キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

コミュニケーション理論に基づくBFT統合モデル

投稿日:2024年5月27日 更新日:

キャリアコンサルタントの面談でのMRIコミュニケーション理論に基づくBFT統合モデルをお話しします。これまでと同様に若島孔文 長谷川啓三2018「新版よくわかる!短期療法ガイドブック」金剛出版から主だった箇所を引用して紹介します。

(1) ノンバーバル‐マネジメント側面への介入
バーバル‐マネジメント側面とは長谷川らがコミュニケーションを、トピック的側面-マネジメント側面の軸とバーバル(言語)-ノンバーバル(非言語)の軸の2軸で分類した象限の一つである。マネジメント側面とは対話者相互で、そこでのコミュニケーション自体の流れを規定するコミュニケーション行動と位置付けられている。
この2軸によるコミュニケーション行動の分類において、視線の方向付け・反応を求める頭の動き、反応を示すうなずき、相互作用的ジェスチャーがノンバーバル‐マネジメント側面に分類されるが、長谷川らは、家族成員間で行われるコミュニケーションのノンバーバル‐マネジメント側面に介入することの重要性を強調している。
(2) バーバル‐マネジメント側面への介入
BFTでは、会社組織では役割分化や専門化によって部・課・係などが生じ、部は会社組織、課は部、そして、係は課のそれぞれサブシステムとして位置づけることができ、会社組織・部・課・係ではそれぞれの単位でコミュニケーション循環が行われていること。そして、キャリアコンサルタントのコミュニケーションの流れによってサブシステムが明確になり、境界線を構成することを指摘する。
神尾昭雄(情報の縄張り理論1990言語、言語の機能分析 大修館書店)は「日本語には直接形(~です ~ですよ ~ですね)と間接形(~ようです ~でしょう ~みたいです) の文末形式があり、これらの文末形式の使い訳には話し手の情報の確信程度が影響する。そして、情報が聞き手の縄張りの内側にある場合は、文末終助詞「ね」を、外にある場合は「よ」を使用する」と指摘している。境界線を挟んで対峙する対話者相互での文末終助詞「ね」と「よ」を交換したコミュニケーションでは、対話者相互の感情や行動に影響を与えることになる。
(3) コミュニケーション・ルートの利用
コミュニケーションにはルートがあり、同じことを言っても「それが誰の意見か」によって受けての感情や行動に与える影響は変わってくる。話したい人そうでない人といった「誰と話すか」というコミュニケーションの窓口がある。これらを有効に利用しながらキャリアコンサルタントのコミュニケーションを変化させる。キャリアコンサルタントの具体的方法としては次のような方法がある。

  • 間接贈答法 ある人を媒介してプレゼントを伝達する際に相手に自分の気持ちを推量の形で伝えてもらう。
  • 間接伝達法 ある人を媒介して相手に自分の気持ちを推量のかたちで伝えてもらう。
  • 席替え 成員の席が決まっている場合、暗黙のルールがあり、コミュニケーション・ルートを規定していることがあります。席替えはコミュニケーション・ルートを変更する一つの方法となる。
    (4) 問題-相互作用モデルの応用
    BFTでは、「家族の問題を解決する」から「家族と共に問題を解決する」という共同と協調を重視した視点に移行してきている。「システムが問題をつくる」から「問題がシステムをつくる」、「解決が問題システムをつくる」、「偽解決が連鎖を構成する」という視点が提示されている。問題-相互作用モデルでは、夫婦面接や家族面接のような合同面接場面で、問題を作り上げる家族コミュニケーションにではなく、問題解決を妨げる家族コミュニケーションに着目する。そして、合同面接場面で協調的でスムーズな会話を行う際の技術としては次の2点が代表的である。問題についてよりも解決に焦点を当てた未来志向のアプローチを取る。これは、解決志向アプローチ(SFA)と呼ばれている。問題について直面する場合、対人システムの維持を保証し、カウンセラー(原文ではセラピストと表記)が代替機能を果たす必要がある。
    引用: 若島孔文 長谷川啓三「新版よくわかる!短期療法ガイドブック」2018 金剛出版

以上、BFTの導入部分について紹介してきましたが、BFTの考え方、理論、そして技法は、家族ばかりでなく、個人と部門・会社などの組織との関係性やコミュニケーションよって生じる問題の解決アプローチとしてキャリアコンサルタントが習得すべきものと考えます。

(つづく)1級技能士 上脇 貴

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

目標管理の基本的概念

横山哲夫先生(1926-2019)はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 以下はキャリアコンサルタントに読んでいただきたい「個立の時代の人材育成」からの引用です。 ―目標による管理とは― 目標管理の基本的概念は単純明快である。 ① マネジメントは目標を明確に設定することか …

傾聴とは積極的に聴くことである 

ドラッカーは近代経営学の父と呼ばれた人ですが、彼は経営者が効果的にマネジメントする8つの慣行を提案しました。その中に「最初に聴き、最後に話す」というものがあります。リーダーシップの本質は「信頼を獲得して結果を得ること」ですが、 信頼を得る行動で最大効果を生むものが聴くことであると述べています。驚くべきことに、多くの指導者は聴くことをうまくやれません。多くの調査で「指導者の聴く能力」は、評価項目で最も低いレベルに位置付けられています。最初に聴いて、最後に話しすることは大変重要なことです。 それはとても単純ですが、多くの人々はそれを理解することができません。 聞くと聴くとは違います。積極的に聞く、 …

キャリアコンサルタント養成講座 42 | テクノファ

「キャリアコンサルタン養成講座39」に引き続き、テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座について述べます。弊社のキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス- サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。 しかし、ISO29990は2018年に廃止され、後継規格ISO 29993: …

MBO 目標管理2ーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

テクノファのキャリアコンサルタントを指導した横山哲夫先生(1926-2019)は、目標による管理と人事考課の統合 についてこう述べています。これからの企業の人材育成の焦点は個立・連帯群の若者だということ。そして、個立・連帯群を惹きつけ、活かし、増やし、伸ばすマネジメントが人材育成のゴールだということ。個立・連帯群が個立指向であると共に組織の現実をわきまえた活私奉公型であることがポイントであると言っています。自分を活かす舞台として、組織のために全力投球できるのは若者達であり、自由化、国際化を底流とする連続初体験の時代に活躍できるのは、個立型ヤングをおいて他にいない。彼らを活かし、ふやし、伸ばすこ …

キャリアコンサルタントの相談実施における留意事項

キャリアコンサルタントの相談実施における留意事項について説明します。 故木村周氏は著書『キャリアカウンセリング(改訂新版)』のなかで、キャリアガイダンスとキャリアカウンセリングについて、その他広く行われているガイダンスやカウンセリングと比較して、その特徴を述べています。 ■キャリアコンサルタントの相談の特徴 ①問題行動の除去や治療ではなく、個人のよりよい適応や成長、あるいは発達を援助することに重点を置く。 ②進路の選択、職業選択、キャリアルートの決定などの具体的な目標達成を目指すことを援助する。 ③特定の理論や手法にとらわれず、さまざまな理論や手法を使用する。 ④6つのステップ(キャリアガイダ …