基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 63 | テクノファ

投稿日:2021年5月10日 更新日:

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に16年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせていただきました。

横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。

今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「硬直人事を打破するために-人事管理自由化論」の中で、管理なき人事へ(人間の自由化)を説いている部分を紹介します。

モービルにおける人間自由化の具体的展開について述べる。
自由化
一般従業員の大部分は労働組合員である。給与水準(賞与を含めて)を上位一流(同業、他業を含めて)の範囲に保つべき会社の基本方針は、組合員であると否とにかかわらず共通しているが、例年の昇給額決定の実際のメカニズムについては、組合員と管理者とでは大きく趣を異にしている。すなわち、組合に属する従業員の昇給は、組合側からすればしょせん春闘の中で上部団体の指導方針およぴ石油関係の他組合との共同闘争の中で、ストライキを武器により大きい昇給額を獲得しようとするものであり、かつ交渉による妥結額は定率、定額等の方法で組合員個人の業績に関係なく、自動的に配分されることを要求するのがつねである。現状では給与に関する会社と組合の主張は平行線をたどっており、例年、交渉妥結後、会社、組合双方に不満が残るのが現況である。また、当社の労働組合は歴史的に、モービル石油発足とともに解体したスタンダード・ヴァキューム石油の組織をそのまま継承しているため、解体、再編成後、競争会社となっているエッソ石油と同一組織体になっている。これは他社にみられぬ複雑な要素のからむ、いわば特殊な体質をもっている。このような事情からモービル独自の給与に関する考え方は理想どおりには実現されていない。のちに労使関係の項で述べるように、この現状を個々の組合員がどう評価するか、どう方向づけるかは組合員であるモービル社員自体が決定する問題である。

管理者の給与はほぼ会社の基本方針通りに管理されている。平均的には、どの管理層についても、同業、他業を含めての上位一流水準は維持されている。個別的にはこれらの水準を中心にして、昇給額よりむしろ絶対額にウエートをおいて給与を管理する考え方であるから、管理者の昇給は例年四月の組合員の昇給と直接の関係をもたない(組合員がいくら上がったから管理者はそれに比例して―という考え方はない、ということ)。昇給の時期は四月にかぎられない。一月、四月、七月、十月の四時期にほぼ同数の昇給が行なわれている。昇給の時期と額の予定は年度末に翌年のものが定められる(予定として)が、主たる決め手は①現在の給与額がその職位について定められている上限・下限の幅の何%に位置しているか、②業績評価と将来性予測はどうであるか、③前回の昇給はいつであったか、の三つである。昇給予定の作製者はラインの長である(ライン管理)。ラインの長の作製した昇給予定表は人事部長または人事課長がガイドの範囲内であるかどうかをチェックし、範囲内にあれば細かな注文はつけないのが普通である。ガイドはかなり大まかな幅をもって規程されており(人事部が作製)、 ラインの長には決定上の自由を大きく認めている。

このようにして定められる管理層の昇給プランは厳密な意味での予算にとらわれないことは 一つの大きな特色であろう。年間利益計画のうちに含まれる全人件費の大枠の中にはおさまるべきであるが、現実の個別的昇給プラン作製のとき、いちいち予算に”しばられ”ていない。

給与はその性質上、統制的性格の強いものであるが、管理層の給与管理についてこのようにかなり独自な、制約の少ない方法をとることができるのは、実はきわめて精細な賃金調査を行ない、管理層が各層ごとに支払われるべき平均絶対額を把握していることにもとづいている。これによってレンジの設定が可能であり、個人ごとに弾力的、かつキメの細かい給与管理が可能とされるわけである。

とまれ、給与管理についてはかなりの労力を注いでいることは事実であるが、モービル石油では、給与ならびに昇給が社員の生きがいをささえる最大のものと信じているわけではない。しかし、個人の発意、意欲、努力の差がある時点で業績の形として現実に認められるかぎり、この差は給与を含めた人事管理分野に正当に反映されるべきであると信ずる。

また、管理者の給与を組合員の昇給と直接関係づけないシステムは、例年の賃上げ団体交渉の時期に、本来マネジメント側であるべき管理者が組合との団交の進展を公私相半ばした複雑な心境で見守る、という中途半端な状況から解放することにもなる点は一つのメリットであろう。
(つづく)平林良人

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