基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 27 I テクノファ

投稿日:2020年12月24日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜4

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせてきました。

横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。

先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。

先生には多くの著者がありますが、今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていた方が良い「個立の時代の人材育成」-多様・異質・異能が組織を伸ばす-の核となるところを紹介したいと思います。

今回は引き続き「個立の時代の人材育成」からの紹介です。

―人材育成会議・人材開発委員会―
M社では、主要ラインの長(役員)を委員とする会議をトップが招集し、各種の人事資料を基にして幹部職位の後継可能者の一人ひとりについて論議をつくし、多面評価と育成プランの検討を行なう。この人材育成会議は、同社では20数年にわたってトップの交替にかかわらず継続されており、席上決定をみたプラン以外の異動、昇進、教育、配転が行なわれることはめったにない。密室や派閥の人事とはまったく無縁の年次定例会議(全二日間人材育成のみを討議する)として全社員に周知されている。

M社はまた、例年、別の時期に、全部長、全支店長をトップの名において招集し、若年層を対象として実績と将来性予測(第6章参照)にもとづく、個別の育成プランを決める会議を開く。この会議もまた、昼夜二日間にわたる人材の確認と育成にしぼられた合宿会議である。

両会議の詳細は後に譲るとして、このM社の事例はトップの人材育成へ のコミットメントを具体的に事実によって示すものといえよう。大手証券会社の中に、M社の幹部後継者育成会議と類似する会議を開く例が出てきたと聞く。序列人事から個別管理に踏みきったトップの勇断によって、わが国実業界の経営幹部の能力的若返りがすすめられる事例の増えることは、ご同慶の至りである。

また、大手チェインストアK社ではM社をモデルとし、育成会議のみならず、人材開発委員会(役員、ライン部長で構成)の発足にまで一気に踏みきった。トップの決断には驚くほかないが、これに有能な事務局の創意が加わり、長期的な視野と継続的な努力を旗印に、個別の人材発掘と育成作業を展開している。ラインの長が不馴れながらトップのコミットメントによく反応している姿が印象的である。

敢えてくりかえす。わが国の大方の企業のトップマネジメントは、人材育成をロで強調する割には、具体的な事実で示していない。事実とは、第一に、将来の指導者たるべき人材が、できるだけ早い時期に見出され、次いで当人の意思の確認と、組織側の責任者のコンセンサスのもとに、ローテーション、プロモーションを含む具体的な育成プランを推進するシステムの構築などを明確に指示する行動をとっていない、という事実。第二に、トップ自身が、自ら人材育成そのもののための会議を招集、参加し、あるいは人材育成に熱意を示す部下幹部の努力を讃えるなどして、人材育成がトップの重大関心事であることを身を以て示すことをしていない、という事実である。逆にまた、人材流出の責任を間うことなども、トップのヒトへの関心を示す一つの手だて(事実)であろう。

第一にあげたシステムづくりには準備、整備に時間がかかる。トップが現状の体勢のままでも直ちに断行できるのは、第二にあげたアクション、すなわち、従来トップがやらなかったことを実際にやってみせることである。その行動が、組織内に新たな連鎖反応をひきおこす起爆剤となることは間違いない。
この章で私はトップがダメなら人材育成はできない、などといっているつもりはない。革新の先頭をきっていただきたい人事教育スタッフや社長室スタッフは、個立の時代の人材育成についての認識を深めると共に、ライン(の長)の協力を得れば、トップの大号令を抽き出すことができることをいいたいのである。また、スタッフ自身の戦略的変身の姿勢が、トップとラインに大きな影響を与えるであろうこともここでいっておきたい。
(つづく)平林良人

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