基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 89 |  テクノファ

投稿日:2021年8月6日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に16年もの間先生の思想に基づいたキャリコンサルタント養成講座を開催し続けさせていただきました。

横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。

今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
私はこれらの人材を「現場従事者(オペレーター)」と呼び,その場を運営していると感じている従業員をすべて含めている。これらの人材は,仕事のデザイナーである「エンジニア」とは区別され,またその組織の財務的健全性を保つことを任務とするトップ経営層とも区別される。すべての組織における現場従事者の重要な基本的前提認識の一部は表4-1にまとめて表示した。

サブカルチャーは,組織内や現場部門のなかで形成されることから,それをはっきり記述することは大変難しい。サブカルチャーは原子力発電所でも,化学工場でも,自動製造プラントでも,航空機のコックピットでも,また一般的なオフィスでも見いだすことができる。にもかかわらず,どのような要素がこのサブカルチャーを現場ユニットより広い範囲の存在にしているのかははっきり説明することができない。この課題に取り組むためには,さまざまに異なる産業におけるオペレーションは,それぞれの産業における広範な技術的トレンドを反映していることを考慮しなければならない。基本的なレベルである産業において人々がものごとを実行する方法は,その産業を支えているコアのテクノロジーを反映している。またこれらのコア・テクノロジー自体も変化するので,それに伴ってオペレーションの本質も変化する。たとえばズボフ(Zuboff,1988)が主張しているように,情報テクノロジーは手工業労働を多くの産業で時代遅れのものにし,これを概念にもとづくタスク(仕事)で置き代えてきた。化学工場では作業員はもはや監視する,臭いをかぐ,触る,操作するために歩き回ることを止めている。その代わりに彼らはコントロール室に座りコンピューター画面に表示されるさまざまな指標から工場内の諸条件を監視している。しかしこれらのすべての例に含まれるサブカルチャーを定義している要因は,これらの従業員が本当の意味でものごとを動かしており,また彼らこそ組織の機能,つまり「現場のライン」にとって鍵を握っているという感覚なのだ。

現場従事者のサブカルチャーは人材間の支流にもとづいて形成されており,ほとんどの現業ライン部門は,高度レベルのコミュニケーション,信頼関係,ティームワークが仕事を効率的に進めるために不可欠である,ということを学んでいる。現場従事者もまた,さまざまな現業の条件のもとで何が遂行されるべきかを示すルールがいかに明確に規定されていたとしても,現実の世界はかなり予測することが困難であることから,そのような不測事態に対応するために自らのイノベーションのスキルを発動させる準備をしておかなければならないことをよく理解している。また原子力発電所におけるようにその運行が複雑な場合には,現場従事者たちは,彼らは高度な相互依存性を要求されており,とくに予測不可能な状況に対応するときにはティームとして協力して仕事を進めなければならないことを学んできている。またルールや階層組織はとくに予測不可能な状況で障害をもたらすことも多い。現場従事者たちは,製品プロセスは相互依存性の機能が統合されたシステムであり,それらの機能が効率性と効果性を高めるために協力的に発揮されなければならないことにきわめて鋭敏に反応するようになっている。この点はすべての「製造プロセス」,たとえば販売部門,ケミカル・グループ,コックピット,あるいはサービス部門に対して当てはまる事実だ。

現場従事者は,効果的に仕事を達成するためには,これまでに述べられてきたほとんどの前提認識に従わなければならないことをよく理解している。しかし各状況は彼らが受けた訓練で示された状況とは同一であることはあり得ないので,すべての現場従事者は,公式のやり方からどのように逸脱するかについても学んできている。多くの場合は職務を達成するための逸脱であるけれども,ときにはマネジメントからの理不尽な要求に対し,またはトップが考えることをつぶすための抵抗であることもあり得る。このプロセスのもっとも典型的な例は,「ルールを固く守って仕事をする」方法だ。この方法では,何ごともルールに沿って,きわめて正確に,かつゆっくり遂行することを意味する。ほとんどの旅行者が経験したことがあるはずだが,航空管制官が100%ルール通りに仕事を進めることによってシステムを実際に麻痺させることができる,といった例がその好例だ。

公式の仕事のプロセスをその現場の状況に合わせるといういつも起こりがちな現象,さらにこの新しいプロセスを新人たちに教え込むことを通じて標準的プロセスにしようとする現象は「実践におけるドリフト(逸脱)」と呼ばれ,すべての現場従事者のサブカルチャーにおいて重要な特徴となっている(Snook,2000)。これまで組織内で実際にどのように仕事が遂行されているかを研究してきた社会学者たちが「インフォーマル組織」を説明するために,さらにこのような独創的な行動が従業員の側から示されない場合には,その組織は効果的でなくなるかも知れないことを説明するために,公式的に定められたやり方からの数多くの逸脱行動を数多く発見した理由がここに求められる(Hughes,1958;Dalton,1959;Van Maanen,1979b)。実際にいかに仕事が遂行されるかを巡って形成されてきた文化的な前提認識は,組織文化のなかでもっとも重要な部分を占めることが多い。

たとえば,製造部門を観察したことのあるすべての研究者が,従業員は余程の危機状況を除いては彼らのすべての能力を使い切って働くことはないという事実を解明してきた。より一般的には,「適切な日給に見合う,適切な仕事量」の規範が築かれており,この規範を越えて余分の仕事をこなす従業員は「ルール破り」と呼ばれ,仲間からつまはじきされる危険にさらされる。したがって組織全体でどのようにものごとが進行しているのかを完全に理解するためには,現場従事者のさまざまなサブカルチャーが交錯して生みだされているインフォーマルな文化を観察しなければならないのだ。
(つづく)平林良人

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