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実践編・応用編

海外進出日本企業で働く人々_中国_職業能力開発、外国人労働者対策

投稿日:2024年4月16日 更新日:

昨今は海外進出している企業で働く日本人も多数います。彼らを取り巻く状況を知っていることもキャリアコンサルタントには有用なことです。今回は中国の職業能力開発、外国人労働者対策についてお伝えします。

職業能力開発
イ 概要
高度技能労働者の養成訓練、再就職・起業のための職業訓練、農民工に対する職業転換訓練などが実施されている。2021年には全国で1,880万人が専門技術資格試験を受験し、そのうち347万人が資格証書を取得し、2021年末時点で、各種専門技術職業資格証書の所有者は累計3,935万人となっている。技能労働者の育成については、技工学校や職業訓練センター、民間職業訓練機関において行われている。2021年末時点で技工学校は2,492校あり、在校生は426.7万人、年間延べ600.7万人の社会人訓練が行われた。職業訓練センターは940校、民間訓練機関は29,832機関あり、給付金付き職業訓練は延べ3218.4件、在職者向け訓練は延べ1501.8件実施された。

ロ 第14次職業技能訓練五か年計画
2021年12月、人力資源・社会保障部、教育部、発展改革委員会および財務部は、「第14次職業技能訓練五か年計画」を連名で公表し、2021年から2025年までの期間における人材開発施策の指針を示した。同計画では、職業技能訓練に関する現課題として、産業の転換と高度化、技術の進歩により、労働者の技能の質に対する要求が高まり、人材の育成(供給)と市場の需要とのギャップが更に拡大していると評している。その上で、①生涯職業能力開発をより充実させ、労働者のキャリア全体をカバーし、個人と経済社会両方の成長のためのニーズを満たす訓練を推進すること、②政府、企業、学校その他の訓練資源を統合・共有することで公共職業技能訓練の供給を最適化し、その拡大と質の向上を推進すること、③革新的で応用力のある高度技能人材を継続的に育成すること、④訓練と雇用を緊密に連携し、市場主導型と政府補助型の職業技能訓練を共に推進するなどして職業技能訓練の公共サービスを更に効果的にすること、の4つを主要目標に据え、その定量的指標を次の表のとおり定めている。

ハ 失業保険加入者を対象とした職業技能向上給付金
人力資源・社会保障部と財政部は2017年5月に「失業保険による失業保険加入者の職業技能向上支援に関する問題についての通知」を公布した。失業保険に加入し、かつ職業資格を取得している労働者に対して、職業能力の向上を支援するため、失業保険基金から給付金を支給する。労働者の能力向上による失業の予防のほか、在職者が失業保険加入のメリットを目に見える形で得ることになり、その保険料納付義務の履行を促進する効果も期待されている。対象となるための条件は、①失業保険に加入し、その納付期間が累計で36か月以上ある、②2017年1月以降に「職業資格証書」の初級(5級)、中級(4級)、高級(3級)、あるいは「職業技能等級証書」を取得したことである。2021年は179万人の失業保険加入者に対して支給された。(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

■外国人労働者対策
1.外国人就業規制
「外国人の中国における就業管理規定」(1996年5月施行)により管理されており、同規定によると、事業主が外国人を雇用して従事させる職務は、特別な必要性があり、国内で当面適切な人材が不足しており、かつ国の関連規定に違反しないものでなければなりません。また、単純労働の外国人雇用は原則として認められず、外国人の雇用比率に関する明確な法律規定はありません。外資企業は、外国人雇用に際し、外国人就業許可証および就業証を取得しなければならないなどと規定されています。なお、近年、外国人の就労者数の増加に伴い、非法入境(不法入国)、非法居留(不法滞在)、非法就業(不法就労)(「三非」と呼ばれる)が問題となっており、政府はこれらの問題に抜本的に対処するため、2013年9月から外国人出入国管理条例を施行し、外国人の入国、とりわけ中国における就労行為を厳格に管理しています。

2.外国人就労許可制度
ハイレベル人材のニーズの高まりと、外国人労働者の厳格な管理や制度の利便性の向上の必要性の高まりを受け、国家外国専門家局は2016年9月「外国人の中国における勤務許可制度試行実施案の発布に関する通知」を発布し、2017年4月から新しい外国人就労許可制度が施行されました。従前は、一般向けの「外国人入国就労許可」と専門家向けの「外国専門家就労許可」の二種類に分かれていましたが、「外国人就労許可」制度に統合して、国家外国専門家局が管理することとなりました。具体的には、一般向けに人力資源・社会保障部が「外国人就業許可証」および「外国人就業証」を発行し、ハイレベル人材向けには国家外国専門家局が「外国専門家訪中就労許可証」および「外国専門家証」を発行してきたが、証書の管理が国家外国専門家局に一本化され、それぞれ「外国人就労許可通知」および「外国人就労許可証」に統一されました。

また全国統一のシステムを構築し、全ての外国人を終身有効な統一番号で管理(居留証、社会保険、個人所得税の情報等)するほか、外国人就労許可通知はオンライン申請が可能となりました。新制度では、外国人就労をA類(ハイレベル人材)、B類(専門人材)、C類(一般人材)で管理し、大枠が内容として定められており、地方外国専門家局に大きく自由裁量権が与えられています。ハイレベル人材は奨励、専門人材はコントロール、一般人材は制限する方針となりました。

A類:経歴、職位、学歴等の要件を満たした場合(グローバル500社の本部で上級管理職または技術研究開発責任者、世界ランキング200位以内の大学で博士号を取得した35歳以下の青年人材等)優遇政策が与えられる。

B類:「60歳未満」「学士以上の学位」「2年以上の実務経験」という条件を設け、企業の駐在員等が主に該当する。

C類:一般的に条約や政府間協定法律の規定に基づき、訪中して就労することとなった者や政府の職務割当管理下で就労を許された者に与えられる。また、審査期間が短くなり、かつ無犯罪記録証明書や職歴、学歴の証明書の提出が不要となっている。

3.外国人の社会保険
「中国社会保険法」(2011年7月施行)および「外国人の社会保険加入に関する細則」(2011年10月施行)により、中国国内で働く外国人に対し、基本養老(年金)保険、基本医療保険、労災保険、失業保険、出産保険の5保険制度への加入が義務づけられました。外国人の範囲は、中国国内で法律に基づいて登記された企業等に雇用される外国人、中国国外の雇用主と雇用契約を結び中国国内の支所、代表事務所に派遣されて働く外国人(いわゆる駐在員)となっています。

中国企業、日系企業等に直接雇用される在留邦人にとっては中国において社会保障のセーフティネットが提供される側面もあるが、日系企業の駐在員に関しては社会保険料の二重負担が発生することとなります。日中両国政府は、この社会保険料の二重負担の問題等を解決するため、2018年5月に日中社会保障協定に署名しました。同協定は2019年9月に発効していますが、外国人の社会保険加入についての具体的運用は、各地方政府が定めることとなっています。

(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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