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実践編・応用編

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた基本的方向

投稿日:2026年7月1日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

前回に引き続き、労働環境の整備についてお話しします。労働環境とは、会社で働く従業員を取り巻く環境のことです。事業者には、従業員の健康や安全を守るため、労働環境を整える義務があります。「労働安全衛生法第3条の1」に、以下のように記されています。「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」労働環境の整備は、従業員の定着や生産性の向上など企業の利益アップにつながるため非常に重要です。

 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた基本的方向

「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(平成19年12月18日仕事と生活の調和推進官民トップ会議策定。平成22年6月29日一部改正)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(平成19年12月18日仕事と生活の調和推進官民トップ会議策定。平成28年3月7日一部改正)に基づき、厚生労働省は、フリーター等を対象とした正社員就職支援、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得促進等に向けた企業の取組みの促進、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)の周知徹底や男性の育児休業の取得促進などの、仕事と家庭の両立支援等に取り組んでいます。

柔軟な働き方がしやすい環境整備

■テレワークの定着・促進

テレワークについては、仕事と育児・介護の両立、ワーク・ライフ・バランスの向上等に資するものであり、適正な労務管理下におけるテレワークの導入・定着促進を図るため、導入しようとする企業に対して、労務管理や情報通信技術(ICT)に関する課題等について、ワンストップで相談対応やコンサルティングを行う「テレワーク相談センター」を設置しています。

また、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」について、引き続き、周知を図るとともに、中小企業事業主に対しテレワーク勤務制度導入への助成(「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」)などを行っています。

フリーランスなど個人が安心して働ける環境の整備

フリーランスが受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、第211回通常国会(2023(令和5)年)で成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号。以下「フリーランス・事業者間取引適正化等法」という。)については、関係する政省令・指針等を整備するとともに、関係省庁と連携して同法の周知・啓発や執行体制の整備を進め、同法は2024(令和6)年11月に施行されました。

引き続き関係省庁と連携し、同法の周知・啓発を行うとともに、特定受託事業者(フリーランス)から法違反に関する申出があった場合等には公正取引委員会・中小企業庁と連携し対応していきます。

さらに、フリーランスと発注事業者等との取引上のトラブルについて、ワンストップで相談できる窓口(フリーランス・トラブル110番)において、相談体制の拡充やトラブル解決機能の向上により、迅速かつ丁寧な相談対応や紛争解決の援助を行っています。

また、労働関係法令等の適用関係を明らかにするとともに、それぞれの法令に基づく問題行為を明確化するため、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で策定した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」について、周知・活用を図っています。

■副業・兼業の環境整備

副業・兼業については、副業・兼業の場合の労働時間管理や健康管理について、2020(令和2)年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、労働者の申告等による副業先での労働時間の把握や簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)を示すなど、ルールを明確化しています。また、第201回通常国会において2020年3月に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)により「雇用保険法」(昭和49年法律第116号)及び「労働者災害補償保険法」(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)が改正され、複数就業者のセーフティネットの整備に係る規定が施行されました(雇用保険部分は2022(令和4)年1月1日、労災保険部分は2020年9月1日)。加えて、2022年7月における同ガイドラインの改定では、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、職業選択に資するよう、企業に対して、副業・兼業への対応状況についての情報公開を推奨しています。

企業も労働者も安心して副業・兼業を行うことができる環境を整備するため、同ガイドラインについてのわかりやすいパンフレットやリーフレット、副業・兼業の届出や、管理モデルの導入の際に活用できる様式例、企業の取組事例集などを作成し、丁寧に周知を行っています。

また、2023(令和5)年度より、公益財団法人産業雇用安定センターにおいて、副業・兼業を希望する中高年齢者及びその能力の活用を希望する企業の情報を蓄積し、当該中高年齢者に企業情報を提供する「副業・兼業に関する情報提供モデル事業」を実施しています。

仕事と育児・介護の両立支援策の推進

■現状

育児・介護期は特に仕事と家庭の両立が困難であることから、労働者の継続就業を図るため、仕事と家庭の両立支援策を重点的に推進する必要があります。

直近の調査では、女性の育児休業取得率は84.1%(2023(令和5)年度)と、育児休業制度の着実な定着が図られています。また、2015(平成27)年~2019(令和元)年に第1子を出産した女性の出産後の継続就業割合は、69.5%(2021(令和3)年)となっており、約7割の女性が出産後も継続就業しています。

一方で、男性の育児休業取得率は30.1%(2023年度)と過去最高を記録しましたが、こども未来戦略(2023年12月22日閣議決定)に掲げられた2025年50%、2030年85%(いずれも民間)の政府目標の達成に向けて更なる取組が求められる状況にあります。

こうした状況を踏まえ、男女ともに仕事と育児・介護を両立したいという希望がかない、安心して働き続けることができる環境を引き続き整備していく必要があります。

■育児・介護休業法等

男女ともに子育て等をしながら働き続けることができる環境を整備するため、育児・介護休業法において、育児休業、短時間勤務制度や所定外労働の制限のほか、父母がともに育児休業を取得する場合の育児休業取得可能期間の延長(パパ・ママ育休プラス)、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組み(産後パパ育休)、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産等の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け等、父親の育児休業取得等を促進するための制度が規定されています。

子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や子の看護休暇制度の見直しに加え、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度等に関する個別周知・意向確認の義務付け等を内容とする「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」(令和6年法律第42号)が第213回通常国会(2024(令和6)年)で成立し、2024年5月に公布され、関係政省令・指針等の整備や周知広報を行った上で、2025(令和7)年4月に一部が施行されました。引き続き、同年10月の段階施行に向けて周知広報等の取組みを進めています。

また、雇用保険制度においては、労働者の職業生活の円滑な継続を援助、促進するめ、労働者が原則1歳未満の子を養育するための育児休業を行う場合に支給する育児休業給付に加えて、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)により、2025年4月から、子の出生後一定期間内に両親がともに育児休業を取得した場合に、既存の育児休業給付と合わせて休業開始前賃金の手取り10割相当を支給する出生後休業支援給付や、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金の1割を支給する育児時短就業給付を創設しました。

労働生産性の向上等による労働環境の整備

■構造的人手不足に対応した労働市場改革

人手不足の問題が顕在化する中においては、希望する労働者が主体的に安心して労働移動できるよう支援する必要があります。そのために、厚生労働省では、関係省庁と連携し、「個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入」、「労働移動の円滑化」、「リ・スキリングによる能力向上支援」といった労働市場改革に取り組んでおり、こうした取組みを通じて、働く方々の個々のニーズに応じて、多様で柔軟な働き方を選択することができる社会の実現を目指しています。

ジョブ型人事の導入

2024(令和6)年8月に、ジョブ型人事の導入企業の事例を掲載した「ジョブ型人事指針」を取りまとめ、周知を行っています。また、厚生労働省が作成した「職務分析実施マニュアル」や、「職務給の導入に向けた手引き」等を活用し、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入を促進しています。

リ・スキリングによる能力向上支援

我が国の在職者への学び直し支援策は、企業経由が中心となっています。これについて、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(令和5年6月16日閣議決定)において、働く個人が主体的に選択可能となるよう、5年以内を目途に、効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるようにし、在職者のリ・スキリングの受講者の割合を高めていくなど、リ・スキリングによる能力向上支援に取り組んでいます。

①個人の主体的な能力開発に対する支援

雇用保険の被保険者等が厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し、修了した場合に、その費用の一部を支給する教育訓練給付金については、関係省庁と連携して、デジタル分野等の成長分野の講座拡大やオンライン等で受講できる講座の充実を進めていくほか、更なる制度の周知・広報の実施により、活用を促進しています。また、雇用保険制度において、自ら教育訓練に取り組む労働者への支援を強化するため、2024(令和6)年5月に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第26号)において、2024年10月より教育訓練給付金の給付率の上限の引上げを実施するとともに、2025(令和7)年10月より、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるために休暇を取得した場合に賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」を創設することとしました。さらに、雇用保険被保険者以外の者が教育訓練を受ける場合に教育訓練費用と生活費用を融資対象とする「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」を創設することとしました。

②企業に対する職業能力開発への支援

事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、人材開発支援助成金により、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成しています。2022(令和4)年度には「人への投資」を強化するため、「人への投資促進コース」及び「事業展開等リスキリング支援コース」を創設し、2026(令和8)年度まで高率助成により支援することとしています。

また、2024(令和6)年度から、人への投資促進コースの長期教育訓練休暇制度について、労働者が柔軟に休暇を取得できるよう時間単位の休暇を対象とし、中小企業事業主における1人当たり賃金助成支給上限時間数、賃金助成額等を引き上げました。また、自発的職業能力開発訓練の活用促進を図るため、訓練時間の下限20時間を見直し、10時間に引き下げるとともに、長期教育訓練休暇制度と組み合わせて活用しやすくするため、職務関連の訓練に限ることとしていた要件について職務関連以外も認めるなど、引き続き、人材育成に取り組む事業主等を支援していくこととしています。

成長分野等でのハロートレーニング(公的職業訓練)の推進

ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施にあたっては、専修学校、大学・大学院、企業や特定非営利活動法人を含む民間教育訓練機関を積極的に活用し、成長分野等における多様な人材ニーズに応じた訓練機会を提供することとしています。また、国の公共職業能力開施設において、在職中の労働者を対象に、技術革新、産業構造の変化などに対応する高度な技能や知識を習得させるための在職者訓練を実施しています。

さらに、デジタル推進人材の育成に向けて、デジタル分野の訓練コースの設定促進に取り組んでいます。2023(令和5)年度においては、公共職業訓練で約9.5万人、求職者支援訓練で約4.5万人に対して離職者訓練を実施しました。2025(令和7)年度は、公共職業訓練で約14.3万人、求職者支援訓練で約4.6万人が離職者訓練を受講できるように措置しています。

(つづく)Y.H

(出典)
厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書

 

-実践編・応用編

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