キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

キャリアコンサルタントの語る生涯発達から捉える”人生の午後”

投稿日:2025年11月14日 更新日:

このコーナーは、テクノファキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はS.Sさんからの発信です。

「生涯発達※から捉える”人生の午後”」
一昨年前、フェイスブック上で高校時代の同級生と再会した。彼は、大学を卒業した後に某一流企業に就職が決まり、これまで誰もが羨む順風満帆な人生を送ってきた。

※生涯発達
生涯発達は、個人が生まれてから死ぬまでの間に経験する変化や成長を指します。バルテスはこの概念を「人の誕生から死に至るまでの生涯過程における個人内の変化と安定性・連続性を記述・説明する学問」と定義しています。これは、発達が単なる身体的成長にとどまらず、心理的および社会的な側面も含むことを示しています。内の変化と安定性・連続性を記述・説明する学問」と定義しています。これは、発達が単なる身体的成長にとどまらず、心理的および社会的な側面も含むことを示しています。知っておきたい「生涯発達」3つの要因とバルテスの生涯発達理論とは? – ツナガレ介護福祉ケア

しかし、5年前に重い病に侵され入院して以来、彼にとって人生そのものであった仕事に就けない体となってしまった。さらに、そこに追い打ちをかけるように、一流企業の社員としての彼を選んだ妻が再起不能の夫の姿に落胆し、子どもたちを連れて去ってしまったというのである。

そんな彼が、半年ほど前からネット上に姿を現さなくなった。別の友人からの情報によると、彼は現在、極度の鬱状態に陥っており、その様子を見て放っておけないと判断した親族が、彼を実家に連れ帰ったという。

そのようなわけで、何か彼に関する情報が他にないかと、同じ地元に住む同級生たちに電話をかけてみたのだが、なんとその中の一人がこれまた鬱病で寝込んでいた。聞けば、働く意欲がまったく湧かず、35年ほど続けてきた会社を辞めて静養中だという。

じつは、かく言う僕も50歳の誕生日を迎えた翌日から、自分が自分でないような言いようのない虚しさに苛まれた体験を持っている。自殺念慮に襲われ、一時的ではあったが、まったく動くことができなくなった。幸いなことに、僕の周囲には多くのカウンセラー仲間がいてくれたし、敬愛する師に頼ることができたおかげで、今もこうやって生きていられる。

日本における自殺者の数は、年間3万人前後で推移していることが知られているが、その内訳を見れば、40代後半以降の男性が圧倒的に多い。心理学者ユングは、「人生の午後」という表現で、いわゆる「中年の危機」について語っている。
多くの男性たちは、40代後半から60歳の定年に向けて徐々に残りの人生を意識し始め、先細りの未来に不安と焦りを感じつつ、何とも言えない虚しさと虚脱感に襲われることがある。

それは、これまでひたすら頑張ってきたことが、じつは全く無駄ではなかったのか・・、いまの自分に果たしてどんな価値があるのだろうか・・、または生きていることの意味が分からなくなった・・という実存的な不安感と絶望である。
子にとっての父親、親にとっての息子、妻にとっての夫、そして仕事上における役職・・これらはどれも「役割」にすぎないのだが、そういった役割に同化していた自分に突然気づき、いったい自分が何者であるのかが分からなくなってしまうのだ。

「仕事人間」という言葉があるが、役割に埋没し、自己と役割とが不明瞭なまま区別がつかないとなれば、定年退職した翌日から自分という存在に対する疑問に悩むことになるだろう。女性の場合は、子育ての終焉によって生じる「空の巣症候群」が、身体的変化としての更年期傷害を酷く悪化させる場合が多いと言われている。

いすれにしても、これらは役割と自分について曖昧なまま、区別せずに生きてきたことに起因している。キャリアを語る場合、「私は何者か?」という命題が常につきまとう。自分にとってのアイデンティティが、名刺に書いてある役職や所属に在り、それに無自覚的に依存しているならば、定年後の私は存在の拠り所を失うことになるだろう。

ところで、「還暦」の解釈のひとつに「人生の始まり」というのがあることをご存じだろうか。つまり、「還暦までに何とか大人になろう」という意味であり、六十歳に至るまでに出会う諸々の出来事や果たすべき役割は、大人になるために必要な試練だというのである。

人は、社会人や子育てを務めた経験から多くのことを学ぶ。還暦に至るまではあくまでも修養期間でしかなく、還暦を過ぎてようやく一人前の大人として初の人生が始まるということらしい。となれば、その準備期間でしかない還暦前に絶望するなどということが、いかに不自然なことであり、未熟な証であるかをじっくりと再考してみる必要があるだろう。

生涯発達という言葉が一般化して久しいが、そもそも「第二の人生」などという捉え方自体に問題があるのかもしれないし、社会人である自分が既に完成された大人であるという認識は、誤認というより先に、単なる奢りでしかないのかもしれない。

私は何者だろう?
いま、何を為そうとしているのだろう?

「真の大人」になるために、いまいちど自分に問うてみる必要があるのではないだろうか。
(つづく)K.I

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

活躍しているキャリアコンサルタントの近況や情報

◆このコーナーは、活躍している「キャリア・カウンセラー」からの 近況や情報などを発信いたします。今回はキャリア・カウンセラー”鈴木秀一さん”です。 ================================================ 私の存在価値とキャリア形成 先日、NHKの朝ドラ(“やなせたかし”をモデルにした「あんぱん」)の中で、主人公である「のぶ」が夫の嵩に苦しい胸の内を漏らすシーンがあった。 「ウチは何者にもなれんかった。教師も代議士の秘書も会社勤めも、何ひとつやり遂げられんかった。あなたの赤ちゃんを産むこともできんかった。 ウチは何のために生まれて …

医療のイノベーション推進 2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に引き続き、医療のイノベーション推進についてお話しします。イノベーションとは、全く新しい技術や考え方を取り入れて、新しい価値を生み出し、大きな変化を起こすことをいいます。近年医療業界においてもイノベーションが強く求められています。その背景には、より高度な医療機器が開発される中で、特に疾病の治療機器が海外から輸入されるケースが増えるなど、日本国内における技術の国際競争力不足という問題があります。 ■次世代医療基盤法 匿名加工された医療情報の安全・適正な利活用を通じて、健康・医療に関する先端的研究開発や基盤整備や新産業創出を促進す …

キャリアコンサルタントの私自身の活動領域の変化

このコーナーでは、テクノファキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はM.Iさんからの発信です。 最近のキャリアコンサルタントとしての活動を通して感じていることについてお伝えします。私がキャリアコンサルタントになり10年今日の日々が過ぎてきました。 その中で、私自身の活動領域が随分変化してきていることを感じます。 一般的にキャリアコンサルタントの活動領域としては、 【人事コンサルティング】 【企業・組織内におけるキャリア開発支援】 【需給調整機関における職業相談/紹介】 【学校におけるキャリア開 …

 ドイツの労働施策について 2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に続き、ドイツの労働施策についてお話しします。日本とドイツは基本的価値を共有し、G7等において国際問題に対し強調して取り組むパートナーです。また、ドイツは日本にとって欧州最大の貿易相手国であり、21世紀に入って日独関係はますます重要なものとなっています。政治経済面での協力はもちろん、文化・学術分野でも市民レベルでの活動が活発に行なわれています。 ■若年者雇用対策 ドイツでは若者の学校から職業への移行に際し、伝統的に職業訓練を重視しており、希望職種の訓練への参加の可否がその後の就職に大きな意味を持つことから、就労に必要な資格能力 …

製造業を巡る現状と課題 主要製造業企業の海外売上比率×利益率

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。 前回に続き、経済産業省製造産業局が2024年5月に公表した資料「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」から、スライド10ページ「主要製造業企業の海外売上比率×利益率」について、該当図表の構造と示唆、各種の解釈と政策的含意を含めて解説をいたします。 (出典)経産省 製造業を巡る現状と課題今後の政策の方向性2024年5月製造産業局 -検索 ◆スライド10「主要製造業企業の海外売上比率×利益率」詳細解説 ――“グローバル化”は利益を生むか? 海外展開の真の実力差が問われる時代 はじめに:このスライドは可視化するもの このページは、**我が …