キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

キャリアコンサルタントの実践力強化の調査研究

投稿日:2025年11月18日 更新日:

キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、現段階でのスーパービジョンの基盤整理についての部分を、報告書から記述します。

ここではすでに記述した内容を踏まえた現段階でのスーパービジョンの基盤整理 (スーパービジョンの標準化に向けた考え方)を示すが、中心は既存のスーパーバイザー養成機関等が採用しているカウンセリングをベースとしたアプローチである。

しかし、今後はセルフ・キャリアドック等をはじめとする企業組織領域におけるスーパービジョンも重要性を増してくることから、これに焦点を当てた考え方は補章で示すこととする。

1.スーパービジョンの必要性

・キャリアコンサルタントの活動領域・役割の拡大

労働政策研究報告書「キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」(平成 30年3月)によると、この10年間で、キャリアコンサルティングは大まかに需給調整機関から企業へ移行している、としている。これには、職業能力開発促進法の改正による国家資格化や事業主によるキャリアコンサルティング機会の確保等の明記、セルフ・キャリアドック制度の推進など、企業内キャリアコンサルティングを後押しする制度的な環境整備の影響が大きいと考えられるが、企業内キャリアコンサルティングでは個人のキャリアに関する悩み相談に加えて、組織の生産性向上への貢献が求められていると見ることもできる。

また、同調査によると、キャリアコンサルティング施策において「地域」領域と呼ばれてきた活動領域は、この10年間で医療関係、福祉施設、自治体等の様々な領域に活動を拡大させてきた、としている。具体的には、「障害者の就労支援・職業相談」「医療機関」「福祉施設」「矯正施設・更生機関(少年院・刑務所等)」「生活保護者の就労支援」「生活困窮者の自立支援」などであり、これらの領域においてキャリアコンサルタントが有する就労支援・就職支援に係る技能・スキルが有効に活用しうるといった期待がうかがえる。さらに、キャリアコンサルティングの現場における新たな課題として、発達障害等への対応の困難が各領域でー様に指摘されている。

このように、キャリアコンサルタントの活動領域及び役割は多様化、拡大してきており、 キャリアコンサルタントの質向上、能力向上は必須の課題といえる。

・あるべきキャリアコンサルタント像とスーパービジョンの重要性

厚生労働省「キャリアコンサルタントの継続的な学びの促進に関する報告書」(平成31 年1月10日)によると、あるべきキャリアコンサルタント像とスーパービジョンの重要性について次のように示している。

キャリアコンサルティングでは、クライアントのライフステージ・キャリアステージの重要なイベントに関わる支援や指導を行うが、その場はキャリアコンサルタントとクライアントの閉ざされた場になりがちである。加えて、ともすれば支援者と支援を受ける者という対等な立場とは言いにくい状況にあることも考えれば、自らの助言・指導等がクライアントに大きな影響を及ぼしうるということを常に心に留め、また、一つーつの面談が極めて個別性の高いものであることを自覚して、面談に臨む必要がある。

さらに、キャリアコンサルタントは常に自らの課題に気づくことに努め、主体的に自らの能力・態度等の課題解決に取り組むべく学びを継続していかなければならない。

また、キャリアコンサルティングにおいてクライアントを深く理解し的確な支援につなげていくためには、まずは自らの専門家としての姿と向き合い、自らの自己理解にも努めなければならない。キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングで何ができ、 どのような対応を行ったかという活動レベルでの個々の対応方法のみに目を向けがちであるが、その活動の基にある理論的根拠やキャリア形成・能力開発における意味づけなどを説明し、支援できる力が必要である。

したがって、個別面談の力量を向上させていくことに加え、キャリアコンサルタント倫理綱領を確実に体得するためにも、キャリアコンサルタントとしてのキャリアの初期段階にある者に留まらず、経験を積んだキャリアコンサルタントにおいても、積極的かつ定期的にスーパービジョンを受けるべきである。

キャリアコンサルティングのためのスーパービジョンは、事例の理解や対応方針・技法の検討を主目的とする事例検討の要素に加え、教育的介入を通じたスーパーバイジーの成長と、同時にクライアントのキャリア形成の支援等の要素を含むものであり、さらにはそれらを通じた組織活性化への貢献を図るものとして期待される。このため、指導を受けるべきテーマに応じて、面接技術だけでなく、組織の活性化等の多様な領域に関する知識や専門性に係る複数のスーパーバイザーに指導を受ける場合もありうる。

(つづく) A.K

 

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタントの語る生涯発達から捉える”人生の午後”

このコーナーは、テクノファキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はS.Sさんからの発信です。 「生涯発達※から捉える”人生の午後”」 一昨年前、フェイスブック上で高校時代の同級生と再会した。彼は、大学を卒業した後に某一流企業に就職が決まり、これまで誰もが羨む順風満帆な人生を送ってきた。 ※生涯発達 生涯発達は、個人が生まれてから死ぬまでの間に経験する変化や成長を指します。バルテスはこの概念を「人の誕生から死に至るまでの生涯過程における個人内の変化と安定性・連続性を記述・ …

医療イノベーションの推進  2

キャリアコンサルタントの皆様方にためになる情報をお伝えします。 引き続き、医療のイノベーション推進についてお話しします。イノベーションとは、全く新しい技術や考え方を取り入れて、新しい価値を生み出し、大きな変化を起こすことをいいます。近年医療業界においてもイノベーションが強く求められています。その背景には、より高度な医療機器が開発される中で、特に疾病の治療機器が海外から輸入されるケースが増えるなど、日本国内における技術の国際競争力不足という問題があります。 医療関連産業の活性化 革新的な医薬品・医療機器等の創出 ■医薬品産業の競争力強化 医薬品産業を取り巻く環境の変化等を踏まえ、厚生労働省では2 …

リソースが集中する大企業を活性化していく重要性

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。 前回に続き、経済産業省製造産業局が2024年5月に公表した資料「製造業を巡る現状と課題について今後の政策の方向性」からスライド26ページ「リソースが集中する大企業を活性化していく重要性」について、詳細な解説をします。 (出典)経済産業省 016̠04̠00.pdf 1.製造業における企業規模別の売上・利益構造の分析 ■ 売上高・利益構造 まず、製造業における企業規模別の売上高・利益構造を確認します。上掲の図表によれば、資本金10億円超の大企業は全体のわずか0.6%(約1,800社)に過ぎませんが、この小数の企業グループが製造業全体の約8割 …

製造業を巡る現状と課題  CXの先へ組織経営能力

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。 前回に続き、経済産業省製造産業局が2024年5月に公表した資料「製造業を巡る現状と課題について今後の政策の方向性」からスライド29ページ「CXの先へ:組織経営能力を継続的向上」について、詳細な解説をします。 (出典)経済産業省 016̠04̠00.pdf 1.日本企業が抱える「官僚主義」と「現場主義」の両極構造 本スライドは、経済産業省が2024年にまとめた「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」の終盤で示されたものであり、日本企業の組織能力をいかに持続的に高めるかを論じています。 背景には、日本企業特有の組織構造の歪みがあります。 …

キャリアコンサルタントの実践力強化の調査研究3

キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、現段階でのスーパービジョンの基盤整理のスーパーバイザーによって指摘されたキャリアコンサルタントの課題例から記述します。 【スーパーバイザーによって指摘されたキャリアコンサルタントの課題例】 〇カウンセリング・スキル ・クライアントの語りや思いを受け止める前に、すぐに解決策を探し、自分本位の質問を繰り広げている。 ・クライアントが何を相談にきたかについて丁寧に聴いているが、話したことをそのまま受け止め、それが課題と判断しやすい。 〇カウンセリングのプロセス評価 ・傾聴を重視するあまり、話し手の話のペ …