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現今、デジタル技術が社会に浸透し、SNS等のプラットフォームやクラウドサービス等を含め、社会生活や企業活動等において、重要・不可欠な、いわば「社会基盤」としてのデジタル領域が拡大する中、人々の情報収集、コミュニケーション、消費行動や企業の経済活動に大きな変化が生じつつあります。 ここでは、社会生活、企業活動、行政機関等における、デジタル活用の動向等を踏まえ、社会経済活動において重要性・不可欠性の高いデジタル分野の変遷と拡大の動向を概説します。
1.社会生活におけるデジタルの浸透・拡大
◆インターネット接続端末
インターネットへの接続端末は、かつて、パソコンが主体でありましたが、モバイル回線の高速化や携帯電話料金の低廉化、スマートフォンで利用可能なアプリケーションの多様化等に伴い、高齢者層を含め、スマートフォンに移行しています。 例えば、インターネット接続端末としてのスマートフォン利用率は、2011年は16.2%でしたが、2024年には74.4%に増加しており、2017年に、インターネット接続端末としてのパソコン利用率を逆転しました。
◆コミュニケーションツール・SNS
コミュニケーションの手段は、携帯電話に移行が進み、今日ではLINEが大きな存在感を示しています。例えば、LINEの利用率は、全体で2014年の55.1%から2024年には94.9%へと増加しています。高齢者層でも、60代の利用率が2014年の11.3%から2024年の91.1%へと大幅に増加しています。他のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)についても、例えば、X(旧Twitter)や Instagramの利用率が伸びています。全般的に若年層の利用率が高い傾向にありますが、2024年には、X、Instagramは全体の半数程度が利用しているほか、50代でも2024年に4割以上が利用するなど、幅広い年齢層に利用が拡大しています。
◆動画共有・配信サービス
動画サービスは、新型コロナウイルスの流行時の在宅時間を活用するものとして、2020年以降利用者が大きく増加し、今もその利用率は高い水準を維持しています。特にYouTubeなどのオンデマンド型の動画共有サービスや、Netflixなどのオンデマンド型の動画配信サービス、テレビ局が提供するオンデマンド型の放送番組配信サービスの利用者が増加しています。
動画共有サービスの個別サービスの利用動向をみると、例えばYouTubeの利用率は、ほぼ全世代において高く、2024年において、50代までの各世代で8割を超えており、60代でも7割以上が利用しています。TikTokは特に10代、20代の利用率が近年大きく伸びており、2024年にはいずれも半数を超えています。
また、動画配信サービスでは、特にAmazon Prime VideoやNetflixの近年の利用率が高くなっています。
◆情報収集手段
インターネットのポータルサイトやソーシャルメディアによるニュース配信等の拡大や、SNSの利用率の上昇等に伴い、人々の情報収集手段においても、インターネットが重要な手段となりつつあります。例えば、最も利用しているテキスト系ニュースサービスは、ポータルサイトによるニュース配信、ソーシャルメディアによるニュース配信及びキュレーションサービスの合計で、2014年は36.8%だったのが、2024年には73.0%に上昇しました。また、新聞通信調査会が2024年に実施した調査によれば、各メディアの印象を尋ねたところ、50 代までの世代は、新聞・テレビよりもインターネットが「情報源として欠かせない」と回答した割合が高かったとされており、インターネットが情報源として不可欠性の高いメディアとして広がりを見せていると考えられます。
さらに、英国オックスフォード大学の組織が2024年に実施した調査によれば、我が国におけるニュース目的でのソーシャルメディアの利用率をみると、YouTubeやX、LINEの利用率が高く、特にYouTubeは全世代で約3割程度がニュース目的でも利用されています。一方、メディ アの信頼度では、インターネットはテレビ・新聞と比較すると全世代で低い信頼度にとどまっています。
◆買物・決済
買物目的でのインターネット利用も年々拡大しています。経済産業省の調査によれば、物販、サービス及びデジタル分野のいずれも、事業者・消費者(BtoC)間の電子商取引(EC)市場規模が近年拡大傾向にあります。ECでの購入対象は、書籍、生活家電等だけでなく、生活雑貨や衣類等にも拡大しています。決済方法は現金からキャッシュレスへの移行が進んでいます。経済産業省の調査によれば、キャッシュレス決済比率は堅調に上昇し、2024年は42.8%になっています。コード決済も利用が拡大し続けており、2024年時点でキャッシュレス決済額全体の9.6%を占めています。
2.企業活動におけるデジタルの浸透・拡大
◆クラウドサービス
企業におけるクラウドサービス全般の利用は年々拡大しています。全社での利用と一部事業所又は部門での利用を合計すると、2024年は80.6%の企業がクラウドサービスを利用しています。利用されるサービスは多岐にわたり、特に、「ファイル保管・データ共有」、「社内情報共有・ポータル」、「電子メール」、「給与、財務会計、人事」及び「スケジュール共有」の利用率が高く、徐々に利用が増加する傾向にあります。
◆顧客との接点や事業者間取引
広告等、企業から顧客に向けた情報発信でも、デジタル空間の活用が重要性を増しています。 インターネット広告費は2024年に3.7兆円となり、総広告費に占める構成比は47.6%になっています。 2021年にマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)とインターネットが逆転して以降、その差が広がっています。
また、企業の広告媒体としてSNSの活用も拡大しています。帝国データバンクの調査によれば、2023 年には、企業の40.8%が社外への発信でSNSを活用しており、特にBtoC企業における活用割合が突出して高くなっています。事業者間(BtoB)の取引も電子商取引化(EC)が進み市場規模が拡大し、経済産業省の調査によれば、2023年のEC化率は40.0%でした。
3.行政機関の業務における浸透・拡大
行政機関におけるデジタル活用分野の一つである行政手続でも、オンラインの利用が進んでいます。 例えば、電子申請における本人確認の基盤となるマイナンバーカードの人口に対する保有枚数(交付枚数から死亡や有効期限切れなどにより廃止されたカードの枚数を除いたもの)は、2025年2月末時点で人口の78.0%まで達しています。
また、電子申請の利用率も様々な分野で進んでおり、例えば、国税庁によれば、申告等各手続の総件数のうち、e-Taxを利用して行ったものの割合は、2023年度時点で法人税申告では86.2%、所得税申告では69.3%と、順調に拡大しています。特に、個人による所得税申告では、マイナンバーカードの普及拡大等を背景として、2018年度の44.0%から大きく利用が拡大しています。 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべきとされている手続の2022年度のオンライン利用率は57.6%となっています。
4.日常生活、企業活動におけるデジタルサービスの重要性・不可欠性
◆日常生活
SNS等における情報収集・発信や買い物等、デジタルサービスの利用状況に関する個人向けのアンケート調査を行い、「普段利用している」と回答した各デジタルサービスについて、そのサービスが停止した際の影響や、他サービスへの代替可能性について尋ねました。 その結果、そのサービスが停止した際の影響に関して、株取引・オンラインバンキング、支払・決済やメッセージングサービスについて、「そのサービスが停止すると日常生活に大きな支障が出る」と回答した比率が4割を超えました。また、そのサービスが停止した際の影響に関しては、幅広いデジタルサービスに関して、「代替サービスはあるものの、非常に不便」と回答した者の比率は高いものでした。この結果は、幅広いデジタルサービスについて、「不可欠性」「重要性」が高いものとの認識が広まっていることを示しているものと考えられます。また、現在使っているサービスを他社のサービスに代替する際の課題を尋ねたところ、「SNS」や 「メッセージングサービス」は人とのつながりやデータの面で、「予定管理」や「ファイル共有」は保存データ移行の困難さに課題があるとする割合が高かったです。こうした理由が、デジタルサービスに関して、他社の提供するサービスへの移行が難しい原因の一つとなっていると考えられます。
◆企業活動
企業において、クラウドサービスを利用している業務について、「利用している(ほぼ全て、半分程度、一部のみのいずれか)」と回答した各クラウドサービスについて、そのサービスが停止した際の影響や他サービスへの代替可能性についてアンケート調査を行いました。 その結果、企業において利用しているクラウドサービスについて、「そのサービスがないと企業活動の継続が困難」又は「そのサービスがないと業務に大きな支障が出る」といった多大な影響を与えるクラウドサービスは、「電子メール」「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有」「給与・財務会計、人事」「データバックアップ」等幅広い分野に及んでいました。クラウドサービスが、今日の企業活動で重要・不可欠な位置付けになっていることを示していると考えられます。 また、現在使っているクラウドサービスについて、他のクラウドサービスや自社構築システムへ代替する際の課題について尋ねたところ、多くのサービスで、運用費用の上昇やサービスレベルが下がることが最も大きな課題として挙げられています。一方、代替可能なサービスがないという回答の比率は総じて低かったです。企業が現在利用しているクラウドサービスに関しては、代替可能なサービスがあったとしても、コストやサービスレベル維持の観点から他サービスの代替が難しいことが示唆されています。
(出典) 総務省情報通信白書 総務省|令和7年版 情報通信白書|PDF版
(つづく)Y.H