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実践編・応用編

日本の高齢社会対策の推進

投稿日:2025年10月15日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

我が国は、既に超高齢社会に突入しており、高齢者の割合が大きくなっていく中で、高齢者が暮らしやすい社会をつくることは、他の世代の人々にとっても暮らしやすい社会の実現につながります。すべての世代の人々が超高齢社会をを構成する一員として、今何をすべきかを考え、互いに支え合いながら希望が持てる未来を切りひらいていく必要があります。今回は、高齢社会対策の推進についてお話します。

◆ 就業・所得

●年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境の整備

〇 高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリングの推進

職業人生の長期化や働き方の多様化等が進む中、勤労者のライフスタイルに応じたキャリア選択を可能とし、誰もが能力を発揮して働ける環境を整備するとともに、人材の確保・育成や労働生産性の向上につなげるため、リカレント教育の抜本的な拡充、リ・スキリングによる能力向上支援の推進等を行う。 勤労者が将来のキャリアを考えながら、自律的・主体的に学習内容や習得スキルを選択できることが重要であり、個人への直接支援の拡充や教育訓練機関の活用等、多様なニーズを踏まえたリ・スキリングの機会の充実 や職業能力の「見える化」を図るとともに、個々人に合った職業人生を通じたキャリア形成支援を推進する。

また、大学等の高等教育機関において、高齢者を含め、社会人に対する多様な学びの機会の提供を図るため、企業等と連携し社会人向けの実践的なプログラムの開発や拡充を行うとともに、地方公共団体や産業界と連携し、リカレント教育に関するニーズの把握やマッチング等を効果的・効率的に行うためのプラットフォームを構築する。加えて、社会人入試の実施、公開講座、科目等履修生制度や履修証明制度の活用等に取り組むとともに、専修学校の実践的な職業教育における単位制・通信制の制度を活用した取組の支援、放送大学の学習環境の整備・充実を図る。企業において、労働者が主体的に学ぶための時間を確保できるような取組を推進することで、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備を進める。

〇 企業等における高齢期の就業の促進

高齢期においても希望に応じて経験や知見を活かして活躍できるよう 雇用の質を高め、各世代がやりがいを持って働くことのできる環境を整備するため、高齢の労働者を含め、スキルアップやリ・スキリングの機会の提供、年齢ではなく経験やスキルに基づく労働者の配置とともに、仕事内容や働きぶりに合わせた賃金体系等のアウトプットに基づく評価や処遇の仕組みの整備が必要である。企業におけるこれらの取組を後押しするため、高齢者の活躍に取り組む企業の事例集の展開を図るとともに、企業への専門家の派遣、助言の取組を進める。副業・兼業については、労働者の健康確保に留意しつつ、普及促進を図る。

65 歳以上の年齢への定年延長や66歳以上の継続雇用制度の導入等を行う企業を支援するとともに、高齢者の雇用に関する各種助成制度や給付制度等の有効な活用を図る。企業における65歳までの雇用確保措置及び70歳までの就業確保措置の実施状況等を踏まえつつ、働く意欲のある高齢者が、その経験や知見を活かして活躍できるよう、個々の企業において、その実態に応じた定年制や再雇用等、高齢期の雇用の在り方についての検討が求められるところであり、このような取組を後押しするため、各企業の参考となる事例をまとめ、周知を行う。

地域における高齢者の就業促進に当たり、地方公共団体の意向を踏まえつつ、都道府県労働局と地方公共団体が一体となって地域の雇用対策に取 り組むための雇用対策協定の活用を図る。公務員については、2023年度(令和5年度)から65歳に向けた段階的な定年引上げが始まったところ、引き続き定年の引上げに係る人事管理諸制度の円滑な実施に向けた取組を推進する。

高齢期の特性を踏まえ、柔軟な働き方や健康・安全への配慮、デジタルを活用した負担軽減等の取組を進める。その際、フレイル・ロコモ対策の視点や、安全管理システムの開発といったテクノロジーの活用等に留意する。ICT を活用したテレワークの一層の普及拡大に向け、環境整備、普及啓発等を推進する。

就業・労働時間等に関する事項について、「仕事と生活の調和(ワーク・ ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」 (平成19年12月18日仕事と生活の調和推進官民トップ会議決定)等を踏まえ、高齢者も含めた全ての労働者の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現を図る。

〇 高齢期のニーズに応じた多様な就業等の機会の提供

高齢期は、個々の健康・意欲・体力等に個人差があり、雇用・就業形態や労働時間等についてのニーズが多様化することから、それを踏まえた環境整備を行う。 高齢期のニーズに応じた多様な就業を後押しする観点から、継続的な業務委託契約や事業主が行う社会貢献事業に従事することにより就業機会を確保する創業支援等措置について、事例を含めた制度の周知を行い、更なる活用の拡大を図る。

高齢期に自らの職業経験を活用すること等により、高齢者が事業を創出し、継続的な就業機会の確保ができるよう、起業の意欲を有する高齢者に対して、日本政策金融公庫の融資を含めた資金調達等の支援を行う。

ハローワークにおける生涯現役支援窓口において、高年齢求職者が幅広 く社会に貢献できるよう、これまでの就労経験や高齢期における多様なニーズを踏まえた職業生活の再設計に係る支援を行うほか、高年齢求職者の希望する職種と求人のニーズも踏まえながら、求人開拓や雇用情報提供、マッチングの強化等、総合的な就労支援を実施する。退職後に、臨時的・短期的又は軽易な就業等を希望する高齢者等に対して、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業を実施するとともに、地方公共団体が中心となって、地域の経済団体等地域の様々な機関と連携して高齢者の就業機会を創る取組を支援する。加えて、労働者協同組合の活用により、地域における多様なニーズに応じ、高齢者が自ら働く場を創出する取組を促進する。

●公的年金制度の安定的運営

公的年金制度については、急速に進行する少子高齢化を見据えて、将来にわたり年金制度を持続的で安心できるものとするため、給付と現役世代の負担の両面にわたる見直しを実施し、上限を決めた上での保険料の引上げや、マクロ経済スライドによって年金の給付水準を自動的に調整する新たな年金財政の仕組みを構築してきた。

基礎年金国庫負担の2分の1への引上げに続き、予定されていた保険料の引上げが完了したことにより、収入面では、こうした年金財政の仕組みが完成をみたことを踏まえ、決められた収入の範囲内で、年金の給付水準を確保すべく、長期的視点に立って年金制度を運営していく。働き方に中立的な年金制度の構築を目指して、更なる被用者保険の適用拡大等に向 けた検討を着実に進める。

●高齢期に向けた資産形成等の支援

私的年金制度は公的年金の上乗せの年金制度として、公的年金と相まって、個人や企業等の自助努力により、高齢期の所得確保を支援する重要な役割を担っている。私的年金制度の利用拡大に向け、個人型確定拠出年金(iDeCo) における加入可能年齢の引上げのみならず、拠出限度額及び受給開始年齢の上限引上げについて検討し、2024年(令和6年)中に結論を得る。また、手続の簡素化や中小企業が利用しやすい制度の導入の周知等を行うとともに、企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)を含む私的年金制度に関する広報活動を展開することにより、私的年金制度の普及・充実を図る。

ゆとりある高齢期の生活を確保するためには計画的に資産形成を進めることが重要である。より幅広い層の安定的な資産形成を支援していくため、金融業界や金融経済教育推進機構(J-FLEC)とも連携しつつ、個々人のライフプランやライフステージに応じた資産形成、及びその一環としてのNISA の適切な活用を促す。

退職金制度が老後の所得保障として果たす役割は依然として大きいことに鑑み、独力では退職金制度を持つことが困難な中小企業等を対象とした中小企業退職金共済制度の普及促進を図るとともに、高齢期に備えた勤労者の自助努力による計画的な財産形成を促進するために、勤労者財産形成貯蓄制度の普及促進を図る。

低所得の高齢者世帯に対して、居住用資産を担保に生活資金を貸し付ける制度として、都道府県社会福祉協議会が実施している不動産担保型生活資金の貸与制度の活用の促進を図る。

(出典) 内閣府 令和6年 高齢社会対策大綱

(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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