キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
前回に引き続き、健康で安全な生活の確保についてお話しします。
国民の多くは、健康で安全な生活をすることを願っています。一方で、大規模な自然災害が発生しても、機能不全に陥らないで復旧復興に取り組まねばなりません。また、日常生活に潜む危険(感染症等)などから身を守る対策にも万全を記す必要があります。
薬物乱用対策の推進
■薬物乱用防止対策
2023(令和5)年の我が国における薬物事犯の検挙人員は、13,815人(医薬品医療機器等法違反を除く。)でした。このうち覚醒剤事犯は6,073人と前年に引き続き1万人を下回りました。一方、大麻事犯の検挙人員は、6,703人となり、過去最多であった2021(令和3)年を大幅に更新し、大麻事犯の検挙人員に係る統計が確認できる1951(昭和26)年以降、初めて覚醒剤事犯の検挙人員を上回りました。特に、30歳未満の若年層の検挙人員は、大麻事犯全体の検挙人員の72.9%に達しており、依然として大麻の乱用拡大に歯止めがかからない状況にあることから、我が国は引き続き「若年者大麻乱用期」の渦中にあると言えます。
このような国内の薬物情勢に対し、2023年8月に薬物乱用対策推進会議において策定された「第六次薬物乱用防止五か年戦略」に基づく、政府をあげた総合的な対策を推進しています。
また、諸外国において、大麻由来医薬品が医療用途として活用されている等の状況を踏まえ2022(令和4)年3月に、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の下に「大麻規制検討小委員会」を設置しました。同委員会が同年10月に公表した取りまとめにおいて、大麻由来医薬を適正に使用できるようにするとともに、大麻の「使用」に対する罰則の導入を含む薬物乱用対策に取り組み、大麻草の栽培についてその規制の合理化を図る等の大麻規制の見直しの基本的な方向性が示され、2023年1月に同部会で上記の取りまとめが了承されました。その後、同年10月24日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」(以下「改正法」という。)を第212回臨時国会に提出し、同年12月6 日に成立、同月13日に公布され、2024(令和6)年12 月に第一段階目の施行、2025(令和7)年3月に第二段階目の施行をしたところです。
薬物乱用防止対策は、社会が薬物を受け入れない環境をつくることが非常に重要であり、地域における啓発として、「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動」などの国民的啓発運動を展開し、薬物の危険性・有害性に関する正しい知識を周知徹底するとともに、近年若年層における薬物乱用が問題となっていることから、青少年や保護者等に向けて、薬物乱用防止普及啓発読本等の啓発資材を作成し、配布しています。また、薬物乱用防止啓発訪問事業として、要請のあった教育機関等に講師を派遣し、専門の教材を基に効果的な普及啓発を図るとともに、SNS等を活用して情報を発信しています。さらに、2021年度より、若年層をターゲットとしたインターネット上での行動に応じたデジタル広報を実施しています。
薬物の再乱用を防止するための取組みとして、都道府県と連携し、薬物依存症についての正しい知識の普及を行い、また、保健所及び精神保健福祉センターの薬物相談窓口において、薬物依存症者やその家族に対する相談事業、家族教室の実施等により再乱用防止対策の充実を図っています。また、麻薬取締部において、2019(平成31)年度から、保護観察のつかない全部執行猶予判決を受けた薬物事犯者等に対して、再乱用防止支援員による面談等を内容とした再乱用防止のための支援を実施しています。この支援の対象者については、当初は麻薬取締部において検挙した薬物事犯者のみでしたが、2021年度から、法務省と連携して麻薬取締部以外の捜査機関により検挙された薬物事犯者にも支援対象者を拡大し、支援の推進に努めています。
◆危険ドラッグ対策
危険ドラッグについては、健康被害や他者を巻き込む重大な交通事故等を契機に社会問題化して以降、政府一丸となって危険ドラッグ対策を推進しています。
対策の一つとして、医薬品医療機器等法の指定薬物として危険ドラッグの迅速な指定を行っており、2025(令和7)年3月末現在では、2,467物質を指定薬物としています。また、2013(平成25)年10月の麻薬取締官及び麻薬取締員への指定薬物の取締権限の付与を始めとした指導・取締体制の整備に加え、関係機関と連携した水際対策等を進めました。こうした取組みの結果、危険ドラッグの広告サイトを大幅に閉鎖させるとともに、2014(平成26)年3月時点で215あった販売店舗を2015(平成27)年7月までに全て廃業に追い込みました。国民への啓発については、2013年に「あやしいヤクブツ連絡ネットを開設し、国民が一元的に危険ドラッグを含む指定薬物などの危険性等に関する情報にアクセスできる環境整備を行いました。
一方で、2022(令和4)年に入り、一度は全店廃業に追い込んだ危険ドラッグ販売店舗が再出現するなど、THC類似成分等を含有する危険ドラッグの流通が国内市場で拡大すると、危険ドラッグ事犯(医薬品医療機器等法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反、交通関係法令違反等)に係る検挙人員は計312人、うち指定薬物に係る医薬品医療機器等法違反の検挙人員は275 人と前年から倍増し、2023(令和5)年には、検挙人員は計444人、うち指定薬物に係る医薬品医療機器等法違反の検挙人員は340人と依然として増加傾向にあります。また、同年には、危険ドラッグを摂取した後、健康被害が生じて救急搬送される事例が発生したことから、危険ドラッグ対策会議を開催し、関係機関との連携を強化しました。その後も、いわゆる大麻グミと称される食品形態の危険ドラッグの流通によって健康被害が相次いだため、警察や自治体と連携し、販売店舗への立入検査を実施するとともに、検査命令及び販売等停止命令を実施し、製品に含有されていた成分を速やかに指定薬物に指定しました。さらに、販売店舗への立入検査を継続して実施し、広域的に規制する必要があると認められる物品については、医薬品医療機器等法に基づく告示により全国的に販売等を禁止するとともに、指定薬物の包括指定も行うなど、危険ドラッグ乱用根絶に向けた取組みを実施しています。
血液製剤対策の推進
■献血の推進について
血液は、現代の科学技術をもってしても、未だ人工的に製造することができず、輸血用血液製剤の中には有効期間が非常に短いものがあるため、毎日新しい血液を確保する必要があります。
2023(令和5)年度の延べ献血者数は約501万人(対前年度比0.01%増)でした。医療需要に応じて、日々計画的に採血を行っており、毎年、安定供給に必要な血液量が確保されています。
また、厚生労働省では、将来の需要予測等を踏まえ、複数年の献血推進に係る中期目標(「献血推進2025」)を設定しており、①若年層(10代から30代)の献血者数の増加、②安定的な献血の確保、③複数回献血の推進、④献血Webサービスの利用の推進を目標に掲げ、献血推進の取組みを強化しています。なお、「献血推進2025」を設定した2020(令和2)年当時は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時期であり、その影響を十分に考慮できていなかったことから、必要に応じて見直しをしていくことにしました。そのため、2024(令和6)年度に見直しを行い、中期目標期間を2028(令和10)年度まで延長することとしました。
◆若年層対策の強化
①10代への働きかけ
献血への理解を深めてもらうことにより、初めての献血を安心して行っていただくため、SNSを含むインターネット等を主体とした情報発信を行うとともに、日本赤十字社が実施する「献血セミナー」などの献血普及の取組みを推進しています。
②20代・30代への働きかけ
献血率の減少傾向が続いている20代・30代の方が献血に協力しやすいよう、献血Web会員サービス「ラブラッド」の活用を促すなど、献血を体験した方が、長期にわたり複数回献血に協力してもらえるような普及啓発、環境整備に取り組んでいます。また、企業などへの働きかけを一層強化することにより、安定的な献血者の確保を図るとともに、予約献血の活用など献血者の利便性に配慮した新たな仕組みを検討しています。
◆安心・安全で心の充足感が得られる環境の整備
献血は相互扶助と博愛精神による自発的な行為であり、献血者一人一人の心の充足感が活動の大きな柱となっています。
献血に協力いただく方々が、より安心・安全に献血できるとともに、心の充足感を得られ継続して献血いただける環境整備を図っています。
■血液製剤の安全対策について
血液製剤は、原料である人血液に由来する感染症等の発生を完全には排除できないものであるため、技術の進歩や社会情勢の変化に即応した安全性確保の推進及び患者に真に必要な場合に限った適正使用を求めています。
輸血用血液製剤は、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤、全血製剤に大別されます。特に血小板製剤においては、その有効性を維持するため、常温で保存する必要があるなどの特性から細菌感染のリスクがあります。そのため、献血時の問診、消毒、初流血除去、保存前白血球除去、有効期限の制限などの種々の安全対策がとられています。それでもなお、輸血用血液製剤からの細菌感染事例の報告はされており、「人血小板濃厚液の使用時の安全性確保措置の周知徹底について」を発出し、輸血用血液製剤の使用時の安全対策の徹底について改めて周知しています。加えて、更なる安全対策として、細菌スクリーニングが導入される見込みです。
国内の輸血用血液製剤には、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などに対する抗原抗体検査、個別検体での核酸増幅検査(Nucleic Acid Amplification Testing:NAT)や供血者からの遡及調査の徹底等の対応を講じてきました。2020(令和2)年8月からはE型肝炎ウイルス(HEV)に対するNATも全国的に導入されるなど、今日、我が国における血液製剤は世界でも有数の安全性を有するものといえます。
なお、血漿分画製剤のウイルスに対する安全性については、献血者の問診・検査、製造工程でのウイルス除去・不活化処理及びそのウイルスクリアランス能の評価並びに採年3月には、「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」の一部を改正し、ウイルスクリアランス試験についての原則的な考え方等を示しています。
新型コロナウイルスワクチン接種後の献血者の採血制限期間については、mRNAワクチンについて接種後48時間、ウイルスベクターワクチンについて接種後6週間、組換えタンパク質ワクチンについて接種後24時間としているほか、新型コロナウイルス既感染者の採血制限期間については、症状消失(無症候の場合は陽性となった検査の検体採取日)から2週間とされています。
輸血用血液製剤に関する副作用報告件数の推移については、非溶血性副作用はアレルギー反応の頻度が最も高いですが、発症年齢分布が高齢者に多い輸血に伴う心不全である輸血各都道府県には、医療機関、血液製剤を供給している赤十字血液センター、そして管轄する行政の三者による合同輸血療法委員会が設置されており、適正かつ安全な輸血療法を目指しています。
医薬品・医療機器による健康被害への対応
■医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度
国民の健康の保持増進に欠かせない医薬品は、適正に使用しても副作用の発生を完全に防止できず、時に重い健康被害をもたらす場合があることから、迅速かつ簡便な救済を図るため、1980(昭和55)年5月に、医薬品製造販売業者等の拠出金を財源とする医薬品副作用被害救済制度が創設されました。2004(平成16)年度には、適正に使用された生物由来製品を介した感染等による健康被害に対して生物由来製品感染等被害救済制度が設けられています。医薬品副作用被害救済制度では、これまでに23,149名、生物由来製品感染等被害救済制度では、これまで70名(いずれも2025(令和7)年3月末時点)の方々に救済給付が行われています。最近の取組みとしては、必要な時に制度が適切に活用されるよう、テレビや新聞等を活用した広報や医師、薬剤師などの医療関係者を中心とした広報、医療機関等が開催する研修会への講師派遣などを行っています。
■薬害を学ぶ
若年層が、これまでに発生した薬害を学ぶことで医薬品に対する理解を深めることを目的とし
て、厚生労働省は、2010(平成22)年から「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」を開催しています。
この検討会での議論に基づき、薬害を学ぶための教材「薬害を学ぼう」を作成し、2011(平成23)年度から全国の中学3年生を対象に配布していましたが、高等学校学習指導要領(平成30年告示)において、新たに「公共」が必履修科目となり、同解説公民編において薬害問題に関する記載がなされていることを踏まえ、2022(令和4)年度から高校1年生を対象に配布しています。2016(平成28)年からは、「薬害を学ぼう」の視聴覚教材と教員用の「指導の手引き」を、2025(令和7)年からはデジタル版教材「薬害を学ぼう」を配布・公開しています。
2017(平成29)年度からは複数の中学校、高等学校で、当教材を用いたモデル授業を実施し、その成果を「実践事例集」としてまとめ、授業実施の参考となるよう、全国の中学校、高等学校に配布しています。
(つづく)Y.H
(出典)厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書