キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
前回に引き続き高齢社会対策の推進についてお話します。我が国は、既に超高齢社会に突入しており、高齢者の割合が大きくなっていく中で、高齢者が暮らしやすい社会をつくることは、他の世代の人々にとっても暮らしやすい社会の実現につながります。すべての世代の人々が超高齢社会をを構成する一員として、今何をすべきかを考え、互いに支え合いながら希望が持てる未来を切りひらいていく必要があります。
○身寄りのない高齢者への支援
高齢期において、望まない孤独や社会的孤立に陥ることを防ぐため、地域におけるインフォーマルな関係づくりが重要となることから、地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの設置に向けた伴走支援等の実施や重層的支援体制整備事業等の活用により、自治会や町会、スポーツ団体やNPO等のボランティア団体等、地域の多様な団体が連携して支援する環境整備に取り組み、日常生活での緩やかなつながりづくりや居場所づくりを推進する。
地域の関係機関が身寄りのない高齢者を円滑に支援するためのガイドラインの作成や相互のネットワークの構築等について、都道府県・市区町村における取組事例を収集し、情報提供を行うこと等により促進する。身寄りのない高齢者等の相談を受け止め、地域の社会資源を組み合わせた包括的支援のマネジメント等を行うコーディネーターを配置した窓口の整備を図る取組や、十分な資力がないなど民間事業者による支援を受けられない人等を対象とした総合的な支援パッケージを提供する取組の試行的な実施を通じて課題を整理し、身寄りのない高齢者等への必要な支援の在り方について検討を進める。利用者が安心して高齢者等終身サポート事業を利用できるよう、2024年(令和6年)6月に関係府省庁が連携して策定した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」に基づき、事業者の適正な事業運営を確保し、当該事業の健全な発展を推進する。
エンディングノートの準備を行うなど、一人暮らしの高齢者の生前の意向を確認していくことの重要性について、広く啓発を進めるとともに、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとする観点から、現行の自筆証書遺言の方式に加え、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを検討する。
○支援を必要とする高齢者等を地域で支える仕組みづくりの促進
高齢者等が住み慣れた地域において、社会から孤立することなく継続して安心した生活を営むことができるような体制整備を推進するため、多様な関係者が連携して支援が必要な高齢者等の地域生活を支えるための地域づくりを進める。このため、行政や介護・福祉の専門職、地域住民、NPO等の地域づくりの多様な主体が連携する仕組みづくりを進める。
制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」、「受け手」という関係、また、社会保障の枠を超えて、地域の住民や多様な主体が支え合い、住民一人一人の暮らしと生きがい、そして、地域を共に創っていく「地域共生社会」の実現を目指す。具体的には、市区町村において、既存の相談支援等の取組を活かしつつ、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に行う重層的支援体制整備事業の実施等を支援する。
加齢に伴う心身の変化の中でも、地域とのつながりを持ち、それぞれの希望や状況に応じた活躍を実現するためには、医療現場等から患者等を地域の社会資源やコミュニティ資源へつなぐ取組も重要となる。このため、フレイルや認知症等を含む高齢者医療(老年医学)と、患者の身体面、心理面、家族や生活環境全体に配慮しながら医療を提供する全人的医療を行うプライマリ・ケア等の地域医療について、医療関係者が学ぶ機会の充実に取り組むとともに、「医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」(令和4年11月7日モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会決定)を踏まえ、引き続き、医学部における教育での学びの充実を図る。また、患者等を地域資源(博物館、美術館、自然公園等の文化資本を含む。)につなぐ取組について、医療・福祉関係者の理解の促進や連携強化を図る。患 者等にとって、こうした取組が自身のウェルビーイングの向上に資するものであるということについて周知啓発を図る。
高齢者を含めた地域住民を支援するソーシャルワーカー等の専門職に対して、様々なニーズに応じて利用可能な制度・施策等についての周知を行う。住民の身近な相談相手である民生委員について、居住要件の緩和に関する検討を行うとともに、既存の町会・自治会等の推薦に加えて自己推薦を導入するなど、市区町村における地域の実情に応じた多様な選定方法を推進することにより、幅広い世代からの担い手の確保を図る。
地域における高齢者の支え手のやりがいを確保する観点や介護職員の働く環境改善を推進する観点から、介護や認知症の人への支援の分野で活躍するNPO等や職員の働きやすい職場環境づくりに尽力した事業者等の功績を評価し、周知する取組を図る。
〇加齢による難聴等への対応
難聴は生活や社会参加の範囲を狭め、フレイルや認知症等のリスクを高める要因となり得るなど、高齢期の生活に及ぼす影響が大きいため、難聴が高齢期の就労や社会参加の障壁とならないよう、地域や職場での正しい知識の普及により、社会全体で難聴への理解を深めていく。加齢に伴う難聴等感覚器機能の低下の早期スクリーニングや定期的ケアの重要性について、普及啓発を図る。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」という。)の医療機器開発推進研究事業等により、補聴器等の聴覚機能に関する技術の研究開発を推進するなど高齢者者向け医療機器の実用化を目指す臨床研究等を支援する。補聴器については、その購入に際して消費者トラブルが報告されていることを踏まえ、質の高い補聴器販売者の養成等を図る取組を推進する。
感覚器機能の状態は様々であり、高齢者にも伝わりやすい情報発信の工夫が必要であることから、公共の場における難聴の人が聞こえやすい技術を活用した聴覚補助機器の使用やスマートフォン等も活用した視覚的な情報達等、複数のチャンネルにより高齢者の感覚を拡張・代替していくためのテクノロジーの活用を進め、身体機能・認知機能の状態に関わらず生活しやすい環境整備を図る。
◆ 学習・社会参加
〇加齢に関する理解の促進
少子高齢化が進行する中で、あらゆる世代が豊かに生活できる社会を築くためには、社会全体で加齢について学び、世代間の理解を促進するとともに、加齢を自分事として捉え高齢期に向けて必要な備えを行うことが重要である。
そのため、初等中等教育段階においては、地域等との連携を図りつつ、ボランティア活動や職場見学、職場(就業)体験等による高齢者との交流等を通じて、介護・福祉等の高齢社会に関する課題や高齢者に対する理解を深める。また、生涯の各段階における健康について理解を深められるよう、学習指導要領に基づく着実な指導を行う。あわせて、学校教育全体を通じて、生涯にわたって自ら学び、社会に参画するための基盤となる能力や態度を養う。
国民一人一人が、認知症に関する正しい知識と理解を深められるよう、地域や職域で認知症の人や家族を手助けする認知症サポーターの養成を進めるとともに、生活環境の中で認知症の人と関わる機会が多いことが想定される業種の従業員等向けの養成講座の開催の機会の拡大や、学校教育等における認知症の人等を含む高齢者への理解の増進等を図る。
〇高齢期の生活に資する学びの推進
○○ デジタル等のテクノロジーに関する学びの推進
高齢期においても自立して生活し、主体的に暮らし方を選択できるようにする観点から、デジタル等のテクノロジーを始め、社会生活に必要な分野を中心に、社会教育施設や大学等における多様な学習機会の提供を図る。
特に、デジタルリテラシー向上やデジタル・デバイドの解消を図る観点から、民間企業や地方公共団体等と連携し、高齢期等のデジタル活用の不安の解消に向けて、携帯ショップや公共的な施設(公民館等)において、スマートフォンを利用したオンライン行政手続等に対する助言・相談等を行うデジタル活用支援の講習会を実施する。また、図書館や公民館、鉄道駅や薬局等身近な場所の活用を含め、デジタル機器やサービスに不慣れな方にきめ細かなサポートを行うデジタル推進委員による相談体制の充実を図る。
デジタル等のテクノロジーに関しては、高齢者も含めた地域住民に対して、それぞれの関心に応じて更に高度な学びが可能となるよう、高等教育機関等における学習の機会の活用を図る。
(出典) 内閣府 令和6年 高齢社会対策大綱
(つづく)Y.H