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実践編・応用編

キャリア・カウンセラー便り 2025年1月

投稿日:2025年1月19日 更新日:

■□■━━━━━━━━━【コラム】━━━━━━━━━━━━━━■□■
キャリア・カウンセラー便り”鈴木秀一さん”です。
◆このコーナーは、活躍している「キャリア・カウンセラー」からの近況や情報などを発信いたします。◆
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今回は、特にカウンセラーには欠かせない「自己覚知」について深めてみたい。みなさんは「受動意識仮説」を知っていますか。簡単に説明すれば、以下の通りである。(Google=AIによる解説から引用)
【受動意識仮説とは、人間の意識や意思は無意識や潜在意識によって動かされており、意識は無意識下の判断を自分が決めたと感じているだけで受動的に受け取っているにすぎないという仮説。これは、人間はロボットのように単に外部情報に反応して動いているだけで自由意思はないという考え方を示しています。

我々が意識だと感じているものは、自ら命令を出して脳を動かしているのではなくて、脳の自立分散処理を受動的に見て、それを「あたかも自分がやったかのように錯覚する」だけだというのです。】引用おわり

つまり、しっかりと熟考してから行動を選択しているようでも、じつは目の前に起こっている現象や出来事に対して反応しているだけだ・・ということになる。これは、文字通り「仮説」なのだが、そう言われてみるとあながち否定もできない気がする。

前回のメルマガの中で挙げた例の繰り返しになるが、台風が近づいてきているのに「田畑が心配だ」と様子を見に行って命を落とすケースが後を絶たない。見に行ったところで強風や豪雨が相手では何ら抗う術はないはずなのだが、安心を求めるが故に見に行かずにはおれないようなのだ・・。

または、悪天候が予想されるにもかかわらず冬山登山を強行したり、クマと出くわす危険があると警告を受けたのにキノコや山菜を採りに山に入る人たち。他にも土砂崩れや津波に流される危険がある土地に家を建てる人たち・・

数年後に起こるかもしれない危険性と好ましくない展開(損失)を予想できずに巨大な投資を行なう企業・・

どれもが想定力の欠如に加えて、きっと大丈夫だ!うまくいく!という希望的観測と根拠のない思い込み(正常性バイアス⇒確証バイアス)が多くの悲劇を招いている。こうしたい・・このようにありたい。だから行動する・・人は、どうやら高まる気持ちを抑えることができないようだ・・

人が行動を起こす判断には、思考(考え)よりも先に感情(気持ち)が強く働くと言われているが、なぜ行動するのか?と他者に問われれば、後付け的かつ巧妙に理由を作り出すのである。

まるで約束を破った子どもが叱られないように屁理屈的な言い訳をするかのようにである。これは、防衛機制の中の「合理化」という作用だが、合理化の怖いところは、問いかけてきた相手よりも先に自分自身に対して偽ることである。

この件については、脳について科学的な検証が為されていなかった100年近く前からアルメニアの神秘主義者であるGIグルジェフが「人間はプログラムに従って反応するだけの機械だ!」と言い切っていたが、多くの人間たちが、よく考えることもせずに無謀ともいえる冒険に挑んだり、他者から何か言われた途端に怒り出したり、または後になって振り返れば「あのとき自分はどうかしていたな・・」と後悔すること頻りである。

これらはすべて「反応」だというのだ。もし、脳の仕組みがそのような構造になっているのであれば、我々は自己意識など持とうとするだけ無駄なのかもしれないし、いくら考えようとも認知バイアスや非合理な思い込みの呪縛から脱することは叶わないのかもしれない。

所詮、人間など自然界に生きる動植物と同じでしかないのかもしれない・・と悲観的な思いに苛まれてしまいそうになるが、これもまた反応なのだろう。そこに何とか意識を持ち込み、思考に価値を見い出そうというのであれば、せめて「勝手に湧きあがる興味」に任せるのではなく、何事に対しても可能な限り「意識的に関心を持つこと」に努めなくてはならないだろう。

むかし、関口宏が司会進行を行なう「知ってるつもり」という番組があった。実際に、「知ってるつもりでいたこと」が、番組を観終えた時点で「じつは何も知らなかったのだ・・」と幾度も思い知らされたものだった。

今もまた「チコちゃんに叱られる」と言う番組のおかげで、目の前を通り過ぎる事(モノ)に対して何ら意識せずに流していた自分、そして当たり前すぎることなればこそ全く関心を持たずにボーっと生きていた自分が露呈される体験をさせてもらえている。

ところで、社会は「入れ子」的なシステムになっている。システム論は家族心理学においては中核を成している観念でもあるが、個人⇒家族⇒職場(または学校やサークルなどの集団)⇒地域⇒自治体⇒都道府県⇒国家⇒世界・・。

つまり、海洋生物界における食物連鎖がプランクトンからクジラに至り、クジラの死骸がプランクトンの棲家となるが如く、ミクロ⇒メゾ⇒マクロが循環システムとして「個人」が社会の一部であると同時に社会に対して影響を与え得る存在であることと、一方で逆に社会が個人に影響を与えていることをしっかりと認識していないがために選挙があっても投票に行かない者がいることの理由になっていると言えるだろう。

日本においては集団主義に因って発生する同調圧力が個人を苦しめている例が多いが、かといってアメリカのように全体が見えない個人主義的傾向もまた問題だと思われる。

仏教では、このような構図を「縁」または「因縁」という言葉で表している。因果応報も自業自得も時間的な要素を理解できず、目の前の問題に翻弄されていて未来について盲目な人間を指しているのである。

冒頭に述べた「機械性」とは、無自覚という意味で語れば、いろんな解釈があるだろう。ただ、人間が持つそのような機械性を知った上でなら、意志的にやれることも残されているようにも思う。

興味に任せるのではなく、意図して関心を持つこと。これだけでもずいぶん違った結果が得られることだろう。近世哲学の父と言われ、「我思う、ゆえに我あり」の命題で知られるルネ・デカルトは、方法的懐疑といった手法を以て可能な限り真実に近づこうと試みた。

彼は、どんなことも鵜呑みにせず疑い、自分の目で確認したことしか信じないことを大切にしていたのである。

人間関係においては「事実」と「推測(想像)」と「情報」の区別が曖昧なまま過ごしていることが多く、それゆえ、あらぬ誤解によって関係が拗れたり、無用な対立を生んだりすることばかりだ。

ならば、これもまた何らかの出来事が生じた際に、それは上に挙げた3つのどれだろうか?と自らの心の動きに対して問うてみることくらいはできるだろう。

時間の経過に準ずる展開については、でき得るかぎり多くの可能性と危険性を想定することで回避できるかもしれない。ひとくちに自分を知ると言っても、これだけいろんなチャンネルがあることもまた知る必要があるだろうし、我を知らずして生きていることを「営み」と呼んでいいものか?と疑問に思うのだ。

ソクラテスは「無知の知」という言葉を残している。自分は、まだまだ何も知らない。理解していない。それどころか無知であることを認める謙虚な姿勢を持っていて、そこで初めて「生きること」が始まるということを既に説いていた。

我々は、21世紀に生きていながら、未だ2600年も前に生きた彼らにすら追いついていないことを自覚しなくてはならない。あと数年もすればAIの能力が人間のそれを上回ることになるだろう。

しかし、今から既にスマホやゲーム機なしでは生きられないといった依存症に染まる者や、事実かフェイクかの区別がつかないまま鵜呑みにしてしまう者が多いようでは先が思いやられてしまう。

少なくとも、すぐに助言するようなカウンセラー(アドバイザー)は、AIに勝つことができないだろう。自己覚知はどこまで掘っても終わりがない。自らの成育環境によって染められ、多くの自覚なき大人たちによって「世の中とは、このようなものだ」と刷り込まれ、自分にとっての当たり前を「普通」と呼び、一般論を正論だと信じている。

そんな自分に、敢えてメスを入れることによって、そこで初めて見えてくるものなのである。

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▼編集後記▼
あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は、『 無知なことを知って理解し行動しよう― 多様性(ダイバーシティ)の世界へ 』と題して人材開発フォーラムを開催しました。

ステキなフォーラムになりました、録画をご視聴になりたい方は、もうしばらく、お待ちください。

新たに知ることは本当に、成長を実感できますし、若返ったような新鮮な気持ちになります。ああ、ここまで書いて、まぁ年取っているので、若返ることを無意識に要求している?ということでもありますねぇ。うーん、でもそこは開き直って、何事も気持ちから年取ってしまうのでしょうから、いつまでも興味津々に過ごせる2025年にしていきたいです。
(い)

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