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労働環境とは、会社で働く従業員を取り巻く環境のことです。事業者には、従業員の健康や安全を守るため、労働環境を整える義務があります。「労働安全衛生法第3条の1」に、以下のように記されています。「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」労働環境の整備は、従業員の定着や生産性の向上など企業の利益アップにつながるため非常に重要です。
ハラスメント対策の推進
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)では、職場のパワーハラスメントの定義を、職場において行われる、
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境を害するもの
の全てを満たすものとするとともに、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメント、育児・介護休業等に関するハラスメントと同様に、全ての事業主に対して、パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を義務付けています。
厚生労働省では、都道府県労働局による事業主への助言・指導等を通じて法の履行確保を図るとともに、啓発用Webサイト「あかるい職場応援団」を活用し、社内研修用資料や啓発動画、裁判事例の掲載等、職場におけるハラスメントの防止・解決に向けた様々な情報を提供しています。さらに2019(令和元)年度からは12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、シンポジウムの開催など、集中的な広報を行っています。さらに、近年増加している顧客等からの著しい迷惑行為(以下「カスタマーハラスメント」という。)対策を推進するため、カスタマーハラスメント対策に関心を持つ業界団体が業界内のカスタマーハラスメントの実態を踏まえ、業界共通の対応方針等を策定・発信するまでの支援をモデル事業として実施し、業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアルを策定の上、研修動画の作成やその周知を図っています。また、就職活動中やインターンシップ中の学生等に対するハラスメント(以下「就活ハラスメント」という。)の防止を推進するため、就活ハラスメント防止対策企業事例集や企業向け研修動画の周知を図っています。
加えて、カスタマーハラスメント対策及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策を事業主の雇用管理上の措置義務とすること等を含む「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」を2025(令和7)年3月に第217回通常国会に提出しました。
労災保険等制度
■労災補償の現状
労働災害については、過重労働の防止や各種の安全衛生対策など、その発生の防止を最優先課題として取組みを進めていますが、労働災害が発生した場合には、労働者の負傷、疾病、障害、死亡などについて迅速かつ公正な補償が不可欠です。労災保険制度は、労災保険法に基づき、業務上の事由、二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対して、迅速かつ公正な保護を行うために保険給付を行う制度です。
2023(令和5)年度の労災保険給付の新規受給者数は781,432人であり、前年度に比べ4,006人の増加(0.5%増)となっています。そのうち業務災害(複数業務要因災害を含む。)による受給者が687,901人、通勤災害による受給者が93,531人となっています。
■過労死等の労災認定
2023(令和5)年度の過労死等の労災補償状況については、脳・心臓疾患の請求件数は1,023件、業務災害の支給決定件数は216件、精神障害の請求件数は3,575件、業務災害の支給決定件数は883件となっています。前年度と比べ、脳・心臓疾患の請求件数は220件の増加、業務災害の支給決定件数は22件の増加、精神障害の請求件数は892件の増加、業務災害の支給決定件数は173件の増加となっています。また、複数業務要因災害に関する脳・心臓疾患の支給決定件数は5件、精神障害の支給決定件数は4件となっています。
労災認定に当たっては、脳・心臓疾患の認定基準及び精神障害の認定基準に基づき、迅速かつ適正な労災補償に努めています。
■石綿による健康被害の補償・救済
石綿を取り扱う作業に従事したことにより中皮腫等を発症した労働者やその遺族等は、労災保険給付を受けることができます。また、2006(平成18)年2月には、「石綿による健康被害の救済に関する法律」(平成18年法律第4号)が成立し、時効によって労災保険法に基づく遺族補償給付を受ける権利が消滅した者に対し「特別遺族給付金」の支給等の措置が講じられました。
なお、特別遺族給付金については、2022(令和4)年6月の「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律」(令和4年法律第72号)により、請求期限が2032(令和14)年3月27日まで延長されるとともに、支給対象が2026(令和8)年3月26日までに亡くなった労働者等のご遺族の方へと拡大された。石綿による疾病の労災認定等については、認定基準に基づき、迅速かつ適正に行うよう努めています。
このほか、石綿による健康被害の救済については、大阪泉南アスベスト訴訟において、2014(平成26)年10月に、石綿工場の元労働者の健康被害について国の損害賠償責任を一部認める最高裁判決が言い渡されたことを受け、国の損害賠償責任が認められた方々と同様の状況にあった方々について、同判決に照らして訴訟上の和解の途を探ることとしており、その周知を図っています。
また、石綿にさらされる建設業務に従事した労働者等が、石綿を吸入することにより発生する疾病にかかり精神上の苦痛を受けたことについても、最高裁判決等において国の責任が認められたことを受けて、2021(令和3)年6月には、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」(令和3年法律第74号)が成立し、2022年1月19 日以降、同法に基づく給付金等の認定、支給等を行っています。
労働災害の状況と防止に向けた取組み
■労働災害の発生状況
2023(令和5)年の新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除いた労働災害については、死亡者数は755人(前年比19人(2.5%)減)となりましたが、休業4日以上の死傷者数は135,371人(前年比3,016人(2.3%)増)と前年より増加しました。
■労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正について
多様な人材が安全に、かつ安心して働き続けられるよう職場環境の整備を推進するため、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、職場のメンタルヘルス対策の推進、化学物質による健康障害防止対策等の推進、機械等による労働災害の防止の促進、高年齢労働者の労働災害防止の推進等の措置を講ずることを目的とする、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案」を2025(令和7)年3月に第217回通常国会に提出しました。具体的な改正法案の内容は以下のとおりです。
◆個人事業者等に対する安全衛生対策の推進
労働者のみならず労働者と同じ場所で作業を行う個人事業者等による災害の防止を図るとともに、職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第155号)の批准に必要な整備を行うため、注文者等が講ずべき措置や個人事業者等自身が講ずべき措置、業務上災害の報告制度等を定めます。
◆職場のメンタルヘルス対策の推進
近年、精神障害の労災支給決定件数が増加傾向にあり、小規模事業場においても多数発生しているなど、事業場規模にかかわらずメンタルヘルス対策が課題となっていることから、労働者数50人未満の事業場において当分の間努力義務としているストレスチェックを事業場規模にかかわらず実施を義務化しています。
労働者の健康を確保するための対策の充実
■ストレスチェック制度の周知・啓発等
事業場におけるメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)の取組みを強化するため、2015(平成27)年に事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されました(労働者数50人未満の事業場は、当面の間努力義務とされた)。
ストレスチェック制度の具体的な実施方法等については、「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(ストレスチェック指針)や「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」等により示し、事業場に周知しています。
さらに、ストレスチェック制度の適切な実施を促進するため、都道府県の産業保健総合支援センターにおいて、事業場の産業保健関係者等を対象に、専門的な研修、相談対応、個別訪問支援等を行っています。また、全国350か所の地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、ストレスチェックの高ストレス者に対する医師の面接指導や健康相談等の産業保健サービスを提供しています。
このほか、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」の無料公開や、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」における事業場の取組事例の周知等を行っています。
■その他メンタルヘルス対策の推進
事業場におけるメンタルヘルス対策の取組みが適切かつ有効に実施されるよう、2006(平成18)年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を公表し、周知・啓発を行っています。さらに、産業保健総合支援センターにおいて、ストレスチェックを含むメンタルヘルス対策の導入や取組みの促進を総合的に支援しています。
また、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」において、事業者向けにメンタルヘルス対策に関する最新情報や取組事例、働く方向けにセルフケアに役立つコンテンツ等、様々な情報を提供しているほか、電話・メール・SNSによる相談窓口を設置し、働く方やその家族等からのメンタルヘルス不調等の相談に対応しています。
■過重労働による健康障害を防止するための面接指導等の推進
過重労働による健康障害防止対策については、2020(令和2)年に改正された「過重労働による健康障害防止のための総合対策」により、時間外・休日労働時間の削減や、労働者の健康管理等の事業者が講ずべき措置について指導等を行っています。その中で、長時間労働を行った労働者への医師による面接指導等及び面接指導の結果に基づく就業上の措置等の実施の徹底を図っています。
また、事業者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならないこととされ、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、かつ、申出のあった労働者、労働基準法による時間外労働の上限規制が適用されない研究開発業務に従事する労働者又は高度プロフェッショナル制度が適用され、かつ、長時間労働を行った労働者に対して、面接指導を実施しなければならないこととされており、これらを踏まえ、面接指導の実施等を始めとした過重労働による健康障害防止対策を推進しています。
その他、都道府県労働局長による過労死等防止計画指導等により、企業の本社(事業場)に対するメンタルヘルス対策に係る指導を実施するなど、全社的なメンタルヘルス対策の取組みについて指導を行っています。
安定した労使関係の形成など
■2024(令和6)年度の労使関係
◆我が国の労働組合
我が国の労働組合は、企業別労働組合を基本に組織されていますが、政策・制度面を始め、企業別組織では対応できない課題に取り組むため、これらが集まって産業別組織を形成し、さらに、これらの産業別組織が集まって全国的中央組織を形成しています。
2024(令和6)年6月現在、我が国の労働組合員数は991万2千人で、前年比で2万6千人減少しました。また、パートタイム労働者の労働組合員数は146万3千人で、前年比で5万3千人増加しました。
◆春闘の情勢
2024(令和6)年11月26日の「政労使の意見交換」において、内閣総理大臣から「政権といたしましては、デフレ脱却と成長型経済の実現を確実なものとし、地方経済と日本経済をともに成長させ、生活が豊かになったことを一人一人の国民に実感していただきますよう、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現することを目指します。これを、物価が持続的・安定的に上昇する新たな経済ステージにおいて実現するため、来年の春季労使交渉におきましては、労働者の賃金水準を引き上げるベースアップを念頭に、33年ぶりの高水準の賃上げとなった今年の勢いで、大幅な賃上げへの御協力をお願いいたします。この賃上げの流れが、雇用の7割を占めます中小企業、地方で働く皆様方にも行き渡ることが重要であります。政府として、賃上げ環境の整備のための具体策を盛り込んだ総合経済対策を決定いたしました。これに基づき、価格転嫁等の取引適正化の推進、省力化・デジタル化投資の推進、人への投資の促進及び多様な人材が安心して働ける環境の整備、中堅・中小企業の経営基盤の強化・成長の支援などに取り組んでまいります。その裏付けとなります補正予算の早期成立を図ってまいります。本日の御議論も踏まえ、地方における官公需や中小企業と中小・小規模間の転嫁も含めまして、労務費の価格転嫁の徹底に一層全力で取り組んでまいります。また、厚生労働大臣におかれましては、賃上げの流れが地方にも波及するよう、全国47都道府県におきまして、地方版政労使会議の開催をお願いいたします。」等の発言がありました。
日本経済団体連合会(経団連)は2025(令和7)年1月21日に、「来たる2025 年春季労使交渉・協議においては、ここ2年間で醸成されてきた賃金引上げの力強いモメンタムを社会全体に『定着』させ、『分厚い中間層』の形成と『構造的な賃金引上げ』の実現に貢献することが、経団連・企業の社会的責務といえます。その達成の鍵は、働き手の7割近くを雇用する中小企業と、雇用者数全体の4割近くを占める有期雇用等労働者の賃金引上げが握っています。とりわけ、中小企業における賃金引上げには、適正な価格転嫁と販売価格アップが不可欠である。」、「物価上昇が継続する中、働き手の実質的な生活水準の維持と企業における人材の確保・定着の観点から、月例賃金(基本給)の引上げにあたっては、『賃金・処遇決定の大原則』に基づき、制度昇給(定期昇給、賃金体系・カーブ維持分)の実施はもとより、ベースアップ(賃金水準自体の引上げ、賃金表の書き換え)を念頭に置いた検討が望まれる。」等を内容とする「2025年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を公表しました。
2025年1月22日、連合と経団連のトップ同士の懇談会が開催され、春季労使交渉をめぐる諸問題について意見交換が行われました。2025年1月から2月上旬に主要産業別労働組合が統一要求方針を決定し、これを受けて2月中旬から下旬に個別労働組合が方針を決定して要求書を提出し、以後、個別の企業ごとに労使交渉が行われました。
2025年3月12日の集中回答日に、自動車、電機など大手主要組合に対して、賃金、一時金等に関する回答が示されました。また、2025年3月12日に、「政労使の意見交換」が実施され、中小企業や小規模事業者の賃金交渉に向けて、労使の代表と意見交換が行われました。連合は春闘の結果について、例年3月から7月まで発表を行っています。2025年5月8日、連合が発表した「2025春季生活闘争第5 回回答集計結果」では、月例賃金(加重平均)の賃上げ率は5.32%と、2024年の同時期と比較して上回りました。
(つづく)Y.H
(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書