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実践編・応用編

社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティング

投稿日:2026年5月13日 更新日:

キャリアコンサルタントの皆さんに有益な情報をお伝えします。

添付画像「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会報告書(概要)」について、内容の流れに沿って解説します。

① 画像全体の主旨

この画像は、今後のキャリアコンサルティングに求められる役割や能力を、社会変化との関係から整理した概要図です。中心にある問題意識は、産業構造、就業構造、技術革新、価値観、働き方、職業人生の長期化などが大きく変化するなかで、従来型のキャリア支援だけでは十分ではなくなっている、という点です。

これまでのキャリアコンサルティングは、転職、就職、職場不適応、職業選択、能力開発など、相談者が直面している問題への対応を中心に行われてきました。しかし、現在はそれに加えて、労働者一人ひとりが自分の職業人生を主体的に考え、変化に対応しながら学び続け、必要に応じて仕事や働き方を再設計していくことが求められています。そのため、キャリアコンサルタントにも、単に相談を受けるだけでなく、相談者の自律的・主体的なキャリア形成を支援する能力が必要になっている、というのがこの図の根本的なメッセージです。

② キャリアコンサルティングを取り巻く状況

図の上段では、キャリアコンサルティングを取り巻く社会的背景が示されています。ここでは大きく三つの変化が整理されています。

第一に、「産業構造・就業構造の変化」「技術革新の進展」「価値観や生活スタイルの多様化」「職業人生の長期化」です。産業構造の変化とは、成長する産業、縮小する産業、仕事の内容が変化する産業が生まれていることを意味します。たとえば、デジタル化、AI、ロボット、データ活用などの進展によって、従来は人が担っていた業務が自動化されたり、逆に新しい職種が生まれたりしています。

第二に、「労働需要が変化」「各職業の業務内容と必要な知識・技能が変化」「キャリアや働き方が多様化」とあります。これは、企業が求める人材像やスキルが変わり続けていることを意味します。これまで一つの会社で長く働き、社内で経験を積むことが一般的だった時代から、転職、副業、兼業、フリーランス、リモートワーク、ジョブ型雇用、リスキリングなど、多様なキャリアの形が広がっています。働く人は、会社任せではなく、自分自身で学び直し、経験を意味づけ、将来に向けた選択をしていく必要があります。

第三に、こうした変化に対応するため、キャリアコンサルタントには「経済社会情勢の変化に対応した支援を行うことができる能力」が求められるとされています。つまり、キャリアコンサルタントは、相談者の気持ちを受け止めるだけでなく、社会や労働市場の変化、職業情報、能力開発の方法、組織内の環境整備、専門家との連携などを踏まえて、現実的かつ将来志向の支援を行う必要があるのです。

③ 今後必要とされる能力の基本構造

図の中央では、「今後のキャリアコンサルティングに必要な能力」が整理されています。ここで重要なのは、必要な能力が二つに分けられていることです。

一つは「すべての活動領域において共通に追加・強化が必要な能力」です。これは、企業、需給調整、教育、地域・福祉など、どの分野で活動するキャリアコンサルタントにも共通して必要となる基本能力です。

もう一つは「各活動領域において追加・強化が必要な専門的な能力」です。キャリアコンサルタントは活動する場によって役割が異なります。企業内で従業員を支援する場合と、ハローワークや人材紹介などで求職者を支援する場合、学校で学生を支援する場合、福祉領域で困難を抱える人を支援する場合では、必要な知識や関係者との連携のあり方が違います。そのため、共通能力に加えて、領域ごとの専門能力が必要だと整理されています。

④ 「開発型」の支援が重視されている点

この図で特に重要なのは、「開発型」の支援という考え方です。図では、労働者が自身の職業人生において目指す姿を設定し、その実現のための課題達成に向けて継続的に取り組む力を身につけることを支援する能力が求められる、と説明されています。

これは、キャリアコンサルティングの重点が、単発の問題解決だけでなく、相談者自身の成長や主体性の形成に移っていることを示しています。たとえば、相談者が「今の仕事が合わない」と訴えた場合、従来型の支援では、悩みの整理、適性の確認、転職可能性の検討などが中心になるかもしれません。しかし開発型の支援では、それに加えて、「この人はどのような職業人生を望んでいるのか」「今後どのような能力を身につける必要があるのか」「環境変化にどう対応していくのか」「自分で意思決定し続ける力をどう育てるのか」といった視点が加わります。

つまり、キャリアコンサルタントは、相談者の現在の問題を解決するだけでなく、将来にわたって自分のキャリアを形成し続ける力を支援する存在である、ということです。

⑤ 共通して必要な支援能力

図では、共通して必要な支援として、六つの内容が示されています。

まず、「様々な情報を活用した自己理解・仕事理解・環境理解の支援」です。自己理解とは、自分の興味、価値観、能力、経験、強み、課題を理解することです。仕事理解とは、職業の内容、求められる能力、働き方、将来性などを理解することです。環境理解とは、労働市場、産業動向、会社の状況、家庭環境、地域資源など、自分を取り巻く条件を理解することです。今後のキャリア支援では、この三つをバランスよく扱うことが不可欠です。

次に、「働くことの意義の理解まで含めた職業生活設計に関する支援」です。これは、単にどの仕事に就くかだけではなく、なぜ働くのか、仕事を通じて何を実現したいのか、生活や人生全体の中で仕事をどう位置づけるのかを考える支援です。特に職業人生が長期化するなかでは、若年期、中年期、シニア期で働く意味が変化することもあります。キャリアコンサルタントは、相談者の人生段階に応じて、職業生活を再設計する支援を行う必要があります。

三つ目は、「将来予測も含めた最新の情報を踏まえた職業の選択に関する支援」です。今後は、現在ある職業情報だけでなく、将来どの分野が伸びるのか、どの能力が必要になるのか、どの仕事が変化するのかといった情報を踏まえることが重要になります。相談者が職業選択をする際には、過去の経験だけでなく、将来の可能性を見据えた意思決定が求められます。

四つ目は、「動機づけ支援や伴走支援も含めた職業能力開発・向上に関する支援」です。リスキリングや学び直しの必要性が高まっても、実際に学び続けることは簡単ではありません。時間、費用、意欲、不安、家庭責任、職場環境など、多くの障壁があります。そのため、キャリアコンサルタントには、相談者が学習を始め、継続し、成果を仕事に結びつけられるように支援する力が求められます。

五つ目は、「組織・環境への働きかけ及び専門家等と連携した支援」です。相談者の問題は、本人の努力だけで解決できるとは限りません。職場の制度、上司の理解、配置、評価、人間関係、健康問題、家庭問題、経済的事情などが関係することもあります。その場合、キャリアコンサルタントは、必要に応じて組織に働きかけたり、産業医、社会保険労務士、心理職、福祉職、教育機関などと連携したりすることが重要になります。

六つ目は、「AI等のデジタルツールを活用した支援」です。これは今後ますます重要になります。職業情報、スキル診断、求人情報、学習コンテンツ、キャリアの棚卸し、面談記録の整理など、デジタルツールを活用することで支援の幅は広がります。ただし、AIを使えばよいということではありません。キャリアコンサルタントは、デジタルツールの利点と限界を理解し、倫理的配慮をしながら、人間による対話支援と組み合わせる必要があります。

⑥ 活動領域ごとの専門能力

右側の表では、活動領域ごとに必要な能力が整理されています。

企業領域では、「企業の理解の促進、経営層や人事部門との連携・協力、従業員のキャリア形成支援に向けた環境づくり」が挙げられています。企業内のキャリア支援では、個人支援だけでなく、組織との関係が非常に重要です。従業員が主体的にキャリアを考えるには、上司の理解、配置転換の仕組み、研修制度、面談制度、心理的安全性などが必要です。キャリアコンサルタントは、個人と組織の橋渡し役として機能することが期待されます。

需給調整領域では、「労働市場や職種の情報の提供、マッチング、求職条件・採用条件変更への働きかけ、職場定着支援」が示されています。これは、職業紹介、再就職支援、人材サービス、公的就労支援などの場面を想定しています。求職者の希望と求人側の条件が一致しない場合、単に紹介するだけでなく、条件調整や職場定着まで支援することが求められます。

教育領域では、「キャリア教育、就職支援・インターンシップ関連業務、カリキュラム設計への協力、リカレント教育」が示されています。学校や大学では、学生が社会に出る前に自己理解や職業理解を深める支援が重要です。また、社会人の学び直し、リカレント教育への関与も今後の大きな課題です。

地域・福祉領域では、「情報収集とアセスメント、支援の方向性の提案、支援プログラムの企画運営、キャリアプランの作成・実行支援」が挙げられています。この領域では、就労困難者、生活困窮者、障害のある人、ひとり親、若者、高齢者など、多様な背景を持つ人への支援が想定されます。キャリア支援だけでなく、生活支援、福祉支援、心理的支援、地域資源との連携が不可欠になります。

⑦ 能力開発と普及の課題

図の下段では、キャリアコンサルタント自身の能力開発と、キャリアコンサルティングの活用促進について述べられています。

能力開発については、「スーパービジョン、インターンシップ、事例検討会等の実践的な学びが効果的」とあります。これは、知識を学ぶだけではなく、実際の相談場面を振り返り、専門家から指導を受け、他の実践者と事例を検討することが重要だという意味です。キャリアコンサルティングは対人支援であるため、理論だけでは十分ではありません。相談者の言葉をどう受け止めるか、どこで情報提供するか、どのように意思決定を支えるか、どこから他機関につなぐかといった判断力は、実践を通じて磨かれます。

また、「必要な能力を身につけるために習得すべき知識・技能の具体化に向けたさらなる検討が必要」とも示されています。これは、今後の社会変化に対応するためには、キャリアコンサルタントの学習内容や養成課程、更新講習なども見直していく必要があることを示唆しています。

活用促進については、「キャリア形成やリ・スキリングの重要性とキャリアコンサルティングの効果についての国民の認知・理解の促進が必要」とあります。多くの人にとって、キャリアコンサルティングはまだ身近なものではないかもしれません。しかし、働き方が多様化し、学び直しが必要になる時代には、専門家に相談しながら自分のキャリアを考える機会が重要になります。

さらに、「あらゆる労働者が雇用形態や就業状況にかかわらず質の高いキャリアコンサルティングを受けられる機会の確保が重要」とされています。正社員だけでなく、非正規雇用、フリーランス、求職者、離職者、学生、シニアなど、誰もが質の高い支援を受けられる体制づくりが求められているのです。

⑧ まとめ

この画像が示している最も重要なポイントは、キャリアコンサルティングが「相談者の悩みを聴く支援」から、「変化の時代を生きる労働者の主体的なキャリア形成を支える支援」へと拡張していることです。

今後のキャリアコンサルタントには、傾聴や自己理解支援の基本能力に加えて、労働市場の理解、職業情報の活用、能力開発支援、組織への働きかけ、専門家との連携、AI等のデジタルツール活用といった幅広い能力が求められます。また、活動領域によって必要な専門性も異なります。企業では組織開発的な視点、需給調整ではマッチングと定着支援、教育ではキャリア教育とリカレント教育、地域・福祉では生活課題を含めた包括的支援が重要になります。

したがって、この図は、キャリアコンサルタントの役割が今後さらに高度化・多様化することを示したものです。社会変化が激しい時代において、労働者が自分らしい職業人生を主体的に設計し、学び続け、環境と関わりながら成長していくためには、キャリアコンサルタント自身もまた、継続的に学び、実践を振り返り、専門性を高め続ける必要があります。

出典 経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会|厚生労働省

(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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