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ICT市場規模
ICTには、利用者の接点となる機器・端末、電気通信事業者や放送事業者などが提供するネットワーク、クラウド・データセンター、動画・音楽配信などのコンテンツ・サービス、さらにセキュリティやAIなどが含まれます。世界のICT市場(支出額)は、近年増加傾向で推移しており、2024年はおよそ5.02兆ドル(前年比7.7%増)、2025年には5.44兆ドル(同8.3%増)に増加すると予測されています。
2023年の情報通信産業の名目GDPは57.4兆円であり、前年(55.5兆円)と比較すると3.5%の増加となっています。また、情報通信産業の部門別に名目GDPの推移を見てみると、多くの部門においてほぼ横ばいの傾向が続いている一方で、情報サービス業及びインターネット附随サービス業等は増加傾向にあります。
2023年の我が国の民間企業による情報化投資は、2015年価格で16.0兆円(前年比1.1%減)でした。情報化投資の種類別では、ソフトウェア(受託開発及びパッケージソフト)が9.8兆円となり、全体の6割程度を占めています。また、2023年の民間企業設備投資に占める情報化投資比率は17.5%(前年差0.4ポイント減)で、情報化投資は設備投資の中でも一定の地位を占めています。また、日米の情報化投資の推移を比較すると、米国の情報化投資は、一時的な足踏みはあるものの、堅調に増加している一方、日本の情報化投資は、緩やかな増加及び横ばいの傾向が続いています。
ICT分野の収支
国際収支統計のサービス収支において、日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」では、①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービス、さらにこれに加えて④通信サービス、⑤情報サービスを、デジタルに関係する項目として分類しています。近年、このうち、特に①から③までの合計の赤字額が急激に増えており、いわゆる「デジタル赤字」として注目を集めています。なお、この中にはデジタル分野以外のサービスに係る収支も含まれる点に注意が必要です。
例えば、①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービスの合計では、2024年では、約6.7兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増)となっています(これに、④通信サービス、⑤情報サービスを加えると、約6.8兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増))。
なお、クラウドサービスやオンライン会議システムの利用料といったコンピュータサービスが大半を占める「通信・コンピュータ・情報サービス」については、国・地域別の収支額をみると、2024年は米国、シンガポール、オランダ、中国、スウェーデンの順に赤字規模が大きいです。また、支払額では、2024年は米国、シンガポール、オランダの順に大きくなっています。
財務省貿易統計に基づき、ICT財の日本からの輸出額と日本への輸入額の差引額を確認すると、その赤字額は近年増加の傾向がみられ、2024年では3兆4,168億円の赤字となっています。なお、この統計は、あくまで日本から海外への輸出額、海外から日本への輸入額を示しており、日本企業の海外生産拠点から日本以外の海外への輸出が反映されていないことや、日本企業が海外拠点で生産し日本国内に輸入した場合は「輸入」になることに注意が必要です。
項目別にみると、2024年の黒字額が最も大きいのは「その他の電子部品」であり、「集積回路」の黒字額も大きくなっています。一方、赤字額が最も大きいのは「携帯電話機」であり、近年、赤字額の拡大が続いています。続いて「パーソナルコンピュータ」、「電子計算機本体(パソコンを除く。)」、「有線電気通信機器」の赤字額が大きいです。黒字額が大きいのは部品・部材等で、赤字額が大きいのは最終製品という傾向があります。
日本の輸出額・輸入額が多い主なICT財について、その輸出先・輸入元の上位となっている国・地域をみると、2024年は、輸入に関しては、携帯電話機、パーソナルコンピュータは中国が最大の輸入元になっています。また、輸出先は、集積回路は台湾が、その他部品は中国が、電子計算機附属装置は米国が最大の輸出先となっています。
研究開発の動向
2021年の主要国・地域における研究開発費は、米国が8,060億ドルでトップを維持しています。2位以下は中国、EU、日本と続きますが、日本の研究開発費は横ばい傾向にあり、主要国・地域上位との差が拡大している状況にあります。
2023年度の我が国の科学技術研究費(以下「研究費」という。)の総額(企業、非営利団体・公的機関及び大学等の研究費の合計)は22兆497億円、そのうち企業の研究費は16兆1,199億円となっています。また、企業の研究費のうち、情報通信産業の研究費は3兆7,902億円(23.5%)となっており、近年はほぼ横ばいの傾向が続いています。
主要国における研究者数は、いずれも増加傾向にあります。日本の研究者数は、2023年において70.6万人であり、中国(2021年:240.6万人)、米国(2021年:163.9万人)に次ぐ第3位の研究者数の規模です。その他の国の最新年の値を多い順にみると、韓国(2022年:48.9万人)、ドイツ(2022年:48.5万人)、フランス(2022年:34.6万人)、英国(2017年:29.6万人)となっています。
2023年度末の我が国の研究者数(企業、非営利団体・公的機関及び大学等の研究者数の合計)は90万7,363人、そのうち企業の研究者数は52万3,548人となっています。また、企業の研究者数のうち、情報通信産業の研究者数は14万5,122人(27.7%)となっており、近年減少傾向となっています。
国内外の大手情報通信関連企業の、2023年の売上高に対する研究開発費の比率は、一部企業を除くと10%未満にとどまっています。日本の大手通信事業者の2023年の売上高に対する研究開発費の比率は、NTT・ソフトバンクグループで6~7%程度、KDDI・楽天グループで1%未満であるのに対して、GAFAM・BATはApple とAlibaba を除くと10%~30%程度あり、研究開発に積極的であることが伺えます。
特許に関する状況
米国への特許出願数は、2022年は59.4万件でした。非居住者からの出願数の割合が近年増加傾向にあり、米国の市場が海外にとって魅力的であることを示唆しています。日本への出願数は、2022年は 29.0万件で、中国、米国に次ぐ規模であるものの2000年代半ばから特許出願数は減少傾向にあり、差が開いている状況です。
日米中におけるパテントファミリー数の技術分野別割合の推移をみると、米国及び中国では「情報通信技術」の割合が増加しているのに対し、日本では停滞していることがわかります。
電気通信分野の動向
OECDの調査によれば、人口100人あたりのブロードバンド契約者数(2023年12月)について、首位はフランスで47.0契約、2位は韓国で46.6契約、3位はスイスで46.2契約となっています。なお、ブロードバンドには、DSL、ケーブル、光ファイバ(FTTH)、衛星、固定ワイヤレス、そのほかが含まれています。日本は14位の40.8契約であり、OECD平均35.8契約を上回っています。また、人口100人あたりのモバイルブロードバンド契約数は日本が首位となっています。 2位以降は米国(190.1契約)、エストニア(175.9契約)、フィンランド(159.9契約)、デンマーク(145.8契約)となっています。この内、5Gサービスの契約数については、デンマークが103.6契約と最も多く、次いで日本の69.4契約、韓国63.5契約となっています。
我が国における電気通信分野の現状
市場規模は2023年度の電気通信業に係る売上高の合計は、約15兆円と推計されます。内訳をみると、データ伝送(固定及び移動)が約8.5兆円(55.9 %)、音声伝送(同)が約4.1兆円(26.9%)となっています。
事業者数
2024年度末の電気通信事業者数は2万6,642者(登録事業者339者、届出事業者2万6,303者)であり、前年度に引き続き増加傾向となっています。
インフラの整備状況
2022年度末の我が国の光ファイバの整備率(世帯カバー率)は、99.84%となっています。
なお、OECDによると、我が国の固定系ブロードバンドに占める光ファイバの割合は2023年12月時点において加盟国中第5位でした。また、2023年度末時点で、我が国の全国の5G人口カバー率は98.1%であり、都道府県別にみるとすべての都道府県で85%を超えています。
ブロードバンドの利用状況
2024年末の固定系ブロードバンドの契約数は4,699万(前年同期比0.9%増)であり、移動系超高速ブロードバンドの契約数のうち、3.9-4世代携帯電話(LTE)は1億1,341万(前年同期比6.2%減)、5世代携帯電話は1億709万(前年同期比23.8%増)、BWAは9,016万(前年同期比3.8%増)となっています。
衛星通信
通信衛星には、静止衛星及び非静止衛星があり、広域性、同報性、耐災害性などの特長を生かして、通信インフラが整備されておらず携帯電話などの地上系ネットワークの利用が困難な離島・山間部との通信、船舶・航空機などに対する通信に活用されているほか、自然災害等の非常時における通信手段となっています。
音声通信サービスの加入契約数の状況
近年、固定通信(NTT東西加入電話(ISDNを含む。)、直収電話及びCATV電話。0ABJ型IP電話を除く。)の契約数は減少傾向にある一方、移動通信(携帯電話、PHS及びBWA)の契約数は堅調な伸びを示しており、2024年末時点には移動通信の契約数は固定通信の契約数の約17.3倍になっています。また、2024年末時点における移動系通信市場の契約数における事業者別シェアは、NTTドコモが 34.2%(前年同期比0.9ポイント減、MVNOへの提供に係るものを含めると40.4%)、KDDIグルー プが27.1%(同0.2ポイント減、同31.6%)、ソフトバンクが19.1%(同0.3ポイント減、同24.2%)、楽天モバイルが3.2%(同0.5ポイント増、同3.8%)、MVNOが16.3%(同0.9ポイント増)となっています。
電気通信料金の国際比較
通信料金を東京(日本)、ニューヨーク(米国)、ロンドン(英国)、パリ(フランス)、デュッセルド ルフ(ドイツ)、ソウル(韓国)の6都市について比較すると、2025年3月時点の東京のスマートフォン(4G、MNOシェア1位の事業者、新規契約の場合)の料金は、中位の水準となっています。
通信分野における新たな潮流
オール光ネットワーク
オール光ネットワーク技術は、有線ネットワークや情報通信装置・デバイスに光電融合技術を活用し、電気信号-光信号の変換を極力なくすことにより、低消費電力・低遅延・大容量を実現する次世代情報通信基盤の中核技術であり、ゲームチェンジャーになり得るものであります。主なユースケースとしてはデータセンター間の高速・低遅延接続であり、昨今の動向を踏まえて、生成AI技術との連携も進められています。NTTコミュニケーションズ株式会社は、光電融合で接続した3拠点のデータセンターにGPUサーバーを分散配置した環境で、LLMの学習実証実験に世界で初めて成功しました。光電融合の高速・低遅延接続により、GPUサーバー間のデータ転送が迅速かつ効率的に行われ、小規模なAIモデルの事前学習や追加学習などの比較的軽量な処理に対して、単一のデータセンターと遜色ない性能を発揮でき、これにより、複数のデータセンター環境で柔軟にGPUクラスタを構築し、効率的なリソース利 用を実現することが期待できます。加えて、オール光ネットワークを活用することにより、現在、大都市圏に集中するデータセンター拠点の、再生可能エネルギーが活用可能な地域等への分散化が促進されることが期待されます。これにより、我が国のAI開発力の強化やAI利活用を促進し、低環境負荷(グリーン)で安全・安心で信頼できるAIを社会全体に提供することが期待されています。
非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)
非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)は、移動通信ネットワークについて、地上に限定せず、海や空、宇宙に至るすべてを多層的につなげるものであり、HAPS(High Altitude Platform Station)、衛星通信などによって、地上の通信インフラが整備されていない地域にもシームレスに通信サービスを提供することを可能にします。 国内衛星通信サービス市場規模は、2023年に577億円、2024年には635億円(前年比10.1%増) と見込まれ、その後も増加傾向で推移すると予測されています。
量子暗号通信
量子暗号通信は、量子コンピュータの実現による暗号の危殆化(きたいか;安全でなくなること)に対応するため、量子の特性を活用した安全な暗号鍵の配送技術であり、国内外の関心が高まっています。 中国では、1万km以上にも及ぶ量子暗号通信網を中国全土に構築し、活用を開始しているほか、欧州においても欧州全域にわたる大規模な量子暗号通信網の構築を開始し、社会実装に向けた取組を加速しています。我が国では、総務省及びNICTが、量子暗号通信に関する研究開発を推進するとともに、量子暗号通信の実証・検証を目的として、2010年に量子暗号通信テストベッド「東京QKDネットワーク」を構築し、以降、継続的に運用を行っています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)平林良人