キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

キャリアコンサルタント熟練レベルを目指して

投稿日:2024年5月21日 更新日:

厚生労働省がキャリア開発・形成を支援するキャリアコンサルティングという専門的な活動を担う人材を、登録制の名称独占資格のキャリアコンサルタントとして、導入・標準・熟練・指導の4つのレベルに分けて能力要件を定め、キャリアコンサルティングの制度を策定、運用していることはすでに説明してきたとおりですが、ここでは、熟練レベルと非熟練レベルとの差異について、中央職業能力開発協会のキャリアコンサルティング研究会報告書「熟練キャリアコンサルタントに係る調査研究」を引用して説明します。

原則として厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了し、国家資格キャリアコンサルタント試験に合格した者を「標準レベルのキャリアコンサルタント」と呼んでいますが、すべての「標準レベルのキャリアコンサルタント」が、実際のキャリアコンサルティングの現場において、十分な実践ができる水準にあるとはいえません。真にキャリアコンサルタントを目指す者は、標準レベルのキャリアコンサルタントの資格取得時を出発地点として、実践経験等を通じて自らの資質・能力の一層の向上を図り、熟練したキャリアコンサルタントを目指す必要があります。

「熟練キャリアコンサルタント」という考え方は、標準レベルのキャリアコンサルタントである者が、本来あるべきキャリアコンサルタントを目指して、次に進むべき方向を示すものです。
キャリアコンサルティング技能検定2級試験は熟練レベルであるかどうかを判定するものですが、求められる能力要件は標準レベルのようには明確ではありません。指導レベルのキャリアコンサルタントについて調査検討を行った、中央職業能力開発協会の「キャリアコンサルタントの資質向上に関する研究会報告書」には、指導レベルのキャリアコンサルタントの前提条件として、キャリアコンサルタントの活動の中心となるキャリアコンサルティング実施能力について、「厚みと広がり」が求められる、指導レベルのキャリアコンサルタントにはそのうえさらに、スーパービジョンに関する知識とスーパービジョンの実施スキルが求められるとしていますが、熟練検討委員会は、この「厚みと広がり」を、「指導レベルのキャリアコンサルタント」の前提としての意味合いだけでなく、すべての標準レベルのキャリアコンサルタントが目指すべき熟練レベルの水準としてとらえています。

引用:中央職業能力開発協会のキャリアコンサルティング研究会報告書「熟練キャリアコンサルタントに係る調査研究」

■非熟練レベルの特長とはどのようなものでしょうか
熟練レベルに求められる「厚みと広がり」とはどのようなものかを理解するために、参考として中央職業能力開発協会のキャリアコンサルティング研究会の熟練検討委員会がまとめた熟練レベルと非熟練レベルの差異について説明します。熟練検討委員会では、熟練レベルと非熟練レベルの差異を 「熟練キャリアコンサルタントと非熟練の境界」として、標準レベルのキャリアコンサルタントが熟練キャリアコンサルタントとなるために乗り越えるべき「壁」 としてとらえることができるとしています。

■非熟練レベルのキャリアコンサルタントの特長 (乗り越えるべき「壁」)
〇傾聴スキル不足
*相手の言いたいことをきちんと受け止めておらず、相手が聞きたいと思っていることにきちんと応えていない。
*相手の気持ちを感じていたとしても、それを的確な言葉で返すことができていない。
*自分が一方的にしゃべり、来談者の話を聴こうとしない。
⇒自分の経験のみに頼り、きちんとした傾聴訓練を受けていないということです。

〇経験不足
*専門知識を知ったことを専門教育を受けたと勘違いして、自分を専門家と思い込み、自分の意見を押し通す。
*来談者から「役に立ちました」と言われたことで満足し、そこで留まってしまう。
⇒その後、来談者が行動レベルで変化しているかどうかを確認する意識がないということです。

〇専門知識不足
キャリアコンサルタント自身が自分のキャリア開発・形成がわかっていないことに気づいていない。
*自分の心身の健康状態がよくないにもかかわらず、相談を引き受けてしまい、適切な対応ができていない。
*すぐにアセスメント・ツールを使って、勝手にパターンにあてはめてしまう。
*自信過剰で、何でもできると思ってキャリアコンサルティングを行う。

〇指導者による訓練不足
*指導者からのフィードバックを受けずに、独りよがりのキャリアコンサルティングのパターンをつくっている。
⇒視野が狭くなり、自己満足に陥っていると思われます。

*時間管理が不適切で、来談者との信頼関係が築けないまま、キャリアコンサルタントのペースで相談が終わってしまう。
*ガイダンスや教えることが得意なために、自分の考えで説教的な面談を進めてしまう。
*自分の体験のみに頼ってしまうか、あるいは逆に知識偏重になる。
*来談者あるいはキャリアコンサルティングに対し、偏った固定観念を持っている。

引用:中央職業能力開発協会のキャリアコンサルティング研究会報告書「熟練キャリアコンサルタントに係る調査研究」

<4D6963726F736F667420576F7264202D20945C97CD91CC8C6E8CA992BC82B595F18D908F91816988C42D30363035313594BD8966816A2E646F63>

(つづく)A.K

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

横山哲夫先生の思想ー組織文化とリーダーシップ5

横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。 本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山 …

相談者の面接目標達成ヘルピング技法_キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリング2

ヘルピング技法について(1)かかわり技法(事前段階)(2)応答技法(第1段階)(3)意識化技法(第2段階)を解説してきました。第2段階までに用いられてきた技法は、自己理論、精神分析理論、そして論理療法を伏線としており、ヘルピーが自分の実態「現在地」に気づき、なりたい自分の「目的地」に気づくことをサポートするためのものでした。 これから解説する(4)手ほどき技法は、既に記したように行動療法が伏線になっています(國分康孝1996年「カウンセリングの原理」)。しかしながら、行動療法というと治療的意味合いが強くなってしまうので、これを意識して以下の解説では行動カウンセリングと記します。これは、私たちの …

うつ病を自覚したクライエント I テクノファ

仕事や人間関係に行き詰まり、自分がうつ病であることを自覚しないままキャリアコンサルティングの面談に訪れる人が多くなっています。厚生労働省のサイトによると、うつ病など気分[感情]障害(躁うつ病を含む)患者は、2014年は111万人、2017年は127.6万人、2020年は172万人と増加しています。 この数値の伸びに比例するようにうつ病の症状のある人との面談の機会が増えてきたということでしょう。 今回はうつ病を発症した人との面談事例を紹介します。相談者は30代後半の女性Aさんです。Aさんとは以前にも面談したことがあります。当時の面談内容は次のようなものでした。 Aさんは、新卒で地元の中堅企業に勤 …

相談者の面接目標達成ヘルピング技法_キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリング

ヘルピング技法のうち(1) かかわり技法(事前段階)の解説はご存知のことばかりで目新しくなく期待外れだったとの感想をお持ちの方がいらっしゃったと思います。 しかしながら、私はキャリアカウンセリングであってもキャリアコンサルティングであってもこの目新しくないという点がとても重要なことだと思っています。これは、実際の個々のキャリアコンサルティングの場面を重ねて、國分康孝1996年のカウンセリング技法論における『面接目標達成のために、カウンセラーがクライエントにどういう反応を重ねていくか。』を再考してみると、次のように考えられるからです。 まず、面接目標について担当したケースを振り返ってみると、似て …

職業訓練におけるアサーションの実践的訓練_テクノファキャリアコンサルタント養成講座

キャリアコンサルタントの方に有用なお話をします。 アサーション※の難しさを肌で感じるのは、職業相談の現場においてです。当然ですが、職業相談に来られる方の目的は仕事の相談です。相談の目的が明瞭であれば、ご本人の意向や希望に沿ってマッチングや自己アピールの支援等を比較的順調に進めていくことができますが、このような例はごくわずかです。 ※「アサーション」(assertion)は1950年代にアメリカで、自己主張を苦手とする人を対象としたカウンセリング手法として生まれました。「人は誰でも自分の意見や要求を表明する権利がある」との立場に基づく適切な自己主張のことです。 相談の目的が仕事に関することであっ …