キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

中学校学習指導要領の改訂 キャリア関係

投稿日:2026年4月19日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

文部科学省は、平成29年3月(2017年)に中学校学習指導要領の改訂を行いました。今回は、その内容について解説します。

改訂の経緯及び基本方針
■改訂の経緯
今の子供たちやこれから誕生する子供たちが、成人して社会で活躍する頃には、我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想されます。生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となっています。また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては、一人一人が持続可能な社会の担い手として、その多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待されます。

こうした変化の一つとして、人工知能(AI)の飛躍的な進化を挙げることができます。人工知能が自ら知識を概念的に理解し、思考し始めているとも言われ、雇用の在り方や学校において獲得する知識の意味にも大きな変化をもたらすのではないかとの予測も示されています。このことは同時に、人工知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても、その思考の目的を与えたり、目的のよさ・正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みであるということの再認識につながっています。

このような時代にあって、学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められています。

このことは、本来、我が国の学校教育が大切にしてきたことであるものの、教師の世代交代が進むと同時に、学校内における教師の世代間のバランスが変化し、教育に関わる様々な経験や知見をどのように継承していくかが課題となり、また、子供たちを取り巻く環境の変化により学校が抱える課題も複雑化・困難化する中で、これまでどおり学校の工夫だけにその実現を委ねることは困難になってきています。

こうした状況を踏まえ,平成26 年11月には、文部科学大臣から新しい時代にふさわしい学習指導要領等の在り方について中央教育審議会に諮問を行いました。中央教育審議会においては、2年1か月にわたる審議の末,平成28年12月21日に「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(以下「中央教育審議会答申」という。)を示しました。

中央教育審議会答申においては、“よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る”という目標を学校と社会が共有し、連携・協働しながら、新しい時代に求められる資質・能力を子供たちに育む「社会に開かれた教育課程」の実現を目指し、学習指導要領等が、学校、家庭、地域の関係者が幅広く共有し活用できる「学びの地図」としての役割を果たすことができるよう、次の6点にわたってその枠組みを改善するとともに、各学校において教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現を目指すことなどが求められました。

◆「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力)
◆「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階等間のつながりを踏まえた教育課程の編成)
◆「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施,学習・指導の改善・充実)
◆「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子供の発達を踏まえた指導)
◆「何が身に付いたか」(学習評価の充実)
◆「実施するために何が必要か」(学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策)

これらを踏まえ、平成29年3月31日に学校教育法施行規則を改正するとともに、幼稚園教要領、小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を公示しました。中学校学習指導要領は、平成30年4月1日から移行措置を実施し、令和3年4月1日から全面実施することとしています。

■改訂の基本方針
今回の改訂は中央教育審議会答申を踏まえ、次の基本方針に基づき行いました。
◆今回の改訂の基本的な考え方
①教育基本法、学校教育法などを踏まえ、これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を生かし、子供たちが未来社会を切り拓ひらくための資質・能力を一層確実に育成することを目指す。その際、子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する「社会に開かれた教育課程」を重視すること。

②知識及び技能の習得と思考力、判断力,表現力等の育成のバランスを重視する平成20年改訂の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質を更に高め、確かな学力を育成すること。
③先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心や健やかな体を育成すること。

◆育成を目指す資質・能力の明確化
中央教育審議会答申においては、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であること、こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し、学校教育がしっかりとその強みを発揮できるようにしていくことが必要とされました。また、汎用的な能力の育成を重視する世界的な潮流を踏まえつつ、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等をバランスよく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされました。

このため「生きる力」をより具体化し、教育課程全体を通して育成を目指す資質・能力を
①「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」
②「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」
③「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」

の三つの柱に整理するとともに、各教科等の目標や内容についても、この三つの柱に基づく再整理を図るよう提言がなされました。

今回の改訂では,知・徳・体にわたる「生きる力」を子供たちに育むために「何のために学ぶのか」という各教科等を学ぶ意義を共有しながら、授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していくことができるようにするため、全ての教科等の目標及び内容を「知識及び技能」、「思考力,判断力,表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で再整理しました。

◆「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進
子供たちが、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、これからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにするためには、これまでの学校教育の蓄積を生かし、学習の質を一層高める授業改善の取組を活性化していくことが必要であり、我が国の優れた教育実践に見られる普遍的な視点である「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善(アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善)を推進することが求められます。

今回の改訂では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を進める際の指導上の配慮事項を総則に記載するとともに、各教科等の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」において、単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を進めることを示しています。

その際、以下の6点に留意して取り組むことが重要です。
①児童生徒に求められる資質・能力を育成することを目指した授業改善の取組は、既に小・中学校を中心に多くの実践が積み重ねられており、特に義務教育段階はこれまで地道に取り組まれ蓄積されてきた実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉える必要はないこと。

②授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく、児童生徒に目指す資質・能力を育むために「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」の視点で、授業改善を進めるものであること。

③各教科等において通常行われている学習活動(言語活動,観察・実験問題解決的な学習など)の質を向上させることを主眼とするものであること。
④1回1回の授業で全ての学びが実現されるものではなく、単元や題材など内容や時間のまとまりの中で、学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか、グループなどで対話する場面をどこに設定するか、児童生徒が考える場面と教員が教える場面をどのように組み立てるかを考え、実現を図っていくものであること。

⑤深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。各教科等の「見方・考え方」は、「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方です。各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり、教科等の学習と社会をつなぐものであることから、児童生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることにこそ、教師の専門性が発揮されることが求められること。

⑥基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題がある場合には、その確実な習得を図ることを重視すること。

◆各学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進

各学校においては、科等の目標や内容を見通し、特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等)や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには、教科等横断的な学習を充実することや、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を、単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して行うことが求められる。これらの取組の実現のためには、学校全体として、児童生徒や学校、地
域の実態を適切に把握し、教育内容や時間の配分、必要な人的・物的体制の確保、教育課程の実施状況に基づく改善などを通して、教育活動の質を向上させ、学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントに努めることが求められます。

このため総則において、「生徒や学校,地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと、教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努める」ことについて新たに示しました。

◆教育内容の主な改善事項
このほか、言語能力の確実な育成,理数教育の充実、伝統や文化に関する教育の充実、体験活動の充実、外国語教育の充実などについて、総則や各教科等において、その特質に応じて内容やその取扱いの充実を図った。

出典  中学校学習指導要領 – 検索
(つづく)M.H

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタントの実践力強化の調査研究2

キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、現段階でのスーパービジョンの基盤整理のスーパービジョンの浸透の現実から記述します。 ■スーパービジョンの浸透の現実 スーパービジョンの重要性は上述のとおりであるが、キャリアコンサルタントがスーパー ビジョンを受けている状況を示す公的調査は見当たらない。そこで、一般財団法人ACCNが会員に対して実施したアンケート調査(調査期間:2019年12月26日~2020年1月16 日)をみると、次のような結果となっている。 調査は、会員3,167人に対しWEBを活用して実施し、器6人から回答(回収率26.4% …

学校教育 私立学校の振興

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 我が国の私立学校は、建学の精神に基づく教育方針に従い、それぞれが創意工夫した教育を実践し、個性豊かな、多種多様な人材を育成しています。今回は、私立学校の振興についてお話します。 ◆学校法人制度の改善 学校法人制度について定める私立学校法は、私立学校の運営の自主性を重視するとともに、幅広い意見の反映を通じた公共性の高揚を目的とするものです。これまで、累次の私立学校法改正により、時代の要請に合わせてガバナンスの強化が図られてきたところ、令和5年4月には、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本的な考え方としつつ、理事・理事会、監 …

今後の日本の経済社会の構築 

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 今後の日本経済は、より高い製品開発能力を獲得し、製品の付加価値を高めながらアジアを中心とする諸外国との経済分業の下で、互恵的な経済社会の発展を追及していくことが基本的な方向です。今回は、経済社会の構築についてお話しします。 ◆交通ネットワークの整備 ■新線道路ネットワークの整備 ●新線道路ネットワークの整備 幹線道路の整備は、昭和29年に策定された 「第1次道路整備五箇年計画」以来、現在に至るまで着実に進められてきました。例えば、高速道路等の幹線道路ネットワークの整備は、高速道路のインターチェンジ周辺での工場の立地を促すなど、地域 …

キャリアコンサルタントのスーパービジョン

平成28年にスタートしたキャリアコンサルタント国家試験制度は目標10万人保有者登録に向けて順調に進んでいると評価できると思います。一方で、数が増えると質が落ちるというすべての世界に共通の現象がキャリアコンサルタント国家資格制度にも忍び寄っているのではないかと危惧します。 今回はスーパービジョンについて述べます。スーパービジョンとはキャリアコンサルタントのクライアントとのやり取りの一部始終を立ち会って終了後キャリアコンサルタントと話し合いを行い今後の改善案を話し合う一連の活動を言います。 1.スーパービジョンの形式 ① スーパービジョンの形式は、スーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行うも …

海外進出日本企業で働く人々_中国_労使関係施策

昨今は海外進出している企業で働く日本人も多数います。彼らを取り巻く状況を知っていることもキャリアコンサルタントには有用なことです。今回は中国の労使関係施策についてお伝えします。 ■労使関係施策 (1)労使団体 労働組合(「工会」)の全国組織は、1925年に創設された「中華全国総工会(総工会)」(All China Federation of Trade Union:ACFTU)である。総工会は共産党の指導の下にあり、その影響が強く、総工会幹部は党・政府との間での異動や兼任があることから、資本主義国における政府と労働組合との関係とは、大きく異なっています。2001年に公布された「労働組合法(工会 …