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実践編・応用編

日本における高齢社会対策の推進 6

投稿日:2025年10月25日 更新日:

キャリアコンサルタントの方が知っていると有益な情報をお伝えします。
高齢社会対策の推進についての最終回です。我が国は、既に超高齢社会に突入しており、高齢者の割合が大きくなっていく中で、高齢者が暮らしやすい社会をつくることは、他の世代の人々にとっても暮らしやすい社会の実現につながります。すべての世代の人々が超高齢社会をを構成する一員として、今何をすべきかを考え、互いに支え合いながら希望が持てる未来を切りひらいていく必要があります。

● 情報アクセシビリティの確保
行政窓口における各種申請等において、高齢期の特性に配慮した対応を図るとともに、民間企業や地方公共団体等と連携し、高齢期等のデジタル活用の不安の解消に向けて、スマートフォンを利用したオンライン行政手続等に対する助言・相談等を行うデジタル活用支援の講習会を、携帯ショップや公共的な施設(公民館等)において実施するとともに、高齢期のデジタル・デバイドの解消に向けた取組の強化を図る。
ウェブコンテンツ(行政サービス、オンラインシステム、ホームページ、動画や資料等を含む。)や放送において誰でもデジタルに関する製品やサービスを利用できる環境(アクセシビリティ)の確保を徹底し、全ての人々にとってアクセス可能となる情報コミュニケーション基盤を確立する。高齢者や障害のある人々にも使いやすい製品・サービス等の設計について、 アクセシビリティを考慮した標準化を進めるため、関連するJIS(日本産業規格)開発や国際標準化活動を推進する。
高齢者等がテレビジョン放送を通じて情報アクセスの機会を確保できるよう、字幕放送、解説放送及び手話放送の充実を図るため、2023年(令和5年)10月17日に改定した「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」(平成30年2月7日総務省)に基づき、放送事業者の自主的な取組を促すとともに、字幕番組等の制作費や設備整備費等に対する取組を支援する。
高齢者等の社会参加を支援するため、電話リレーサービスの新たなサービスとして2024年度(令和6年度)中に開始される予定の文字表示電話サービス(聞こえに困難を抱える利用者が自身の声で相手先に伝え、相手先の声を文字で読むことを可能にするサービス)の普及を推進する。

● 公共交通機関や建築物等のバリアフリー化
高齢者や障害者等も含め、誰もが自律的に安心して移動できる包摂社会の実現に向け、ICTを活用した歩行空間における移動支援サービスの普及・高度化を推進する。駅等の旅客施設における段差解消等高齢者を含む全ての人の利用に配慮した施設・車両の整備の促進等により公共交通機関のバリアフリー化を図る。
駅、官公庁施設、病院等を結ぶ道路や駅前広場等において、幅の広い歩道等の整備や歩道の段差・傾斜・勾配の改善等により歩行空間のユニバーサルデザイン化を推進する。また、安全で快適な通行空間の確保等の観点から、無電柱化を推進する。
高齢者が安全・安心に外出できる交通社会の形成を図る観点から、限られた道路空間を有効活用する再構築の推進等により安全で安心な歩行空間が確保された人中心の道路交通環境整備の強化を図るとともに、高齢者が道路を安全に横断でき、また、安心して自動車を運転し外出できるよう、バリアフリー対応型信号機や、自動車の前照灯の光を反射しやすい素材を用いるなどして見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備を進める。
病院、劇場等の公共性の高い建築物のバリアフリー化の推進を図るとともに、窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、高齢者を始め全ての人が、安全・安心、円滑かつ快適に利用できる施設を目指した整備を推進する。誰もが安全・安心に都市公園を利用できるよう、バリアフリー化を推進する。

● 高齢期の特性に配慮した防災・防犯対策
〇 防災施策の推進
高齢者及び福祉関係者等の参加や防災、福祉等の関係部局の連携の下での、地域防災計画等の作成、防災訓練の実施等の取組を促進し、災害に強い地域づくりを推進する。
市区町村による個別避難計画の作成を促進するとともに、都道府県による市区町村への伴走支援等を促進する。また、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の定めるところにより、災害の発生に備え、平時から消防、警察、福祉等の関係機関に対して個別避難計画情報や名簿情報を円滑に提供することができるよう、本人同意の取得や本人同意を要すること なく提供できる根拠となる条例の制定等、必要な環境整備を図る。
災害時においても必要な介護・医療が提供されるよう、社会福祉施設や医療機関等における災害対策を推進し、介護事業所における業務継続計画の策定の徹底を図るとともに、災害拠点病院以外の医療施設についても、その策定を促進する。あわせて、市区町村と地域内外の他の社会福祉施設・ 医療機関等において、福祉避難所の協定等、広域的なネットワークの形成に取り組む。
要配慮者の円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、水防法(昭和24年法律第193号)、津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号。以下「土砂災害防止法」という。)に基づき、浸水想定区域(洪水・雨水出水・高潮)、津波災害警戒区域(津波)及び土砂災害警戒区域(土砂災害)に所在し、市町村地域防災計画に位置づけられている要配慮者利用施設において、避難確保計画の作成及び当該計画に基づく避難訓練の実施を促進する。
福祉サービス等を利用しながら、高齢者が安心して生活できるよう、社会福祉施設等について非常災害時における消防団や近隣住民との連携体制の構築を促進するとともに、建築基準法及び消防法(昭和23年法律第186号)の基準に適合させるための改修費用や消火設備の設置費用の一部を助成すること等により、防火安全体制の強化を図る。

自力避難の困難な高齢者等が利用する要配慮者利用施設が立地する土砂災害のおそれのある箇所において、砂防えん堤等の施設整備及び土砂災害防止法に基づく基礎調査や区域指定等、ハード・ソフト一体となった土砂災害対策を重点的に推進する。災害発生時若しくは災害が発生するおそれがある場合、又は事故発生時に高齢者に対して適切に情報を伝達できるよう、民間事業者、消防機関、都道府県警察等の協力を得つつ、高齢期の特性にも配慮した多様な情報伝達手段の確保のための体制や環境の整備を促進する。
災害時においては、高齢者等要配慮者が被害を受けやすいことを踏まえ、安否の確認や、避難の支援等に関する取組の促進、避難所における良好な生活環境の推進を図るとともに、トイレや食事、入浴等の日常生活支援等の避難者に対する福祉的支援等を行う。避難所、応急仮設住宅のバリアフリー化を推進するとともに、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(平成28年4月内閣府)等を踏まえ、必要な福祉避難所の確保、避難所における高齢期の特性に応じた支援と合理的配慮、福祉避難所への直接避難等が促進されるよう市区町村の取組を促していく。さらに、被災者のニーズに応じて、車椅子利用者も使用できる応急仮設住宅の確保が適切に図られるよう、地域の実情を踏まえつつ、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づく応急救助の実施主体である都道府県の取組を促していく。

〇 犯罪、悪質商法、人権侵害等からの保護
オレオレ詐欺を始めとする特殊詐欺等の高齢者が被害に遭いやすい犯罪、認知症の高齢者等による一人歩きに伴う危険、悪質商法等から高齢者を保護するため、各種施策を推進する。日常生活における事件・事故等の問題発生時において、その緊急度に応じた各種通報・相談先について、高齢者にも分かりやすく周知・啓発を図る。高齢者の人権問題に関する啓発冊子の配布や啓発動画の配信等の各種人権啓発活動を行うとともに、高齢者に対する家庭や施設における虐待等の人権侵害について、高齢者の人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ、被害の救済及び予防に努める。
同時に、高齢者による犯罪の防止を図るため、万引きの検挙人員全体に占める65歳以上の者の割合が高い水準にあることを踏まえ、地域における各種会合等の機会を活用し、犯罪の防止に係る啓発を図る。
年齢層別の出所受刑者の2年以内再入率について、65歳以上の者が最も高いことを踏まえ、刑事司法手続の各段階において、高齢等の特性に応じた調整や指導等を実施するとともに、関係機関と連携した社会復帰支援の充実を図る。
犯罪をした者等の立ち直りを地域で支える保護司について、担い手の高齢化等を踏まえ、持続可能な保護司制度を確立する観点から、保護司が安心して活動を行うことができる環境整備を進めるとともに、保護司活動インターンシップや保護司セミナーの実施等の取組を進め、幅広い世代からの担い手の確保の強化を図る。

● 成年後見制度の利用促進
成年被後見人等の財産管理のみならず意思決定支援・身上保護も重視した適切な支援につながるよう、「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)に沿って、成年後見制度の利用促進のための周知広報や権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりに取り組むとともに、成年後見制度等の見直しや総合的な権利擁護支援策の充実に向けた検討を行う。
(出典) 内閣府 令和6年 高齢社会対策大綱
(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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