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実践編・応用編

「賃上げ」の流れの波及及と最低賃金の引上げ

投稿日:2026年6月29日 更新日:

労働環境の整備 

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

労働環境とは、会社で働く従業員を取り巻く環境のことです。事業者には、従業員の健康や安全を守るため、労働環境を整える義務があります。「労働安全衛生法第3条の1」に、以下のように記されています。「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」労働環境の整備は、従業員の定着や生産性の向上など企業の利益アップにつながるため非常に重要です。今回は、労働環境の整備についてお話しします。

「賃上げ」の流れの波及及と最低賃金の引上げ

■地方版政労使会議の開催による賃金引上げの機運醸成

物価上昇を上回る賃金の引上げの実現は、政府として重要な課題と位置づけており、これまで賃上げ支援を強力に推進してきました。約30年ぶりの高水準の賃上げの流れを継続・拡大し、物価上昇を上回る賃金上昇を全国的に幅広く普及・定着させるため、政労使のトップの参画により、政労使の意見交換が開催され、2025(令和7)年春季労使交渉等について労使と意見交換を行いました。2024(令和6)年11月26日に開催された政労使の意見交換の場において、石破内閣総理大臣から「地方における官公需や中小企業と中小・小規模間の転嫁も含めまして、労務費の価格転嫁の徹底に一層全力で取り組んでまいります。また、厚労大臣(厚生労働大臣)におかれましては、賃上げの流れが地方にも波及するよう、全国47都道府県におきまして、地方版政労使会議の開催をお願いいたします」 等の発言がありました。これを受け、都道府県労働局等が事務局となり、「賃金引上げ」に向 けた取組みを主たるテーマとして、全ての都道府県において地方版政労使会議を開催しました。開催に当たっては、各地域における賃金引上げに向けた一層の機運醸成のため、政労使の各構成員のトップの出席を要請したほか、厚生労働省及び各自治体の取組みに加え、価格転嫁や生産性向上の取組みについても意見交換ができるよう、経済産業省の地方支分部局や公正取引委員会の地方事務所等からも施策説明を行いました。

最低賃金の引上げ

日本では労働者の生活の安定や労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保に資するこ となどを目的として最低賃金制度を設けています。最低賃金制度は、国が法的強制力をもっ て賃金の最低額を定め、使用者はその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない こととするものです。 最低賃金には、各都道府県内の全ての使用者及び労働者に適用される地域別最低賃金 (適用労働者数約5,245万人、令和3年経済センサス-活動調査等により算出)と、特定の産業の使用者及び労働者に適用される特定最低賃金(2025(令和7)年4月1日現在、224件、適用労働者数約296万人)があります。特定最低賃金は地域別最低賃金を上回ることが必要とされているところ、一部の特定最低賃金は地域別最低賃金を上回っていません。 このため、これら両方が適用となる労働者については、より高い最低賃金額が適用となります。 地域別最低賃金は、毎年公労使三者からなる中央最低賃金審議会が、厚生労働大臣の諮問を受け、その年の改定額の目安の答申を行います。この目安を参考に都道府県労働局に設置 された地方最低賃金審議会で審議の上、その答申を受け、都道府県労働局長が改正決定を行います。

2024(令和6)年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で対前年度51円引上げの1,055 円となりました(全国の地域別最低賃金の一覧は最低賃金特設サイトを参照)。また、特定最低賃金の全国加重平均額は1,063円(2025年4月1日現在)となりました。 また、改定された最低賃金については、リーフレット等の配布に加え、インターネットや広報媒体を活用した周知広報などにより労使を始め広く国民に周知徹底を図っています。 今後は、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(2024年11月22 日閣議決定)にあるとおり、「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」こととしており、最低賃金の中期的引上げ方針及び最低賃 金の引上げに向けた対応策について、政労使の意見交換において議論を行いました。

 中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境の整備

厚生労働省では、賃金引上げに向けた取組みへの支援として、2025(令和7)年度予算において、「賃上げ」支援助成金パッケージを取りまとめ、当該パッケージに盛り込まれている以下の助成金による支援等を行っています。

①事業場内で最も低い時間給の労働者の賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に対し、その設備投資などに要した費用 の一部を「業務改善助成金」により助成。

②非正規雇用で働く方の処遇改善等を行った場合に「キャリアアップ助成金」により助成。 ③厚生労働省と中小企業庁が連携し、賃金引上げに向けて中小企業・小規模事業者が活用 可能な支援施策をまとめたリーフレットを共同で作成し、「働き方改革推進支援センター」や「よろず支援拠点」等で周知・広報を実施。

また、「働き方改革推進支援センター」を47都道府県に設置し、労務管理等の専門家による無料の個別相談支援やセミナー等を実施しています。

非正規雇用の現状と対策

非正規雇用の現状と課題

近年、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者は全体として増加傾向にあり、雇用者の約4割を占める状況にあります。これは、高齢者が増える中、高齢層での継続雇用により非正規雇用が増加していることや、女性を中心にパートなどで働き始める労働者が増加していることなどが主な要因です。なお、新型コロナウイ ルス感染症の感染拡大の影響もあり、2020(令和2)年、2021(令和3)年の非正規雇用労働者は対前年比で減少しましたが、2022(令和4)年以降は増加し、2024(令和6)年は、2,126万人となっています。 非正規雇用労働者は、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発機会が乏しいなどの課題があり、正規雇用を希望しながらそれがかなわず、非正規雇用で働く者(不本意非正規雇用 労働者)が8.7%(2024年)存在し、年齢階級別では25~34歳の若年層で12.7%(2024 年)と高くなっています。一方、非正規雇用労働者の中には「自分の都合のよい時間に働きたいから」等の理由により自ら非正規雇用を選ぶ方もおり、多様な働き方が進む中で、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられることが重要です。

 非正規雇用労働者への総合的な対策の推進

「多様な正社員」制度などによる正社員転換・待遇改善の推進

正社員を希望する方の正社員転換や非正規雇用を選択する方の待遇改善を推進するため、キャリアアップ助成金において、非正規雇用労働者の正社員転換、処遇改善の取組みを図る事業主に対して助成を行っています。 また、どのような働き方を選択しても公正な待遇を受けられるようにし、人々が自分の希望に合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにすることが重要です。2020(令和2)年4月1日に施行された「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理 の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号。以下「パートタイム・有期雇用労働法」という。同法の中小企業への適用は2021(令和3)年4月1日。)及び「労働者派遣事業 の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号)では、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向け、①不合理な待遇差を解消するための規定の整備、②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、③行政による法の履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備されました。これらについては、2025 (令和7)年2月より、労働政策審議会同一労働同一賃金部会において、必要な見直しに ついて議論を行っています。

併せて、非正規雇用労働者の正社員登用の入り口として有用である職務、勤務地、労働時間を限定して選択できる「多様な正社員」制度の普及促進を行っています。セミナーの開催、企業の取組事例の周知、「多様な正社員」制度を導入・整備しようとする企業への導入支援を行うほか、前述のキャリアアップ助成金においても、短時間正社員制度、勤務地限定正社員制度又は職務限定正社員制度を新たに導入し、対象労働者をこうした多様な正社員に転換した企業に対し、助成額の加算を行い、一層の制度普及の促進を図っています。

フリーター等の正社員就職支援のため、「わかものハローワーク」(2025年4月1日現在21か所)等を拠点に、担当者制による個別支援、正社員就職に向けたセミナーやグループワーク等各種支援、就職後の定着支援を実施しており、2023(令和5)年度は約9.8万人が就職しました。

また、職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者について、正規雇用化等の早期実現を図るため、これらの者をハローワーク等の紹介を通じて一定期間試行雇用する事業主に対して助成措置(トライアル雇用助成金)を講じています。

能力開発機会の確保

ハローワークの求職者のうち、就職のために職業訓練が必要な者に対して無料のハロートレーニング(公的職業訓練)を実施し、安定した就職に向けて職業能力開発の機会を提供しています。具体的には、主に雇用保険受給者を対象として、おおむね3か月から2年の公共職業訓練を実施しているほか、主に雇用保険を受給できない者を対象として2か月から6か月の求職者支援訓練を実施しています。また、非正規雇用労働者等を対象として、国家資格の取得等を目指す長期の訓練コースを2017(平成29)年度より拡充し、より高い可能性で正社員就職に導くことができる訓練を推進しています。

また、非正規雇用労働者等に対して、キャリアコンサルティングや実践的な職業訓練の機会の提供及びその職務経歴等や訓練修了後の能力評価結果を取りまとめたジョブ・カードの就職活動における活用を通じて、求職者と求人企業とのマッチングやその実践的な職業能力の習得を促進し、安定的な雇用への移行等を目指すため、ジョブ・カード制度の活用促進を図っています。

有期労働契約に関するルール

労働契約の期間の定めは、パートタイム労働、派遣労働などを含め、いわゆる正社員以外の多くの労働形態に関わる労働契約の要素であり、有期労働契約で働く人は1,438万人(2024(令和6)年平均)となっています。有期労働契約の更新の下で生じる雇止めの不安の解消や、有期労働契約であることを理由として不合理な労働条件が定められることのないようにしていくことが課題となっています。

2013(平成25)年4月1日に全面施行された改正労働契約法では、こうした有期労働契約に関する問題に対処し、働く人が安心して働き続けることができる社会を実現するため、(1)有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる制度(以下「無期転換ルール」という。)を導入すること、(2)最高裁判例として確立した「雇止め法理」を法定化すること、(3)有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けてはならないという規定を設けることの3つの措置を講じました。

この改正労働契約法を円滑かつ着実に施行するため、都道府県労働局に「無期転換ルール特別相談窓口」を設置し、相談窓口の明確化を図っています。2018(平成30)年4月以降、多くの有期契約労働者に無期転換申込権が発生していることから、引き続き制度の円滑な導入が図られるよう、周知啓発を徹底するとともに、適切な相談対応を行っています。

パートタイム労働者・有期雇用労働者の均等・均等待遇の確保

パートタイム労働者・有期雇用労働者の中には、補助的な業務ではなく、役職に就くなど職場で基幹的役割を果たす者も存在しています。一方で、その待遇がその働きや貢献に見合ったものになっていない場合もあります。このため、パートタイム労働者・有期雇用労働者について正社員との不合理な待遇差を解消し、働きや貢献に見合った公正な待遇をより一層確保することが課題となっています。

こうしたことから、パートタイム労働者・有期雇用労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、パートタイム・有期雇用労働法違反が認められる企業に対しては、是正指導を行い、法違反に当たらないものの、改善に向けた取組みが望まれる企業に対しては、具体的な助言を行いつつ、支援ツール等を活用し、企業の制度等の見直しを検討するように促し、同法の着実な履行確保を図っています。また、2022(令和4)年10月に策定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和4年10月28日閣議決定)及び2023(令和5)年11月に策定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月2日閣議決定)に基づき、労働基準監督署と都道府県労働局が連携し、同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けた取組みを行っています。あわせて、事業主が何から着手すべきかを解説する「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」等を活用し、周知を行いました。

また、事業主に対する職務分析や職務評価の導入支援及び助成金の活用などに加え、2018(平成30)年度より47都道府県に設置している「働き方改革推進支援センター」において、労務管理等の専門家による無料の個別相談支援やセミナー等を実施しています。

さらに、パートタイム・有期雇用労働法への対応に向けた不合理な待遇差の解消に取り組む企業事例を収集しました。また、収集した取組事例やパートタイム・有期雇用労働法の解説動画等を「多様な働き方の実現応援サイト」に掲載するなど、パートタイム労働者・有期雇用労働者の雇用管理の改善に資する情報を一元的に提供することにより、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けた事業主の取組みを支援しました。

(つづく)Y.H

(出典)
厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書

 

-実践編・応用編

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