キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
初等中等教育の充実についての最終回です。初等中等教育は、生徒が各自の興味・関心、能力・適性、進路等に応じて選択した分野の基礎的能力を習得し、その後の学習や職業・社会生活の基礎を形成することを役割としています。
○全国いじめ問題子供サミットの開催
いじめを未然に防止するためには、子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み、解決につなげていく意識を高め、実行していくことが効果的です。このため、子供自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成するとともに、全国各地での多様な取組の実施を一層推進することを目的に、「全国いじめ問題子供サミット」を毎年度開催しています。また、令和5年度においては、「「いじめはしない」という感覚を身に付ける」をテーマに開催し、全国44地域か ら135名の児童生徒がオンラインで参加しました。
○「ネットいじめ」への対応
近年、インターネットや携帯電話を利用したいじめ(いわゆる「ネットいじめ」)が深刻な問題になっています。 また、「ネットいじめ」のうち、SNSでのいじめについては、第三者が閲覧できないため従来の取組で対応できない場合もあります。こうしたいじめの未然防止のためには、 子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み、解決につなげていく意識を高め、実行していくことや情報モラルを身に付けさせることが重要です。また、改定後の基本方針に、インターネット上のいじめは、刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪、民事上の損害賠償請求の対象となり得ることや、インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり、被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取組を行うことを盛り込みました。
文部科学省では、ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールや電話・SNS等による教育相談体制の整備など都道府県・指定都市における取組への支援を行っており、令和5年度においても引き続き、支援に努めました。
(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
○不登校児童生徒への支援
令和5年3月31日に、文部科学大臣の下、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策プランを取りまとめました。
本プランにおいては、①不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えること、②心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援すること、③学校の風土の「見える化」を通して、学校を 「みんなが安心して学べる」場所にすることの三つを柱とし、不登校対策の一層の充実に取り組むとともに、文部科学大臣を本部長とする「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部」において、取組の進捗状況を管理し、取組の不断の改善を図ることが示されました。 また、不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う「学びの多様化学校」は、全国で35校開校しています(令和6年4月現在)。学びの多様化学校について「経済財政運営と改革の基本方針 2022」(4年6月7日閣議決定)において、全都道府県等での設置や指導の充実を図るとされていること等を踏まえ、その設置等の促進のため、6年度から9年度までの間、地方公共団体が廃校や余裕教室等の既存施設を活用して整備する場合における新しい支援メニューを創設しており、引き続き、更なる設置促進に取り組んでいきます。 加えて、令和4年度の不登校児童生徒数が小・中学校で 約30万人、そのうち学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小・中学生は約11万4千人と、いずれ も過去最多となったことを踏まえ、5年10月には「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を策定しました。本パッケージに基づき、
①校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)未設置校への設置促進
②教育支援センターのICT環境整備
③教育支援センターのアウトリーチ機能など、総合的拠点機能の強化
等に係る経費を令和5年度補正予算に計上しました。 文部科学省としては、これらを踏まえ、引き続き不登校児童生徒への支援の充実を図っていきます。
○高等学校中途退学者への対応
令和4年度の全国の国公私立の高等学校における中途退学者数は約4万3,000人、在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は1.4%となっています。 中途退学の理由としては、「進路変更」(43.9%)、「学校生活・学業不適応」(32.8%)等が挙げられます。 高等学校中途退学への対応については、各高等学校において、一人一人の生徒が主体的に目標や意欲を持って学ぶことができるよう、生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに、キャリア教育の充実や一層きめ細かな教育相談を実施することなどが重要です。また、就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。文部科学省では、教育相談体制の充実を図るため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進しているほか、中途退学者に対する学校段階からの切れ目のない支援のため、地域若者サポートステーショ ン等の関係機関と学校との連携を促進しています。
○自殺対策の推進
厚生労働省・警察庁「令和5年中における自殺の状況」 (6年3月)によると、5年中の小・中・高等学校の児童生徒の自殺者数は513人(前年514人)となり、引き続 き、憂慮すべき状況にあります。 令和5年6月には国において「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定しており、文部科学省では、同プランに基づき、1人1台端末等を活用した子供の自殺リスク等の早期把握・早期対応に取り組むとともに、SOSの出し方に関する教育を含む自殺予防教育の更なる推進、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実等、児童生徒の自殺予防に向けた取組を進めています。
○ヤングケアラーへの支援
家庭の問題として表面化しにくいヤングケアラーに対する支援を推進するため、厚生労働省及び文部科学省では、令和3年3月に「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を立ち上げ、ヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援につなげる方策等、今後取り組むべき施策について取りまとめ、同年5月に公表しました。当該報告を踏まえ、文部科学省ではこども家庭庁と連携し、教育委員会や学校の教職員に対する ヤングケアラーを理解するための研修の推進や、支援が必要なヤングケアラーを福祉等の外部の支援につなぐ役割を 持つスクールソーシャルワーカー等の配置等、必要な施策を推進しています。
(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
●教職員のメンタルヘルスの保持
学校教育は教職員と児童生徒との人格的なふれあいを通じて行われるものであり、教職員が心身ともに健康を維持 して教育に携わることが重要です。しかし、公立学校の教育職員の精神疾患による病気休職者数は、令和4年度においては6,539人と過去最多であり、教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進を図ることが喫緊の課題となっています。
こうした状況を踏まえ、文部科学省では、これまで、平成25年の「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」の最終まとめ等を踏まえ、各教育委員会に対して、教職員本人への周知等を含めたセルフケアの促進や、教職員が一人で 悩みや負担を抱え込まないよう、校長等の管理職によるラインケア、校長のリーダーシップによる業務の縮減・効率化、良好な職場環境・雰囲気の醸成等の取組や人事管理等 と関連付けて効果的・効率的な対策を図ることを促すとともに、ストレスチェック等の取組の推進、健康障害等に関する相談体制の整備、学校における働き方改革の取組の推進等を求めてきました。また、外部からの過剰要求等、学校で生じる様々なトラブルに適切に対応するため、令和2年度から教育委員会が弁護士(いわゆるスクールロイヤー) への法務相談を行う経費が普通交付税措置されたところであり、各教育委員会における法務相談体制のより一層の充実のため、学校・教育委員会と弁護士で共通理解を図って おくべき事項や対応事例等を盛り込んだ「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引きや学校・教育委員会と弁護士が事例を基に意見交換を行う ワークショップ型の研修の実施に際し、参考となる資料やその資料を活用する研修の具体的な流れ等を紹介した解説 動画を作成しました。
さらに、令和5年度からは新たに「公立学校教員のメンタルヘルス対策に関する調査研究事業」を実施し、採択自治体である各教育委員会において、専門家等と協力しながら、域内の自治体・学校において、セルフケアやラインケアの充実、ICT・SNS、相談員等を活用したメンタルヘルス対策のモデル事業の実施及びその効果検証等を進めているところです。同事業は6年度予算にも計上しているため、引き続き、教員の心身の健康の確保等を図るために、メンタルヘルス対策に取り組んでいきます。
(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
○ハラスメントの防止措置
女性活躍推進法等の改正により、令和2年6月からハラスメントの防止に関して必要な措置を講ずることが事業主である教育委員会に義務付けられました。文部科学省では 各教育委員会に対して、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントに関して、防止措置を確実に実施するよう指導を行っており、その結果、法令上義務とされている措置については、全都道府県・指定都市で実施されていま す。また、パワーハラスメント等の行為が明らかになった場合には厳正に対処するとともに、服務規律を徹底するよう指導を行っています。
(つづく)Y.H