キャリアコンサルタントの方が知っていると有益な情報をお伝えします。
前回に引き続き高齢社会対策の推進についてお話します。我が国は、既に超高齢社会に突入しており、高齢者の割合が大きくなっていく中で、高齢者が暮らしやすい社会をつくることは、他の世代の人々にとっても暮らしやすい社会の実現につながります。すべての世代の人々が超高齢社会をを構成する一員として、今何をすべきかを考え、互いに支え合いながら希望が持てる未来を切りひらいていく必要があります。
〇 安全・安心で快適な住生活と循環型住宅市場の実現
高齢者が、地域において安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、サービス付きの高齢者向け住宅の供給等により、住宅のバリアフリー化や見守り支援等のハード・ソフト両面の取組を促進する。また、民間事業者等との協働により、公的賃貸住宅団地等の改修・建替えに併せた福祉施設等の設置を促進する。
長期にわたり良好な状態で使用される住宅の普及を促進するため、一定以上の耐久性、耐震性、バリアフリー性能、省エネルギー性能や維持管理のしやすさ等の要件を備えた住宅の認定制度等を通じた良質な住宅ストックの形成を図る。
若年期からの持家の計画的な取得等への取組を引き続き推進する。公的保証による民間金融機関のバックアップ等によりリバースモーゲージの普及を図り、高齢者の住み替え等の住生活関連資金を確保する。
良質な既存住宅の資産価値が適正に評価され、その流通が円滑に行われるとともに、国民の居住ニーズと住宅ストックのミスマッチが解消される循環型の住宅市場の実現を目指し、建物状況調査(インスペクション)、住宅履歴情報の普及促進等を行うことで、既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進める。
■高齢社会に適したまちづくりの総合的推進
〇 地域における移動手段の確保
地域公共交通については、関係府省庁が連携しつつ地域交通の活性化と社会的課題解決を一体的に推進するべく、高齢者を始めとした地域住民の移動手段の確保に向け、医療・介護の分野を始めとする地域の関係者の連携・協働(共創)の取組を促進することにより、利便性・生産性・持続可能性の高い地域公共交通への「リ・デザイン」(再構築)を加速化する。当該取組の促進に当たり、関係府省庁連名で策定する個別指針・通知の発出や、先進的な取組事例を整理したカタログの横展開等により、各地方公共団体を始めとするあらゆる関係者の意識を改革するための環境醸成を図っていく。
特に、自動運転は、地域住民の移動手段としてのみならず、交通事故対策、物流業界等におけるドライバー不足への対応の観点からも効果が期待されることから、その社会実装に向け、「モビリティ・ロードマップ2024」に即した取組を進める。高齢者等の地域の移動手段の確保を図る観点から、道路運送法(昭和26 年法律第183号)に基づき、市区町村、NPO等が地域住民等の運送を行う自家用有償旅客運送について、制度の運用状況に応じて、運送主体の登録手続等の事務負担の軽減を検討し、制度の活用を促進する。
〇 多世代に配慮したまちづくりの総合的推進
活気あふれるぬくもりのある地域をつくるため、女性、若者、高齢者、障害者等、誰もが居場所と役割を持って活躍できるコミュニティづくりとして、「交流・居場所」、「活躍・しごと」、「住まい」、「健康」、「人の流れ」といった観点で分野横断的かつ一体的な地域の取組を支援する全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」について、地方公共団体がデジタル技術を活用して行う取組を支援しながら、継続性のある取組を推進する。居住者の高齢化や地域コミュニティの活力低下等により多様な世代の暮らしの場として課題が生じている住宅団地について、就業・交流の場等の多様な機能を導入することにより、就業機会の創出やコミュニティ・つながりの維持・向上を図るなど、職住育近接で多世代共同のまちへの転換を促す。加えて、住宅団地内において、高齢者等全ての人が安全・安心に住み続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築と併せて、医療・福祉施設や生活利便施設、地域交通機能の充実を図る。また、ハード・ソフト両面にわたる面的・一体的なバリアフリー化を推進するとともに、医療・福祉・商業等の生活サービス機能や居住の誘導・整備による都市のコンパクト化と、まちづくりの将来像の実現に必要な都市の骨格となる基幹的な公共交通軸の形成を図る。その他、誰もが身近に自然に触れ合える快適な都市環境の形成を図るため、都市公園等の計画的な整備を行う。
〇 農山漁村のコミュニティの維持
農山漁村の地域コミュニティの維持を図るため、多様な農林漁業者の育成・確保を推進することはもとより、生産性の向上に資するスマート農業技術の活用や農業支援サービス事業体の育成・活動の促進等を通じて、高齢者が農林水産業等の生産活動、地域社会活動等で能力を十分に発揮できる条件を整備する。また、集落の機能を補完して農用地保全や生活支援等を行う農村型地域運営組織(農村RMO:Region Management Organization)の形成を推進する等、高齢者が安心して快適に暮らせるよう、地域特性を踏まえた生活環境の整備を推進する。さらに、活力ある開かれた地域社会を形成する観点から、都市と農山漁村の交流等を推進する。また、買物困難者等への食料提供を円滑にするため、「食品アクセスの確保に関する支援策パッケージ」(令和6年3月27日食品アクセス問題に関する関係省庁連絡会議決定)に沿った移動販売車の導入、生活交通の確保・維持、デジタル技術を駆使した配送等の取組を推進する。
■金融経済活動における支援
日常生活において認知機能を必要とする場面が多い金融機関の窓口は、認知機能の低下した人と接する機会も多く、金融機関から地域の福祉機関等必要な支援につなげることが望まれる。そのため、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に定める例外に該当する場合において、本人の同意を要することなく個人データを共有しうる、消費者安全法(平成21年法律第50号)に基づく消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク) や社会福祉法(昭和26年法律第45号)に基づく重層的支援体制整備事業の支援会議の枠組みに、必要に応じて金融機関の参加を促進し、認知機能が低下した人を必要な支援につなぐ取組を推進する。
あわせて、重層的支援体制整備事業の支援会議の開催に当たって、同会議から金融機関等の認知症が疑われる者の状況を把握していることが想定される機関に対して必要に応じて情報提供を求めるよう、市区町村に促す。認知機能の低下等が見られる人の個人情報の第三者提供に係る本人の同意や、福祉機関との連携、金融機関内の情報共有等について柔軟な対応ができるよう、金融分野ガイドライン等の運用の見直しの必要性について検討を行う。
経済取引の判断能力の識別や、認知機能の状態に応じて本人の判断をサポートするAI技術等の開発・実証を推進する。高齢期における認知機能の低下に備え、消費者教育と連携し、金融や経済についての知識に加え、家計管理や長期的な生活設計を行う習慣・能力、消費生活の基礎や、金融トラブルから身を守るための知識の習得、また、事前にアドバイスを受けるなどといった外部の知見を求めることの必要性についての理解を促進する。
さらに、認知判断能力や身体機能が低下した高齢者に対して、きめ細かな投資家保護や、金融取引に関する代理制度の活用促進を図るなど、金融事業者における顧客本位の業務運営に向けた取組を推進する。
■消費者被害の防止
消費者安全法に基づき、消費生活上特に配慮を要する高齢者等への見守り活動を行うため、消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)の設置及び福祉機関を含む関係機関等と連携した活動を促進するとともに、身近な消費生活相談窓口につながる「消費者ホットライン188」の周知や消費生活相談員への研修の実施、消費生活相談のDX等を通じて消費生活相談の充実を図る。
■認知機能の変化に応じた交通安全対策
交通安全基本計画等に基づき、高齢者に配慮した交通安全施設等の整備、参加・体験・実践型の交通安全教育の推進、認知機能検査及び高齢者講習の実施、安全運転相談の充実、高齢者交通安全教育指導員(シルバーリーダー) の養成、各種の普及啓発活動の推進等により、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者の交通事故の防止を図る。
特に、高齢運転者等に対して、安全運転の継続に必要な助言・指導や、運転免許証の自主返納制度及び自主返納者等に対する各種支援施策の教示を行い、高齢運転者本人のみならず、その家族等からの相談に対応するなど、個々人の状況に応じたきめ細かな対応を行う。あわせて、自主返納後等に運転経歴証明書の交付を受けた者が受けることができる支援等について関係機関・団体等に働き掛けを行うなど、運転免許証の自主返納等をしやすい環 境の整備に向けた取組を進める。
道路交通法に基づく運転技能検査制度等の効果的な運用、高齢者の移動手段の確保等社会全体で生活を支える体制の整備、安全運転サポート車の普及啓発を推進するとともに、高速道路における逆走対策を一層推進する。また、認知機能検査の結果を踏まえ、安全運転相談においてサポートカー限定免許を推奨するなど、認知機能検査の状況や自動車の安全技術の開発状況等も勘案しつつ、認知機能の変化に応じた交通安全対策を推進する。
生活道路において各種データや地域のニーズ等に基づき通過交通の排除や車両速度の抑制等の対策により高齢者等が安心して通行できる道路空間の確保を図る生活道路対策を、国、地方公共団体、地域住民等の連携により推進する。
交通事故死者数全体に占める65歳以上の割合が高い水準で推移しており、特に65 歳以上の歩行者の死亡事故の割合は年齢層が高くなるほど道路横断中の割合が高くなっているとともに、75 歳以上の運転者による死亡事故件数は増加傾向にあること等を踏まえ、加齢に伴う認知機能・身体機能の変化等、高齢者の特性に応じた交通安全対策を推進する観点から、高齢歩行者や 高齢運転者の事故防止対策に関する数値目標等の設定の在り方について検討する。 自転車道や自転車専用通行帯等、歩行者、自転車及び自動車が適切に分離された自転車通行空間の整備等、安全で快適な自転車利用環境の創出を推進する。
踏切道の歩行者対策では、2021年(令和3年)の踏切道改良促進法(昭36年法律第195 号)の改正時、踏切道におけるバリアフリー化の促進が急務のため、特定道路の踏切道であって移動等円滑化の必要性が特に高い踏切道に対応する改良基準を拡充しており、移動円滑化対策を含む「踏切道安全通行カルテ」や地方踏切道改良協議会を通じたプロセスの見える化等、高齢者等の通行の安全対策を推進する。
(出典) 内閣府 令和6年 高齢社会対策大綱
(つづく)Y.H