キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

労働に関係する労働法は大きく3つに分類できる

投稿日:2024年5月25日 更新日:

今回はキャリアコンサルタントが知っているべき労働関係法規、社会保障制度等に関してのお話をします。
労働に関係する労働法は、大きく3つに分類できます。それぞれ関係する分野や領域に合わせて、おもだった法律を解説していきます。

日本の労働法の体系は、大きく3つに分けられます。
(1) 雇用や労働市場に関する法律です。先に取り上げた職業能力開発促進法の他に、雇用対策法、職業安定法、雇用保険法、労働者派遣法などです。ハローワークや職業訓練施設などの職業安定行政と能力開発行政が担当しています。
(2) 労働条件に関する法律です。労働契約、労働条件、採用、退職などの領域に関連する法律で、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法などです。これらは労働基準監督署などの労働基準行政が担当しています。
(3) 労使関係に関する法律です。労働組合の結成、運営、交渉ルールなどの集団的労使関係の領域に関連する法律です。労働組合法、労働関係調整法などです。労政事務所などの労使関係行政が担当しています。

キャリア開発・形成の支援活動であるキャリアコンサルタントには、(1)雇用や労働市場に関する法律などが直接関係してくる法律です。以下「雇用や労働市場に関する法律」を概説します。

■「雇用対策法」
雇用対策法は国の雇用政策の基本であり、職業指導や職業紹介に関しても、国としてやるべきことが以下のような主旨でまとめられている。
①厚生労働大臣は、求人と求職との迅速かつ適正な結合に資するため、雇用情報を収集、整理し、求職者、求人者、その他の関係機関等に提供すること。
②厚生労働大臣は、職業の現状や動向に関する分析、職業適性検査および適応性、職務分析その他の職業に関する基礎的調査研究をする。
③職業紹介機関は、求職者に対して、雇用情報や職業に関する調査研究の成果を提供すること。それに基づき求職者が適性、能力、経験、技能等にふさわしい職業を選択できるよう促進すること。
④職業紹介機関は、求人者に対して、雇用情報や職業に関する調査研究の成果を提供すること。それに基づいて求人者が労働者を雇用できるよう促進すること。
⑤職業安定機関および公共職業能力開発施設は、雇用に関する援助を求められたときは必要な助言や措置を行うこと。

■「職業安定法」
雇用対策法が国の行うべき雇用政策の基本であるのに対して、職業安定法はハローワークや民間の職業紹介機関が行う業務について規定している。職業安定法では、以下のような主旨でまとめられている。
①「職業指導」とは、職業に就こうとする者に対し、実習、講習、指示、助言、情報の提供などの方法により能力に適合する職業の選択を容易にさせ、その職業に対する適応性を増大させるために行う指導をいう。
②労働条件等の明示は、賃金および労働時問に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については厚生労働省令で定める方法によらなければならない。
③個人情報を収集し、保管し、または使用するにあたっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内でなければならない。
④公共職業安定所(ハローワーク)および職業紹介事業者は、求人、求職の申込みはすべて受理しなければならない。ただし、内容が違法であるときもしくは賃金、労働時間その他の労働条件が著しく不適当である場合はその申込みを受理しないことができる。
⑤公共職業安定所(ハローワーク)および職業紹介事業者は、求職者に対しては、その能力に適合する職業を紹介し、求人者に対しては、その雇用条件に適合する求職者を紹介するよう努めなければならない。

■労働者の生活と雇用の安定を図るための「雇用保険法」
労働者が失業した場合、あるいは雇用を継続できなくなった場合、および職業に関する教育訓練を受けた場合、必要な給付を行うことによって労働者の生活や雇用の安定を図ることを目的としているのが雇用保険法である。雇用保険法では、失業や雇用継続期間中の生活の安定を図るための失業等給付の他に、積極的に失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力開発等を図るための事業を規定している。また、職業安定行政は、労働力需給システム、特定離職者、特別な配慮を必要とする者などを対象とする法律や、産業別雇用対策、緊急雇用対策、障害者雇用対策、失業対策などの分野別の個別法律によって運用されている。
さらに、職業安定行政における職業指導や職業紹介は、労働者の職業選択の自由と、雇用者の雇い入れの自由を前提として、求職者と求人者の雇用関係の成立を斡旋するものである。職業紹介の一般原則は、職業選択の自由の原則、適格の原則、公益の自由、均等待遇の原則、 中立の原則、労働条件明示の原則、求人受理・求職受理の原則、などとなっている。

■労働者保護のためのその他の法律
労働契約、労働条件、採用、退職などの領域に関連する法律で、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法などの法律です。労働基準法は労働契約、賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、年少者、就業規則、寄宿舎、監督機関等などにわたって、詳細な規定、規則、指針などが定められています。労働安全衛生法は、労働災害の防止のための危険防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進など、総合的・計画的な対策を進めることによって職場における確保するとともに、快適な職場環境の形成を目的としています。メンタルヘルスの支援の柱となる 「THP: トータル・ヘルス・プロモーション・プラン(従業員の健康保持増進措置)」および「快適職場の形成」の根拠となっている法律です。
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

傾聴と相互理解の難しさ キャリアコンサルタント養成講座

テクノファは、「組織マネジメントシステム教育」と「人モチベーション教育」の2大テーマを車の両輪のごとく強力に駆動させ、組織経営という車を着実に運転していただけるようになることを念じながら、日頃の研修をさせていただいております。社会に貢献するためには、知ることだけではなく、できること即ち実践できるようになることが重要であると考え、研修の大きな目標を「システムという枠の中に実体を入れる」ことを目指してきました。 市場経済至上主義が行き過ぎた結果、利益追求がすべてに優先する社会になっていますが、新型コロナウイルスの世界的疫病蔓延で、表面的な利益追求でなく本質的な幸福追求に世界の経営が舵を切ろうとして …

目標管理の基本的概念

横山哲夫先生(1926-2019)はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 以下はキャリアコンサルタントに読んでいただきたい「個立の時代の人材育成」からの引用です。 ―目標による管理とは― 目標管理の基本的概念は単純明快である。 ① マネジメントは目標を明確に設定することか …

うつ病を自覚したクライエント I テクノファ

仕事や人間関係に行き詰まり、自分がうつ病であることを自覚しないままキャリアコンサルティングの面談に訪れる人が多くなっています。厚生労働省のサイトによると、うつ病など気分[感情]障害(躁うつ病を含む)患者は、2014年は111万人、2017年は127.6万人、2020年は172万人と増加しています。 この数値の伸びに比例するようにうつ病の症状のある人との面談の機会が増えてきたということでしょう。 今回はうつ病を発症した人との面談事例を紹介します。相談者は30代後半の女性Aさんです。Aさんとは以前にも面談したことがあります。当時の面談内容は次のようなものでした。 Aさんは、新卒で地元の中堅企業に勤 …

MBO目標管理3ーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

横山哲夫先生(1926-2019)はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。先生は、キャリアコンサルタントに対して個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 ―国際化の方向と一致する目標管理 MBOは外国人との共存共働下における人事管理、人材育成の場、つまり、異文化間に共有されるにふさわしい特徴を持っている。目的合理主義、個 …

アサーションとチェンジ・エージェント

アサーション※については、理論、自己チェック、 演習などから構成されています。この期間で、カウンセリングの基本的な技法である傾聴、及びアサーションについて、その理論的根拠を理解し、スキルを習得していただきます。 ※「アサーション」(assertion)は1950年代にアメリカで、自己主張を苦手とする人を対象としたカウンセリング手法として生まれた。「人は誰でも自分の意見や要求を表明する権利がある」との立場に基づく適切な自己主張のことです。トレーニングを通じて、一方的に自分の意見を押し付けるのでも、我慢するのでもなく、お互いに尊重しながら素直に自己表現ができるようになることを目指す。アサーションを …