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前回に引き続き、持続可能な医療・介護の実現についてお話しします。少子高齢化によって、ますます労働力の減少が進んでいます。医療・介護も例外ではなく、将来的に医師や看護師、介護従事者が減っていくことは避けられません。つまり、社会と同じく需要と供給のバランスが崩れてしまう可能性があります。このバランスをどう保っていくかが、医療・介護業界の課題です。また、医療費も今後増える一方であり、税金が減ってしまえば、必然的に社会保障費の確保が難しくなってきます。
■地域医療構想の策定と医療機能の分化・連携の推進
医療・介護サービスの需要の増大・多様化に対応していくためには、患者それぞれの状態にふさわしい良質かつ適切な医療を効果的かつ効率的に提供する体制を構築する必要があります。このため、2014(平成26)年6月に成立した医療介護総合確保推進法では、病床の機能の分化・連携を進めるとともに、地域医療として一体的に地域包括ケアシステムを構成する在宅医療・介護サービスの充実を図るための制度改正を行いました。
具体的には、長期的に継続する人口構造の変化を見据えつつ、将来の医療需要に見合ったバランスのとれた医療機能の分化・連携の議論・取組みを進めるため、まずは、団塊の世代が75歳以上となり、高齢者が急増する2025(令和7)年の医療需要と病床の必要量について地域医療構想として策定し、医療計画に盛り込むこととしました。
これまで、地域医療構想の実現に向けて、厚生労働省より、公立・公的・民間を問わず、各医療機関において、地域医療構想を踏まえた具体的対応方針の策定や、国において診療実績を分析した上で、都道府県を通じ、公立・公的医療機関等に対し、具体的対応方針の再検証等について要請をしてきました。
併せて、病床機能の分化・連携に関する地域での議論を進めるため、国として以下のような支援を行っています。
①国による助言や集中的な支援を行う「重点支援区域」を選定し、積極的に支援を行っており、直近では、2025年1月に10回目の選定を行い、2025年3月末現在までに、13道県23区域を選定しています。
②2022(令和4)年度より、「重点支援区域」の申請の要否を判断するまでの支援として、再編の検討の初期段階における複数医療機関の再編を検討する「再編検討区域」への技術的支援を行っています。
③2020(令和2)年度に、病床機能の再編や統合を進める際に生じうる、雇用や債務承継などの課題を支援するため、「病床機能再編支援事業」を新たに措置し、当該事業について2021(令和3)年度以降も、地域医療介護総合確保基金の中に位置づけ、全額国庫負担の事業として実施しています。
④複数医療機関の再編・統合に関する計画(再編計画)について、厚生労働大臣が認定する制度を2021年に創設し、租税特別措置法改正により、認定を受けた再編計画に基づき取得した土地や建築した建物に関する登録免許税を軽減しています。また、2022年の地方税法改正により不動産取得税を軽減しています。
⑤2023(令和5)年度より、地域医療提供体制の構築等について、都道府県が主体的にデータを分析し、施策の企画・立案体制の強化に資することを目的とした事業を実施し、地域医療構想の推進等に当たって、都道府県における各地域の実情に応じたデータ分析を企画、立案できるデータ分析体制の構築を支援しています。
⑥2024(令和6)年3月に各都道府県に対し、2025年までの年度ごとに国・都道府県・医療機関がそれぞれ取り組む事項を明確化し、関係機関が一体となって計画的に更なる取組みを進めることについて示したほか、国において、地域別の病床機能等の状況の見える化、都道府県の取組みや医療機関の機能転換・再編等の好事例の周知を行いました。
⑦2024年度より、医療提供体制上の課題や重点的な支援の必要性、地域医療構想の実現に向けた取組み状況等を総合的に勘案してモデル推進区域(14道府県16区域)を設定し、アウトリーチの伴走支援を行っています。
■医療安全の確保
◆医療安全支援センターにおける医療安全の確保
医療安全支援センターは都道府県、保健所設置市及び特別区に計394か所(2024(令和6)年9月1日現在)設置されており、医療に関する苦情・心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者・住民に対して、医療安全に関する助言及び情報提供を行っています。医療安全支援センターの業務の質の向上のため、職員を対象とする研修や、相談事例を収集、分析するなどの取組みを支援しています。
第8次医療計画では、医療安全支援センターにおける相談対応の質の向上を図るための相談職員の研修受講の推進や、医療安全推進協議会の開催等による地域の医療提供施設や医療関係団体との連携、協力体制の構築の推進等を行っています。
◆医療事故調査制度
2015(平成27)年10月に開始した医療事故調査制度は、医療事故の再発防止に繋げ、医療の安全を確保することを目的とし、
①医療事故(医療機関に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該医療機関の管理者が死亡又は死産を予期しなかったもの)が発生した医療機関(病院、診療所又は助産所)が、医療事故調査・支援センターへの報告、医療事故調査の実施、医療事故調査結果の遺族への説明及び医療事故調査・支援センターへの報告を行うこと
②医療事故として報告された事例について、医療機関や遺族からの依頼に応じて、医療事故調査・支援センターが中立的な立場から調査を行うこと
③さらに、こうした調査結果を、医療事故調査・支援センターが整理・分析し、再発防止に係る普及啓発を行うこととしています。
2016(平成28)年には、医療法施行規則の一部改正や、関連通知の発出により、
①病院等の管理者は、医療事故の報告を適切に行うため、当該病院における死亡及び死産の確実な把握のための体制を確保すること
②支援団体は、支援を行うに当たり必要な対策を推進するため、共同で協議会を組織することができること、また、協議会において、支援団体が行う支援等の状況の情報の共有及び必要な意見の交換を行い、その結果に基づき、支援団体が行う支援の円滑な実施のための研修の実施や病院等の管理者に対する支援団体の紹介を行うこと
③遺族等からの相談に対する対応の改善を図るため、また、当該相談は医療機関が行う院内調査等の重要な資料となることから、医療事故調査・支援センターは、遺族等から相談があった場合、医療安全支援センターを紹介するほか、遺族等からの求めに応じて、相談の内容等を医療機関に伝達すること
④医療事故調査制度の円滑な運用に資するため、支援団体や医療機関に対し、情報の提供及び支援を行うとともに、医療事故調査等に係る優良事例の共有を行うこと
⑤院内調査報告書の分析等に基づく再発防止策の検討を充実させるため、医療機関の同意を得て、必要に応じて、医療事故調査・支援センターから院内調査報告書の内容に関する確認・照会等を行うことなどを示しています。
2025(令和7)年2月末現在までに、医療事故報告件数3,309件、院内調査結果報告件数2,914 件、医療事故調査・支援センターへの調査依頼件数281件となっており、医療事故調査・支援センターの調査は189件終了しました。また、「中心静脈穿刺合併症」、「急性肺血栓塞栓症」、「注射剤によるアナフィラキシー」等20のテーマについて、医療事故再発防止策の提言、また、迅速に注意喚起が必要な事象として「ペーシングワイヤー抜去に伴う心損傷」について、警鐘レポートを取りまとめ、公表しました。
第8次医療計画では、病院等の管理者に対して制度についての理解をより深めていただくため、研修の受講の推進を行っています。
◆医療事故情報収集等事業
医療事故情報収集等事業は、医療事故の原因を分析し、再発を防止するため、登録分析機関である公益財団法人日本医療機能評価機構が医療機関からの報告を基に、定量的、定性的な分析を行い、その結果を3か月ごとに報告書として公表しています。また、個別の医療行為のリスク低減を目的とした医療安全情報を作成し、事業参加医療機関等に対し、情報提供を行っています。さらに、Web上に報告事例のデータベースを構築し、蓄積された医療事故情報等が公開データとして検索できるようになっています。
◆特定機能病院のガバナンス改革
特定機能病院は、医療施設機能の体系化の一環として、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院について、厚生労働大臣が個別に承認するものであり、2025年2月1日現在、88病院を承認しています。
大学附属病院等において医療安全に関する重大事案が相次いで発生したことを踏まえ、特定機能病院の承認要件について、医療安全管理責任者を配置すること等の見直しを行うとともに、特定機能病院の管理者は病院の管理運営の重要事項を合議体の決議に基づき行うこと等を義務づけています。
また、2021(令和3)年の省令改正により、第三者による病院の機能評価を受け、当該評価及び改善のため講ずべき措置の内容を公表し、並びに当該評価を踏まえ必要な措置を講ずるよう努めることを承認要件として追加しました。
■医療に関する適切な情報提供の推進
医療に関する十分な情報をもとに、患者・国民が適切な医療を選択できるよう支援するため、①2007(平成19)年4月より開始した、都道府県が医療機関に関する情報を集約し、わかりやすく住民に情報提供する制度(医療機能情報提供制度)について、2024(令和6)年4月からは全国統一的なシステム(医療情報ネット)による情報提供を実施するとともに、②医療広告について、2017(平成29)年の医療法改正により医療機関のウェブサイト等についても、虚偽・誇大等の不適切な表示を禁止することができるよう措置しました。また、医療広告ガイドライン等を整備するほか、2017 年より「医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業」により、医療広告の適正化を進めています。
医療人材の確保及び質の向上の推進
■医療を担う人材の確保の推進
◆医師養成数
我が国では、地域の医師確保等への対応の一環として、2008(平成20)年度より、卒業後に特定の地域等で従事することを条件とした地域枠を中心に医学部入学定員を臨時的に増員してきました。全国レベルで医師数は増加してきた一方で、将来的には人口減少に伴い、医師需要が減少局面となることが見込まれており、長期的には供給が需要を上回ると考えられています。
こうした中、2027(令和9)年度以降の医学部定員については、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」等における議論の状況を踏まえ、検討を進めています。
◆医師の確保・医師偏在対策
地域において必要な医師を確保するため、2018(平成30)年に成立した「医療法及び医師法の一部を改正する法律」(平成30年法律第79号)に基づき、各都道府県において、2019(令和元)年度までに、都道府県及び二次医療圏ごとの医師の多寡を統一的・客観的に比較・価した医師偏在指標を踏まえた医師の確保の方針、目標とする医師数、目標達成に向けた施策を盛り込んだ「医師確保計画」を策定し、
・医学部入学定員に、特定の地域等での勤務を条件とした「地域枠」を設定し、一定期間、医師の確保を特に図るべき区域等での勤務等を条件に返済を免除する修学資金を貸与
・医療機関や医師・学生等に対する必要な情報の提供や医師の派遣を行う地域医療支援センターの運営
などの取組みが行われており、厚生労働省においては、地域医療介護総合確保基金等により、地域の実情に応じた都道府県の取組みへの支援を行っています。
加えて、産科・小児科における医師確保対策の検討は、政策医療の観点からも必要性が高く、診療科と診療行為の対応も明らかにしやすいことから、医師確保計画では、産科・小児科における医師偏在指標を踏まえ、都道府県、周産期・小児医療圏ごとに、医師確保の方針、偏在対策基準医師数を踏まえた施策についても盛り込み、産科・小児科における医師確保に向けた取組みを行っています。
また、2024(令和6)年度から開始された「第8次(前期)医師確保計画」においては、2023(令和5)年3月に策定した「医師確保計画策定ガイドライン~第8次(前期)~」に基づき、医師偏在指標の精緻化を行うとともに、更なる実効性が確保できるよう、寄附講座の設置を通じた医師派遣などによる医師確保の取組みを推進しています。
外来医療については、無床診療所の開設が都市部に偏っていること、医療機関間の連携の取組みが個々の医療機関の自主的な取組みに委ねられていることなどの課題から、2018年の医療法改正により、「医療計画」に「外来医療の提供体制の確保に関する事項」を追加し、都道府県において「外来医療計画」を策定しています。
また、「第8次(前期)外来医療計画」においては、2023年3月に策定した「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(前期)~」に基づき、外来医療に関する情報の可視化、新規開業希望者などへの情報提供、外来医療に関する協議の場の設置等を盛り込むことなどにより、地域の外来医療提供体制の確保に向けた取組みを推進しています。
全国レベルで医師数は増加している中、医師偏在の是正が重要となっています。上述の取組みにより、一定の進捗が認められる一方、今後、地域ごとに人口構造が急激に変化する中で、将来にわたり地域で必要な医療提供体制を確保するため、実効性のある医師偏在対策を進めていく必要があります。このため、厚生労働省においては、2024年12月に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を策定し、
①経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組み、医師養成過程を通じた取組み等を組み合わせた総合的な取組み、
②中堅・シニア世代を含む全ての世代の医師を対象としたアプローチ、
③へき地保健医療対策を超えた取組み
という3つの基本的な考え方や具体的な取組みを取りまとめました。また、当該パッケージを踏まえ、2025(令和7)年2月に第217回通常国会に「医療法等の一部を改正する法律案」を提出し、医師偏在対策として、「重点的に医師を確保すべき区域」を定め、医師の手当の支給に関する事業を設ける等の措置を講じることとしています。
(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書
(つづく)Y.H