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実践編・応用編

雇用管理改善による「魅力ある職場づくり」

投稿日:2026年7月3日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

前回に引き続き、労働環境の整備についてお話しします。労働環境とは、会社で働く従業員を取り巻く環境のことです。事業者には、従業員の健康や安全を守るため、労働環境を整える義務があります。「労働安全衛生法第3条の1」に、以下のように記されています。「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」労働環境の整備は、従業員の定着や生産性の向上など企業の利益アップにつながるため非常に重要です。

雇用管理改善による「魅力ある職場づくり」の推進

雇用創出の中核的な担い手である中小企業等では採用意欲がありながら人材が確保できない等の雇用管理上の課題を抱えており、人材不足が顕著となっています。この解消のためには、現在就業している従業員の職場定着を高めるなど、雇用管理改善の取組みを通じた、「魅力ある職場づくり」を推進する必要があります。

このため、魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等に取り組む事業主や事業協同組合等に対し、「人材確保等支援助成金」により支援をしています。また、建設業に関しては、2021(令和3)年度からの5か年計画である「第10次建設雇用改善計画」を策定し、若年者等の建設業への入職・定着促進による担い手の確保・育成、魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備、職業能力開発の促進、技能継承を最重点事項として、施策を実施しています。

ものづくり分野等での人材育成の推進

ものづくり立国の推進若者のものづくり離れ・技能離れが見られる中、業界団体等を活用した技能継承に取り組んできたところですが、2013(平成25)年度から若年技能者人材育成支援等事業を創設し、若年技能者が技能を向上させる、あるいは、若者が進んで技能者を目指すなどの環境の整備等に取り組んでいます。

本事業において、ものづくりに関して優れた技能や経験を有する熟練技能者を「ものづくりマイスター」として認定・登録するとともに、企業、業界団体、教育訓練機関に派遣し、若年技能者等に対する実技指導等を実施しました。

職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進

■キャリアコンサルティングの活用促進

◆キャリアコンサルティングの概要

キャリアコンサルティングとは「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」(職業能力開発促進法第2条第5項)をいい、ハローワークなどの需給調整機関や、企業、学校などの多くの現場で実施されています。

人生100年時代を迎え職業人生の長期化や働き方の多様化、雇用慣行の変化などにより雇用の選択機会が増す中で、働く者が自ら職業生活設計を行うなど主体的なキャリア形成への意識がこれまで以上に高まっていると考えられます。キャリア形成支援の重要性や社会からの期待が一層高まる中で、キャリアコンサルティングは、キャリア形成に関する労働市場のインフラとしての役割も担っています。

◆キャリアコンサルティングの普及促進

キャリアコンサルティングを担うキャリアコンサルタントについては、2016(平成28)年4月、職業選択や職業能力開発に関する相談・助言を行う専門家としてキャリアコンサルタント登録制度を法定化し、キャリアコンサルタントを登録制の名称独占資格として位置づけるとともに、守秘義務、信用失墜行為の禁止義務を課しました。また、5年ごとの更新に当たって必要な講習の受講を義務づけるなどにより資質の確保を図っています。

また、企業におけるキャリアコンサルティングの実施を推進するため、キャリア形成・リスキリング推進事業における企業内で定期的にキャリアコンサルティングを受ける仕組みである「セルフ・キャリアドック」の普及促進や、グッドキャリア企業アワードの実施などを行っています。

このほか、キャリアコンサルティングの有用性を広め、キャリアコンサルタントの技能の向上を図るため、2008(平成20)年12月よりキャリアコンサルティング職種技能検定試験を実施しています。当該検定試験に合格したキャリアコンサルティング技能士(1級・2級)は、その能力の水準がキャリアコンサルタントより上位の資格として位置づけられています。

◆ジョブ・カード制度の推進

2008(平成20)年度創設したジョブ・カード制度については、「新ジョブ・カード制度推進計画」を策定し、2015(平成27)年10月から、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職等を促進するために、「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールとして、キャリアコンサルティング等の個人への相談支援のもと、求職活動、職業能力開発などの各場面において活用するよう、普及促進を行っています。

2024(令和6)年度に始まったキャリア形成・リスキリング推進事業(キャリア形成・学び直し支援センター事業を拡充)により、各都道府県に「キャリア形成・リスキリング支援センター」を設置して、企業に対する支援を行うとともに、センター及びハローワークに「キャリア形成・リスキリング相談コーナー」を設置し、訓練受講希望者や、直ちに求職活動を行わないがキャリアについて相談したい方を含め、個人に対する相談支援を実施しています。

◆職業能力評価制度の整備

①技能検定の制度の運用

「技能検定制度」は、労働者の有する技能の程度を検定し、これを公証する国家検定制度であって、合格した者は、「技能士」と称することができます。職業能力開発促進法に基づき1959(昭和34)年から実施され、ものづくり労働者を始めとする労働者の技能習得意欲を増進させるとともに、労働者の社会的地位の向上に重要な役割を果たしています。

技能検定は、2025(令和7)年4月1日現在で、133職種について実施しており、2023(令和5)年度には全国で約81.0万人の受検申請があり、約35.6万人が合格し、検定制度開始からの累計で延べ約872万人が技能士となっています。

なお、若者が技能検定を受検しやすい環境を整備するため、ものづくり分野の技能検定の3級の実技試験を受検する23歳未満の在職者に対して、最大9,000円を支援する措置を実施しています。

②職業能力評価基準

職業能力が適切に評価される社会基盤づくりとして、職業能力を客観的に評価する「職業能力評価基準」を策定しています。また、事務系職種の職業能力評価基準を活用した「ポータブルスキル見える化ツール」を「job tag(職業情報提供サイト)」に掲載するとともに、その活用に係る教材を厚生労働省ホームページに掲載しています。

国と地方自治体が連携した雇用対策の推進

憲法に定められた勤労権の保障のため、ハローワークの全国ネットワークを通じて、職業相談・職業紹介、雇用保険制度の運営、雇用対策を一体的に実施し、セーフティネットとしての役割を果たす国と、地域の抱えるそれぞれの課題について、無料職業紹介事業(地方版ハローワーク)を含む各種の雇用対策を独自に実施する地方自治体が、それぞれの強みを活かし、相乗効果を発揮しながら一体となって雇用対策を行うことで、住民サービスの更なる強化を目指すことが重要となっています。

国と地方自治体との連携をより強固にするため、国と地方自治体による「雇用対策協定」の締結が進んでいます。2024(令和6)年度には、新たに18市1町と締結し、2024年度末時点で、317自治体となっています。またハローワークが行っている無料職業紹介と、地方自治体が行っている福祉に関する相談等を、共同運営施設においてワンストップで実施する取組み(「一体的実施事業」)を進めています(2025(令和7)年4月現在、34道府県153市区町)。

さらに、2014(平成26)年9月より、ハローワークが保有する求人情報を、地方自治体や民間人材ビジネス等にオンラインで提供する取組みを開始するとともに、2016(平成28)年3月22日からハローワーク求職情報の提供サービスを開始しました。2020(令和2)年1月6日からは両サービスを統合し、求人・求職情報提供サービスとして運用しています。

労働者派遣制度、職業紹介等の雇用仲介に関する制度の見直し

労働者派遣制度については、全ての労働者派遣事業を許可制とすることや派遣期間制限の見直し、派遣労働者の均衡待遇やキャリアアップの推進等を内容とする改正労働者派遣法が2015(平成27)年9月30日に施行され、2020(令和2)年7月14日に労働政策審況を踏まえた議論を行い、中間整理が取りまとめられました。

また、派遣労働者の公正な待遇を確保するため、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018(平成30)年6月29日に成立し、改正労働者派遣法が2020年4月1日から施行された。具体的な内容として、①不合理な待遇差を解消するための規定の整備、②派遣労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、③裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備などが盛り込まれています。

このうち①不合理な待遇差を解消するための規定の整備については、「派遣先の労働者と均等・均衡待遇の確保(派遣先均等・均衡方式)」か、「一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇の確保(労使協定方式)」のいずれかの方式による待遇確保が派遣元事業主に義務づけられました。

職業紹介等に関する制度については、2017(平成29)年3月に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」による職業安定法改正により、①求人者・募集者について、採用時の条件があらかじめ示した条件と異なる場合等に、その内容を求職者等に明示することを義務づける、②募集情報等提供事業者の講ずべき措置を指針で定める等の措置を講じました。

また、2022(令和4)年3月に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」による職業安定法改正により、

①「募集情報等提供」の定義を拡大する。

②募集情報等提供事業者に対し、募集情報等の正確性や最新性を保つための措置、個人情

報保護、苦情処理体制の整備等を義務づける。

③求職者情報を収集する募集情報等提供事業者を対象に事前の届出制を創設する。

等の措置を講じており、改正職業安定法については、2022年10月1日に全面的に施行されました。

医療・介護・保育分野に従事する労働者を採用する際の職業紹介事業者に支払う手数料が高い・転職勧奨により早期離職してしまうといった指摘等があり、①「適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の創設、②職業紹介事業者に対する、全都道府県労働局による「集中的指導監督」の実施等により、適正な事業者の認定や法令遵守の徹底等を行いました。

また、現在及び今後における人手不足の状況やミスマッチを緩和、改善するため、労働力の需給調整機能の強化を図るための更なる対応策として、2024(令和6)年10月に職業安定法に基づく省令及び指針を改正し、求人者と求職者双方が、安心・納得して雇用仲介業を利用できるようにするための更なる措置を講ずることとした。具体的には、①職業紹介事業者の手数料実績の公開を義務化し、事業の透明性を高め、利用者の選択に資すること、②求人サイト、求人情報誌など募集情報を提供する事業者については、職業紹介事業者と同様に、早期離職につながるお祝い金等を労働者に提供することを原則禁止するなどの措置を2025(令和7)年4月に施行しました。

地方創生の推進

■地方創生に向けた地域雇用対策の推進

地域ごとに産業構造、人口構成、社会情勢等は異なっており、ミスマッチの問題や地域特有の課題もみられることから、地域の実情に応じた雇用対策に取り組む必要があります。また、新型コロナウイルス感染症の影響等により東京圏への転入超過数が減少する動きがあったものの、2022(令和4)年からは再び増加に転じており、地方における人口減少や地域経済の縮小といった課題を克服するために取り組む地方創生の観点から、地域に魅力のある仕事をつくるとともに、そこに必要な人材の育成や大都市圏からの人材還流等を推進することが重要となっています。

厚生労働省では、上記の状況を踏まえ、地域雇用の課題に対して、国や都道府県の施策との連携を図りつつ、魅力ある雇用機会の確保や企業ニーズにあった人材育成、就職促進等の事業を一体的に実施することにより、地域における良質な雇用の実現を図る都道府県の取組みを支援する「地域活性化雇用創造プロジェクト」を実施しています。

また、雇用機会が不足している地域や過疎化が進んでいる地域等において、市町村や経済団体等により構成される協議会に対して事業を委託し、地域の自主性・創意工夫を生かした「魅力ある雇用」や「それを担う人材」の維持・確保を図る「地域雇用活性化推進事業」を実施しています。

さらに、大都市圏から地方への人材還流を促進するため、東京圏・大阪圏において、セミナー等により地方就職の準備が整った者をハローワークへ誘導し、全国ネットワークを活用したマッチングにより就職へ結びつける「地方就職希望者活性化事業」を実施しているほか、「早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)」により、東京圏からのUIJターン者を採用した事業主に対し、その採用活動経費の一部を助成しています。

■地方拠点強化税制における雇用促進税制

「地域再生法」(平成17年法律第24号)等に基づく地方拠点強化税制における雇用促進税制は、本社機能を有する業務施設を東京23区から地方に移転する事業や地方において拡充する事業を行い、その施設で雇用者(有期雇用やパートを除く)を増加させた場合等一定の要件を満たした場合に、その増加人数に応じて法人税等の税額控除を受けることができる制度です。本税制は、2024(令和6)年度税制改正により、適用期限が2年間延長されるとともに、要件の一部緩和等の見直しが行われました。

(つづく)Y.H

(出典)

厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書

 

-実践編・応用編

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