共職業安定機関等における支援の実施)
◆求職者の職業の選択を支援するためには、地域における求人・求職の状況、賃金の状況などの労働市場に関する情報や、様々な職種の業務内容及び必要とされる知識・技能に関する最新の情報を提供することが求められます。
◆このため、キャリアコンサルタントには、これらの最新の情報を常に把握しておくことに加え、特に、具体的な求人職種の業務内容及び必要とされる知識・技能については、他社や他業界における同様の職種との差異や特徴の違いまでを含めた分析を行うことができる能力が求められます。
◆また、求職者の職業に対する理解を促進するためには、セミナーやグループワーク、企業見学、職場体験等の支援プログラムの実施も有効であり、キャリアコンサルタントには、こういったプログラムの企画・運営を行う能力も求められます。
◆職業・職種へのマッチングを行うにあたっては、キャリアコンサルタントが、求職者について 職務経歴や保有する知識・技能のほか職業興味・価値観なども含めた理解を行った上で、求職者の職務経験や保有する知識・技能が求人職種においてどのように活かせるか、求人職種の業務内容が求職者の希望に沿ったものとなっているか等も踏まえたマッチングを行い、必要に応じて求職者の希望条件の再設定も含めた助言を行うほか、求人者に対して、労働市場の動向や求職者のニーズを伝え、採用条件の再設定を働きかける能力も求められます。
◆また、求職者の職業紹介にあたっては、応募書類の作成や面接対策についての助言のほか、求職者の属性や状況によっては、他の就労支援機関と連携した支援や就職後の職場定着支援が必要となることがあり、そういった支援や連携を円滑に行うことができる能力が必要です。
◆なお、ハローワークにおいては、労働市場の状況や将来の職業設計も考慮して職種転換を図ることが必要と考えられる求職者のうち、職業訓練の受講が有効であると考えられる求職者に対しては、受講を推奨することが必要となることから、キャリアコンサルタントには、現在募集している職業訓練コースの情報を把握した上で、具体的な提案を行うことができる能力が求められます。
(労働者派遣事業者における支援の実施)
◆派遣労働者に対しても、求職者と同様、適切な情報の提供による支援が求められる。具体的には、派遣労働者に対して、派遣先企業での職務の内容及び必要とされる知識・技能や職場環境に関する詳細な情報の提供を行うほか、必要に応じて、派遣先企業に対して、派遣労働者として従事するのに適切な形での職務の設定について助言を行うことができる能力が求められます。
◆また、労働者派遣事業者には、派遣労働者に対するキャリアアップ措置が義務づけられており、キャリアコンサルタントには、教育訓練計画の作成・実施に関する業務のほか、キャリアパスの提示や適切な派遣先の選択、必要な資格取得に関する情報提供等を行うことができる能力が求められます。
■教育領域において追加・強化が必要な能力
(教育領域のキャリアコンサルタントが果たすべき役割)
◆教育領域においては、キャリアコンサルタントには、学生・生徒のキャリア教育の推進をはじめ、学生・生徒の就職支援やインターンシップの実施、学内のカリキュラム設計への協力、社会人向けリカレント教育の実施など、学生・生徒の長期的なキャリア形成や、社会人の職業能力開発に向けた総合的な支援に取り組むことが求められます。
(キャリア教育の実施)
◆学生・生徒の長期的なキャリア形成を図っていく上では、その基盤として、キャリア教育を推進していくことが重要です。特に、経済社会情勢の変化が加速する中においては、学生・生徒に対して、産業や職業についての最新の知識を付与すると同時に、学生・生徒が自己理解を深め、経済社会情勢がどのように変化しても主体的に選択・決定を行い、生涯にわたって自ら能力開発に取り組み、自律的・主体的なキャリア形成に取り組んでいけるようになるための基盤の構築に向けた支援を行うことが必要です。
◆こういったキャリア教育を実施していくために、キャリアコンサルタントには、学生・生徒を採用する企業や就職サービスを提供する企業、学内の関係者とも連携して、企業側のニーズと学校側の考え方を踏まえたキャリア教育のプログラムを構築できる能力が求められます。
◆また、キャリアコンサルタントには、キャリア教育の実施にあたり、講師として、キャリア理論に基づいて、学生・生徒がジョブ・カードやキャリア・パスポートなどのツールを活用して自らのキャリア形成を図っていけるようにするための講習を行うことができる能力が必要です。
◆加えて、学内でのキャリア教育を推進する観点から、こういったプログラムを正課の授業に取り入れる意義や有効性について、所属する教育機関の理解を促進することも求められます。
(学生・生徒の就職支援及びインターンシップ関連業務の実施)
◆キャリアコンサルタントには、学生・生徒の就職支援やインターンシップ等の実施に関して、主要な役割を果たすことが求められます。
このため、キャリアコンサルタントには、学生・生徒との面談において、学生・生徒のニーズの明確化に加え、企業側のニーズ等も踏まえた適切な助言・指導を行うことができる能力のほか、就職やインターンシップ等に関する学生・生徒向けの講座を企画し講習を行うことができる能力や、インターンシップ等のプログラムを企業と連携して作成する能力が求められます。
◆このような面談や講習を適切に実施するためには、求人・求職の動向などの労働市場の状況や、企業が新規学卒者等に求めている能力、企業における採用活動の実態等についての最新の情報を、企業の人事担当者をはじめとする関係者から収集できる能力が必要です。
(学内のカリキュラム設計への協力)
◆教育機関に所属するキャリアコンサルタントは、企業等との接触も多く、社会で学生・生徒に対して求められている能力などについての最新の情報を把握できる立場にあります。
◆このため、キャリアコンサルタントには、最新情報を分析した上で、学内の担当者に提供し、学内のカリキュラム設計に協力することも期待されます。
◆また、あわせて、学内においても、教育成果や学習環境など学内の情報を収集し、分析結果を学内の担当者に提供できる能力が求められます。
(社会人向けリカレント教育の実施)
◆社会人の職業能力の開発に有効なリカレント教育の実施にあたっては、大学等が中心的な役割を果たしており、教育領域のキャリアコンサルタントは、この推進に協力することが求められます。
◆具体的には、社会人向けのリカレント教育プログラムの設計に協力し、講師として講習を行うほか、教育プログラムの受講者の希望に応じ、キャリアコンサルティングを行うことも、役割として求められます。
◆また、キャリアコンサルタントには、このような教育プログラムの意義や効果についての外部への発信に協力することも期待されます。
■地域・福祉領域において追加・強化が必要な能力
(地域・福祉領域のキャリアコンサルタントが果たすべき役割
◆地域若者サポートステーションや生活困窮者の自立相談支援機関、福祉施設、障害者支援施設、女性センターなどの支援機関や自治体で実施している支援事業において、キャリアコンサルタントが、キャリア形成にあたって手厚い支援が必要な者の支援を行う際には、相談者ひとりひとりに寄り添ったきめ細かな支援を、様々な支援メニューを活用して行うことが求められます。
(支援に必要な情報の収集)
◆支援機関の利用者については、属性や経験、将来のキャリアに対する希望が様々であり、地域・福祉領域におけるキャリアコンサルティングにおいては、まず、本人や、本人を取り巻く環境について、丁寧な情報収集とアセスメントを行う必要がある。
◆このため、キャリアコンサルタントには、相談者との関係を構築し、必要な情報の収集を円滑に行うことができる能力のほか、職業適性検査等の各種ツールを活用したアセスメントを適切に行うことができる能力が必要です。また、相談者の家族や、相談者が利用している他の支援機関等の関係者とも関係を構築し、今後のキャリア発達を支援するために必要な情報収集を行うことができる能力が必要です。
(課題の把握及び支援の方向性の提案)
◆地域・福祉領域のキャリアコンサルタントは、収集した情報やアセスメント結果に基づき、利用者の課題の見立てを行うとともに、相談者に対して、支援の必要性を十分に説明した上で、その課題の解決に向けた提案を行うこととなるため、このような支援を円滑に行うことができる能力が必要です。
(支援プログラムの企画・運営)
◆支援機関の利用者について、自身の適性や強み等の気づきを促し、能力開発や就職に向けた活動を後押しするためには、セミナー、グループワーク、企業見学、職場体験など、キャリア発達を支援するプログラムの実施が有効である。
◆このため、キャリアコンサルタントには、こういったプログラムを企画し、段階的に実施する能力や、プログラムの実施にあたって外部講師や受入先企業、関係する支援機関等との連絡調整を円滑に行うことができる能力が求められる。
(キャリアプランの作成及び実行に関する支援)
◆相談者が、上記による自己理解を踏まえ、自ら目標を設定し、キャリアプランの作成に取り組む際には、キャリアコンサルタントには、適切な労働価値観や職業、エンプロイアビリティ、労働市場等に関する情報提供を行った上で、相談者による職業選択や受講する教育訓練等の選択を支援することが求められます。
◆また、相談者が、キャリアプランを実行に移し、教育訓練等の受講や就職活動を行う際には、関係する支援機関等と連携して、伴走的な支援や心理的なサポートを行うほか、就職後には、必要に応じて職場への定着に向けた支援を行う必要がある。なお、この際には、相談者を支える家族や関係者に対して必要な情報提供や支援を行うことも求められます。
(つづく) Y.H