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基礎編・理論編

キャリアコンサルタントの活動領域

投稿日:2024年9月7日 更新日:

厚生労働省の「キャリアコンサルティング研究会」の「キャリアコンサルタント自身のキャリア形成のあり方部会」の報告書では、キャリアコンサルタントの働く分野に「活動領域」という言葉が使われ、企業領域、需給調整機関領域(就職支援領域)、教育領域、地域領域として分類されています。

キャリアコンサルティングの制度を構築するにあたり想定した活動領域、制度実施後の実際のキャリアコンサルティングの活動領域を、中央職業能力開発協会の熟練検討委員会が整理した、実践フィールドの違いによる熟練レベルのキャリアコンサルタントの特長、中央職業能力開発協会の指導レベルキャリア・コンサルタント制度設計の必要性、労働政策研究・研修機構の労働政策研究報告書などを引用しながら説明します。

1.企業領域(人事コンサルティング・サービス)
この領域は、企業組織における人材育成であり、企業にとって最も重要な人材の効果的な活用につながるため、キャリアコンサルタントとして遣り甲斐のある領域であると言えます。この領域のキャリアコンサルタントには企業・組織における人事に関する専門的な知識に加えて、人材育成に関する専門的な知識も求められます。
組織従業員のキャリア開発・形成支援は、組織構造、マネジメントシステム、業務割り当て、さらに人事考課などにも関係し、さらに個別の面談にも及ぶ幅広く、かつ深く掘り下げる力が求められます。
さらに『「キャリアコンサルティング研究会」報告書』には、実際に社内で相談を担当しているキャリアコンサルタントの意見として、組織内のキャリアコンサルタントに必要な要件としては「仕事ができること」、「人を支援することに喜びを感じること」、 「人の話を聴けること」、「勉強すること(自己研錯)に前向きなこと」などが上げられています。

以下、報告書にまとめられた具体的な活動例をもとに、そのポイントを説明します。
①社内のキャリア形成支援の体制・環境を整備すること(能力開発制度の設計・運用・評価への参画・支援)。
→経営人事全般についての知識が求められます。

②現場(特にマネジャー)を啓発すること。
→この啓発活動とは、ヒユーマン・スキルを習得させ、問題解決の間接的な支援をすることです。実際に解決をするのは当事者ですから、当事者に問題解決能力を習得させる必要があります。

③組織内で活動する場合は、人事部門とは独立した役割を担い、客観的なキャリア開発・形成支援の見地に立って、人事担当者と効果的に連携すること。
キャリアコンサルタントが企業の社員である場合、このスタンスがしっかりしていることが大切です。

④個人主導の主体的なキャリア開発・形成の重要性を普及促進すること。
→個人と組織の共生を実現するのがねらいです。

⑤キャリア開発・形成に関する個別相談を担当すること。
キャリアコンサルタントが社員である場合には、中立的な立場で接することが大切です。

⑥キャリア健診等の企業・従業員向けキャリア形成支援ツールを率先して活用すること。
⑦セルフ・キャリアドック制度を推進すること

キャリアコンサルティングを通じて、社員の人材育成(職業能力向上)や若手社員の定着支援など、特定の社員層に関する課題の解決に結びつけることが可能ですが、行政も企業におけるキャリアコンサルティングの導入を促進する様々な施策を行っています。

「セルフ・キャリアドック」
企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことをいいます。
入社時や役職登用時、育児休業からの復職時など、企業ごとに効果的なタイミングでキャリアコンサルティングを受ける機会を従業員に提供することにより、従業員の職場定着や働く意義の再認識を促すといった効果が期待されるほか、企業にとっても人材育成上の課題や従業員のキャリアに対する意識の把握、ひいては生産性向上につながるといった効果が期待されます。

「グッドキャリア企業アワード」の実施
働く人が自らの能力を高め、希望するキャリアを形成していくことが重要であることから、企業が従業員の主体的なキャリア形成を積極的に支援することを広く啓発・普及することを目的として、平成24年度からキャリア支援企業表彰を実施しており、平成28年度からは呼称を「グッドキャリア企業アワード」としています。
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

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