実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 75 | テクノファ

投稿日:2021年6月6日 更新日:

このコーナーは、テクノファキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はS.Sさんからの発信です。

先日、ある記事を見つけた。

「これでいいのか、現代社会」と題された記事の内容は、JR山手線で起きた人身事故において、多数の野次馬がホームに押し寄せ、スマホを片手にシャッターを切っていたという異様な光景に対するものだった。しかも、笑顔で撮影している者も多数いたという。

これが事故なのか、または自殺による飛び込みなのかは定かではないが、いずれにしても仮にも人の命がかかっている現場にもかかわらず、まるで他人事といった麻痺的な感覚に違和感を覚えずにはいられない。

さて、これでいいのか、よくないのか・・という以前に、こういった行動の背景にある心情には「撮った写真を誰かに見せよう・・とか、SNSでシェアしたい」という意味で、単なる記録に留まらず、自分が周囲に提供できる話題の一つにしようという無意識かつ反応的な思惑がある。

おそらく「事故現場なう」とでも題してフェイスブックやミクシイにでも投稿するつもりなのだろう。もし、僕のこの解釈が当たっているのだとすれば、このような現象は多くの者が対象を自分たち以外のモノや人に向ける共有を「つながり」だと錯覚しているからに他ならない。

関わり的な「つながり」を持とうとする人は、独りぼっちに対する何らかの怖れや不安を回避したい気持ちが根底にあるのではないだろうか。孤立して不登校になった子が望む職種の第一位が「アニメの声優」や「お笑い芸人」であったり、または「パテシエ」であったりするのは、こうした「つながるために必要なネタ」を提供する側として自分が持っていることへの憧れなのだろう。

だが、真に他者とつながるためには、同じものを見て「一緒だね」と感じるための「会話」などではなく、両者が自分にとっての世界観(私は、こう感じている。こう思っている。)を自由に開示し合えるような「私とあなただからこそ成立する対話」でなくてはならない。

しかしそれは、他者との関係以前に、先ず自分自身と対話ができていて、自分というものをよく知っていてこそである。孤独を寂しく感じる人は、おそらく本質的な自己とのつながりが実感できていないと考えられる。つまり、物理的に誰かと一緒の空間に居たり、同じものを観たり、食べたり、または電話をしていたりといった具合に、他者との共有こそが寂しさを埋めてくれる「つながり」だと錯覚しているからこそ、常に意識が外側に向いており、なかなか自分自身の内側には向かないのである。

自分自身と向き合い、自己との対話ができる者にとって孤独はけっして不快なものではなく、むしろ平和で落ち着けるものである。物理的な孤独だけではなく、集団内における孤独もまた同様である。孤独を選べない者は、集団内にいても周囲の顔色を気にして安堵感など得られない。

(※:「孤独」と「孤立」を混同しないでね。そこには自分がそれを選択しているという主体的な意味が含まれています。)

このことを理解せずに既に依存症となっている「LINEをやめよう」とか、「SNSやメールに使っている時間を減らそう」と言っても、やめられるわけがないのだ。独りになれるためのトレーニングをしなければ、この先もずっと誰かとつながるために、大切なはずの時間を浪費し続けることになるだろう。

(つづく)S.S

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

こころの健康対策|キャリコン226テクノファ

キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。 ● こころの健康対策 うつ病が重症化する前に早期に治療を行うことができるよう、うつ病等に罹患している方を早期に発見し適切に対応することが重要です。このため、一般内科医等、地域のかかりつけ医や医師以外の保健福祉業務従事者に対する研修などを実施するとともに、一般かかりつけ医と精神科医の連携を強化し、円滑に精神科医療につながる仕組みづくりを進めるなど、うつ病の早期発見、早期治療が実施できる医療体制の充実を図っ …

求職者支援と雇用保険制度|キャリコン実践の要領6テクノファ

キャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。 ■生活困窮者就労支援の推進 2013(平成25)年度から生活保護受給者を含め生活困窮者を広く対象として、地方自治体(福祉事務所)にハローワークの相談窓口(常設窓口や巡回相談)を設置するなど、ワンストップ型の就労支援体制を全国的に整備し、ハローワークと地方自治体の協定に基づき、両者によるチーム支援方式により、就労支援を行う「生活保護受給者等就労自立促進事業」を実施している。2021(令和3)年度における実績は支援対象者数約10.3万人、就職者数約6.8万人となっている。 (求職者支援制度) 求職者支援制度は、雇用保険を受給できない方々に …

医療関連イノベーションの推進|テクノファ

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。 第6章 医療関連イノベーションの推進 第1節 データヘルス改革の推進 我が国では、世界に先駆けて超高齢社会に直面しており、健康寿命の延伸や社会保障制 度の持続可能性の確保という問題に国を挙げて取り組む必要がある。ICTの活用は、これらの課題の解決につながる可能性があります。 このため、厚生労働省においては、2017(平成29)年1月 …

キャリアコンサルタントの活動領域2 I テクノファ

2.需給調整機関領域(就職支援領域―職業相談/紹介サービス) この領域の公共機関として、ハローワーク、ジョブカフェ、ヤングジョブスポット等があります。 ハローワークでのキャリアコンサルタントの主な仕事は求職者に対する予約制の個別相談支援です。公的機関であるハローワークは、多様な求職者に対応することが求められる等、官民で求められる役割や対象者の層などは異なるところがありますが、総じて、需給調整機関領域においては、 期待されている役割が明確であり、周囲に同僚等がいる場合が多いことから、学習すべきことが明確であり、かつ自主的な勉強会等も行いやすい等比較的学習を続けやすい環境にあるとみられます。 公共 …

過労自殺について | テクノファ

このコーナーは、活躍している「キャリアコンサルタント」からの近況や情報などを発信いたします。今回はキャリアコンサルタントのT.Fさんの便りです。 (過労自殺について) 就労支援の現場では、キャリアコンサルタントとして精神疾患に罹りながら就労を目指す方との面談を頻繁に行いますが、精神疾患に悩まされている方の多さに驚かされます。最近、社員が過労から自殺したニュースが報道されることが時々あります。”うつ病”の発症による自殺とみられています。亡くなられた方は新入社が多いのですが、将来に夢を持たれて社会人をスタートされたことを思うと言葉がありません。日本を代表する企業において、こ …